急性胆管炎は胆汁の細菌感染が病因である.炎 症の診断確定には病理組織学的診断が決め手とな るが,急性胆管炎は手術や生検による標本採取が 困難なため,臨床徴候を参考に診断することにな る.広く知られている臨床徴候として Charcot三 徴があるが,頻度は50 〜 70 %程度であり感度の 点で限界があった 1).そのため『急性胆管炎・胆囊 炎診療ガイドライン』 1)では血液検査と画像所見 を参考にして「感染」と「胆道閉鎖,胆汁うっ滞」
を推察する診断基準が示された(表6).その診断 基準は,「A:身体的所見」および「B:血液生化学 所見と画像所見(胆管拡張・狭窄・結石)」からな り,疑診としては「Aのいずれか」と「Bの2項目」
を満たすものをさし,確診は Aのすべてを満たす もの(Charcot三徴をさす)または「Aのいずれか」
図1.Critical view(文献10より引用改変)
Calot 三角の内側の漿膜,脂肪組織,結合織,
リンパ管,神経組織などは除去され,胆囊管と 胆囊動脈が露出している.
と「Bのすべて」を満たすものとなっている.
その診断基準を検討した報告は,桐山ら 15)が総 胆管結石例を対象にした検討で,従来の Charcot 三徴による診断に比べ多くの急性胆管炎が診断可 能となったが,疑診には明らかに急性胆管炎でな い症例が多く含まれていたと述べている.横江 ら 16)は,疑診と確診を対象とした場合,診断基準 の感度は83.6 %,特異度は30.7 %,確診のみを対 象とした場合,感度は45.9 %,特異度は84.6 %で あったと報告している.現時点では,急性胆管炎 のガイドラインの診断能は十分に高いものではな く,診断にあたり細心の注意が必要である.
2.重症度判定基準
急性胆管炎は致死的な病態へと進行するため,
重症度に応じた的確な治療が要求される 17).以前
より病態をあらわすのに Reynolds 5徴(発熱・黄 疸・腹痛・意識障害・ショック)が用いられてき たが,この5徴候を認める胆管炎はまれである.
また,一部に最重症の急性胆管炎として急性閉塞 性化膿性胆管炎(acute obstructive supprative cholangitis:AOSC)という用語が概念的に用い られてきた 1).従来の重症急性胆管炎の病態をま とめてみると,①保存的治療に抵抗性,②臓器不 全〔腎不全・ショック・播種性血管内凝固(DIC)・ 意識障害〕を伴う,③早急に胆道ドレナージが必 要という病状があげられる.『急性胆管炎・胆囊 炎診療ガイドライン』 1)では,これらを総合し重 症度の定義として以下のように示している.
重 症:敗血症による全身症状をきたし,ただ ちに緊急ドレナージを施行しなければ生命に危機 を及ぼす胆管炎.
中等症:全身の臓器不全に陥っていないが,そ の危険性があり,すみやかに胆道ドレナージをす る必要がある胆管炎.
軽 症:胆管炎を保存的に治療でき,待機的に 成因検索とその治療(内視鏡的措置,手術)を行 える胆管炎.
この定義に準じて重症度判定基準(表7)が示さ れた.『急性胆管炎・胆囊炎診療ガイドライン』 1)
の検証において,桐山ら 15)は結果の判明までに時 間を要する菌血症が判定項目にあること,黄疸の 項目により中等症が多くなるなどの問題点がみら れたと報告している.
表6.急性胆管炎の診断基準 1)
A ①発熱
②腹痛(右季肋部または上腹部)
③黄疸
B ④ ALP,γ─GTPの上昇
⑤白血球数,CRPの上昇
⑥画像所見(胆管拡張・狭窄・結石)
疑診:Aのいずれか+Bの2項目を満たすもの 確診:① Aのすべてを満たすもの(Charcot三徴)
② Aのいずれか+Bのすべてを満たすもの ただし急性肝炎やほかの急性腹症が除外できること とする
表7.急性胆管炎の重症度判定基準 1)
重 症:急性胆管炎のうち,以下のいずれかを伴う場合には「重症」である
①ショック
②菌血症
③意識障害
④急性腎不全
中等症:急性胆管炎のうち,以下のいずれかを伴う場合には「中等症」である
①黄疸(ビリルビン>2.0 mg/dl)
②低アルブミン血症(アルブミン<3.0 g/dl)
③腎機能障害(クレアチニン>1.5 mg/dl,尿素窒素>20 mg/dl)
④血小板減少(<12万 /μl)〔肝硬変などの基礎疾患で血小板減少をきたすことがあるので注意する〕
⑤39 ℃以上の高熱
軽 症:急性胆管炎のうち「重症」,「中等症」の基準を満たさないものを「軽症」とする
3.画像診断
胆汁感染の有無を画像所見により判定すること は困難であるため,画像診断の意義は主として胆 道閉塞の有無と,その原因となる胆管結石や胆管 狭窄などを証明することになる.これらの証明に 超音波診断,MRIや MR胆管膵管造影(MRCP),
CT,drip infusion cholangiographic CT(DIC─
CT),内視鏡的膵胆管造影(ERCP)がある.『急 性胆管炎・胆囊炎診療ガイドライン』 1)に記載さ れたそれぞれの推奨内容を表8に示す.来院時に 急性胆管炎を疑う症例があれば,最初に超音波検 査を施行する.その所見よりその次に必要と考え られる検査を行う.胆道以外の疾患の鑑別を目的 とした単純 X 線検査を行うことを忘れてはなら ない.
4.搬送基準
急性胆管炎は放置すると最終的には重症とな
り,敗血症により死亡する病態である 16).保存的 治療時の致死率は83 〜 100 %であると報告されて いる 1).とりわけ重症胆管炎の治療には,厳重な 全身管理とともに胆道ドレナージを行うことが必 要となる.その対応が不可能な施設では,治療可 能な施設に搬送することが強く推奨されている 1)
(表9).
5.基本的治療方針と初期治療
急性胆管炎を疑った場合には,診断基準を用い て診断するとともに重症度判定を行い,重症度に 応じた治療を行う.頻回に再評価を行う.急性胆 管炎では,原則として胆道ドレナージ術の施行を 前提として,全身状態の改善と感染治療のための 初期治療を行う.その際,急変時に備えて,呼吸 循環のモニタリング下に全身状態の管理を心がけ ることが大切である.表10に『急性胆管炎・胆囊 炎診療ガイドライン』 1)の急性胆管炎の治療指針 表8.急性胆管炎の画像診断と推奨度 1)
推奨度 利点と欠点
超音波 A 疑われる症例のすべてに初診時に施行する.専門医は高い診断能をもつ MRI B 胆管拡張,胆管や周囲の浮腫がわかるが,最終診断は困難である MRCP B 超音波で結石を特定できない場合に行う.小結石診断に限界がある CT B 胆管結石描出は良好でなく,胆管拡張や気腫像の間接所見の描出可能 DIC─CT C 三次元構築での観察が可能で成因診断に有用である.黄疸例は適応外 ERCP A 胆管ドレナージを目的とした検査である
表9.急性胆管炎の搬送基準 1)
胆道ドレナージおよび重症患者の管理ができない施設では,対応可能な施設にすみやかに搬送するべきである 重 症:緊急ドレナージおよび重症患者管理ができない施設では,対応可能な施設に緊急搬送する
中等症:初期治療に反応しない場合,胆道ドレナージができない施設では対応可能な施設にすみやかに搬送・
紹介する
軽 症:総胆管結石が存在する場合や初期治療(24時間以内)に反応しない場合には,中等症と同様に対応する
表10.重症度別の急性胆管炎の診療指針 1)
①重症例(ショック,菌血症,意識障害,急性腎不全のいずれかを認める場合):適切な臓器サポート(十分な 輸液,抗菌薬投与,DICに準じた治療など)や呼吸循環管理(気管挿管,人工呼吸管理,昇圧薬の使用など)
とともに緊急に胆道ドレナージを行う
②中等症例:初期治療とともにすみやかに胆道ドレナージを行う
③軽症例:緊急ドレナージをしないことが多い.しかし,総胆管結石が存在する場合や初期治療(24時間以内)
に反応しない場合には胆道ドレナージを行う
を示す.
胆道ドレナージ術の施行を前提として,絶食の うえで十分な量の輸液,電解質の補正,抗菌薬投 与を行うことが強く推奨されている 1).重症例で は緊急ドレナージを行うが,中等症や軽症でも緊 急ドレナージに即応できるように絶食を原則とす る.バイタルサインや検査所見に注意しながら,
初期治療に反応するかどうか12 〜 24時間慎重に 経過観察を行う.中等症や軽症でも,24 時間程 度の観察後に初期治療に反応しなければ,胆道ド レナージを行う必要がある.