―山口県を事例として―
第1節 本章の課題と調査方法
3-1-1 本章の課題
第1章で述べたように、先行研究は、集落営農法人が正社員として従業員を 雇用するにあたり、規模拡大や経営の複合化・多角化は重要な関係を持ってい ることを示唆している。
そこで、本章では、新規就農者を雇用している集落営農法人について、その 概要を整理するとともに、①労働の組織化の態様(地域ぐるみ型、少数担い手 型)、②新規就農者を雇用した理由及び③作目や事業展開の複合化・多角化の程 度、といった3つの視点から具体的に類型化を行うとともに、地代水準や労働 への収益配分から見た類型間の経営的特徴を明らかにすることを課題とする。
3-1-2 調査方法
調査対象法人は、山口県において新規就農者を雇用している「地域ぐるみ型」
及び「少数担い手型」の集落営農法人14法人を選定した(表 3-1、表3-3)12。 筆者が把握した14法人は、2000年から2015年までの間に新規就農者を雇用 した集落営農法人をほぼ網羅している。
この14法人に対する調査項目は、構成員数、関係集落数、農地集積面積、雇 用した新規就農者数、主要作目(水稲、麦、大豆、露地野菜、施設野菜、畜産
12 集落営農の法人化のパターンによって「少数の専業農家等が中心となって法人化」したも のと「農地の出し手、受け手を含め集落全体が法人化」したものに区分し、筆者は、前者を
「少数担い手型」、後者を「地域ぐるみ型」とした。
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等)、加工、直売への取り組み、売上高、農業地域類型、新規就農者を確保した 年度等、である。
データは、「山口県集落営農法人経営分析システム」、「平成23年度山口県農 林総合技術センターアンケート調査結果」、「調査対象法人の新規就農者に対す るアンケート調査結果」(2014年)及び「法人の役員等に対する聞き取り調査」
(2014年~2015年)に拠った。
表 3-1 新規就農者を雇用している集落営農法人数(山口県)
新規就農者雇用法 人 (内数)
都市的地域 24 4
平地地域 9 0
中間地域 129 7
山間地域 43 3
合計 205 14
法人数
出所:山口県農業振興課資料及び聞き取り調査(2015年)による。
注:1)新規就農者雇用法人とは、2000年から2015年までに新規就 農者を雇用している集落営農法人である。(ただし、異業種参入型 法人は除く)
2)山口県では、特定農業法人として、地域から担い手として認 知さられた法人についても集落営農法人としてカウントしている が、異業種参入型法人の活動・運営等について明確に把握できな い法人が一部あったため、今回の分析対象には含めなかった。
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第2節 新規就農者を雇用している法人の概要
新規就農者を雇用している法人は、地域ぐるみ型が9法人(62%)、少数担い 手型が5法人(38%)であった。法人種類は、地域ぐるみ型法人は全て農事組 合法人であった。認定農業者等を中心として設立された少数担い手型法人は、
農事組合法人が1法人、有限会社が2法人、株式会社が2法人であった。少数 担い手型法人は、法人種類からも企業的経営を行う法人であることがうかがえ る。県全体の集落営農法人に占める地域ぐるみ型の割合は83%、少数担い手型
は14%であるが、相対的に少数担い手型の法人が新規就農者を多く雇用してい
る。
全ての法人が新規就農者を正社員として雇用し給与を支給している。新規就 農者の初任給は、月額約13万円から約17万円程度であった。初任給は15万円 程度が1番多かった。賞与(1~3ヶ月程度)、昇級(5,000円程度から1万円 程度/年)は殆どの法人が導入している。給与水準の参考企業等はJAが多かっ た。
70 第3節 新規就農者を雇用した法人の6類型
調査結果から①労働の組織化の態様(地域ぐるみ型、少数担い手型)、②新規 就農者を雇用した理由及び、③雇用と相前後した経営展開の方途(作目や事業 部門の複合化・多角化の程度)の3点に注目し分類したところ、表3-2に示す ように、少数担い手規模拡大型(A型)、少数担い手規模拡大野菜導入型(B型)、 少数担い手規模拡大多角化型(C型)、地域ぐるみ農業・農地維持野菜導入型(D 型)、地域ぐるみ農業・農地維持施設野菜等導入型(E型)、地域ぐるみ地域活 性化多角化型(F型)の6類型が析出できた。
表 3-2 新規就農者を雇用した法人の6類型
少数担い手型 雇用した理由
事業積極拡大 地域活性化
(事業積極拡大)
農業・農地維持
(高齢化対応)
普通作物拡大 A
(No.1,2) 露地野菜導入 B
(No.3,4)
D
(No.6,7,8) 施設野菜、畜
産等導入 E(No.9,10,11,12)
加工取組、直 売所運営
C
(No.5)
F
(No.13,14)
地域ぐるみ型 雇用した理由
作 目
・ 事 業 部 門 の 複 合 化 多 角 化 の 程 度
注:1)A:少数担い手規模拡大型 B:少数担い手規模拡大野菜導入型 C:少数担い手規模拡大多角化型
D:地域ぐるみ農業・農地維持野菜導入型 E:地域ぐるみ農業・農地維持施設野菜等導入型
F:地域ぐるみ地域活性化多角化型
2)No.は表3-3の法人No.
3)「地域ぐるみ型」の雇用の理由は、農業・農地維持と併せ、生活面も含め地域活性化を目指す
「地域活性化(事業積極拡大)」と高齢化に対応して耕作放棄地の発生防止など農業・農地を 守る「農業・農地維持(高齢化対応)」に分類した。
出所:聞取調査(2015年)により作成
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これら6類型の定義は、次のとおりである。
(1)少数担い手規模拡大型(A型)
普通作物中心の経営を行う法人で、事業を積極拡大するために普通作物の規 模拡大に伴って新規就農者を雇用している法人。
(2)少数担い手規模拡大野菜導入型(B型)
上述法人が、新規就農者の労力を有効活用して収益増加のため露地野菜を導 入している法人。
(3)少数担い手規模拡大多角化型(C型)
少数担い手規模拡大野菜導入型法人が事業を積極的拡大し収益性を向上させ るため、自からが生産した農産物を原料に加工や6次産業化に取り組むために 新規就農者を雇用している法人。
(4)地域ぐるみ農業・農地維持野菜導入型(D型)
担い手の高齢化・減少に対応して農業・農地維持の目的で、新規就農者の雇 用が求められ、これに伴いその周年就労や所得確保のため、露地野菜を導入・
規模拡大している法人。
(5)地域ぐるみ農業・農地維持施設野菜等導入型(E型)
農業・農地維持の目的で、新規就農者の雇用が求められ、雇用に伴い周年就 労や所得確保のため施設園芸や畜産等収益性の高い部門を導入・規模拡大して いる法人。
(6)地域ぐるみ地域活性化多角化型(F型)
地域維持・地域活性化のために事業を積極的拡大して農産物直売所の運営や 農産加工に取り組むことに伴い新規就農者を雇用している法人。
72 第4節 6類型の経営的特徴
本節では、新規就農者を雇用している集落営農法人の経営的特徴を第3節で 析出した6つの類型間の比較を通して明らかにする。
3-4-1 6 類型の経営的特徴(雇用時期、栽培作物、経営の複合化・多角化等)
表 3-3 に新規就農者を雇用した 14 法人の経営規模、新規就農者の雇用人数 及び主な作物、経営の複合化、多角化の程度について示している。
少数担い手型法人は、A型<B型<C型の順に、経営規模が大きくなるとと もに、新規就農者雇用者数も増加している。少数担い手型法人は、規模拡大に 対応して、新規就農者を雇用していることが伺える。地域ぐるみ型法人は、D 型<E型<F型の順に事業部門の複合化・多角化の程度が高まっている。少数 担い手型のA、B、C型の法人は、いずれもコメの直売を行っており、積極的 な事業展開が見られる。地域ぐるみ型の法人では、地域維持型のD型では、コ メの直売は見られないが、施設野菜に取り組んでいる一部のD型や地域活性化 型のF型では、コメの直売に取り組み、積極的な事業展開が見られる。D型<
E型<F型の順に、事業部門の複合化多角化が進むとともに、積極的な事業展 開の特徴が強まっている。
A型、B型、C型及びD型では、新規需要米、大豆、麦の比率が高まってい る。経営所得安定対策において、手厚い交付金のある作物を増加させて経営安 定を図っている。E型やF型においても大豆の取り組みが見られるが、施設野 菜等の高収益作物の導入や6次化に取り組んでいる。
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表 3-3 新規就農者を雇用している集落営農法人
3-4-2 土地所有と労働・役員業務への収益配分から見た6類型の特徴
表3-4に6類型の経営的特徴(地代と収益配分)を示している。圃場管理料 に注目すると、E型のNo.11、12 法人及びF型のNo.14 法人以外は、管理作 業を組合員(地主)に再委託していない。新規就農者を雇用している地域ぐる み型の集落営農法人は、管理作業も行えない構成員が多いといえる。
類型ごとの地代の平均値は、A、B、C型(8,000円)、D型(18,000円)、 E型(12,000円)、F型(8,000 円)で、地域ぐるみ型法人は、Ⅾ型<E型<F 型の順に安くなっており、F型は、A,B,C型と同程度の水準となっている。
また、構成員還元額に占める地代の割合は、D型(29.8%)、E型(17.6%、
F型(6.4%)で、D<E<Fの順に低くなっている。このことは、D<E<F の順に地代を重視する経営から労働評価型の経営の特徴が強まっていることを 示している。
労働 の組 織化 の態 様
雇用の 理由
複合化多 角化の程 度
水稲
(主食 用ほ か)
新規需
要米 大豆 麦 飼料 作物
露地 野菜
施設野 菜(㎡)
農作業 受託
(ha) 米 直 売
6 次 化
その他 都 市 的 地 域
中 間
山 間
1 A 4 1 5 23.8 6.0 4.4 10.8 36.7 ◎ ◎
② A 3 2 4 44.5 38.8 3.7 5.3 ◎ ◎
③ B 3 3 6 53.0 42.7 8.9 1.4 3.0 ◎ エコ ◎
4 B 3 4 3 65.0 34.5 9.5 9.0 5.4 1.0 23.0 ◎ ◎
6次化 ⑤ C 3 6 8 70.4 24.4 32.9 5.4 52.5 ◎ ◎
米粉製造 販売、モ チ加工
◎
6 D 8 2 14 37.5 5.0 20.0 11.0 35.0 1.1 ◎
7 D 6 1 91 65.0 30.6 9.9 46.2 4.0 ◎
⑧ D 7 1 158 106.2 56.6 37.2 10.3 50.2 3.4 野菜量販
店販売 ◎
9 E 2 3 47 22.9 19.2 3.2 3.2 0.1 550 4.4 ◎
杜氏、森 林組合作 業受託
◎
10 E 5 2 25 35.8 20.6 9.8 5.5 4.5 6,000 ◎ エコ ◎
11 E 8 2 31 20.0 10.0 7.0 2.5 3,000 ◎
12 E 4 1 22 26.0 20.0 6.0 1.7 4.5 0.6 畜産 ◎
⑬ F 9 5 118 30.9 16.0 6.5 4.5 2.0 8,040 ◎ ◎
専門店販 売、イチゴ ケーキ製 造販売
◎
14 F 4 2 76 21.5 4.5 4.0 5.6 9.6 0.8 810 ◎ ◎畜産、直
売所運営 ◎ 主な作物等(ha) 複合化多角化等 農業地域 No.
法人 の類 型
法人設 立から 新規就 農者雇 用まで の年数
雇用 人数
構成 人数
経営 面積
施設野菜 導入
6次化 類型化の視点
少数 担い 手型
地域 ぐる み型
事業積 極的拡 大
農業・
農地維 持
地域活 性化
(事業 積極拡 大)
普通作物 拡大 露地野菜
導入
露地野菜 導入
出所:山口県集落営農法人経営分析システム、山口県農業振興課資料、聞き取り調査による 注:1)地域ぐるみ型については、地域ぐるみ型法人となることを決定し地域ぐるみ型法人を目指し
て現在活動中の法人及び地域ぐるみ型法人が近隣集落の農地を集積している法人も含めている