1.薬理学的に関連ある化合物又は化合物群
なし
<参考>
ヒト型抗ヒト IL-17 受容体 A モノクローナル抗体:ブロダルマブ(遺伝子組換え)、セクキヌマ ブ(遺伝子組換え)
2.薬理作用
(1) 作用部位・作用機序24-44) アトピー性皮膚炎;
デュピルマブは、ヒトインターロイキン-4(IL-4)及びインターロイキン-13 受容体の複合体が 共有している IL-4 受容体サブユニット(IL-4R)に特異的に結合することにより、IL-4 及び IL-13 の両シグナル伝達を阻害する遺伝子組換えヒト IgG4 モノクローナル抗体である。IL-4 及び IL-13 は、アトピー性皮膚炎及び気管支喘息の病態において重要な役割を担う 2 型サイト カインである。
気管支喘息;
デュピルマブはIL-4及びIL-13シグナル伝達を阻害することで、Type2炎症の上流から下流ま でを広範囲に抑制します。これにより、Th0 細胞から Th2 細胞への分化・増殖、B 細胞から IgE 産生細胞へのクラススイッチ、好酸球の血管から気道組織への遊走、気道上皮での杯細胞 過形成および粘液産生、平滑筋肥大などが抑制されると考えられます。
Ⅵ.薬効薬理に関する項目
(2) 薬効を裏付ける試験成績
1) ヒト及びその他の動物種のIL-4Rα に対する結合親和性(in vitro)45)
ヒト、カニクイザル、アカゲザル、コモンマーモセット及びマウス由来の組換え IL-4Rに対 するデュピルマブの結合親和性を、表面プラズモン共鳴(SPR)を用いた Biacore 結合分析に より検討した。
25℃、pH7.4 の条件下で、センサーチップ表面に結合した抗ヒト Fc 抗体で固定化した可溶性 IL-4R単量体又は二量体へのデュピルマブの結合を評価した。デュピルマブは、ヒト IL-4R
(hIL-4R)に高い親和性を示し、単量体及び二量体に対しそれぞれ KD 値 3.31×10-11 mol/L 及び 1.19×10-11 mol/L で結合した。一方、ヒト以外の霊長類ではカニクイザル IL-4R二量体
(MfIL-4R)に中等度(KD 値 5.30×10-9 mol/L)の、MfIL-4R単量体には非常に弱い結合親 和性(KD 値 8.32×10-7 mol/L)を示した。 アカゲザル IL-4R(MmIL-4R)及びコモンマー モセット 4R(Cj4R)単量体への結合親和性も同程度に弱かった。なお、マウス IL-4R(mIL-4R)への結合は検出されなかった。
表Ⅵ-1.デュピルマブと各動物種の遺伝子組換えIL-4Rαとの相互作用
種 IL-4Rα ka [(mol/L)-1s-1] kd (s-1) KD (mol/L) t1/2
ヒト hIL-4Rα単量体 5.56×105 1.84×10-5 3.31×10-11 10.5h hIL-4Rα二量体 4.47×105 5.56×10-5 1.19×10-11 31.1h カクニイザル MfIL-4Rα単量体 NA NA 8.32×10-7 NA
MfIL-4Rα二量体 8.88×105 4.70×10-3 5.30×10-9 25min アカゲザル MinIL-4Rα単量体 NA NA 5.76×10-7 NA コモンマーモセット CjIL-4Rα単量体 NA NA 1.19-10-6 NA
マウス mIL-4Rα単量体 NB NB NB NB
ka=会合速度定数、kd=解離速度定数、KD=平衡解離定数、t1/2=標的滞留半減期(h:時間、min:分)
NA=入手不可:KDはBiacore定常状態結合法を用いて算出したが他のデータは正確に算出できなかった。
NB=リガンドの試験最高濃度(800 nmol/L)で結合相互作用は認められなかった。
2) hIL-4のhIL-4R-への結合に対する阻害作用(in vitro)46)
SRP-Biacore 結合分析により、hIL-4 の hIL-4R への結合に対するデュピルマブの阻害作用 を評価した。
センサーチップ上に固定化した hIL-4R 単量体を、飽和濃度(333 nmol/L)のデュピルマブ 又は同等濃度の非結合対照抗体(ベバシズマブ)とインキュベーションし、並行して固定化 hIL-4R 表面に対照緩衝液を注入した。次にデュピルマブ又は対照抗体と 25 nmol/L の hIL-4 との混合物を、対応する抗体で予め結合させた固定化 hIL-4R 表面に注入した。抗体非存在 下で IL-4 を緩衝液対照の受容体表面に注入し、共鳴シグナルの変化を共鳴単位(RU)で記録 し、リガンド結合を評価した。
緩衝液対照又は非結合対照抗体存在下において hIL-4R 受容体表面に hIL-4 リガンドが結合 することが確認された(それぞれ 42 RU 及び 35 RU)。一方、hIL-4 の hIL-4R への結合の 共鳴シグナルは、デュピルマブ存在下で意義のある hIL-4 の結合は認められなかった(0 RU)
ことから、デュピルマブは、hIL-4 の hIL-4R への結合を完全に阻害することが確認された
(図Ⅵ-1)。
図Ⅵ-1.hIL-4の固定化hIL-4Rα への結合に対する阻害作用
3) ヒトリンパ球細胞表面の天然IL-4Rαへの結合(in vitro)47)
ヒト全血より単離したリンパ球細胞を、単独、アイソタイプ対照抗体存在下(10 µg/mL)、
非標識デュピルマブ存在下(10 µg/mL)又は過剰量の hIL-4 存在下(10 µg/mL)のいずれか の条件で、アロフィコシアニン(APC)結合抗 CD20 抗体(20 µL/検体)及びビオチン化デ ュピルマブ(1 µg/mL)とインキュベーションした。前方及び側方散乱光でゲーティングした リンパ球の蛍光強度を測定した後、APC 及び PE[フィコエリトリン(PE)結合ストレプト アビジン(SA)が結合したビオチン化デュピルマブ]の蛍光強度を測定した。デュピルマブ は、ヒトリンパ球表面の内因性 IL-4R に結合した。ビオチン化デュピルマブの IL-4R への 結合は、細胞を過剰量の hIL-4 又は非標識デュピルマブとプレインキュベーションすること によって阻害されたため、特異的であることが示された。過剰量の非結合アイソタイプ対照 抗体と細胞をプレインキュベーションしたときには、ビオチン化デュピルマブの結合に影響 はなかった(図Ⅵ-2)。
図Ⅵ-2.デュピルマブのヒトリンパ球表面IL-4Rαへの結合
Ⅵ.薬効薬理に関する項目
4) hIL-4及びhIL-13シグナル伝達阻害作用(in vitro)48)
細胞を用いたアッセイにより、I型及びII型受容体を介したIL-4シグナル伝達、並びにII型 受容体を介したIL-13シグナル伝達に対するデュピルマブの阻害効果を評価した。
① hIL-4及びhIL-13を介したSTAT6シグナル伝達阻害作用
デュピルマブの効力は、IL-4 又は IL-13 で誘導される STAT6(シグナル伝達兼転写活性 化因子 6)によるルシフェラーゼ活性に依存するレポーター細胞株(HEK293/STAT6/Luc)
により評価した。
HEK293/STAT6/Luc 細胞を漸増濃度の hIL-4 又は hIL-13 で処理したとき、シグナル伝達 活性化の増加がみられ(図Ⅵ-3)、その EC50は hIL-4 で 11 pmol/L(A)、hIL-13 は 34 pmol/L であった(B)。
デュピルマブは、10 pmol/L の hIL-4 存在下での hIL-4 を介したシグナル伝達を阻害し
(A)、その IC50 は 20 pmol/L であった。また、40 pmol/L の hIL-13 存在下での hIL-13 を 介したシグナル伝達を阻害(B)し、その IC50 は 12 pmol/L であった。いずれのアイソタ イプ対照抗体も、IL-4Rシグナル伝達を介したルシフェラーゼ活性に影響しなかったこと から、デュピルマブによる IL-4 及びIL-13 シグナル伝達の阻害は、いずれも特異的である ことが示された。
(A) (B)
図Ⅵ-3.hIL-4及びhIL-13誘発STAT6シグナル伝達活性化に対する作用
② hIL-4 を介した B 細胞活性化/分化マーカー CD23 のアップレギュレーション阻害作用 Ramos Burkitt リンパ腫細胞株及び健康ドナー由来ヒト PBMC を用いて、hIL-4 および hIL-13 を介したシグナル伝達に対する阻害作用を評価した。
Ramos Burkitt 細胞表面の IL-4R 発現を、PE 結合マウス抗ヒト CD124 抗体で標識す ることにより確認した(図Ⅵ-4A)。細胞を 1 nmol/L の hIL-4 単独又は 12.5 nmol/L~
200 nmol/L の濃度のデュピルマブ存在下で 37℃で 3 日間インキュベーションし、hIL-4 単独並びにデュピルマブ存在下で hIL-4 を処理したときの細胞表面における CD23 発現 を測定した。
デュピルマブは、Ramos Burkitt リンパ腫細胞における hIL-4 を介した低親和性 IgE 受 容体 CD23 のアップレギュレーションを阻害した。
Ramos Burkitt 細胞表面における CD23 の発現は、IL-4 刺激によって増加し、このアッ プレギュレーションは、25 nmol/L 以上の濃度のデュピルマブによって阻害された(図
Ⅵ-4B)。Ramos Burkitt 細胞における IL-13R1 の発現は検出不可能なレベルであるた め、本細胞の IL-4 による反応はI型受容体シグナル伝達によるものである。
(A) (B)
(A) Ramos Burkitt細胞表面のIL-4R発現(緑色線)非染色細胞(黒色線)
(B) 1 nmol/L の hIL-4 単独(濃青色線)及び 12.5 nmol/L(紫色線)、25 nmol/L(淡青色線)、50 nmol/L(茶色 線)、100 nmol/L(緑色線)又は 200 nmol/L(赤色線)のデュピルマブで処理したときの細胞表面における CD23発現/非染色細胞(灰色線)、非刺激細胞(黒色線)
図Ⅵ-4.Ramos Burkitt細胞におけるhIL-4刺激CD23アップレギュレーションに 対する作用
デュピルマブは、ヒトPBMCにおいてhIL-4で誘導されるCD23のアップレギュレーシ ョンも阻害した。
健康ドナー由来のヒト PBMC を hIL-4 及び CD40 抗体(1µg/mL)存在下で hIL-4
(2 ng/mL、0.14 nmol/L)と48時間インキュベートし、B細胞の細胞表面活性化/分化マ ーカーCD23のアップレギュレーションを評価した。hIL-4及び抗CD40の添加前にヒト PBMC をデュピルマブ(0.13 pmol/L~1.3 µmol/L)とプレインキュベーションし、デュ ピルマブの阻害反応を検討した。培養期間終了時の B リンパ球上の CD23 発現を、抗 CD19 及び抗 CD23 を結合した蛍光プローブを含有する抗体カクテルを用いた 2 色 FACSによって分析した(図Ⅵ-5)。
IL-4は、CD19陽性B細胞上のCD23発現を増加させたが、アップレギュレーションの程 度は、各ドナー間で異なっていた(図Ⅵ-5A)。デュピルマブは、hIL-4 で誘導される CD23 のアップレギュレーションを用量依存的に阻害し、最大で hIL-4 非存在下で認めら れる CD23 発現のバックグラウンドレベルまで阻害した(図Ⅵ-5B)。0.14 nmol/L の hIL-4 存 在 下 に お け る デ ュ ピ ル マ ブ の 阻 害 作 用 の IC50 は 、34 pmol/L( ド ナ ー1)、
156 pmol/L(ドナー2)及び157 pmol/L(ドナー3)であった。
(A) (B)
図Ⅵ-5.性ヒト CD19 陽 B 細胞における hIL-4 刺激 CD23 アップレギュレーションに 対する作用
Ⅵ.薬効薬理に関する項目
③ hIL-4 及び hIL-13 を介した 2 型ケモカイン TARC 分泌の阻害作用
hIL-4 及び hIL-13 は、いずれも PBMC 培養において TARC mRNA のアップレギュレー ションを誘導することが報告されているため、ヒト全血を用いて hIL-4 又は hIL-13 で刺 激したときの TARC 分泌を測定した。
血縁関係のないドナー 2 例から得た血液を 0.5 nmol/L の 4、又は 1.0 nmol/L の hIL-13 存 在 下 で 24 時 間 培 養 し た 。 デ ュ ピ ル マ ブ 又 は 陰 性 対 照 抗 体 を 各 種 濃 度 (0.01~ 250 µg/mL)で添加した後、IL-4 又は IL-13 を添加した。24 時間培養した後、ELISA に よって TARC を測定した。IL-4 又は IL-13 非刺激並びに阻害抗体非存在下での IL-4 又は IL-13 単独処理を対照とした。
デュピルマブは、アイソタイプ対照抗体と比較して、TARC 分泌を用量依存的に阻害した
(図Ⅵ-6)。
血縁関係のないドナー2例から得た血液を0.5 nmol/LのhIL-4(A、B)及び1.0 nmol/LのhIL-13(C、D)の存在 下で培養
図Ⅵ-6.全血培養におけるhIL-4及びhIL-13刺激性TARC分泌に対する作用 また、デュピルマブのIL-4及びIL-13刺激性TARC分泌阻害作用のIC50及びIC90を算出 した。
表Ⅵ-2.デュピルマブ(0.01~250 μg/mL)のTARC分泌阻害作用 IL-4 (0.5 nmol/L) IL-13 (1 nmol/L) ドナー1 ドナー2 ドナー1 ドナー2 nmol/L µg/mL nmol/L µg/mL nmol/L µg/mL nmol/L µg/mL
IC50 0.52 0.08 0.24 0.04 0.27 0.04 0.26 0.04
IC90 1.07 0.16 2.28 0.43 0.58 0.09 0.67 0.1