第 3 章 土粒の粉砕の基本的メカニズム
3.3 結果と考察
3.3.3 摩耗による土粒の破壊
3.3.1 節で述べたように、回転している粉砕容器の中に土粒のみが入っている場合には
土粒の粉砕は観察されなかったが、2 本の粉砕ロッドと一緒に粉砕容器の中に土粒が入 っている場合には良好に粉砕が行われた。このように、回転している粉砕容器の中で回 転している粉砕ロッドの動きを観察していると、土粒と粉砕ロッドの動きの違いから粉砕ロ ッドと土粒の間に摩耗が生じていると考えられる。このような相互作用を摩耗試験機
DIK0850 を用いて単純にシミュレーションした。図3.10に実験結果の一例を連続写真で
示す。時刻0はカンチレバーの往復運動開始時刻である。
最初は、細かい粒子が土粒の表面から分離された。37.7 秒後には小さな破片が分離し 始めた。37.8秒と38.5秒の写真には、せん断応力による典型的な大きな傾斜亀裂が見ら れた。粒子間の小さな隙間や小さなクラックは、せん断応力下で大きなクラックの引き金と
第 3 章 土粒の粉砕の基本的メカニズム
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なった[11] [16]。DIK0850摩耗試験装置で発生するせん断力は1.5 Nであり、一軸圧縮
試験装置(Instron 5566)で発生する圧縮力よりもはるかに小さい。したがって、粉砕ロッド の効果は、土粒を擦ることによるせん断力であると考えられる。
図3.10 摩耗試験装置による破壊過程
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O.Os. 10.0 s. 37.7 s.
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37.8 s. 38.l s. 38.3 s.
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38.5 s. 40.l s. 40.3 s.
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40.6s. 41.1 s. 45.0s.
第 3 章 土粒の粉砕の基本的メカニズム
60 摩耗試験装置のベース台からカンチレバー底面までの高さを経時的に測定したが 37.7秒まであまり変化しなかった(図3.11)。実験中、土粒の表面から擦り落とされるように 土粒子が僅かに削り取られている。実験開始からここまでの間は、せん断応力が土粒の 中にポテンシャルエネルギーとして蓄積されるのに時間がかかるためと考えられる。粒子 間のバネ系のポテンシャルエネルギー[5][10]を微視的に考えると、土質構造としての 粒 度分布に関係する粒子間の間隔[17]が重要なパラメータとなる。材料特性(空隙率[12]
[18]、初期の亀裂[5] [8] [11])は同じではないため、応力が蓄積されるタイミングは、その 違いによって大きく左右される。しかしながら、一旦破壊が始まると、小さな破片に砕ける までに必要な時間は、37.7秒から7.3秒間で破壊が壊滅的に起こるように見える(図3.10)。
この時のカンチレバーの高さは急激に下がる曲線(図3.11)として示された。
図3.11 時間の経過によるカンチレバーの高さの変化
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