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提案した計算手法の妥当性

第 3 章 非 Newton 流体表現を取り込んだ VOF 法による高濃度土砂流の解析手法

3.4 提案した計算手法の妥当性

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図3.9 Bingham流体近似モデルによる粘性係数での合成速度

管路の流下方向中央部の5.0cm地点における鉛直断面を抽出して,理論解との比較を行った ものが図3.9である.横軸が流速,縦軸が管路高さを示しており,計算値を青点,理論解を 赤実線で示してある.壁面付近においては良好な一致を示していると思われるが,管路中 央部において,理論解の最大流速が1.40×10-3cm/sであるところ,計算値では1.32×10-3cm/sと なっており,最大で流入流速の16%程度の誤差が発生していることになる.また,理論解に おいては管路高さ3.5cmおよび6.5cmの位置において,流速分布形状が屈曲し,管路中央付近 の3.0cm程度の層内では,ほぼ平坦な流速分布となっているが,計算結果からはそのような 形状が確認できない.理論解に見られる平坦な流速分布やその屈曲形状などは,Bingham流 体が切片を持ち,そこから一定粘性係数となるという本質的なバイリニア性によるものと 考えられる.本研究で用いるPapanastasiouの近似式では,この不連続性を,応力成長指数を 上げることによって高精度に近似しているが,どこまで近似精度を高めても連続関数によ る近似であり,不連続形状をどこまで再現できるかなど,定性的・定量的に,更に計算精 度を向上させる必要がある.これらについては今後充分な検証を要するものと思われ,今 後の課題とする.

合成流速(cm)

Z

方向(cm)

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b) Bingham流体近似モデルのVOF法による高濃度土砂流解析

① Newton流体のダムブレイク解析の検討

まず,Bingham流体近似モデルと比較検証するために,Newton流体でダムブレイク解析を 行った.表3.2に計算諸元,図3.10に解析領域を示す.領域左下部に静水状態の水柱を設置 し,計算開始とともに流動させる.図3.11,図3.12および図3.13にそれぞれF値,圧力および 流速の経時変化を表している.各図とも0秒,1.5秒および3.0秒後の計算結果である.また,

図3.11,図3.12および図3.13において,横軸と縦軸は長さ(m)である.図3.12のカラースペク トルは圧力値(N/m2)を表し,赤い程高圧力である.図3.11の初期形状については,青色は流 体セル,赤と水色が自由表面セルおよび黄色が気体セルを表している.表3.3のセルの分類 表より,初期形状の自由表面セルは赤色がRF = 3,水色がRF = 1に該当する.図3.11から,

崩壊開始から流体の下端が先行し,3.0秒後には右側の境界まで到達し遡上していることが 分かる.図3.12と図3.13より,圧力値はダムの下層が高く,時間が進むにつれダムの高さが 低くなり,それに伴い圧力も減少する.反対に流速は時間とともに速くなることが分かる.

このダムブレイク解析の精度検証については,後述のBingham流体近似モデルとの比較検証 とともに行う.

表3.2 ダムブレイク解析の計算諸元

項目 X方向×Z方向

解析領域 100(m)×20(m) 格子分割幅 1(m)×1(m) 計算時間間隔 0.01(sec)

図3.10 ダムブレイク解析の解析領域 100m

20.5m 20m

10.5m

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表3.3 セル(i,k)の分類 RF セルの状態 その意味

0 流体セル セル全体が流体で満たされている 1 表面セル 表面がx軸に垂直で,セル(i-1,k)が流体セル 2 表面セル 表面がx軸に垂直で,セル(i+1,k)が流体セル 3 表面セル 表面がz軸に垂直で,セル(i,k-1)が流体セル 4 表面セル 表面がz軸に垂直で,セル(i,k+1)が流体セル 5 気体セル セル全体が気体セルで満たされている

崩壊直後(0秒後) 1.5秒後 3.0秒後

図3.11 各セルにおけるF値の経時変化

図3.12 圧力の経時変化

(m) (m) (m)

(m)

(m) (m)

(m) (m)

(m)

(m)

(m) (m)

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図3.13 流速の経時変化

② Bingham流体近似モデルによるダムブレイク解析の検討

次にBingham近似モデルを組み込んだ計算結果を示す.計算諸元と解析領域については,

上述したNewton流体のダムブレイク解析と同一の条件である.(表3.2,図3.10を参照) Newton流体と非Newtonの解析上取扱いが異なるのは,計算フローに示した通り,動粘性係

数である.動粘性係数はひずみ速度より算出する.よってここでは,Newton流体と比較対 象として,ひずみ速度分布,動粘性分布および圧力分布を中心に考察していく.また,本 計算ではPapanastaisou式(3.28)中の応力成長指数,塑性粘性度および降伏値はそれぞれ,

m=1000, 𝑝=1.0,τ0=5.0として計算した.図3.14,図3.15および図3.16はそれぞれ圧力分布,

ひずみ速度分布,動粘性分布である.各図ともカラースペクトルが赤い程高値である.

圧力分布図 圧力分布図

(m)

(m) (m) (m)

(m) (m)

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図3.14 Bingham流体近似モデルを用いた計算結果 (圧力の等高線,3, 7, 15および20秒後)

図3.15 Bingham流体近似モデルを用いた計算結果 (ひずみ速度の等高線,3, 7および15秒後)

ひずみ速度(s-1)分布図 ひずみ速度(s-1)分布図

ひずみ速度(s-1)分布図

圧力分布図 圧力分布図

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図3.16 Bingham流体近似モデルを用いた計算結果 (動粘性係数の等高線,3, 7および15秒後)

図3.14より水表面の形状に粗さがあるが,水柱崩壊に伴う流体内部の成層状態の様子が良 好に再現できていることが窺える.ここで15秒後と20秒後の図を比較すると,その形状が ほとんど変化しておらず,流動が停止していることが分かる.Newton流体を対象とした場 合,このような挙動をとることは考えられず,Bingham流体近似モデルを適用したことによ る高粘性の影響によって流動から再停止といった過程の再現が可能となったものと考えら れる.

本計算で用いたBingham流体近似モデルのPapanastasiou近似は,低ひずみ速度になるほど 高粘性が働くモデルであることから,高濃度土砂流の流動‐再停止過程における内部機構 の考察にあたり,ひずみ速度と動粘性係数の等高線を図3.15と図3.16にそれぞれ示した.ひ ずみ速度の経時変化を見ると,流動の初期段階においては先端部の特に底面付近に高ひず み速度領域が存在し,そのまま底面に沿って高ひずみ速度領域が拡大しながら,表面付近 にも拡大していく様子が見て取れる.その後,15秒後の図を見てみると,高濃度土砂流後 方付近にやや高ひずみ速度が残存しているものの,顕著な高値の分布は見られなくなる.

対応する動粘性係数を見てみると,低ひずみ速度領域で高動粘性係数の分布が確認でき,

動粘性分布図

動粘性分布図

動粘性分布図

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流動の初期状態においては図の左下部に集中していた高粘性領域が,1秒後には全体的に拡 大しており,高濃度土砂流全域において高粘性の影響をうけて流動が再停止したものと考 えることができる.

図3.17 ダムブレイクのフロント位置の比較 (越塚著より一部抜粋)

次に,図3.17は,Newton流体とBingham流体近似モデルの水柱崩壊している先端部が右側 の境界に達する前の移動距離と時間を無次元化したものである.赤線がNewton流体,青線 がBingham流体近似モデルの計算結果である.この図からNewton流体の解析値と越塚および

Martin9)による実験結果と良好に一致しており,通常のNewton流体条件において,良好な精

度を有していることが確認できる.Bingham流体近似モデルは,一定時間経過後(横軸で8付 近)からは,フロント位置が変化しておらず,流動が停止している状態が確認できる.次に,

Newton流体とBingham流体近似を比較すると,Newton流体の場合,下に凸の2次関数的な分 布形状となっており,時間進行に伴って進行速度が高まる傾向を示すが,Bingham流体近似 モデルを用いた高濃度土砂流解析の結果は,逆に上に凸の2次関数形状を示すことがわかっ た.

t*(2*g/2L)(1/2)

Z/L

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