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ストレス抑制要因に関する研究の概況

ドキュメント内 教師の職業ストレスに関する研究 (ページ 97-108)

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第1節  ストレス抑制要因に関する研究の概況

(1)本章の目的

 職業ストレスに関する先行研究の成果を参考に第三章までに教師のストレッサ ー・バーンアウト過程の検討を通して,それぞれの構成要因の実態や相互の関係性 の議論を行ってきた。これらに続く研究課題として本章は教師のストレス反応やス トレッサーを具体的に抑制する方法論となりうる要因の探索を行っていくこととす る。そこで本章はこういつたストレッサー・ストレス反応を抑制する方法論の議論 につながるような要因(以下「ストレス抑制要因」)を先行研究の中から探り,数量 的に測定し,効果の検討を行うことを目的とする。教師のストレス抑制要因やスト

レス介入に関する先行研究は数多く存在するが,ここでは第二・三章とのつながり の中で教師の能力や動機づけ,成長や発達に関する要因に注目した。

(2)ストレス抑制要因に関する先行研究

 教師のストレス抑制要因に関する議論についてはソーシャルサポート(例えば,

迫田・田中・淵上,2004:貝川,2004)やソーシャルスキル(例えば,河村,2001),

ストレスマネージメント(例えば,高元,2003),自律訓練法(例えば,宗定・松 岡,2002;中田・松岡、2002),アサーション(例えば,園田・中釜・沢崎,2002),

教師間のピアサポート(例えば,池本,2004)など多様な研究や実践活動か積み重 ねられてきた。それら数多くの抑制要因や実践的な技法のなかで本章ではコーピン グとソーシャルサポートを取り上げる。

コーピング :コーピングはストレス対処行動ともいわれストレッサーが認知され た後に思考・行動面で行われる個人の反応である。そのため,ストレッサー・ストレ ス反応過程の中では個人的要因として扱われる。この概念の提唱者であるLazarus は環境から与えられる個人の認知する脅威に対し行う個人の反応としての認知的,

行動的努力であるとしている(Lazarus&Folkman,1984)。一般的にコーピングは 問題自体に積極的に対応する積極的コーピングと,ストレッサーに耐えたり,自ら を落ち着かせるための消極的コーピング,ストレッサーとは別の場面で憂さを晴ら すといったあまり望ましくない行動から構成される逃避的コーピングの3つに分け

ることができる(例えば,佐藤・朝永,1991;Cooper, Cooper,&Eaker,1988;森 本,1997)。そのため適応を志向した積極的コーピングと,ストレッサー・ストレス 反応過程に交互作用的に関わるとされる消極的コーピングがそれぞれ注目されてき た。一方で,Cherniss(1980)がバーンアウトを本人を守るために生じる適応であり コーピングの一種と論じるように,逃避的コーピングはストレス反応自体と境界が 曖i昧であると指摘されている(田尾・久保,1996)。以下に,教師ストレス研究に おける先行研究をとりあげる。

 Travers&Cooper(1996)ではCooperら(1988)の指摘するコーピング行動として 容易に行えるものをとりあげている。そこでは,「問題の対処に優先順位をつける」

や,「一定期間の間は特定の問題に注目する」,「時間の管理計画をたてる」などから なり,こういつたコーピング行動を取る教師はストレス反応の水準が低いことを明

らかにしている。これにより,彼らはいわゆる認知行動療法のA型行動パターンの ケアプログラムなどの援用で教師のストレスに介入できると議論している。

 岡東・鈴木(1997)は教師のバーンアウトとコーピング尺度との関連の検討を行っ ている。その結果,積極的コーピングはバーンアウトと負の関係にあり,消極的コ ーピングは有意な関係が見られず,逃避的コーピングはバーンアウトと正の関係が 存在することを明らかにしている。同時に,教師が取る積極的・消極的コーピング は一人でできるものに偏る傾向を指摘し,他者との調整や援助を求める傾向などが 低いと指摘している。このことから教師には他の職業ストレスの介入で行なわれる

ようなコーピングのプログラムが適用しにくいことを論議している。

 若林(2000)は教師を対象としたコーピング行動の質問項目群を設定し,教師のコ ーピング行動の方略タイプの検討を行った。その結果,計画や情報収集といった積 極的タイプと,あきらめや責任転嫁といった消極的・回避的タイプに分かれること

を明らかにしている。

 一方,認知に特化したコーピングの中でストレス反応を規定するものに注目した ものとして田平ディネスがある。ハーディネスとは状況や自らの感情を統制できる という個人的な信念でストレス反応を抑制する概念であり,特に幼稚園の教師のス トレス反応において検討がなされている(例えば,塗師,1995 ;島崎・森,1995;

西坂,2002)。その中で,西坂(2002)は幼稚園の教師の職業ストレッサーに関する 質問項目群を作成し,いわゆる自己効力感と下川ディネス,ストレス反応の関係性 をモデルを通して検討している。その中で,自己効力感は主に職務ストレッサーを 抑制し,ハーディネスは職場環境のストレッサーを抑制することを明らかにしてい るbまた,自己効力感は直接ストレス反応を抑制しないものの,ハーディネスは直 接ストレス反応を抑制する積極的な効果があったことを報告している。

ソーシャルサポート :ソーシャルサポートとは稲葉(1992)によれば対人関係の中 から手段的・情緒的援助をうけることで,本人のストレスが抑制されるという考え 方である。そのため,個入的要因だけでなく環境的要因の双方を検討の対象として

いる。

 田村・石下(2001)は「指導・援助サービス上の悩み」として職務上のストレッサ ーを独自に尺度化し,ソーシャルサポート希求度に関する質問項目も設けることで,

この2要因のバーンアウトの抑制状況を検討している。前者はストレッサーとして バーンアウトと正の影響がある一方で,後者はストレス反応に負の影響がありソー

シャルサポートを希求する個人特性がストレス反応の低下につながることを明らか にし,ソーシャルサポートを外部に求めるのを避ける教師への介入の有効性を指摘

している。

 Russell,A1七maier,&Velzen(1987)はソーシャルサポートの中で職務遂行上の 援助的助言者の存在と,仕事について肯定的な評価をしてくれる他者の存在がバー

ンアウトを規定していることを明らかにしている。Sarros&Sarros(1992)は認知さ れた情緒的援助の量と,仕事の支援体制の枠組みの評価を測定し,後者がよりスト

レス反応の抑制に直接的な効果を持つことを明らかにしている。その中で特に校長

教頭のサポートの影響力が大きく,サポートの窓口としての重要性を指摘している。

迫田・田中・淵上(2004)は管理職の中でも校長のソーシャルサポート源としての 機能に注目し教師が校長からのソーシャルサポートを認知することでストレス反応 が抑制されることを明らかにしている。

 また,Travers&Cooper(1996)は同僚や上司,学校内外の組織との関係の良好さ と援助関係の大きさの認知された量がストレス反応を抑制することを明らかにし,

学校内でできる対策として心理面だけでなく仕事面でも援助をうげる枠組みを形作 ることの重要さを指摘している。

 他にも,同僚や上司との人間関係の良好さがストレス反応との負の相関を持つこ とを明らかにすることで,人間関係の良さをもとにソーシャルサポート的な効果を 議論し,逆に人間関係の悪さをもとにそれらがストレッサーになると指摘する研究

は多い(例えば,岡東・鈴木,1997;大阪教育文化センター,1996;伊藤,2000

など)。

 以上のように教師を対象としたソーシャルサポート研究が積み重ねられているが 入江(1998)が示すように研究概念としてのソーシャルサポートは道具的もしくは情 緒的などのサポートの種類の区別や直接効果と緩衝効果の区別の議論,さらに実際 のサポートの授受と知覚されたサポートの区別をしたうえでの検討をその特徴とし ている。しかしながら,教師ストレスにおけるソーシャルサポートの検討はいずれ の研究も職場での人間関係の良好さや人間関係に対する態度などとストレス反応の 関係を直接効果の検証のみで分析を行なっている。

     第2節 キャリア発達研究におけるストレス抑制要因

(1)ストレス抑制に関する先行研究の課題

 これまで見てきたように教師のストレス抑制要因に関する研究は数多くの研究が なされている。本研究ではこれら先行研究の成果や課題を参考としながらも,教師 の成長・発達に関する側面と職務ストレッサーへの抑制効果に注目しながら職務の 動機づけや能力向上を議論してきた第三章までの位置づけから,職業心理学やキャ

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