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教師の職務意識に関する調査研究 一結果と考察一

ドキュメント内 教師の職業ストレスに関する研究 (ページ 46-53)

(1)動機づけの高い職務及び,動機づけの曖昧な(低い)職務の因子構造

 すでに見てきたように動機づけの平均化された全体の傾向で判断した場合,特に 動機づけの低い職務は教師個々人にとっての評価が分かれやすく動機づけの低さが あまり示されなかった。そのため,動機づけが一般的に低いとまではいえない職務 が多いため「動機づけが低い」職務項目群との表現が適当ではないと判断し,今後 は「動機づけの曖昧な」職務項目群と呼ぶこととした。

 先に示したように,まず動機づけの曖昧な職務項目群については少なくとも動機 づけが一般的に高くないことと,動機づけの高い職務項目群については少なくとも 動機づけが低くないことが条件となる。そのため,一定の基準を設けそれを超える 項目を分析の対象とすることとした。動機づけの曖昧な職務項目群については基本 的に正規分布している全回答得点について,回答得点の中央値(3。31点)を基準に 動機づけのある程度の低さが肯定された17項目をとりあげ因子分析(主因子法,

バリマックス回転)を行うこととした。項目はいずれかの因子に因子負荷量0.4以 上の値を持つことを条件とした上で分析を行なった。なお,明確な構造を明らかに するために,複数の因子に因子負荷量0.4以上の値を持つ場合は,その項目を削除 して再度因子分析を行った。結果として23項目で5因子解が適当とされた。その 結果を示したものが表2−3。である。なお,α信頼係数を算出したところいずれ

も因子も一応の内的整合性が認められた。

 因子1は「4)地域で生徒が起こしたトラブル(万引きや恐喝)への対応」「30)

教委・PTAからくる現場とかけ離れた要請への対応」「37)親ができないような躾

に学校が対応すること」といった6項目から構成されていた。こういつた項目は学 校外での問題への対応に関する職務領域であると理解できる。よってく学校外への 対応〉と命名された。

 因子Hは「12)部活動の顧問になるなどの職務負担」「13)土日などの勤務時間 外の部活指導」「16)専門外の部活動の担当」といった4項目から構成されている。

これらは部活動に関する項目であるためく部活動〉と命名された。

 因子皿は「38)学校が忙しいときに参加させられる研修」「39)行政研修への参 加」「40)あまり必要性を感じない研修への参加」の3項目から構成されている。

そのため,〈研修〉と命名された。

 因子IVは「2)教師が親へ要請する校外の生活指導」「5)勤務時問外の地区懇談 会やPTAへの参加」「14)土曜目・お祭りの際行なう地域巡回」といった4項目か

ら構成されている。これらは学校外で行なわれる生徒指導に関する項目であると理 解できる。よってく学校外生徒指導〉と命名された。

 因子Vは「20)遅刻防止や無断外出防止に校門で指導を行うこと」「22)集団場 面で勝手な主張をする保護者への対応」「25)親との関係の調整がうまく行ってな い上での不登校生徒の家庭訪問」の3項目で構成されている。これらは,保護者と の困難な関係が中心となる因子と理解された。そのため,〈保護者との困難な関係

〉と命名された。

 以上のような5つの職務領域は動機づけの曖昧な職務の5つの領域であるといえ よう。ここでの5つの因子に集約される職務領域は全体の平均化された得点では差 が見られにくいものの,個人の認識によって動機づけの高低が大きく異なる動機づ けの曖昧な職務領域であるといえる。

表2−3.動機づけの曖昧な職務の因子構造

因子1〈学校外への対応〉 共通性

37)親ができないような躾けに学校が対応すること 0.69 0.15 0.24 0.15 0.14 0.60

28)本来は家庭で行うべき生徒の私生活の指導 0.63 0.18 0.14 0.27 0.16 0.54

29)苦情だけ学校に行って来る地域への対応 0.60 0.06 0.10 0.21 0.37 0.56

30)教委・PTAから来る現場とかけ離れた要請への対応 0.59 0.14 0.24 0.16 0.22 0.50

32)直接学校と関係のない事での地域への義理立て 0.46 0.24 0.27 0」3 0」1 0.37

4)地域で生徒が起こしたトラブル(万引き・恐喝)への対応 0.49 0.23 0.07 0.43 0.08 0.49

因子1〈部活動〉

16)専門外の部活動担当 0.13 0.76 0.12 0.08 0.29 0.68

12)部活動へ顧問になるなどの職務負担 0.14 0.75 0」2 0.19 0.10 0.65

招)土日などの勤務時間外の部活指導 0.27 0.70 0.11 0.21 0.01 0.63

15)宿泊を伴う部活遠征などの引率 0.07 0.61 0.14 0」8 0.16 0.46

因子皿く宇多〉

40)あまり必要性を感じない研修への参加 0.22 0」5 0.78 0.01 0.01 0.68

39)行政研修への参加 0.01 α01 0.75 0.01 0」0 0.64 38)学校が忙しい時に参加させられる研修 0』9 0.11 0.63 0.17 0.01 0.46

因子四く学田外生そ日導〉

6)長期休日の生活日導 0.30 0.16 0.13 0.74 0.12 0.66

14)土曜市・お祭り等の際に行う地域巡回 0.33 0.31 0.20 0.47 0.22 0.52

5)勤務時間外の地区懇談会や・PTAへの参加 0.00 0.01 0.14 0.44 0.24 0.28

4)地域で生徒が起こしたトラブル(万引き・恐喝)への対応 0.49 0.23 0.01 0.43 0.01 0.49

2)教師が親へ要請する校外の生活指導 0.27 0」8 0.00 0.43 0.01 0.29

因子V〈呆護 との困難な関係〉

22)集団場面で勝手な主張をする親への対応 0」9 0.14 0.01 0」7 0.70 0.57

20)遅刻防止や無断外出防止に校門で指導を行うこと 0.17 0.17 0.22 0.14 0.48 0.36

25)不登校生徒の家庭訪問(親の理解がない場合) 0.16 0.18 0.01 0.01 0.42 0.25

回転後の寄与率 13.20 12.43 9.80 8.36 7」0

墨型{の累積寄与率 13.20 25.62 35.42 43.78 50.88

 次に,動機づけの高い職務項目群の因子構造を検討する。因子分析(主因子法,

バリマックス回転)を行う。先の動機づけの曖昧な職務項目群の因子分析同様,回 答得点中央値2.32点を規準に動機づけの高さを否定していると考えられる下位3 項目を除外して因子分析を行うこととした。表2−2.に見られるようにここでは 動機づけの高い職務でSD値が低く,動機づけが相対的に低くなるに従ってSD値 が上昇する傾向が見られるものの,動機づけの低い職務項目群ほどその傾向は顕著 ではない。ここでも先と同様,項目はいずれか1っの因子に0.4以上の因子負荷量 を持つことを条件とした。そのため,16項目で2因子解が適当とされた。なお,α 信頼係数を求めたところ2因子とも充分な内的整合性が認められた。結果を表2一

4.に示す。

 因子1については「13)生徒の進路を保障する努力をすること」「17)日常での 生徒個々人とのコミュニケーション」「14)生徒会運営などを通して生徒が主体的 に学校に関わっていく雰囲気づくり」といった学校内の活動について重点を置いた 職務の動機づけが志向される要因であるといえる。よって,因子1はく学校活動〉

因子と命名された。

表2−4.動機づけの高い職務の因子構造

因子1〈学校活動〉 共通性

20)目立たない・問題を起こさない生徒とのコミュニケーション 0.77 0.11 0.60

1)進路や学習に関する面談 0.64 0.13 0.42

14)生徒会運営などを通して生徒が主体的に学校に関わっていく雰囲気作り 0.62 0.33 0.50

18)定期的に機会を設けて生徒とコミュニケーションを図ること 0.61 0.26 0.44

19)自らのコミュニケーション能力や技術を育成すること 0.60 0.2肇 0.40

13)生徒の進路を保障すること 0.60 0.35 0.48

2)生徒への学習以外の悩みなどの面談 0.59 0.28 0.43

24)生徒が無気力にならないよう積極性を育てる機会を作ること 0.51 0.37 0.40 23)様々な学習水準に対応しうる研修参加や能力の向上 0.51 0.26 0.32

17)日常での生徒個人個人とのコミュニケーション 0.50 ω2 0.26

因子H〈子父外指向〉

28)地・の  力・上や忌識作り 0.16 0.72 0.55

27)過保護にならないなど適切な家庭の教育力向上の支援・雰囲気作り 0.22 0.69 0.52

10)地域との密接な連携 0.27 0.67 0.52

26)生徒を支えるための保護者との話し合い・連携の強化 0.21 0.63 0.44

9)地域との密接な連絡 0.30 0.62 0.47

6)生徒の最低限度のマナーや社会性の保障 0.16 0.48 0.26

回転後の寄与率 24」8 19.47

回転後の累積寄与率 24」8 43.66

 因子IIは「9)地域との密接な連絡」「26)生徒を支えるため保護者との話し合 い,連携の強化」「生徒の最低限度のマナーや社会性の保障」といった項目から構成

されている。こういつた項目は,学校活動以前に生徒の生活水準や生徒個人の資質 を保障しようと考えた場合,学校外部との連絡・連携を志向する形態の教師の職務 意識であると理解できる。そのため,因子IIはく学校外指向〉因子と命名された。

 ここでの高い動機づけを示す2つの因子は 生徒を支える つまり「子どもとの パーソナルな関わり」(藤田ら,1996,55ページ)を行うため学校内の活動に重点

を置くか,学校外との関係性の調整に重点を置くかの領域の取り方の違いである。

(2)各因子の性差・年代差を基とした職務意識の比較

 ここでは教師個々人においても動機づけの強度が大きくことなる職務意識を詳し く検討するために,動機づけの曖昧な職務項目群各因子と動機づけの高い職務項目 群の各因子を性差・年代差を基とした2元配置の分散分析により得点の比較を行い,

属性ごとの職務意識の内実を比較検討することとした。結果を表2−5,に示す。

また,交互作用が見られたものについては単純主効果の検討および多重比較を行っ た上で図を示した。

表2−5.動機づけの曖昧な職務各因子の性差・年代差を基とした比較(2元配置の分散分析)

因子   2q代   鍍代   40飾   賦     F

男  女  男  女  男  女  男  女  年代  性差 交互作用 学校外への対応    2.24 2。08 2.27 2.02 2,23 1.83 t95 1.97

部活動        2.98 3.08 2.88 2.38 2.71 2.12 2.52 2.30 研修         2.37 2.75 2.14 2」6 2.46 2.19 2.41 2.47 学校外生徒指導    2.67 2.77 2.80 2.40 2.58 2.40 2.44 2.64 保護者との困難な関係  3.29 3.02 3.30 3.2灌 3.22 2.87 3.29 3.13

0.79   7.57**   tO1 4.80** 13.22*** 4.87**

2.73*    0.01    2.92*

1.21   4.78*    1.89 0.47   10.67**   tOO 注)有意確率は*p〈OD5,**=p<0.01,***:p<0.001

  因子1〈学校外への対応〉は性別(F(1,217)=7.57,p<0.01)について有意 な主効果が認められた。交互作用は認められなった。性別の主効果については女性 教師の方が男性教師よりも得点が低く,有意にく学校外への対応〉に動機づけが低 いことが明らかにされた。

 因子H〈部活動〉について,性別(F(1,229)=13.22,p<0.001),年代(F(3,229)

=4.80,p<0.01)について有意な主効果が認められた。また,交互作用(F(3,229)

=4.87,p<0.01)が有意であった。性別の主効果については女性教師のほうが男性 教師よりも得点が低く有意に動機づけが低いことが明らかにされた。年代の主効果

については20代以外の年代が20代より有意に得点が低いことが明らかにされた。

また,交互作用については単純主効果の検討及び多重比較の結果20代以外の女性 教師が20代の女性教師と比べ有意に得点が低いことが明らかにされた(図2−1.)。

つまり,〈部活動〉については30代以降の女性教師の動機づけの低さが顕著であ

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