5.6 最良となったアンテナ
5.6.4 放射パターン
図76、図77、図78にそれぞれのアンテナのPIFA給電時,OPEN時,CLOSE時におけるXZ平 面、YZ平面の放射パターンを示す。また、表16に筐体OPEN時及びCLOSE時の上部への放射 の最大利得と下部への放射の最大利得及びその相対利得を示す。ここでの上部とは30度から150 度の時とし、下部とは210度から330度の時とする。
図76:放射パターン(PIFA給電時)
OPEN時 CLOSE時
上部最大利得 下部最大利得 相対利得 上部最大利得 下部最大利得 相対利得
[dBi] [dBi] [dB] [dBi] [dBi] [dB]
XZ(1.94GHz) 1.56(30度) 1.82(330度) -0.23dB 3.65(75度) -4.28(260度) 7.93dB XZ(2.06GHz) 2.48(30度) 2.75(330度) -0.27dB 2.79(65度) -3.43(330度) 6.22dB XZ(2.17GHz) 2.50(30度) 2.77(330度) -0.27dB 2.48(65度) -1.11(330度) 3.59dB YZ(1.94GHz) -0.43(130度) 1.68(225度) -2.11dB 3.88(105度) -4.23(280度) 8.11dB YZ(2.06GHz) -0.21(90度) 1.22(225度) -1.43dB 3.05(105度) -2.69(225度) 5.74dB YZ(2.17GHz) 0.61(100度) 0.98(230度) -0.37dB 2.71(105度) -1.13(230度) 3.84dB
表16:筐体OPEN時・CLOSE時における最大放射利得
図76 より、PIFA給電時には、340度方向のヌル点を除き、Eφ 成分、Eθ 成分ともに偏りなく 放射していることが分かる。OPEN時にはXZ平面において周方向振幅偏差は10dB以内となり、
ほぼ無指向性の放射となった。上部方向最大利得の下部方向最大利得対する相対利得は、OPEN 時には0dBであったが、CLOSE時には3.6dB〜7.9dBへと向上した。また、YZ平面においては OPEN時には最大利得は0〜1[dBi]であったものが、CLOSE時には最大利得が2.7-3.9[dBi]とな り、相対利得は3.8dB〜8.1dBへと向上した。
図77:放射パターン(OPEN時)
6 結論
本研究では、携帯電話に収まる大きさの平面構成アンテナにおいて、寄生素子を用いることによ る機能化について検討を行った。
2素子逆L型線状素子を持つアンテナにおいて、アダプティブアレー技術の1つであるパワーイ ンバージョンアルゴリズム(PIAA)を用いることにより、妨害波除去についての検討を行った。そ の結果、2GHzにおいては、所望波方向の妨害波方向に対する相対利得は、待ち受け時の4.00[dB]
からPIAA使用時の18.04[dB]へと14.04[dB]の向上が見られた。また、4GHzにおいては、待ち 受け時の相対利得-11.35[dB]から9.21[dB]へと20.56[dB]の向上が見られた。また、このアルゴ リズムに用いられる増幅器の利得・ループ利得についての考察を行い、それらを適切に選ぶことで 効率的に妨害波除去を行えることを明らかにした。また、干渉波到来方向についても考察を行い、
所望波と干渉波の角度差が75度以上の時に相対利得が大きくなることがわかった。
さらに外側と内側にΓ型の線状素子を持つ平面構成アンテナにおいて、給電位置を切り替える ことにより、低域側と高域側の帯域を合成し、広帯域な特性での利用について解析を行った。そ の結果、Antenna1とAntenna2の帯域を合成することにより、1.72-3.62GHzにおいてVSWR≤2
となり、71.2%の広帯域な特性が得られた。解析によって得られた4つのVSWRの極小点につい
て、それぞれの動作原理についての解析を行った。Antenna1の1.9GHz付近では外側のΓ型給電 素子の共振により、2.4GHz付近では内側の寄生素子の影響によりVSWRが極小となった。また、
Antenna2の2.7GHz付近では外側の寄生素子の共振により、3.5GHz付近では内側のΓ型給電素子 の共振によりVSWRが極小になることが分かり、VSWR特性・電流分布の両方からこのアンテナ の動作原理を明らかにした。また、帯域内でほぼ一様な放射パターンとなり、有用であることが分 かった。
また、折り畳み可能な携帯端末において、PIFAとΓ型の給電素子、寄生素子を用いて、筐体を閉 じている時に、寄生素子との相互結合を用いることにより、地面方向への放射を抑制し、天頂方向 への利得の向上を図った。その結果、VSWR特性については、筐体OPEN時、CLOSE時、PIFA給 電時の全ての場合において、受信アンテナとしてはVSWR≤3、送信アンテナとしてはVSWR≤2 を満たした。また、利得においては、PIFA給電時には、垂直偏波、水平偏波共にほぼ等しい利得 の放射が得られ、通話者の姿勢によらない受信が可能となった。また、Γ型素子給電時において、
筐体OPEN時には、XZ平面においては周方向振幅偏差が10dB以内のほぼ無指向性のパターン となった。また、筐体CLOSE時には上部最大利得の下部最大利得に対する相対利得は3.6dB〜
7.9dBに向上し、筐体上部への強い放射が得られた。
謝辞
本研究を行うにあたり、丁寧なご指導、貴重な助言を賜りました筑波大学システム情報工学研究 科の平沢一紘教授に深く感謝し、心より御礼申し上げます。また、研究における諸問題について適 切なアドバイスを頂きました、システム情報工学研究科の渡辺貴裕君に感謝致します。最後に、共 に研究を進めてきました、マイクロ波制御研究室の皆様に感謝の意を表します。