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第 5 章 シミュレーションによる散乱フラクションの推定

5.2 方法

5.2.1 シミュレーション条件

5.2.1.1 使用装置およびソフトウェア

本研究で用いたPET/CT装置(Discovery ST Elite Performance, GE Healthcare, Milwaukee, WI)

の構成を示す。クリスタルは、BGO (6.3 × 6.3 × 30 mm)が搭載されており、体軸方向に24 rings、

検出器間の内径は886 mm、transaxial field of view (FOV)は700 mm、axial FOVは151.2 mm、

スライス厚は3.27 mmである。PET画像の撮像条件は、3D収集(最大リング差は制限して いない)、energy window を 375 − 650 keV、再構成条件は 3D-Ordered Subset Expectation Maximization(OS-EM)(Subset:21、Iteration:2)、Post Filter 2.14 mm、マトリクス128 × 128 である。CTの撮像条件は、管電圧120 kV, 管電流はAuto mA機能を利用して、Noise Index を 10.0 とした。マトリクスサイズは 512 × 512 である。シミュレーションには、Geant4

ver10.037)を使用した。Geant4 は複雑な体系中における粒子の挙動をシミュレートすること

が可能なツールキットである。C++によるオブジェクト指向のコードであり、広い分野にお いて利用されている。計算には、汎用型Personal Computer(PC)(CPU : Intel® Core™2 Duo , 周波数:3.33 GHz , メモリ:3.6 GB , OS : Scientific Linux 64bit)を用いた。計算は少なくと

も15000カウント以上の同時計数が得られる試行回数とした。線源の配置と強度はPET画

像より決定する。PET 画像を読み込み、各ピクセル値を 3 次元配列に格納する。配列を順 次読み込み該当するピクセル位置において配列に格納された値の数だけ、光子を発生する。

配列の値だけ光子を発生させた後、次のピクセルへ移る。発生する粒子には陽電子を使用 せず、エネルギーが511 keVの光子2本を反対方向に発生させる。これは、陽電子が消滅す るまでの事象を省略することで計算時間を短縮するためである。複数の検出器でエネルギ ー付与を起こした場合は付与したエネルギーに応じて重心を求め検出位置とした。散乱フ ラクションの算出の際に偶発同時計数はその影響が無視できる低計数率領域で計測するこ とが規定されているため、本研究では考慮しない。FOVの大きさは360×360 mmとし、エ ネルギー分解能は18 %とした42)。また、体軸方向に斜め方向のLORは、シングルスライス リビニングにより直交スライスへ変換する。

30 5.2.1.2 検出器の配列とサイノグラムの作成

Geant4 は一般的なシミュレータと異なりユーザが必要なシミュレーションを行うために

自分でプログラムを取捨選択し、プログラムを書かなければいけない。Geant4 を動かすた めに最低限必要なプログラムを以下に挙げる。

・DetectorConstructionクラス(計算体系の構造)

・PrimaryGeneratorActionクラス(入射粒子の種類、エネルギー、方向、位置など)

・PhysicsListクラス(相互作用の種類)

Geant4 にはサンプルコードがいくつも用意されており、簡単な計算を行う場合にはサンプ

ル コ ー ド の 値 を 書 き 換 え る だ け で 実 行 可 能 で あ る 。 本 研 究 で は 、 ~ example/extended/medical/DICOMを使用した。このサンプルコードはDICOM画像よりボク セルファントムを作成することが可能であり放射線治療の線量評価等に使用できる。この コードを元として、PET の検出器を書き加えた。エネルギー付与のあった検出器を同定し 検出信号の位置よりサイノグラムを作成、画像再構成を行った。PETに使用するBGOを円 形に配置するプログラムの一例を図5.2.1.2.1に示す。

図5.2.1.2.1 Geant4における物質を配置するコードの例

①では物体の形と大きさを決定している。直方体を表すG4Box以外に円柱を作成する場合

①G4Box* minbox = new G4Box(“min”,15*mm,3.15*mm,3.15*mm);

②G4LogicalVolume* minbox_log =

new G4LogicalVolume(minbox, BGO, “minLV”,0,0,0);

for(r=0 ; r<24 ; r++){

for(i=0 ; i<420 ; i++){

G4ThreeVector armVec = G4ThreeVector(45.8*cm, 0 ,

(r*(6.3+0.25))*mm);

G4RotationMatrix armRot = G4RotationMatrix();

armVec.rotateZ(0.85715*i);

armRot.rotateZ(0.85715*i);

③G4VPhysicalVolume* minbox_phys =

new G4PVPlacement(G4Transform3D(armRot,armVec),

minbox_log , “minLV_copy”, expHall_log , false, 420*r+i+1);

}

}

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にはG4Tubs、球体を作成する場合にはG4Sphereを用いる。他にも様々な形状が用意されて

いる。大きさは物体の座標を中心にX 軸、Y 軸、Z 軸方向に半分の値を入力する。②では 当てはめる物質を定義している。BGOなどの化合物はG4Material関数によって必要な元素 の原子番号、質量数、密度等をあらかじめ定義しておく必要がある。また、特定の Logical

Volume を検出器として登録しておくことで物体内部での付与エネルギーや物理反応など

様々な情報を取得することができる。③では①と②により定義した物体をシミュレーショ ン計算体系上に配置している。角度および位置を変化させながら、ループ内で繰り返し配 置することでPETガントリーを作成する。配置する際にcopy_number と呼ばれる識別番号 を付けることが可能であり、情報の出所が特定可能となっている。PET では陽電子が陰電 子と対消滅する際の消滅放射線を同時計数している。それぞれ511 keVのエネルギーを持つ 光子がクリスタル内で相互作用を起こし、エネルギーを付与する。付与されたエネルギー が検出部のエネルギー分解能により広がりを持って検出され、そのエネルギーが装置の同 時計数とするエネルギーウィンドウ内に含まれた場合にカウントとされる。消滅放射線が2 本とも計数された場合には、同時計数となる。エネルギー付与された検出器から位置演算 を行い2つの検出位置を結ぶ線をLORと呼ぶ。LORの傾きおよびガントリー中心からの距 離を求めサイノグラムを作成した(図5.2.1.2.2)。サイノグラムの縦軸はLORの傾き(θ)、 そして横軸はガントリー中心からの距離(r)である。

a = y6− y7

b = ^6− ^7

c = y7^6− ^7 − ^7y6− y7) 2 = |`|

√9(+ }( θ = arctan €9

} + 90

図5.2.1.2.2 サイノグラム作成のための情報

5.2.2 シミュレーション体系の検証

DICOM画像からボクセルファントムを作成するにあたり、Geant4のサンプルコードを使

用した。しかし、検出器の配置やサイノグラムの作成、PET 画像からの線源位置および強 度の決定は独自に作成したコードであり正しく動作しているかを検証する必要がある。そ こで、線源位置の元としたPET 画像と同等の画像がシミュレーションにより作成できてい るかを確認した。線源位置の元としたPET画像(図5.2.2.1)はNEMA/IEC ボディファント

ムをDiscovery ST Elite Performanceにより撮像したものである。ホット球とバックグラウン

ドの比は4:1である。撮像時間は30分でFOVは50 cm、マトリクスは128×128、OS-EM

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(Subset: 21、Iteration: 2)により再構成を行い、PostFilter(2.14 mm)で平滑化を行ってい る。元画像とシミュレーションにより作成した画像において、2つのホット球を横切る直線 から得られるカウントプロファイルカーブより検討した。

図5.2.2.1 線源配置の元としたPET画像

また、エネルギー分解能として18 %となっていることをエネルギースペクトルより確認し た。

5.2.3 内挿法と直接法による散乱フラクション推定法の比較

NEMA NU 2-2007での散乱フラクションの算出法は直径20 cm、長さ70 cmの散乱ファン

トムに線状線源を挿入して撮像し、得られたサイノグラムの各行の最大値が 1 列に並ぶよ うに並び替えて各列を加算する。最大の値となる位置から120 mm以内のカウントにおいて、

最大の値となる列を中心に±20 mm の位置の値を結び、その線分より上部を真の同時計数 とし下部を散乱同時計数とすることで散乱フラクションを求めている(図3.1.3.1)。つまり、

PET における散乱同時計数は被写体の中で、光子が片方または両方が散乱した後に同時計 数されたもの、もしくは、被写体の中で散乱せずに同時計数されたが最終的にLORが線源 位置よりも20 mm以上離れ、かつ120 mm以内であるものである。この条件をシミュレー ションにより直接的に求めた方法(直接法)と従来のサイノグラムの内挿による方法(内 挿法)を比較した。線状線源でのみ使用可能な内挿法に対し、直接法は実際の人体に分布 した線源においても散乱フラクションが推定可能であり、臨床画像の散乱フラクションを 求めるにあたって必要となる。直径10~50 cmの散乱ファントムを用いて、内挿法および直 接法により求めた散乱フラクションを比較した。ここで、線源の配置位置は従来の方法と 同様にファントム半径:ファントム中心線源間距離 = 10:4.5となるように調節した。ま た、ガントリー内の線源の位置は変えず(Y軸: −4.5 cm)に寝台およびファントム位置を調 節した。ただし、NEMA 規格では、各スライスにおいてサイノグラムの内挿により散乱フ ラクションを求めてから平均しているのに対し、本研究ではすべてのスライスのカウント を1つのスライスのサイノグラムに合算して内挿している。これは、47スライス全てでサ イノグラムが安定するまで試行回数を増やすことが困難であるためである。FSDが0.5%以

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下となる試行回数および計算時間についても検討した。

5.2.4 ボディファントムにおける散乱フラクション

PET における撮像条件や画像再構成法の検討に、ボディファントムが広く用いられてい る。ボディファントムの断面積はおよそ60 kgの人間に相当し、日本人の標準的な体格に相 当する7)。ボディファントムにおいても、散乱フラクションは散乱ファントムより求めた固 定値を用いて雑音等価計数NECphantomの測定を推奨している。NECphantomは3.2.1.2.1式で求 められる。使用する散乱フラクションが文献値(45 %)を用いた場合と、シミュレーショ ンにより推定した場合においてNECphantomの違いを検討した。散乱フラクションの推定には

5.2.3により検証した直接法を用いて求めた。ただし、線源位置より120 mm以内という制

限を無くし、FOV 内(360×360 mm)に計数される計数を考慮した。これは、臨床におい ては線源位置より120 mm以上離れた場合においてもFOV内に計数される散乱線は画質の 劣化につながるためである。ガイドラインにおけるボディファントムを用いた試験では、

散乱ファントムを同時に使用することで視野外からの散乱線を模擬することができ、より 実際の条件に近づくとされ使用を推奨している。しかし、散乱ファントムを所有していな い施設が多いことや、準備に時間を要すること、デリバリーによりPET 薬剤を購入してい る施設においては十分な放射能量を確保することが困難であることから、使用には制限を 設けていない。そこで、散乱ファントムを使用することによる影響を明らかにする。散乱 ファントム内の放射能量はがん FDG-PET/CT 撮像法ガイドラインファントム試験マニュア ルver 1.00の手順によると58.3 MBq(2.65 kBq/ml × 22000 ml)であり、ボディファントム

(10015 ml)と散乱ファントムの放射能量の比は約1:2となる。上記の条件で散乱ファント ムを使用した場合と使用しない場合におけるボディファントムの散乱フラクションを求め た。ボディファントムおよび寝台はボクセルファントム、散乱ファントムはマクロボディ により作成した(図 5.2.4.1)。散乱フラクションの推定には 5.2.3 により検証した直接法を 用いて求めた。

ドキュメント内 における散乱フラクションの推定 (ページ 31-38)

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