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第2章 教育の情報化の推進等

第1節 教育機関における著作物利用の円滑化

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ようなICT活用教育の意義を踏まえ,政府においては,「教育の情報化加速化プラン~

ICTを活用した『次世代の学校・地域』の創生~」(平成28年7月文部科学大臣決定)

が策定され,教育政策の分野において関連する制度改正の検討・実施や様々な振興方策が 講じられている。

高等教育段階においても,大学関係者から,ICT活用教育によって,①時間・場所を 選ばずに学習ができることにより学修時間の確保につながること,②学修状況や学修行動 を正確に把握することによるデータに基づく適切な指導・改善が行えること,③学修の記 録や成績に基づき個人に合わせた教材の選択等が可能となることにより教育の質が高まる こと,④反転授業の活用などによって主体的な学びを促すことができることといった利点 が挙げられている111

さらに,近年高等教育機関を中心として広がりつつある大規模オンライン公開講座(M OOC112)は,インターネットを通じて世界中どこからでも誰でも無料で利用できる講義 形態であり,講義映像,授業課題やオンライン掲示板等で学習活動を行い,修了基準を満 たすと修了証を取得できる。組織の枠を超えたグローバルな教育機会が提供されることに より世界中の人々が高等教育を受ける機会が拡大され,大学にとっては世界中から優秀な 学生を集めることができるなどの意義があると言われており,政府計画においても,アク ティブ・ラーニングの推進など,多様な教育の提供や学習環境の向上を図るため,その戦 略的な活用を進めるべきことが提言されている113

(2)教育におけるICTの活用状況

平成26年度に文化庁が委託により実施した「ICT活用教育など情報化に対応した著 作物等の利用に関する調査研究」(平成27年3月 株式会社電通。以下,この章におい て「調査研究」という。)114では,高等教育機関での学生向け授業科目において,教員等 による講義映像や教材等のインターネット送信,学生による発表資料等のインターネット 送信など,ICTの活用が既に相当規模で実施されており,今後更なる拡大が予想される とされている115。なお,講義映像等の送信方式については,リアルタイム配信のみならず

111 平成27年度法制・基本問題小委員会(第2回)資料4

112 MOOC(Massive Open Online Course)とは,大規模で開かれたオンライン授業という意味であり,有名大学等 の授業等をインターネット上で受講できるものである。MOOCの代表的なプラットフォームとしては,スタンフォ ード大学が中心となって創立されたコーセラ(Coursera)や,MIT(マサチューセッツ工科大学)とハーバード大 学が中心になって創立された非営利のエデックス(edX)がある。(調査研究)

113 「これからの時代に求められる資質・能力と,それを培う教育,教師の在り方について(第七次提言)」(平成2 7年5月14日 教育再生実行会議)

114 http://www.bunka.go.jp/tokei_hakusho_shuppan/tokeichosa/chosakuken/pdf/h27_ict_katsuyo_hokokusho.pdf

115 調査研究において実施したアンケート調査(国内高等教育機関のうち461学部・学科から回答)によれば,教員 等による講義映像等のインターネット送信を行っている学部・学科が14.1%,今後行う予定の学部・学科が26.

9%。また,教員等による教材等のインターネット送信を行っている学部・学科は43.4%,今後行う予定の学 部・学科が18.7%。学生による発表資料等のインターネット送信を行っている学部・学科が27.1%,今後行 う予定の学部・学科が21.9%であった。

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録画・録音したものの配信(オンデマンド配信)も多く,対面講義の様子の配信だけでな く対カメラ・マイク講義の配信も実施されている116

このほか,複数の教員や教育機関において教材を共有する取組も行われている。具体的 には,大学eラーニング協議会の報告によれば,文部科学省の支援する「大学間連携共同 教育推進事業」の一環として,語学,数学,情報等の授業科目のeラーニング教材を複数 の大学(8大学)で分担して作成し,それらを当該複数大学で共有して活用するという取 組が行われている117。また,公益社団法人私立大学情報教育協会の報告によれば,同協会 の「電子著作物相互利用事業」では,教育水準の向上を目的として,大学等の教員間で,

講義スライド,講義ノート,実験・実習の映像等の授業用コンテンツ等をWeb上のシス テムを通じて2,000人弱の教職員が閲覧や相互利用を行っている118

MOOCについては,既に一部の大学においては積極的に実施されており,今後実施を 予定している大学も多い119

初等中等教育機関においても,ICT活用教育に関する取組が進んでいる。教育委員会 を対象としたアンケート調査120によると,「児童生徒がICT端末を使って調べ学習を行 う」を「ほぼ全校で実践している」と回答した教育委員会は約67%であり,「教員が電 子黒板等の大型提示装置で映像や教材を表示する」を「ほぼ全校で実践している」と回答 した教育委員会は約60%であった。また,佐賀県教育委員会においては,県内の高等学 校を対象にした「ICT教育支援システム(SEI-Net)」が構築されており,教員 が作成した教材等を県のクラウドサーバにアップロードして県内の学校間で共有すること が可能となっている。共有された教材等は,県内の教員や生徒であれば誰でもダウンロー ドして利用することができる。他の自治体においても,全国的に校内LANの整備や児童

116 調査研究において実施したアンケート調査によれば,講義映像等のインターネット送信を実施している学部・学科 のうち,リアルタイム配信を行っている学部・学科は40.5%であるのに対し,録画・録音配信(オンデマンド配 信)による配信を行っている学部・学科が83.8%であった。また,対面講義の配信を行っている学部・学科は7 7.0%,対カメラ・マイク講義の配信を行っている学部・学科は40.5%であった。

117 平成27年度法制・基本問題小委員会(第2回)資料4

118 同協会の発表によれば,平成27年3月時点で利用登録者1,874名,登録コンテンツ数は2,907件である とされている(平成27年度法制・基本問題小委員会(第2回)資料5)。

119 平成27年3月時点では,MOOCコンテンツを提供している大学が19大学,将来的にMOOCコンテンツの提 供を予定している大学が54大学あった。(平成26年度先導的大学改革推進委託事業「MOOC等を活用した教育 改善に関する調査研究」(平成27年3月,大学ICT推進協議会))

また国内においても,平成25年に日本版MOOCの普及・拡大を目指し,大学や企業の連合による組織として,

一般社団法人日本オープンオンライン教育推進協議会(以下「JMOOC」という。)が設立された。JMOOC は,gaccoやOpenLearning,Japan,OUJ MOOCの公認プラットフォームを通じて会員大学・企業から提供を受けた講義を 配信しているMOOCと呼ばれるMOOCプラットフォームとJMOOC等の言語圏ごとの地域MOOCと呼ばれる プラットフォームが展開されている。(調査研究)

120 「教育の情報化に関する取組・意向等の実態調査(速報値)」(平成28年3月25日 株式会社富士通)(20 20年代に向けた教育の情報化に関する懇談会(第3回)資料3)参照。同調査では,学校現場における教育の情報 化の取組実態と意向等を把握するため,全国の教育委員会宛にアンケート調査を実施。調査対象は47の都道府県,

20の政令指定都市,1,718の市町村教育委員会であり,有効回答数合計は739件。

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生徒用のタブレット・PC,電子黒板の整備など,ICT活用教育を実施するための環境 整備が整えられているところであり121,今後も環境整備を進めることとされている122

高等学校や大学では,法制度面でも,教育におけるICTの活用を念頭においた制度設 計がなされている。平成27年4月の学校教育法施行規則改正により,高等学校等におい て,同時双方向型であることなど一定の要件を満たす場合には遠隔教育を行うことが可能 となっている123。また,大学については,全ての単位をインターネット等による授業によ り習得することが可能な通信制大学124のみならず,通学制の大学125でもインターネット等 による授業によって単位の習得が認められている。

(3)第三者の著作物の利用状況

(1)(2)で述べてきたとおり,現在,教育現場においてICT活用教育を推進して いくことが期待されており,実際,各教育機関においてもその取組が進められている。し かし,ICT活用教育の実施の過程では上述のとおりオンデマンド型の公衆送信をはじめ 現行法第35条第2項の対象とはなっていない方法による著作物の公衆送信を伴う場合も 多い。このような場合は,原則として著作権者の許諾が必要となるが,権利処理上の課題 等から円滑に著作物の利用が行えていない実態が明らかとなっている。

まず,調査研究において,高等教育機関の全体的な状況について以下の報告がなされて いる。

・高等教育機関においてICT活用教育に取り組んでいる学部・学科のうち,本人が著 作権者である著作物のみを利用していると回答したのは約27%であり,他人の著作 物を利用している旨を回答したのは約46%である。

・そのうち約37%は,多くが教員本人に著作権が帰属する著作物を利用している旨を 回答している。

121 「平成27年度 学校における教育の情報化の実態等に関する調査」(平成28年10月 文部科学省)によれば,

普通教室の校内LANは全国公立初等中等教育機関うち87.7%で整備されている。また,教育用コンピュータは 児童生徒6.2人に1台が整備されている。教育用コンピュータのうちタブレット型コンピュータは全国で253,

755台,電子黒板は全国で102,156台整備されている。

122 「日本再興戦略2016-第4次産業革命に向けて-」において,「無線LANの普通教室への整備を2020年 度までに100%を目指す」とされている。

123 これにより高等学校等の全課程の修了要件として修得すべき単位数である74単位のうち,36単位までの授業を 遠隔教育により行うことができ,各教科・科目等の専門知識を有する教員を十分に確保できない離島や過疎地などに おいても教育機会の確保を図ることが可能となっている。

124 大学通信教育設置基準(昭和56年文部省令第33号)第3条第1項,第6条第2項。例えば早稲田大学では,平 成15年度より,人間科学部通信教育課程(eスクール)が開設されており,全ての授業をオンデマンド授業にて実 施している。

125 卒業に必要な単位数124単位のうち60単位を上限として認められる。大学設置基準(昭和31年文部省令第2 8号)第25条第2項,第32条第5項。