第1節 SC 協働先進校教員面接調査(研究3)
第1項. 本研究の目的
第4章1節では,教員の立場からSCとの協働や学校支援構築について検討する。第3 章では,SCの立場から見た学校支援やその協働的背景について検討してきた。そこでは,
教員とSCとの協働や学校支援,教員やSCの相互理解の程度により,影響を受けることが 示唆されてきた。
こうした学校内の協働的課題に対し先行研究では,心理職が教員と協働し,個人的心理 療法を集団に応用し,崩壊した学級を立て直した事例研究(野々村,2005)や,あるSC の観察からSC活動を質的に検討した研究が行われている(紅林・下村,2003)。これらの 研究からSCは,個々の事例においてインフォーマルな支援チームを形成し,その中で状況 判断や児童生徒,保護者の心理的理解を教員から期待されていること(山本,2012),SC 自身もアセスメントや判断,ネットワーク形成の能力を発揮できると認識し(瀬戸・石隈,
2002),教員や教員集団と協働しながら活動に取り組んでいることが示唆されていた。SC
が心理学的専門知識や状況判断を発揮するには,学校における職務内容の明確化や積極的 活用,広報,情報共有の場の設定の重要性が指摘されている(土居・加藤,2011a)。また 第3章1節では,SCを対象とした学校支援に関する面接調査から,学校支援には情報共有,
役割分担,支援のための疎通性,管理職の協働的配慮といった視点が重要であることが示 唆された。
一方,学校支援の担い手である教員視点からの研究では,体罰のない学校への改革過程 の事例研究から,同僚間や管理職といった教員間における並行・垂直連携が重要な柱とな ることが報告されている(木岡,2002)。教育相談活動の定着に関しては,学校支援の構築 と職場の協働的風土や管理職のリーダーシップとの肯定的な関連性が示されている(西 山・淵上・迫田,2009)。すなわち学校支援構築には,教員間の協働は欠かせないものであ り,特に管理職層は,学校支援構築において大きな影響をもたらすと考えられる。例えば,
中学校における支援委員会の構築は,教員間に情報共有の場をもたらし,コンサルテーシ ョン,学年・学校レベルの連絡,個別チーム援助やマネジメントを促進するため,学校支 援の一つとして重要であることが報告されている(家近・石隈,2003;2007)。しかし,こ
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れらの事例は,教員間の協働の重要性に着目して検討されており,どのような協働の元に どのようにSCと協働を構築したのかは明らかにされていないのである。
より良い支援を展開するための学校支援の構築を考えた時,学校支援の運営に関わる学 校組織は学校現場に定着しつつあり,重要な資源となり得ると考えられる。SCとの活用を 検討することは,教員側の学校支援構築という活動の認識,その背景となる教員間の協働,
学校とSCの協働上の留意点・戦略について示唆を得る可能性があると考えられる。
そこで,本研究ではSCとの協働先進校に焦点を当てる。その理由は,組織的に教育相談 に関わる学校において,中心的に携わる教員の側の認識に焦点をあてることで,学校支援 構築の視点から,SCとの協働における学校支援がより明確になると考えられた。本論文で は,頻発していた生徒の不登校を減少させたA中学校における学校支援の実践を取り上げ る。そして,質的方法を用いて,教員間の協働,教員とSC協働と学校支援の視点から学校 組織と教員,SCとの関係を描き,異職種間協働が可能な学校支援構築の現状とその背景,
促進要因について検討する。
第2項. 方法 1. 対象者のプロフィール
対象者は校長,研究主任,養護教諭の計3名であり,その概要をTable4-1に示した。本 研究の対象校のA中学校は関西にあるB県の近郊に位置し,特別支援学級を含む計15学 級,生徒数約500名,教員数約30名である。A中学校は創設100年以上のいわゆる伝統校 であり,市内の中心校である。学区内には商店街,代々その土地に居住する住民の地域と 新しいマンション・住宅に転入してきた人の住む地域を抱えている。調査対象に選んだ理 由は,課題のある生徒の対応について,週1回開かれる生徒支援の会議での提示・具体的 検討により,学校全体での情報共有が可能であることと,生徒支援は会議の決定に従って 役割に応じた教員が行うため,役割分担が明確であることによる。さらに地域人材や保護 者・専門家で構成されたボランティア組織を設立し,学校支援に取り込んでいた。これら の学校支援は,調査当時の管理職の代で確立している。その結果,不登校が6年間で22名 から6名に減少していた。これらはSCとの協働先進校の条件に該当すると見なされた(詳 細は後述する)。調査時,改革を行った管理職が在職中であり,この時点での調査の遂行に より,本研究の目的である学校支援の構築過程や理念,成果に迫ることができると考えら れた。
86 Table 4-1 対象者の特色
役 職
年 代
性 別
教職経験年数 (講師経験年数)
調査校の
勤務年数 情報の特色
管 理 職
( 校 長
)
50 男
性
33(3)
(内教員15教 育委員会7,教 頭6,校長5,)
6
(内1年 教頭職)
特別支援学校講師,同和推進校,児童館 長等経験した後,現在のA中学教頭とし て着任。2年目より校長として,現在の 支援体制を築きあげた。
研 究 主 任
40 男
性 23 8
以前,現在の管理職が同和推進校で教頭 職をしている下で勤務。現在は研究主任 として,A中学のボランティア組織の責 任者や,渉外担当,教室に入れない生徒 の支援等幅広く活動している。
養 護 教 諭
30 女
性
11(4)
(内3年6ヶ月 3回の産・育休)
高校での講師経験を経て,現在のA中学 に赴任。内産休を挟むが,A中学の生徒 支援の中心となって活動をしてきた。
情報提供者の概要は,年齢30~50代,男性2名,女性1名であった。教員経験が11~
33年で,調査校の勤務年数が6~11年であった。全員が生徒支援会議の出席者であった。
以下,管理職は(管),研究主任は(研),養護教諭は(養)と情報提供に応じて記載する。
2. 面接調査の手続きと倫理的配慮
2009年7~8月に教員を対象とした半構造化面接調査を以下の手順で行った。面接は,
校長室や人気のない喫茶店で実施した。
最初に,後述の質問項目に従って質問をした。質問項目は以下の通りである。質問は学 生相談調査用に作成した質問項目(藤川,2007)を中学校用に改訂した。0.被面接者の簡 単な略歴・教育相談歴,1.情報共有会議への参加前の印象,2.情報共有会議参加による認識 変化・SCへの認識変遷・会議の位置づけ,3.情報共有会議参加による対象者への影響,4.
情報共有会議への評価,5.情報共有会議設置前の学校・地域的背景,校内での現状と課題(会 議設置に関する質問項目のため管理職のみ質問)である。面接調査の質問内容は,これら
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の質問について対象者の内容をさらに膨らませる形で,回答されたことが起こりうる状況 やその背景,周囲の反応等を質問した。面接時間は,対象者の話が出尽くしたところで終 了した。
倫理的配慮は,対象者に対しては,面接調査開始時に,本研究の目的を改めて口頭で説 明し,ICレコーダーによる音声記録の許可を得た。なお,個人情報の保護に努め,対象者 が不利益を被らないよう,①本調査研究への協力を拒否できることや随時撤回できること,
②調査への協力に不同意であっても対象者が不利益を受けないこと,③対象者の身元や個 人情報が判明しないようにすること,④面接調査の内容からその個人が特定できないよう にすること,⑤面接調査の実施日時によって対象者の業務に不利益が無いようにすること 等を含む事項について対象者に説明し,同意を得た。
3. 分析方法と手順 (6) 質的研究法の選択
本研究では,戈木のグラウンデッド・セオリーの手法(2006)を用いた。戈木のグラン デッド・セオリーの手法(2006)は,「広範囲な抽象度の高い現象の構造とプロセスを把握 し,特定の状況についての当事者の状況把握や反応,その場での行為/相互行為の発生状 況を説明し,関連する現象の可能性を解明する質的研究法である。」。新しい属性を戦略的 に収集する理論的サンプリングに加え,当事者の状況や反応,行為/相互行為の説明が可 能なこの手法は,本研究の目的を達成するのに最適と考えられた。戈木のグラウンデッド・
セオリーの手法(2006)とは,インタビューでの逐語禄や観察記録等を小さな意味の塊毎 に切片化し,各切片のもつ情報の状況である属性と,段階を表す次元を挙げる。その属性 と次元毎に各切片をグループ・カテゴリ化し,カテゴリ毎に各情報を比較し,表を作成す る。最終的には,対象とする状況を数個のコアカテゴリに集約し,各コアカテゴリの関連 性を図式化して,全体の状況を把握することを目指す手法である。
(7) 面接・テクスト化(STEP 1)
面接は上述の通り,遂行した。理論的サンプリングは,一つの学校で,個々の教員の役 割に合わせて,条件に該当する人にそれらの質問を行っている。理論的飽和化については,
本来であれば 3 人という理論的飽和化には及ばない人数であるが,一つの学校という一事 例であること(田村・石隈,2007),生徒支援の会議を構成する主要メンバーを選んで調査 を行ったこと,調査した結果,調査校の体制の成り立ちや理念,現場レベルでの運用面,