D.? 豊 騨 ●
2)発声・発語の機能的変化および量的変化
1)・1時点(H7,6,9,1:11)
①発声・発語の機能的変化〜コミュニケーション行動の分析〜
1時点で行われた大人と、事例Bのやりとりは、Table llに、やりとりの 中で表出した聴性行動はTable 12に示した。
この保育場面はままごとの中で、パンを切る遊びがテーマになっており、
事例Bを中心に指導者と母親の3人でかかわっている場面である。事例Bは、
パンを切った後、オーブンで焼いたり、お皿にのせて食べたりする動作はで きておらず、包丁でパンを切り、切ったパンをまたつないだりする動作を繰 り返している。
母親と指導者は、事例Bの動作に対して、対応した行動をとるとともに、
母親は、Table llの事例Bの6、事例Bが包丁でパンを切る動作を「よいし ょ」と言語化したり、事例Bが包丁でパンを切る際、 「トン」と発声し擬音 語をつけ加えるなどして、聴覚刺激を与えている。また、Table 11の大人の 発声6、指導者の「わたしがする一」と言う発声のように、事例Bの発声す るべきことばを代弁した発声もあった。
事例Bは音の存在に気付いており、母親の「トン」と言う発声によってパ ンを切ったり、指導者の「ぺつた一ん、あつまれ一」と言ってパンをもう一 度つなぐことを促したことに対してパンを差し出し反応したことなど、動作 による聴性行動は表出した。しかし、音を弁別することのできる段階ではな く刺激音に対する発声による反応はみられなかった。
やりとりの交互作用はわずかしかみられず、ほとんどは事例Bの動作を捉 えてそれを音声刺激に変えて与えていると言った一方的なかかわりであった。
一48一
Table ll コミュニケーション行動
事例B
1,包丁を持って、パンを切る。〈一
2,包丁を持って、パンを切る。〈一
*1
3包丁を持って、パンを切る。〈一
*2
4,包丁を持って、パンを切る。〈一
*3
5,#「あ■…一・」と言ってMの包丁9(
を取り上げ、自分の横に置
く。
6,包丁を持って、パンを切るく一
*4
7,持っているパンをすべて切・、
り終わる。
ノ
8,パンを一切れ持ってMに差 《 し出す。*5
9,「う一」と言って、パンを Mにわたす。*6
10,残りのパンを持つ。
11,パンをMに差し出す。*7 媛
t
大 人
一一 P,(M)「トントン」と言ってから別の包 丁を持ち、再び「トントン」と
言って、まな板をたたく。
一一 Q,(T}(M}「トン」と言う。
一一 R,(T)(M}「トン」と言う。
一4,(T)(M}「トン」と言う。
一一 T,(M)包丁でまな板をたたく。
XN
為6,(M}「あかんの。はい、わかった」と 言う。
(T}「わたしがする一」と言う。
一一 V,(M)「よいしょ」と言う。
巡8,(T}(M}「やった一」 と言っ℃、拍手す
る
・9,(T)「ぺつた一ん。あつまれ一」と言ノ
/ ってパンをもう一度つなぐことを 促す。
>10,(M}「ちょうだい」と言って手を合わ
/ せる。
11,(M)「ぎゅ、ぎゅ」と言ってパンをつ ないでまな板の上に置く。
》12,(M)「これもぺつた一・一一んする?」と言 う。
づ13,(M)「これも?」と言ってパンを受け 取る。
まな板の上で「ぎゅ、きゆ」と言 いながらパンをつなぐ。
(T}「ぺつた一ん」と言う。
(M}「パンをすべてつないでまな板に のせる」
(Table l1の#は、質的変化の分析に使用した音声である。*は、大人とのやりと りの中でBが聴性行動を示した部分である。)
一層ま交互作用を示す。
一49一
Table 12 聴性行動
NO, 音刺激 聴性行動
*1 Mの発声 パンを切る。
*2 Mの発声 パンを切る。
*3 Mの発声 パンを切る。
*4 Mの発声 パンを切る。
*5 Tの発声 パンを差し出す。
*6 Mの発声 パンをわたす。
*7 Mの発声 パンを差し出す。
②発声・発語の量的変化〜自発的および模倣発声・発語回数の測定〜
Table 12の保育場面を含む3分間の自発的発声・発語回数:は7回あった。
模倣発声・発語はみられなかった。
一50一
2)2時点(H7,6,15,1:11)
①発声・発語の機能的変化〜コミュニケーション行動の分析〜
2時点で行われた大人と、事例Bのやりとりは、Table l3に、その中で表 出した聴性行動はTable l4に示した。
この保育場面は、中に石のはいっている牛乳パヅクを使った遊びがテーマ になっており、事例Bが母親とかかわっている場面である。母親は牛乳パヅ クのたくさんはいった段ボールの横に座っており、事例Bに牛乳パヅクを手 渡ししながらかかわった。事例Bは渡された牛乳パヅクを積みあげたり振っ て音を立てたりする動作を繰り返した。
母親は、事例Bの行動に対応した反応をするとともに、Table 13の大人の 1、3、6、7、8のように事例Bの行動を「よいしょ」と言語化したり、
「かして一」 「聞こえないわ」 「聞こえた聞こえた」と、事例Bの発声する であろうことばを代弁し、発声した。また、牛乳パックを振ったときに出る 音を「がらんがらん」と擬音語をつけ加え表現するなど、』聴覚刺激を頻繁に
与えた。
事例Bは母親の発声や牛乳パヅクを振ったときにたてた音に気付いており、
Table 13の事例Bの1のように母親の発声によって牛乳パヅクを積んだり、
Table l3の事例Bの2の様に牛乳パヅクを振ったときの音を聞いて、手を伸 ばし牛乳パックをとったり、逆にTable 13の事例Bの6のように牛乳パヅク の音がしなかったことに対して首を傾げたりするなど、聴性行動は随所にみ
られた。
また、大人からの一方的なかかわりが減少し、先に述べた照性行動に母親 が再び反応したり、Table 13の大人の発声の4のように「がらんがらん」と 言って牛乳パヅクを振ることで、事例Bの興味や好奇心を引き出し、反応を 誘発する事によって交互作用を含んだやりとりが行われるようになった。
一51一
Table l3 コミュニケーション行動
事例B
1,牛乳パヅクを積む。*1
2,Mの方を見て#「あ一」と言V って牛乳パヅクを取る。*2
3,牛乳パヅクを積む。
4,別のパヅクを取り、振る。
*3
5,Mの持っている大きな箱を 取る。
6,大きな箱を振り、首を傾げ《
る。*4
7,牛乳パックを持って振る。 ・、
*5
8,別の牛乳パヅクを持って振・、
り、Mの方を見る。*6 \
9,後ろを見ている。
*7
tr レ
Nx
x
10,牛乳パヅクを持ち、振る。・、
大 人
・1,(M)「よいしょ、積んでいって、よい
ノ
/ しょ、よいしょ」と言いながら、
牛乳パヅクを積む。
/2,{M)「がらんがらん」と言って、牛乳 ノ パヅクを振る。
、
)93,(M}「はい、はい、かして一やろ」と
ノ ニ ひ
自つ。
一>4,(M}「がらんがらん」と言う。
》5, (M)「どうぞ一」と言う。
巡6,(M)「あれ一ないわ、聞こえないわ」
と言う。
巡7,(M}「がらんがらん、聞こえた」と言 って、手を耳に持っていく。
、
逼8,(M)「聞こえた聞こえた、がらんがら んと言う。
(M}「ちょうだい」と言って、手を合 わせる」
K 1・9,(M}「なに?」と言う。
巡10,(M)「がらんがらん」と言う。
(Table 13の#は、質的変化の分析に使用した音声である。*は、大人とのやりと りのなかでBが聴性行動を示した部分である。)
一Xま交互作用を示す。
一52一
Table l4聴性行動
NO, 音刺激 聴性行動
*1 Mの発声 牛乳パヅクを積む。
*2 牛乳パヅクの音 牛乳パヅクを取る。
*3 牛乳パヅクの音 牛乳パヅクを振る。
*4 音がしなかったこと 首を傾げる。
*5 牛乳パヅクの音 パンを差し出す。
*6 Mの発声 パンをわたす。
*7 牛乳パヅクの音 牛乳パヅクを振る。
②発声・発語の量的変化〜自発的および模倣発声・発語回数の測定〜
Table l4の保育場面を含む3分間の自発的発声・発語回数は11回あった。
模倣発声・発語はみられなかった。
一53一
3}3時点(H7, 9, 26,2:2}
①発声・発語の機能的変化〜コミュニケーション行動の変化〜
3時点で行われた大人と、事例Bのやりとりは、Table 15に、その中で表
出した慢性行動はTab五e 16に示した。
この保育場面は、メガホンを使った遊びがテーマになっていて、事例Bを 中心に、指導者1、指導者2の3人でかかわっている場面である。事例B、指 導者1、指導者2とも同じメガホンを持っている。事例Bはメガホンそのもの に興味を示している段階であり、メガホンの機能を十分に利用した遊びをす る段階で、メガホンの紐を触ったり、指導者のメガホンに自分のメガホンを 重ねたりする遊びを繰り返した。
指導者1、指導者2は、事例Bの動作に対して対応した行動をとるとともに、
Tabユe 15の事例Bの3のように、メガホンの紐を触っている動作に対して、
「くるくるくる」といって、事例Bの行動を言語化した。また、Table 15の 事例Bの7のように、事例Bが自分のメガホンを指導者のメガホンに重ねた 行動に対して、指導者が2つのメガホンを指しながら、 「いっしょ、いっし ょ」と発声し、事例Bが発するであろうことばを代弁した。さらに、メガホ ンで「お酷い」と呼びかけるなど、頻繁に聴覚的刺激を与えていた。
指導者1、指導者2の与える音声刺激に対して、事例Bの行動が誘発される という聴性行動として同定できるものは少ないが、Table 15の大人の発声1 のように「お凹い」という呼びかけに対して、事例Bは「あ一」という発声 での反応が表出した。
やりとりは、ほとんどが事例Bの行動を捉えて、それを音声刺激に変えて 与えているという大人からの一方的なかかわりであった。
一54一
Table l5 コミュニケーション行動
事例B
!1,メガホンを目に当て、 「あく 一」と言う。*1 \ 2,自分のメガホンをT1のメガ・
ホンに重ねる。 \
3,メガホンの紐をさわる。 ・、
4,メガホンを鼻に当て「あ一ぐ
へ
jと吾う。*2
5開平搾T1のメガホンに\
6,メガホンをはずし、T1を見k
て笑う。
7,メガホンをT1のメガホンに・、
重ねる。
8,メガホンをT1のメガホンに・
重ねる。 \
9,重ねたメガホンを押す。 ・、
!10,声を出して笑う。 〆 11,メガホンの紐をさわる。
大 人
、・1,(T1)メガホンを口に当て、 「お一い」
ノ と言う。
x
逼2,(Tl}メガホンを目に当ててBを見る。
x
逼3,(T2}T1とBのメガホンを指さしして、
「いっしょいっしょ」と言う。
4,(T1)「Bちゃん」とメガホンで呼ぶ。
》5,(T2)「くる、くる、くる」と言う。
xXQ 6,(T2)Bのまぬをして「お一一い」と言う
N
鳥7,(TD重なったメガホンで「お一い」と 言う。
/ (Tl)「あれ?」と言う。
8,(Tl}「メガホンを口に当て「お一い」
と言う。
x
XQ 9,(T2)TlとBのメガホンを指さしして、
「いっしょいっしょ」と言う。
(Tl}「いっしょやね一」と言う。
N
XQ 10,(Tl}「あれ?」と言う。
》11,(Tl)押されて後ろにのけぞり、 「う 〆 わ一」と言う。
12,(T1}「Bちゃん」とメガホンで呼ぶ
(Table 15の*は、大人とのやりとりの中で、 Bが聴性行動を示した部分である。)
一一rは交互作用を示す。
一55一