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1.学校施設の復旧

(1)学校施設の被害状況

4月14日および16日に発生した2度の大 きな地震のため、熊本市立全148 校(小学校 95校、中学校42 校、高等学校2 校、幼稚園8 園、専修学校1校)が被災した。発災後、市 立小・中・高等学校139校を避難所として開 設し、体育館や教室等を開放した。本市では 最大約11 万人が避難し、そのうち約6万人が 学校施設へ避難するなど、地域において学校 が災害時の拠点として重要な役割を担った。

①体育館の緊急点検の実施

教育委員会では、学校施設の被害状況につ いて各学校から速報で収集していたが、詳細 な状況まで把握することができなかったため、

施設課の職員が分担して現地に出向き、建物 の構造的被害を中心に調査を行った。特に体 育館は避難所として開設されていたことから、

避難者の安全を確保し二次災害の防止を図る

ため、4月15日から4月17日にかけて、鉄 骨造の体育館65 校について緊急点検(応急危 険度判定)を実施した。その結果、小・中学 校24 校(小学校16 校、中学校8 校)の体育 館について、ブレース破断、内壁の落下等の 被害があり、今後震度6クラスの地震の発生 で倒壊のおそれがあるため使用禁止とした。

図表7-9-1 体育館のブレース破断の様子

図表7-9-2 緊急点検の結果、使用禁止となった小・中学校の体育館

完 成 年 度

応 急 危 険 度

状     況

S 5 2 ブ レ ー ス 、 プ レ ー ト 変 形 あ り

S 5 6 外 壁 の ひ び が 多 く 、 近 づ か な い ほ う が よ い

S 4 7 ブ レ ー ス の 損 傷

S 4 4 天 井 の 水 平 ブ レ ー ス が ほ と ん ど 外 れ て い る

S 4 8 壁 面 ブ レ ー ス 変 形 と 緩 み が 著 し い

西 S 4 7 ブ レ ー ス の 破 断 と 緩 み 箇 所 が あ る

S 4 9 体 育 館 壁 面 ブ レ ー ス 6 か 所 緩 み が 著 し い

S 4 7 渡 り 廊 下 、 ブ レ ー ス ボ ル ト は ず れ 、 外 部 の ブ レ ー ス に 緩 み が あ る

西 S 4 6 ボ ル ト の は ず れ 、 ブ レ ー ス の 緩 み が あ る

S 5 1 ブ レ ー ス 4 か 所 の 緩 み が 著 し い

S 5 3 ブ レ ー ス 破 断 が 2 か 所 、 壁 面 ブ レ ー ス の 緩 み が 3 か 所 あ る

S 5 9 ブ レ ー ス 破 断 が あ る

S 5 5 東 面 ブ レ ー ス 4 か 所 す べ て 緩 み が あ る

S 5 6 一 部 ブ レ ー ス が 伸 び き っ て い る

S 5 4 ブ レ ー ス 1 2 か 所 が 伸 び き っ て 機 能 し て い な い

S 5 5 ブ レ ー ス が ガ セ ッ ト か ら 破 断 、 ブ レ ー ス が 塑 性 変 形

S 4 3 ブ レ ー ス 4 0 % に 緩 み が あ る

S 4 0 ブ レ ー ス 破 断 が あ る

西 S 4 0 柱 脚 ボ ル ト 破 断 箇 所 、 破 断 し た ボ ル ト の 落 下 物 が あ る

S 4 6 柱 、 基 礎 の ク ラ ッ ク 、 外 部 ブ レ ー ス の 緩 み 、 屋 内 ブ レ ー ス 塑 性 変 形

S 4 3 ブ レ ー ス が 破 断 し て い る

S 4 9 体 育 館 内 壁 、 外 壁 仕 上 材 の 落 下

S 5 0 水 平 ブ レ ー ス の 緩 み 2 か 所 、 壁 面 ブ レ ー ス の 約 半 分 で 著 し い 緩 み が あ る

S 5 7 ブ レ ー ス の 変 形 が あ る

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②校舎等の応急危険度判定調査の実施 4月19日から4月23日にかけては、北九 州市および福岡市の応援職員の協力のもと、

市立幼稚園、小学校、中学校、高等学校、専 修学校、共同調理場(15共同調理場)の163 施設1,267 棟を対象とした校舎等の応急危険 度判定を実施し、施設利用の可否を調査した。

判定区分は、「危険」、「要注意」、「調査済」の 3段階とし、以下の結果となった。

(ア)学校・幼稚園

【危険:134 棟】

構造に危険性があるもの 6棟(使用中止)

・京陵中学校校舎1 棟

・京陵中学校渡り廊下

・竜南中学校校舎(トイレ)1 棟

・必由館高等学校体育館1 棟

・必由館高等学校旧米田家

・富合中学校武道場1 棟 落 下 物 の 除 去 等 、 今 後 の 対応が必要なもの

128 棟

落下物の除去や一部通行止め、一部教室等の 使用禁止(学校施設は一部を除き利用可能)。 以下の施設については、個別の理由により当 面使用禁止

・東野中学校校舎6 棟

(詳細調査を要するため)

・必由館高等学校校舎1棟

(内壁落下により危険なため)

【要注意:354棟】

一部通行止めを行いながら学校施設を利用 することは可能であるが、松尾北小学校1 棟 については、建物に問題はないものの、擁壁 崩壊の危険性があるため使用禁止となった。

【調査済:779棟】

これに該当する校舎等は利用可能だが、龍 田西小学校については、建物に問題はないも

のの、擁壁崩壊の危険性のため使用禁止とな った。

(イ)共同調理場

【危険:2共同調理場】

・藤園共同調理場

・出水南共同調理場

【要注意:3 共同調理場】

・日吉共同調理場

・託麻共同調理場

・東共同調理場

以上の結果のとおり、利用制限が必要な建 物も生じたが、多数の施設が修繕や仮復旧で 利用制限を解除できる見込みとなった。

(2)学校施設の応急対応

学 校 施 設 の 避 難 所 と し て の 支 障 の な い 利 用 、 さ ら に は 早 期 の 学 校 再 開 の 実 現 の た め 、 危 険 箇 所 の 除 去 と ラ イ フ ラ イ ン の 復 旧 に 優 先して取り組んだ。それにあたっては、地域 の工務店、外壁改修を行う工事業の組合、照 明取替、水道・ガス等の業者へ緊急での対応 を依頼した。

余震が継続していたため、不具合箇所が新 た に 見 つ か る こ と も あ る な ど 困 難 も あ っ た が、5月10 日には、応急対応により全ての学 校が再開した。

(3)学校施設の復旧

発災直後の時期においては、応急危険度判 定を実施し、余震等に対する安全性の調査お よび学校再開に向けた応急対応に取り組んで きたが、その後は以下のとおり、本格的な復 旧に向けた取組に着手した。

①被災度区分判定

被災度区分判定とは、地震により被災した 建築物を対象に、建築構造技術者がその建築 物の内部に立ち入り、建物の沈下、傾斜およ び構造躯体等の損傷状況を調査することによ

第7章生活再建支援

り、その被災の程度を区分するとともに、地 震動の強さなどを考慮し、復旧の要否とその 程度を判断するものである。

5 月 17 日付けの熊本県教育庁の事務連絡に より、学校施設においては、文部科学省より 委託された日本建築学会が被災度区分判定を 行うことが通知された。これを受けて、本市 では、事前に行った応急危険度判定の結果や 職員による現地調査をもとに、主に構造上の 被害が大きい建築物の中から対象施設を選定 し、5 月初旬に文部科学省へ調査依頼を行っ た。

日本建築学会による現地調査は5月末日か ら6月初旬に実施され、その後、文部科学省 から調査結果が送付された。

調査結果は、図表7-9-3のとおりである。

図表7-9-3 被災度区分判定結果

【校舎・渡り廊下】

調査件数

学校数 33 棟数 89 調査結果

改築(建替) 5校・19 棟 補修 30校・70 棟

※2 校は、改築・補修の両方あり

【体育館・武道場】

調査件数

学校数 31 棟数 31 調査結果

改築(建替) 4校・4 棟 補修 27校・27 棟

②公立学校施設災害復旧事業

(ア)補助制度の概要

学校施設の災害復旧に当たっては、公立学 校施設災害復旧費国庫負担法に基づく国庫補 助を活用した。通常、補助率は3 分の2 であ るが、熊本地震が激甚災害として指定された ため、補助率が77.8%へ引き上げられた。

(イ)事務手続の流れ

発災後、5 月6日に災害速報を、5 月11 日 に災害報告書を文部科学省に提出した。

その後、事前着工届の提出を経て、6月15 日に事業計画書(被害配置図・撮影位置図・

写真・復旧図・工事積算内訳書)を提出した。

書類審査を経て、7 月25日(第1 次)から翌 年1月27日(第13 次)まで文部科学省によ る現地調査が実施された。その後、事業計画 書の修正・提出を経て事業が内定し、補助金 交付申請を行った。

文部科学省の査定結果については、以下の 図表のとおりである。最終的に、学校施設に 対して、約63億4 千万円の補助が決定してい る。

図表7-9-4 公立学校施設災害査定結果

学校数 申請額 査定後 査定額 査定率

第1次 1 校 H 2 8 . 7 . 2 5 H 2 8 . 7 . 2 5 1 1 , 7 3 3 1 1 , 4 1 1 ▲ 3 2 2 9 7 . 2 6 %

第2次 5 校 H 2 8 . 8 . 3 0 H 2 8 . 9 . 1 3 , 7 5 0 3 , 7 5 0 0 1 0 0 . 0 0 %

第3次 4 校 H 2 8 . 9 . 8 H 2 8 . 9 . 8 4 , 9 6 6 4 , 9 6 6 0 1 0 0 . 0 0 %

第4次 8 校 H 2 8 . 9 . 1 3 H 2 8 . 9 . 1 5 3 0 , 7 7 3 3 0 , 7 7 3 0 1 0 0 . 0 0 %

第5次 1 7 校 H 2 8 . 9 . 2 6 H 2 8 . 9 . 3 0 8 2 , 2 9 9 8 0 , 2 0 8 ▲ 2 , 0 9 1 9 7 . 4 6 %

第6次 1 9 校 H 2 8 . 1 0 . 3 H 2 8 . 1 0 . 7 1 7 4 , 1 1 0 1 7 4 , 0 7 8 ▲ 3 2 9 9 . 9 8 %

第7次 1 3 校 H 2 8 . 1 0 . 2 5 H 2 8 . 1 0 . 2 8 9 2 9 , 3 9 2 9 2 9 , 3 1 8 ▲ 7 4 9 9 . 9 9 %

第8次 7 校 H 2 8 . 1 1 . 8 H 2 8 . 1 1 . 1 1 6 3 9 , 6 6 4 6 2 5 , 9 1 2 ▲ 1 3 , 7 5 2 9 7 . 8 5 %

第9次 1 0 校 H 2 8 . 1 1 . 1 6 H 2 8 . 1 1 . 1 8 1 4 8 , 9 8 3 1 4 7 , 0 4 8 ▲ 1 , 9 3 5 9 8 . 7 0 %

第10次 1 7 校 H 2 8 . 1 1 . 2 8 H 2 8 . 1 2 . 2 8 0 5 , 7 1 0 8 0 5 , 7 0 0 ▲ 1 0 1 0 0 . 0 0 %

第11次 1 0 校 H 2 8 . 1 2 . 6 H 2 8 . 1 2 . 9 7 6 1 , 7 2 1 7 6 1 , 7 2 1 0 1 0 0 . 0 0 %

第12次 6 校 H 2 8 . 1 2 . 1 2 H 2 8 . 1 2 . 1 6 1 , 1 2 7 , 3 2 6 1 , 1 2 6 , 3 7 9 ▲ 9 4 7 9 9 . 9 2 %

第13次 6 校 H 2 9 . 1 . 2 3 H 2 9 . 1 . 2 7 1 , 6 4 9 , 2 9 1 1 , 6 3 8 , 7 9 2 ▲ 1 0 , 4 9 9 9 9 . 3 6 %

合計 1 2 3 校 6 , 3 6 9 , 7 1 8 6 , 3 4 0 , 0 5 6 ▲ 2 9 , 6 6 2 9 9 . 5 3 %

※1 学校数には2回査定を受けた学校および日吉共同調理場を含む

※2 平成28年6月21日梅雨前線豪雨によるものも第8次に含む 査定期間

(単位:千円)

(4)施設の耐震化と設備の充実

構造部材の耐震化については、発災前には 一部を除いて完了しており、2 度の大きな地 震とそれに続く多数の余震が発生したが、倒 壊や座屈に至る建物はなかった。一方、体育 館や武道場においても大空間の場所で天井が 落下することはなかったが、非構造部材とし ては、照明器具や壁面のモルタル、ステージ 天井等の落下が発生し、今後、更なる改修の

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検討を行っていく。

また、指定避難所となった体育館のトイレ の洋式化や多目的トイレの充実など、避難時 に多数の市民の利用を想定した設備の充実や 一層のバリアフリー化を進めていく必要があ る。

2.学校の再開

(1)児童生徒の安否確認

4 月 14 日 21 時 26 分に前震が発生したこと を受け、教育委員会では、翌15 日午前に各学 校にFAXおよび電子メールで児童生徒の安 否確認を依頼した。これと並行して各学校に おいても、電話や家庭訪問で安否確認を実施 した。各学校の安否確認状況は、健康教育課 で集計し、同日中に教育政策課へ報告した。

各学校における安否確認においては、児童 生徒と連絡がつきにくく、4月15日18時時 点(集計第1 報)で、1,234人の児童生徒と 連絡がとれていなかった。4月20 日18 時30 分(集計第3報)の時点でも468 人と連絡が ついておらず、母親の母国に帰国していたな どの特別の事情を有するケースを除くすべて の児童生徒の状況把握が完了したのは、4 月 22日(集計第9 報)のことであった。

児童生徒の安否状況については、4月22 日 17 時50分時点の最終集計によると、足の骨 折等の重傷が8 人(小学校6 人、中学校1 人、

市立高等学校1 人)に上り、軽傷は67 人(小 学校29 人、中学校36 人、市立高等学校2 人)

であった。

(2)休校措置および学校再開の状況 4 月14 日の前震の発生を受けて、当日中に 市立学校・幼稚園全校について、翌15日の休 校を決定した。15 日には、前述のとおり各学 校において児童生徒の安否確認を実施した。

4 月 16 日土曜日に本震が発生したことを受 け、同日には4月18 日月曜日から4月20 日 水 曜 日 の 全 校 休 校 を 決 定 し た 。 あ わ せ て 、 4 月19 日実施予定の全国学力・学習状況調査の 延期も決定した。本震後は、教職員に対し、

避難所担当職員の補助として各校に1名配置 することを指示した。

4 月18 日には、学校が指定避難所となるこ とから休校期間を 4 月 22 日金曜日まで延長す ることを決定した。また同日には、多くの避 難者に対応する必要から、施設管理と避難所 運営にあたる学校の教職員数を1 名から2 名 へ変更した。

学校施設における避難所開設が長期化する 中、学校再開へ向けた道筋をつける必要があ り、4 月 20 日に校長・園長代表者会を開催し、

学校再開に係る協議を行った。翌21日に、前 日の協議結果を踏まえ、市立学校の休校を当 面継続することとし、5 月10 日火曜日を目途 に再開することを決定した。ただし、学校施 設や避難所の状況などを考慮し、再開の条件 が整った場合は、学校ごとに対応し、5月10 日より前に再開することも可能とした。その 場合は、再開日の3 日前までに学校から保護 者へ通知することとした。

この決定を受けて、4 月22 日金曜日より学 校再開に関する学校ごとの協議が開始されて いる。

4 月25 日に、発災後初めて田底小学校およ び熊本市立総合ビジネス専門学校の2校が再 開し、その後、準備が整った学校から順次再 開していき、5月10 日には全ての市立学校が 再開することができた。

第7章生活再建支援

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