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・分析方法

口蹄疫の非清浄国であるロシアから日本への乾牧草の輸入は禁止されている。禁止品として輸入許可証を取得する 条件として「密閉状態のまま、

100℃以上の蒸気で80℃以上、10

分以上の加熱処理を行うこと」が定められている。

また、同じく口蹄疫非清浄国である中国から輸入されている稲わらについては、上記の条件で加熱殺菌する方式が とられており、ロシアからの乾牧草の輸入が許可されるとした場合、同様の基準が設定される可能性がある。従って、

オートクレーブによる上記条件の加熱の前後で、成分がどのように変化するのかを検証した。なお、オートクレーブ による加熱処理を行った後は水分量が変化するため、成分結果を出す際には調整を行った(後述)。

・成分分析値

実需者との協議を踏まえ、下記項目を分析した。

33 分析結果

サンプル名

オートクレープ処理後 オートクレープ処理前

水分(%)

3.52 3.02 3.90 6.51 8.70 7.31

粗タンパク質(%)

2.53 4.41 5.30 2.60 4.65 5.31

粗脂肪(%)

1.05 1.61 1.85 1.11 1.54 1.98

粗繊維(%)

35.22 35.03 31.30 37.24 38.53 32.71

粗灰分(%)

5.20 4.37 7.61 5.13 4.28 7.21

可溶無窒素物(%)

56.00 54.58 53.94 53.92 51.00 52.79

カリウム

(

%)

0.93 1.18 1.18 0.90 1.15 1.13

カルシウム(%)

0.16 0.18 0.64 0.15 0.15 0.55

NDFom

(%)

72.40 70.16 66.55 74.22 73.20 69.39

ADFom(%) 46.20 44.92 45.26 46.93 45.99 43.00

ADL

(%)

11.67 13.15 13.94 9.25 7.91 8.86

セルロース(%)

34.53 31.77 34.32 37.68 38.08 34.14

ヘミセルロース(%)

26.20 25.24 21.29 27.29 27.21 26.39

βカロテン(mg/kg)

0.00 1.94 7.47 0.30 1.97 7.42

硝酸態窒素

(ppm) 8.78 12.37 12.45 9.80 7.72 10.66

【注記】

・水分以外は乾物当たり

・粗タンパク質+粗脂肪+粗繊維+粗灰分+可溶無窒素物=乾物

100

NDFom=耐熱性

α-アミラーゼを用いないで分析操作し、粗灰分を含有しない

NDF

ADFom=粗灰分を含有しない ADF

・NDFom=ヘミセルロース+セルロース+リグニン

NDFom-ADFom

=ヘミセルロース

・ADFom-ADL=セルロース

ADL=リグニン

なお、オートクレーブ前後での水分については、オートクレーブ後に乾燥させ、その後、サンプルとして保管中に 吸収した水分を示した。この値については、保管状況によって影響される。他の成分値を求める際に、乾物当たりの 含有率等を算出し、その際に水分を考慮した。

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検体の分析を行った名城大学農学部林義明准教授による分析結果に対するコメントは下記の通りである。

ロシア産チモシー乾草サンプルの成分結果について

名城大学農学部 林 義明

・水分

通常、輸入乾草の水分含有率は

11.1±2.1%であるため、オートクレーブ処理前のいずれのサンプルも比較的よく乾

燥したサンプルであると考えられる。オートクレーブ処理したサンプルは恒温器で乾燥させた後に測定しているため、

通常より低い水分である。

・粗タンパク質

輸入乾草において、粗繊維含有率が

32%以上 37%以下の場合は乾物当たり平均 7.6%、粗繊維含有率が 37%を超え

る場合は乾物あたり平均

7.0

%である(日本標準飼料成分表

2009

年版)。これらの平均値と比較するといずれのサンプ ルも低い値である。

・粗脂肪

輸入乾草において、粗繊維含有率が

32%以上 37%以下の場合は乾物当たり平均 2.1%、粗繊維含有率が 37%を超え

る場合は乾物あたり平均

2.0

%である(日本標準飼料成分表

2009

年版)。これらの平均値と比較するといずれのサンプ ルも低い値である。

・粗繊維

輸入乾草において、粗繊維含有率は乾物当たり

29.7%から 39.8%とされている(日本標準飼料成分表 2009

年版)。

いずれのサンプルもこの範囲内の値である。

・粗灰分

輸入乾草において、粗繊維含有率が

32%以上 37%以下の場合も、粗繊維含有率が 37%を超える場合も乾物あたり

平均

6.7%である(日本標準飼料成分表 2009

年版)。この平均値と比較するとサンプル

N

とサンプル

P

は低く、サン

プル

K

は高い値である。

・可溶無窒素物

輸入乾草において、粗繊維含有率が

32%以上 37%以下の場合は乾物当たり平均 49.2

%、粗繊維含有率が

37%を超

える場合は乾物あたり平均

44.5%である(日本標準飼料成分表 2009

年版)。これらの平均値と比較するといずれのサ ンプルも高い値である。

・カリウム

輸入乾草において、乾物当たり平均

1.63±0.47%である(日本標準飼料成分表 2009

年版)。この平均値と比較すると いずれのサンプルも低い値である。

・カルシウム

輸入乾草において、乾物当たり平均

0.31±0.13%である(日本標準飼料成分表 2009

年版)。この平均値と比較すると サンプル

N

P

は低く、サンプル

K

は高い値である。

・中性デタージェント繊維

(NDFom)

輸入乾草において、粗繊維含有率が

32%以上 37%以下の場合は乾物当たり平均 66.6

%、粗繊維含有率が

37%を超

える場合は乾物あたり平均

71.5%である(日本標準飼料成分表 2009

年版)。これらの平均値と比較するといずれのサ ンプルも同等または高い値である。

・酸性デタージェント繊維

(ADFom)

輸入乾草において、粗繊維含有率が

32%以上 37%以下の場合は乾物当たり平均 37.9

%、粗繊維含有率が

37%を超

える場合は乾物あたり平均

43.2%である(日本標準飼料成分表 2009

年版)。これらの平均値と比較するといずれのサ ンプルも高い値である。

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・ヘミセルロース

輸入乾草において、粗繊維含有率が32%以上37%以下の場合のNDFomとADFomの差から乾物当たり平均28.7%、

粗繊維含有率が

37%を超える場合は乾物あたり平均 28.3%と算出できる (日本標準飼料成分表 2009

年版)。これらの 平均値と比較するといずれのサンプルも低い値である。

β-カロテン

近年の調査事例では

2.6 mg/kg

から

10 mg/kg

とされている(日本標準飼料成分表

2009

年版)。サンプル

K

の含量は この範囲内であるが、サンプル

N

P

の含量は低く、範囲外である。

・硝酸態窒素

千葉県内でのチモシー乾草の含有率は乾物当たり

0 ppm

から

112 ppm

と報告されている(青木ら, 2002)。硝酸態窒 素は、乾物当たり

1000 ppm

未満であれば、十分量の飼料と水が給与されていれば安全とされる。いずれのサンプル

1000 ppm

未満であり、硝酸態窒素に関する安全性に問題はない。

まとめ

これまでに報告されているチモシー乾草の成分と比較すると、いずれのサンプルも粗タンパク質や粗脂肪の含有率 が低く、可溶無窒素物の含有率が高かった。粗繊維と

ADFom

の含有率の結果から、これまでに報告されているチモ シー乾草と比較するとセルロース含有率が高い可能性が考えられる。

β-カロテン含量については、サンプル C

がその 他のサンプルより高く、これまでに報告された含量と同等であったため、

β-カロテンに関してはサンプル C

が比較的 良好な乾草と考えられる。硝酸態窒素含有率は低く、飼料として硝酸態窒素に関する安全性に問題はないと考えられ る。また、オートクレーブ処理によって、いずれのサンプルも粗繊維、NDFomおよびヘミセルロースの含有率が減 少した。

分析結果に対する実需者のコメント

飼料輸入の専門家からのコメントは以下の通り。

①栄養価(

β

カロチン以外)、ADF、

NDF

オートクレーブによる加熱が栄養価に与える影響について、一般に牧草を評価する上で必ずチェックされる

CP

(粗 タンパク)等の影響はないものと思われる。

但し今回の分析には

TDN(可消化養分総量)Total Digestible Nutrients

が入っていないため、次回があれば、こ の数値も含めて、総合的に評価する必要がある。

β

カロテンについて

チモシーの乾牧草における

β

カロテン(ビタミン

A)に平均値は 3~ 13mg/kg

程度とされているが、

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検体とも、数 値にばらつきがあり、かつ処理後の値は変化が見られなかった。特に

A

検体は数値が

0

となっていた[これについて は再検査を実施したが、2度目の検査でも0であった]。

この点について、今回のサンプルは収穫後、屋外で長い間放置されたため、β カロテンが消失し、その結果、オー トクレーブによる処理前後でも数値に変化が見られなかった可能性がある。次回以降は収穫直後の牧草及びその燻蒸 後の検体を測定する必要がある。従って今回の分析値では正確な評価が難しい。

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