第 4 章 再送タイムアウト改良による改善 37
4.5 性能評価
4.5.4 提案法の比較
ůŝĞŶƚ
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図4.21: 帯域幅が異なる場合のネットワークモデル
図4.20を見ると,図4.19とほぼ同様の傾向が確認できる.ただし,RTOminが0.2msecで,保 留ACKを使用したときは,アクティブサーバ数が増加するにつれて,若干グッドプットが低下す る.これは,SRUサイズが256KBであるため,アクティブサーバ数が多いときには,何度もイ ンキャスト(アイドル状態)が出現しているためである.これは,RTOminの大小に依存せずに,
アクティブサーバ数が増加するにつれて,保留ACKを使用したときのグッドプットが低下してい ることから確認できる.図4.19で示したSRUサイズが64KBのときに比べると,AHTCPによ る改善幅は小さく見えるが,本章の前提で述べたFGTCPを想定したRTOminが0.2msecのとき については,インキャストは回避できていることが確認できる.
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Ϭ ϮϬϬ ϰϬϬ ϲϬϬ ϴϬϬ ϭϬϬϬ
Ϭ ϰϬ ϴϬ ϭϮϬ ϭϲϬ ϮϬϬ ϮϰϬ ϮϴϬ
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図 4.22: クライアントリンクがボトルネックとなる場合のグッドプット(S=64KB)
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Ϭ ϰϬ ϴϬ ϭϮϬ ϭϲϬ ϮϬϬ ϮϰϬ ϮϴϬ
,dW EKdW ,zdW
>EZdW &'dW
図4.23: クライアントリンクがボトルネックとなる場合のネガティブ影響率(S=64KB)
中のNOBTCPとAHTCP)と,バックオフを改良する方法(HYBTCPとLNRTCP)を比べる と,後者のアプローチのほうが高いグッドプットを示している.
次に,4つの方法が他のトラフィックに与える影響を見るために,以下の計算式によって定義さ れるネガティブ影響率を評価する.
Negative impact rate = Psent
PSRU (4.3)
式中のPsentは,全てのサーバが送信したTCPパケット数の合計値を意味し,PSRUは,サーバ が送信するパケットのサイズが常にMSSであると想定したときの,全てのSRUを送信するため に必要なパケット数の合計値を意味する.すなわち,パケット消失が発生しない理想的な状況で は,ネガティブ影響率は1になる.一方,パケット消失が発生する状況では,再送により多くの TCPパケットが送信されるため,Psentが増加し,その結果,ネガティブ影響率は1よりも大きな 値になる.また,保留ACKを使った時に,MSS未満のパケット送信が行われた場合,TCP/IP ヘッダ送信に係るオーバヘッドが発生するが,そのような場合は,Psentが増加することで,ネガ ティブ影響率が増加するため,この指標でその影響を評価することができる.言い換えると,こ の値が大きくなればなるほど,ネットワークに対して負の影響を与えていることがわかる.
図4.23は,図4.22と同じパラメータを使った時に得られたネガティブ影響率を示す.同図を見 ると,NOBTCPやLNRTCP,HYBTCPを使った時には,FGTCPと比較して最大で約40%程 度,ネガティブ影響率が高いことがわかる.これは,これらの方法を使うことで,FGTCPより も積極的にパケットを再送していることを示している.一方,AHTCPについてみると,FGTCP のネガティブ影響率とほとんど変わらない.この理由は,前述したように,保留ACKに使うバイ ト数は10バイトとしているため,1つのパケットの対して,最大10回までしか再送要求を送信す ることができないため,Psentの上昇を抑えることができ,その結果,ネガティブ影響率の上昇を 抑えることができている.
このネットワークモデルについて,さらに評価を進めるために,他のパラメータを使ってシミュ レーションを実行する.図4.24と図4.25は,NS = 256,V = 1 Gbps,S = 256 KB,x= 1%, RTOmin = 0.2 msec,ポートバッファサイズを40パケット分としたときに得られたグッドプット とネガティブ影響率である.グッドプットの観点では,図4.22と同様に,HYBTCPが最良であ ることがわかる.また,ネガティブ影響率の観点では,図4.23と同様に,AHTCPが最良である ことがわかる.特に,このシミュレーションでは,AHTCPを用いることで,FGTCPよりもネガ ティブ影響率の軽減を達成している.この理由は,クライアント側からより適切なタイミングで 再送要求を伝えることができ,また,再送要求回数を最大10回に制限する機能を有しているため,
再送要求の送信回数を制限することで,再送パケットの送信回数を少なくできているからである.
以上のことから,クライアントリンクがボトルネックとなるようなネットワークモデルでは,ネ ガティブ影響率の増加を許容できる状況では,HYBTCPが最も良好で,また,ネガティブ影響率 の制約を重視する状況では,AHTCPが最も良好であるといえる.
次に,クライアント側のリンクの帯域幅がサーバ側のリンクの帯域幅よりも大きい2つ目のネッ トワークモデルを使って,4つの提案法を評価する.図4.26と図4.27は,クライアントリンクの 帯域幅VC = 10 Gbps,サーバ側リンクの帯域幅VS = 1 Gbps,NS = 256,S = 64 KB,x= 1%, RTOmin = 0.2 msec,ポートバッファサイズを40パケット分と設定したときに得られたグッド プットとネガティブ影響率である.
Ϭ ϮϬϬ ϰϬϬ ϲϬϬ ϴϬϬ ϭϬϬϬ
Ϭ ϰϬ ϴϬ ϭϮϬ ϭϲϬ ϮϬϬ ϮϰϬ ϮϴϬ
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図 4.24: クライアントリンクがボトルネックとなる場合のグッドプット(S=256KB)
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,dW EKdW ,zdW
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図4.25: クライアントリンクがボトルネックとなる場合のネガティブ影響率(S=256KB)
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図4.26: 帯域幅が異なる場合のグッドプット(S=64KB)
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Ϭ ϰϬ ϴϬ ϭϮϬ ϭϲϬ ϮϬϬ ϮϰϬ ϮϴϬ
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図4.27: 帯域幅が異なる場合のネガティブ影響率(S=64KB)
Ϭ ϭϬϬϬ ϮϬϬϬ ϯϬϬϬ ϰϬϬϬ ϱϬϬϬ ϲϬϬϬ ϳϬϬϬ ϴϬϬϬ ϵϬϬϬ ϭϬϬϬϬ
Ϭ ϰϬ ϴϬ ϭϮϬ ϭϲϬ ϮϬϬ ϮϰϬ ϮϴϬ
,dW EKdW ,zdW
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図4.28: 帯域幅が異なる場合のグッドプット(S=256KB)
図4.26を見ると,LNRTCPが最良のグッドプットを示している.これは,クライアント側の帯
域幅が10Gbpsであるため,HYBTCPよりもアグレッシブに再送を行うことで,グッドプットを
上昇させることができていることを示す.一方,そのネガティブ影響率について評価すると,図 4.27に示すように,LNRTCPはネガティブ影響率が高い値になっている.なお,ネガティブ影響 率が最も高い値になるものは,NOBTCPであることがわかる.この理由は,クライアントの再送 要求オプションの送信タイミングが,サーバ側の再送タイムアウトのタイミングよりも早く行わ れるために,再送が多く発生し,さらに,AHTCPのような再送要求送信回数の制限がないため,
この4つの提案法の中で,最も再送回数が多くなるためである.
また,このネットワークモデルについて,S = 256 KBに変えてシミュレーションを行った結 果を図4.28と図4.29に示す.図4.28は,その時のグッドプットを示しており,同図を見ると,図 4.26と同様に,LNRTCPが最良の結果が得られている.また,図4.29はネガティブ影響率を示 すが,これについても,前述した図4.27と同じ傾向を示している.但し,Sを増加させたことで,
バリア同期アプリケーションで送信されるパケット数が増え,4つの提案法による差がより明瞭に 現れている.
以上のことから,クライアント側のリンクの帯域幅がサーバ側のリンクの帯域幅よりも大きいネッ トワークについては,ネガティブ影響率がFGTCPに比べて10∼20 %程度上昇するが,LNRTCP が最良であることがわかる.なお,これらの図には示していないが,3章で提案した各直列化法を 使った場合は,コネクション数が制限されるため,ネガティブ影響率はほぼ1になるが,得られ るグッドプットは,サーバ側の個々のリンクの帯域幅である約1Gbpsとなる.これらは,自明で あるため,図から記述を省略している.
最後に,3つ目のネットワークモデルである,複数のクライアントが存在することで,クライア
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Ϭ ϰϬ ϴϬ ϭϮϬ ϭϲϬ ϮϬϬ ϮϰϬ ϮϴϬ
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図4.29: 帯域幅が異なる場合のネガティブ影響率(S=256KB)
Ϭ ϮϬϬ ϰϬϬ ϲϬϬ ϴϬϬ ϭϬϬϬ ϭϮϬϬ ϭϰϬϬ ϭϲϬϬ ϭϴϬϬ ϮϬϬϬ
Ϭ ϰϬ ϴϬ ϭϮϬ ϭϲϬ ϮϬϬ ϮϰϬ ϮϴϬ
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図4.30: クライアントリンクがボトルネックとならない場合のグッドプット(S=64KB)
Ϭ Ϭ͘ϱ ϭ ϭ͘ϱ Ϯ Ϯ͘ϱ
Ϭ ϰϬ ϴϬ ϭϮϬ ϭϲϬ ϮϬϬ ϮϰϬ ϮϴϬ
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図4.31: クライアントリンクがボトルネックとならない場合のネガティブ影響率(S=64KB)
ント側のスイッチのポートバッファがボトルネックとならない状況においてシミュレーション評価 を行う.図4.30と図4.31は,NC = 4,NS = 256,V = 1 Gbps,S= 64 KB,x= 1%,RTOmin
= 0.2 msec,ポートバッファサイズを40パケット分としたときに得られた,それぞれグッドプッ トとネガティブ影響率を示す.このネットワークでは,クライアント側に接続した1つのスイッ チと,サーバ側に接続した2つのスイッチにそれぞれ接続するリンクの帯域幅の合計値(つまり
2Gbps)から,TCP/IPヘッダの伝送に必要な帯域幅を除いた値がグッドプットの最大値になる.
図4.30を見ると,AHTCPを除いて,どの方式も高いグッドプットを達成している.このネッ トワークモデルにおいて,AHTCPがインキャストを回避できていない理由は,クライアント側 でないリンクがボトルネックとなるため,クライアントがアイドル時間の検知を早期に行うこと ができないためである.同様に再送要求によるインキャストの回避を試みるNOBTCPとの違い
は,AHTCPは,1つのパケットの消失について,送信可能な再送要求が10回に制限されること
に対して,NOBTCPは,新しいオプションを使うことで,際限なく再送要求を送信できるため,
その影響を受けない.
また,ネガティブ影響率については,図4.31に示すように,インキャストの回避に成功した3方式 については,FGTCPに比べると,最大約50%程度上昇することがわかる.その中で,HYBTCPに ついては,ネガティブ影響率の上昇を20%程度に抑えることができていることを確認できる.その ため,ネットワークへの負荷を下げつつ,インキャストを回避するための手段としては,HYBTCP が最もふさわしいといえる.
続いて,このネットワークモデルについて,別のパラメータを指定したときのシミュレーション 結果について評価する.図4.32と図4.33は,NC = 4,NS = 256,V = 1 Gbps,S = 256 KB, x = 1%,RTOmin = 0.2 msec,ポートバッファサイズを40パケット分としたときに得られた,