第 5 章 標準マイクロフォンの広帯域高精 度校正法の提案
5.3 提案法の測定システムと具体的測定手順
5.3.1 提案法を実現するシステム構成
Fig.5-2 に,第3章で提案した感度校正システムの構成ブロック図を示す.この図の ように,システムの基本構成は,第 3 章の測定システムにおけるレーザトップラシステ ムの代わりに,第 4 章で提案したレーザ干渉計を取り入れることである.
Fig. 5-2. System diagram of the proposed measurement system by Chapter 3.
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最終的に本章で提案するシステムの構成を Fig.5-3 に示す.このシステムの光学部は 第 4 章で使用されたものと同じで, 2つの光検出器から得られた直交出力に基づく変位 を測定することが可能であ る.また,変位も測定可能である.マイクロフォンは ,第 3 章と同じくトランスミッタとして使う. さらに,提案する干渉計システムは,長時間の スタンドタイムから直接的に追跡可能であるため,レーザトップラ振動計を干渉計で置 き換えることで,高精度かつ広帯域にすることができる.
Fig. 5-3. The proposed system configuration for LS microphone calibration based on the laser interferometer with quadrature output
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5.3.2 感度校正手順
Fig.5-3 に示すように,提案したシステムを用いて得られた信号から,高精度,広帯 域に感度を求める手順は次の通りである.
(1)変位測定
正弦波によって発生する干渉信号は,第 4 章の式(4-5)と(4-6)から予測することが可 能であり,式(4-7)を代入すれば,Fig.5-3 の二つの光検出器で検出される信号は次式 のようになる.
( ) ( )
1 1 0
cos 8d cos s
V t V p t
j w j
l
é ù
= ê + + ú
ë û
) )
(5-1)
( ) ( )
2 2 0
sin 8d cos s
V t V p t
j w j
l
é ù
= ê + + ú
ë û
) )
(5-2)
上式で,V)1 とV)2
は両方の信号の振幅,各j0は信号の位相角,jsはピストン運動の位相 であり,j)Mは変調位相振幅である.上の二つの式を用い,第 4 章で論じた手法を適用 し,ピストンの変位を次式のように推定することができる [64].
( )
8 cos
M
d lj t s
w j
= p +
)
(5-3)
(2)体積速度推定
前で求めた変位による振動膜振動媒質の体積速度は,表面速度に面積を掛けることで 求められる.半径方向の表面速度の分布は第 3 章 Fig.3-1(Fig.5-4 として再掲)のよう にモデル化させ,Fig.5-4 に示すように,体積速度は式(5-4)から求められる[43].
( ) ( )
( )
1 2 2
1
1 2
N n n
n n
n
u r u r
q - p r r
-=
é - ù
= ê - ú
ê ú
ë û
å
(5-4)88
しかし,実際のマイクロフォンの振動膜の境界条件は理想的な条件ではなく,理論式の 応答と完全には一致しない.そのため,理論式で求められた数値と実システムでの偏差,
および実測したモデルが必要になる.
Fig. 5-4.Surface velocity distribution model of standard microphone diaphragm as same shows area to having the same surface velocity
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(3)体積速度平均モデルを用いた感度推定
第 3 章で論じたように,表面の振動分布が各マイクロフォンに対して同一の場合,中 心から速度に合わせて正規化された体積速度は,同一型のマイクロフォンではなく一致 している.したがって,音響体積速度に対する経験的モデルは,正規化された周波数に 対する測定された分布の平均をとることで取得できる. このモデルを用いて,マイクロ フォンの感度を次式で求められる.
( )
n o
q=q u r (5-5a)
( )
/ * /P n o a rad a rad a
M =q u r Z +Z i Z +Z Z (5-5b) 以上の手続きにより,レーザ干渉計でマイクロフォンの変位が測定できれば,マイク ロフォンの感度が求められることになる.
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