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2.5.5 安全性の概括評価

2.5.5.4 成人及び参考資料として提出した海外小児試験との安全性の比較

性の比較

2.5.5.4.1 日本人成人患者との比較

日本人の成人患者における D961H の安全性は、RE 患者を対象とした試験(D961HC00002 試 験)及び RE治癒患者に対する RE再発予防効果を検討した試験(D961HC00006 試験)で評価し た。なお、GU、DU、AU、NERD、及びZES の日本人患者を対象とした D961H の臨床試験は実 施していない(ネキシウムカプセル承認時資料概要[2011年7月]参照)。

RE患者を対象としたD961HC00002試験において、D961H 20 mg及び40 mgの1日1回最長8 週間投与の安全性に問題は認められず、良好な忍容性を示した。また、RE 治癒患者を対象とし たRE維持療法D961HC00006試験において、D961H 10 mg及び20 mgの1日1回最長24週間投 与の安全性に問題は認められず、良好な忍容性を示した。両試験の安全性プロファイルは、それ までに日本人患者及び海外患者から得られていた OPZ の安全性プロファイル、並びに海外患者

におけるD961Hの安全性プロファイルと同様であった。

今回実施した日本人小児患者を対象とする第 I/III 相試験(D961TC00002 試験)から得られた 安全性データは、D961HC00002 試験及びD961HC00006 試験から得られた日本人成人患者におけ る安全性プロファイルと同様であった。

2.5.5.4.2 海外小児患者との比較

海外小児患者におけるD961Hの安全性は、SH-NEC-0001試験(1~24カ月齢)、SH-NEC-0002 試験(早産児及び新生児[在胎齢 32 週以上から在胎 38 週間後 1 カ月未満の過期産まで])、

D9614C00096 試験(月齢 1~11カ月)、D9614C00097 試験及び D9614C00099試験(1~11 歳)、

並びに D9614C00094 試験及び D9614C00098 試験(12~17 歳)により評価された(2.5.4.3項参 照)。これらの試験から得られた安全性データは、それまでに得られていた海外成人の安全性プ ロファイルと同様であった。また、今回第 I/III 相試験(D961TC00002 試験)から得られた日本 人小児患者における安全性データとの比較においても同様であった。

2.5.5.4.3 CYP2C19 遺伝子型による比較

海外データでは、PM例にD961H 40 mg 1日1回投与を継続したときの投与後無限大時間まで の血漿中濃度-時間曲線下面積(AUC)の平均値がEM例と比較して約100%、また平均Cmax

約 60%増加する結果が得られている。しかし、安全性プロファイルは同様であり、この結果を踏

まえたD961Hの薬量学的な対応は取られていない。

日本人成人患者を対象に実施された D961HC00002 試験(D961H 40 mg[191 例]又は 20 mg

[190例]最長8週間投与)、D961HC00006試験(D961H 20 mg[188例]又は10 mg[189例]

最長 24 週間投与)、D961HC00001 試験(D961H 20 mg[175 例]最長 24 週間投与)、及び D961C00005 試験(D961H 20 mg[130 例]最長 52 週間投与)において、CYP2C19 遺伝子型が PMであったことに関連した有害事象はみられなかった。

日本人患者では、海外と異なり、PM の割合が高いことが知られている(15~24% vs ~3%)。

PM例のPKプロファイルは日本と海外で異ならない。日本と海外でCYP2C19遺伝子型の割合が 異なるものの、D961H の安全性プロファイルは、日本人成人患者及び海外成人患者で異なること を示す結果は得られていない。また、それぞれのCYP2C19遺伝子型においてD961H の用量と関 連する有害事象も報告されていない。

S体とR体が 1:1のラセミ体であるOPZは、そのS体であるD961Hの安全性評価として参照 されている。すなわち、日本人患者を対象としたOPZのデータからPM例とEM例において同様 の安全性プロファイルが示されており、D961Hにも関連している(Ohkusa et al 2005、Kinoshita et al 2006、Uemura et al 2008)。なお、2つの光学異性体では代謝が異なり、PMとEMのPKの差

は、D961Hと比較してOPZで大きい。

以上より、同じ用量の D961H を投与したときの血漿中濃度が PM例と EM 例で異なるが、安 全性プロファイルは同様であり、日本人成人、海外成人、海外小児のいずれにおいても用量調節 の必要性は示唆されていない。

2.5.5.4.4 小児を対象とする薬剤疫学試験

実臨床において、0~18歳の小児患者にD961H を投与したときの長期安全性を評価する目的で、

英国の Health Improvement Network のプライマリケアデータベース及びオランダの PHARMO

Record Linkage Systemのデータベースを用いて、プロスペクティブな薬剤疫学試験を2試験実施

した。当該試験の2つの目的は、D961H 及び他の酸分泌抑制剤を初めて投与された小児患者の併 存疾患や特徴について確認すること、及び予め規定した 8 種類の安全性の転帰に関して予測する ことであった。

D9612N00014試験では、20 年 月から20 年 月までに PPI又はH2RAを初めて処方さ

れた小児 16,077例中、PPIを処方されたのは50.8%であったが、D961H を処方されたのはわずか

24例であった。予め規定した安全性の転帰の累積率はPPI投与例に比してH2RAを投与した小児 のほうが高かった(1.13% vs 2.44%)。

D9612N00016試験では、2008年9月から2011年8月までにPPI又はH2RAを初めて処方され た小児23,470例中、PPIを処方されたのは70.9%で、うちD961H投与例は12.0%であった。投与

期間はD961H投与例の40%で3カ月を超えた。概ねD961H投与例は、H2RAや他のPPI投与例

と比較して、若年でより重症度が高く、専門医による診察の頻度も高かった。いずれの薬剤につ いても、予め規定した安全性の転帰及び入院の割合は低く(2%)、D961H、その他の PPI 及び H2RAで差はなかった。

以上、2 つの薬剤疫学試験では、PPI の長期投与によりリスクが増加することを示すデータは 得られていない。

2.5.5.4.5 市販後成績データとの比較

1歳以上のGERD小児患者を対象とする経口のD961H は、全世界75カ国以上で承認されてい る。2016 年 3 月 10日現在、1~17 歳の小児患者における経口 D961H の自発報告は779 例で、

1927 件の有害事象が報告された。そのうち、重篤が 312 件、非重篤が 1615 件であった。1 例に 認められた有害事象の最大有害事象件数は23件であった。

死亡例は1例報告されている(Case ID )。当該例は、先天性ネフローゼ症候群、

慢性腎不全、重度の動脈性高血圧の既往を有する カ月の男児で、腹膜透析及び両側腎切除を 受けていた。腎移植術を受けた日に D961H を処方され、翌日死亡した。剖検により、両側胸水 及び脾腫を伴う広範な肺水腫が確認された。当該報告では、原因が疑われる他の薬剤や、他の解 釈の可能性も示されていた。

報告の半数以上は米国からであった。GERD が最も多い適応症であった。その他、主に報告さ れた適応症は、胃炎、消化不良、食道炎であった。365 例では適応疾患の報告はなかった。東ア ジアからの報告は27例で、うち8例は日本からであった。アジアからの報告には69件の有害事 象が含まれ、重篤が6件、非重篤が63件であった。日本からの報告には14件の有害事象が含ま れ、重篤は1件、非重篤が13件であった。アジアからの報告27報のなかの有害事象の大半は、

D961Hの企業中核データシートに記載された既知の事象であった。

779例中、主に報告された用量は20 mg 1日1回であった。最高用量は560 mgであったが、こ れはオメプラゾール 20錠、クロルジアゼポキシド60 mg、dothiepin 28錠とともに服用した自殺 未遂の症例で、患者は意味不明の言動及び傾眠状態となった(Case ID )。

報告された事象はすべての器官分類に分散した。小児患者において最も多く報告された有害事 象は、MedDRA 器官別大分類で「胃腸障害」、「傷害、中毒および処置合併症」、「一般・全身 障害および投与部位の状態」及び「神経系障害」の 4 つであった。それぞれの器官別大分類で多 く報告された事象は、「胃腸障害」が嘔吐、腹痛、GERD、悪心、及び下痢、「傷害、中毒およ び処置合併症」が適応外使用、製品使用の問題、投薬欠落、及び企図的製品誤用、「一般・全身 障害および投与部位の状態」が薬効欠如、及び倦怠感、「神経系障害」が頭痛、痙攣発作、振戦、

及び浮動性めまいであった。報告された有害事象には、適切な評価に必要な重要な医学的情報が 欠如しているものもあった。なかには、併用薬や病歴の情報があれば、当該事象について別の説 明がついたかもしれない報告もあった。

1~17歳の小児にD961Hを投与した後に認められた有害事象の全般的評価では、安全性に問題 は認められなかった。

20 年 月 日までの出荷量に基づいた小児及び成人全体の累積曝露、及び2016年3月 10 日までの市販後報告数を表 13にまとめた。

表 13 累積曝露(20 年 月 日現在)、及び市販後使用経験における有害事象報告件数

(2016年3月10日現在)

累積曝露(100万患者・年) 総報告例数 総有害事象件数

全世界 120 93,526 274,751

東アジア(日本を含む) 9.8 5,975 10,280

日本 5.3 3,600 5,134

これら累積曝露及び総報告数を日本とその他の地域とて比較したところ、安全性上の懸念はみ られなかった。ただし、地理的な違いや、各国での報告パターンの違いなど、確実な結論を得る ことは困難であることに注意されたい。

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