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技法の概要

ドキュメント内 博士論文 (ページ 41-46)

第 3 章 ソフトウェア品質会計

3.2 技法の概要

3.2.1 品質会計の技術体系

品質会計とは,品質が作り込まれたことを,確かな根拠をもって説明するソフトウェア 品質管理手法である.品質会計では,バグ件数を主軸として摘出目標管理することにより,

その目的を実現する.したがって,品質会計では,開発中に作り込まれるバグ件数を,常

に精度良い推定値に保持する必要がある.この要求を実現するための技術が,図3-1に示す

「品質会計の技術体系」である.

品質会計は「バグ目標管理技法」および「バグ予測・見直し技法」から構成される.特に,

開発中に発生するさまざまな事象に対応して予測バグ件数を見直すことができるよう,「バ グ予測・見直し技法」が多く存在する.

上工程品質会計 テスト工程品質会計

回帰型 バグ予測

モデル

品質判定表

バグ分析と1+n施策

<バグ目標管理技法>

<バグ予測・見直し技法>

品質会計

上工程 品質判定表

テスト工程 品質判定表

バグ傾向分析

バグ 収束判定

図3-1 品質会計の技術体系

3.2.2 品質会計で想定する開発プロセス

品質会計で想定する開発プロセスは第2章で議論したV字モデルである(図2-2参照). 基本設計からコーディングまでを上工程とよび,単体テストからシステムテストまでをテ スト工程と呼ぶ.上工程の各工程においては,当該工程の「設計」と「レビュー」という2 つの作業を実施する.設計とレビューの関係を図3-2に示す.「設計」は,前工程の出力物 である前工程仕様書(最終版)を入力し,当該設計工程の設計仕様書(第1版)が完成す るまでをいう.「レビュー」はそれ以降のレビューを指し,レビューを繰り返して設計仕様 書(最終版)が完成するまでをいう.当該工程で当該工程のバグをバグとして認識し,計

品質会計は,開発の進行に応じて,図3-1に示した品質会計の各技法を組み合わせて適用 する(図3-3参照).

詳細設計工程

詳細設計 詳細設計レビュー

前工程 仕様書

(第m版)

詳細設計 仕様書

(第1版)

入力 出力 入力

レビュー

(1回目)

レビュー

(2回目)

レビュー

(n回目)

詳細設計 仕様書

(第2版)

出力 入力

詳細設計 仕様書

(第3版)

出力

詳細設計 仕様書

(第n+1版)

出力 入力

<最終版>

次工程

<最終版>

前工程

出力

現工程

図3-2 設計とレビューの関係(詳細設計工程の例)

出荷判定 出荷 上工程

品質会計

テスト工程 品質会計

回帰型バグ予測モデル

バグ目標値設定

(総バグ数、

工程別バグ数)

上工程品質判定表

バグ分析と1+n施策

テストバグ目標値の設定

バグ収束判定

バグ傾向分析 テストバグ目標値の見直し バグ予測技法

バグ目標管理技法

<バグ目標値の設定と見直し>

テスト工程品質判定表

バグ傾向分析

バグ目標値の見直し

(総バグ数、

工程別バグ数)

<品質会計技法>

図3-3 ソフトウェアライフサイクルと適用する品質会計技法

3.2.3 品質会計の適用範囲

品質会計は,IT 製品向けの OS および汎用ミドルソフトウェア製品を開発する部門で 構築された技法である.汎用ソフトウェア製品は,特定顧客向けではなく広く汎用的に使 用されることを想定して開発するため,開発部門が技術動向や顧客動向を分析して自ら要 求仕様を定義するという特性がある.このため,特定顧客向けのソフトウェア開発で重要 な顧客との仕様調整は原則として不要である.このように,ソフトウェア領域によってソ フトウェア開発に関連する必要作業に違いはあるものの,設計以降の作業は基本的に同じ である.こうした背景から,品質会計は,現在,NECグループ全体に渡って標準的な品質 管理手法として適用されている.これまでの適用実績から,品質会計は,以下の範囲で適 用可能である.

・ ソフトウェアライフサイクルプロセス(ISO/IEC12207/1995(JIS X 0160:1996))で定 義する主ライフサイクルプロセスのうち開発プロセスの範囲で適用し,ウォーターフ ォールモデルなどの計画駆動型プロセス[3-10]での適用を前提とする.

・ エンタープライズ系や組込み系といったソフトウェア領域には依存しない.

3.2.4 品質会計の特徴

品質会計の語源は,バグを負債とみなすことからきている.負債は利子で膨らまないう ちに早期に返済するほうが経済的である.ソフトウェアのバグも同様に,1件のバグが複数 のバグを生まないうちに,設計・製造で作り込まれたバグを早期にレビューやテストで摘 出するほうが後戻りが少なくて済む.すべての負債を返済したとき,すなわちすべてのバ グを摘出したとき,そのソフトウェアを出荷する.

品質会計の基本的な考え方は,「バグは作り込まない.作り込んだバグは素早く摘出する」

である.この考え方のもと,上工程では「作り込んだバグは次の工程までに摘出する」こ とを,テスト工程では,「作り込んだバグは,すべて摘出してから出荷する」ことを原則と する(図3-4参照).品質会計では,上工程におけるレビューでのバグ摘出を重要視してお り,そのための目標が「上工程バグ摘出率80%」である.上工程バグ摘出率とは,出荷前 までの全摘出バグ数に対する上工程での摘出バグ数の比率をいう.

品質会計の特徴は,上記の原則を実現するために考案し改善を重ねた以下の2点にある.

・ レビューでのバグ摘出による早期品質確保

 「上工程品質会計」により,レビューで摘出したバグを作り込み工程と摘出工程 の両面から管理

・ 的確なテスト完了判断

 「バグ傾向分析」,「バグ分析と1+n施策」,および「バグ収束判定」の3つの技法

3.2.5 品質会計の手順

開発開始後,上工程では上工程品質会計,テスト工程ではテスト工程品質会計を適用し てバグ目標管理を実施する.図3-5に示す手順に従って,一週間毎などの管理スパンで定期 的に品質分析を実施する.管理スパンは各工程終了時では遅いので,工程途中の状況を把 握し,問題発生時にリアルタイムで適切な対応策を実施することが重要である.工程終了 時では,問題の対応結果の追認にしかならず,途中の対応策が不十分であっても追加対応 策を実施するのは難しいことが多い.

品質分析の結果,目標通りの品質が作り込まれているかを判断し,必要であればバグ目 標値を見直す.適用する品質分析技法は,上工程とテスト工程で多少異なる.上工程では,

ソフトウェアを作り上げる段階であるため,バグの作り込み工程に注目した「作り込み工 程別バグ分析」を実施する.バグの作り込み工程とは,当該バグを作り込んだ工程のこと であり,図2-2に示すV字モデルである開発プロセスの上工程のうちいずれかの工程である.

また,上工程およびテスト工程を通じて,「品質判定表」により品質を判定する.テスト工 程では,計画したテストをほぼ終了した時に,テスト完了判断のため,「バグ傾向分析」,「バ グ分析と1+n施策」,および「バグ収束判定」の3つの技法を併用して,残存問題の把握と 解決を行う.

<品質会計の原則>

• バグは作り込まない.作りこんだバグは素早く摘出する.

<上工程品質会計の原則>

• 作り込んだバグは次工程までに摘出する.

– 作り込み工程で80%摘出 – 次工程で残り20%摘出

<テスト工程品質会計の原則>

• 作り込んだバグは,すべて摘出してから出荷する.

<目標>

• 上工程バグ摘出率 80%

図3-4 品質会計の原則

開発作業

テスト工程品質判定表による品質分析

目標どおりの品質か?

バグ目標値の 見直し

目標どおりの品質である 目標より品質が良い

または,

目標より品質が悪い

開始

工程別バグ目標値を 達成したか?

終了

達成 未達成

品質分析

不合格

合格 工程移行判定

(最終工程は出荷判定)

バグ傾向分析 バグ分析と1+n施策

バグ収束判定 作り込み工程別バグの分析

上工程品質判定表による品質分析

<上工程> <テスト工程>

図3-5 品質会計の手順

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