第1節 本研究の課題と目的
第5章では,教員間と教員とSC協働について,学校支援の観点から関連性を量的分析に より検討する。第1・2章において,先行研究ではこれまで教員間,教員とSC協働はや心 理学の各分野で研究されてきたために,それらを包括した知見が得られていないことが示 された。先行研究では,組織的な協働が重要視されてきたが,現場において組織的な学校 支援が機能しないことも多く,教員がSCを協働相手としてとらえられず,協働が困難な状 況に陥っていることが示唆された。
また第3・4章では,教員とSCの各視点から,教員とSC協働には,教員間の協働をも 視野に入れた学校全体の校務分掌や授業研究,会議設定,上部組織の活性化等,総合的な 組織設定,経営が必要であることが示唆された。以上の結果は,質的な調査に基づくもの であり,SCと教員間の協働が促進される学校支援の主要な要因として,学校全体の情報共 有,役割分担,支援のための疎通性が見られることが認められた。そしてこのような学校 支援を構築するには,管理職が協働可能な学校にするためのビジョンに基づいた組織設計 を行い,ミドルリーダーである主任層が,管理職の組織設計と一般教職員の状況を踏まえ,
現実的な組織運営や調整を行い,その上で異職種に合わせた情報共有や役割分担を設定す ることが必要であることが示唆された。またSC側も,協働的背景の研究からSC自身が学 校文化を理解し,学校の状況に合わせた学校支援の在り方を提案していく必要性が示唆さ れた。これらのことから,教員間と教員とSC協働と学校支援は相互に関連すると考えられ た。しかし,これらの結果はあくまでも質的な研究から導き出されたものであり,量的な 視点からの実証的検証が求められる。そこで本章では,SCの半構造化面接や教員の事例研 究で得られた結果を参照し,教員間,教員とSC協働,学校支援体制の関連について,質問 紙調査により検討することを目的とした。
第4章までの結果から,以下の仮説が考えられる。①学校支援体制が充実している学校 は教員間,教員とSC協働が活性化しているだろう。学校支援体制の充実度を測る指標とし て,各種会議,SCの職員室机やSCの懇親会勧誘といったSCへの配慮を取り上げた。ま た,②教員間および教員とSC協働が活性化している学校は生徒指導の教師集団効力感が高 いだろう,③管理職の協働的配慮がなされている学校は学校支援体制及び協働が高いだろ う。
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仮説1が導かれる理由として,第3章1節の調査結果から,情報共有や役割分担,支援 のための疎通性といった教員間,教員とSC協働の各要素は会議の設定や,SCへの配慮と いった学校支援体制と関連していた。
また仮説2が導かれる理由として,教師集団効力感と児童生徒の活動に影響をもたらす ことが示されている(淵上・今井・西山他,2006)。したがって本研究では,学校支援に直 接関係する生徒指導の教師集団効力感(淵上・今井・西山他,2006)を取り上げ,教員間,
教員とSC協働が活性化している学校は,学校支援に直接関係する生徒指導の教師集団効力 感が高くなることが考えられた。
最後に仮説3が導かれる理由として,4章1節より教員間,教員とSC間協働が活性化し た理由の一つとして,管理職は両協働が活性化するように,会議の仕組みを整えることや,
教員間や教員やSCの協働を支援する動きが見られた。また3章1節からも,SCの協働の 活性化に際して,会議に出席できるよう調整を図る姿がみられた。これらのことから,教 員間,教員とSC間の協働の活性化には,管理職の協働的配慮は学校支援及び,教員間,教 員とSC協働を高めると考えられた。
第2節 予備調査
本調査に先立ち,教員間と教員とSC協働の行動を測定する質問項目を作成した(荊木・
淵上・古市,2014)。
質問項目は,SCの半構造化面接調査(第3章1節)や教員の事例研究(第4章)で得ら れた結果を基に,SC面接調査の結果である協働の3種類のコアカテゴリである教員とSC 協働(19項目),管理職の協働的配慮を含めた教員間協働(30項目)を参考に,著者を含 む教育心理学に精通した複数の研究者により議論しながら作成した。
この質問項目により構成された質問票を作成し,関西圏と中国地方の公立小・中・高等 学校に勤務する現職教員・経験者と9名(男性5名,女性4名,20代1名,50代6名,
60代2名)の現職管理職および管理職経験者6名(男性5名,女性1名,50代5名,60 代1名)に調査を依頼した。調査は教員へは2012年10~11月に,管理職へは2013年2
~3月までの間に実施された,面接時間は52~164分であった。
調査は面接により行われた。教員に対しては,質問項目を書いた用紙を見てもらい,気 になる点について記入をしてもらった。後に,記入してもらった項目について背景も含め
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て質問し,回答を得た。管理職に対しては,より詳しく聞くためにICレコーダーによる音 声記録の許可を得た。
倫理的配慮として対象者に対しては,面接調査開始時に,本研究の目的を改めて口頭で 説明し,個人情報の保護に努め,対象者が不利益を被らないよう,①本調査研究への協力 を拒否できることや随時撤回できること,②調査への協力に不同意であっても対象者が不 利益を受けないこと,③対象者の身元や個人情報が判明しないようにすること,④面接調 査の内容からその個人が特定できないようにすること,⑤面接調査の実施日時によって対 象者の業務に不利益が無いようにすること等を含む事項について対象者に説明し,同意を 得た。
その結果,項目群の構成は,教員に協働を意識化させる説明や,協働を比較的意識して いる管理職に焦点を合わせる重要性が示唆された。また,教員間で協働に対する意識・イ メージの差があるため,児童・生徒の支援の会議の内容等,具体性を持たせ,イメージの 違いを識別するSCの勤務条件等の項目の必要性が示唆された。
これらの結果から,勤務校要因にSCの勤務状況や児童・生徒支援に関する会議の有無等 を問う項目を設けた。教員とSC協働の質問項目は「他職種(SC等)と共に予防的な対応 も含めた情報共有を行っている。」等の6項目と,教員間協働は「教員間で互いの専門性お よび経験(校務分掌や取得資格,得意分野)を理解し,個々の役割に応じた役割分担をし ている。」等の8項目とした。
次に,この検討した14項目については,著者を含む心理学を専攻する研究者3名により 内容と各項目数を確認した。そして,協働に関する質問項目群ではなく学校支援体制に関 する要因として検討した方が望ましい項目(情報共有,役割分担,支援のための疎通性)
については,そちらへ回し,教員間と教員とSC協働の各項目群が12項目になるように項 目を追加した。
教員間協働において,管理職の協働的配慮に関する項目については,管理職の協働的配 慮(7項目)として,独立した項目群とした。また,教員とSC,教員間の協働と関連する 要因として,生徒指導の教師集団効力感項目群(淵上・今井・西山他,2006)7項目を生徒 指導の教師集団効力感項目群とした。
最終的に,教員とSC間,教員間の協働と管理職の協働的配慮,生徒指導の教師集団効力 感を測定する暫定版の質問紙として項目群41項目を作成した。項目の内容は,教員とSC
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間協働12項目,教員間協働12項目,生徒指導の教師集団効力感項目群10項目,管理職の 協働的配慮7項目であった。詳細は3節に記載する。
第3節 教員間と SC と教員協働,学校支援質問紙による測定項目の概要 第1項. 人口学的要因
人口学的要因として,性別(男性,女性),校種(小学校,中学校,高等学校,幼稚園,
特別支援学校,その他),役職(講師,養護教諭,教諭,主幹(主席)教諭,副校長,教頭,
校長,指導教諭,その他),勤務年数(1~5年,6~11年,12~17年,18~23年,24年 以上),経験校務分掌(教育相談係(主事),生徒指導主事,学年主任,指導教諭,特別支 援コーディネーター,特別支援担任,その他;複数回答可)を取り上げた。
第2項. 勤務校要因 1. 学校の特徴
学校の特徴として,学校全体の学級数(1~5学級,6~11学級,12~17学級,18~23学 級,24学級以上),学校の全教員数(19人以下,20~25人,26~28人,29~30人,30人 以上),地域(都道府県名),地域の特色(都市部,大都市近郊,地方都市,農村・漁村地 帯),1週間での勤務時間内の授業準備時間(殆どない,1~4時間,5~10時間,11~14時 間,15時間以上),非常勤講師の机の有無(有,無),非常勤講師を親睦会に誘う(誘う,
誘わない)を取り上げた。
2. 学校支援体制
学校支援体制の特徴として,ケース会議,生徒指導会議,教育相談会議,その他の会議 を取り上げた。各会議に対して,有無(定期・不定期・無),頻度(週1回,2週間に1回,
月1回,1学期に1回,1年に1回),参加者(校長,副校長,教頭,主幹教諭,生徒指導 主事,通級指導教員,養護教諭,担任,相談担当,SC,SSW,その他)を取り上げた。
3. SCへの配慮
勤務校でのSCの状況として,勤務頻度(常駐,週2から3回,週1回,2週間に1回,
月1回,1学期に1回,1年に1回,不明,その他),1回の勤務時間(2時間以内,2~4 時間,5~6時間,6~8時間,8時間以上),SCの窓口担当の校務分掌(管理職,教育相談