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1.被災建築物応急危険度判定

(1)概要

被災建築物応急危険度判定(以下「応急危 険度判定」という。)とは、大地震により被災 した建築物を調査し、その後に発生する余震 などによる倒壊の危険性や外壁・窓ガラスの 落下、付属設備の転落などの危険性を判定す ることにより、人命にかかわる二次的災害を 防止することを目的とし、全国被災建築物応 急危険度判定協議会が定めた全国統一の応急 危険度判定基準により実施するものである。

具体的には、市町村の災害対策本部に設置 された判定実施本部(本市では建築指導課)

の指示により、応急危険度判定士が被災した 建築物を調査し、その判定結果を建築物の見 やすい場所に表示し、居住者はもとより付近 を通行する歩行者などに対してもその建築物 の危険性について情報提供するものである。

(2)判定体制

全国被災建築物応急危険度判定協議会(以 下「全国協議会」という。)は、地震による大 規模災害時の広域支援に備え、全国を6 つの 広域被災建築物応急危険度判定協議会に分け、

本市は、九州各県と政令指定都市で構成され る九州ブロック被災建築物応急危険度判定協 議会の会員となっている。

この6つに分かれたブロック協議会の地域 単位で広域支援本部を設置し、その下に都道 府県単位の支援本部、さらにその下に市町村 単位の実施本部が連なる体制となる。

本市では、全国協議会が定める被災建築物 応急危険度判定要綱に基づき、熊本県が策定 した熊本県被災建築物応急危険度判定要項や、

全国協議会が策定した被災建築物応急危険度 判定必携の実施本部業務マニュアルなどに基 づき、具体的な判定体制や各部署における業 務体制を定めていた。

また、本市地域防災計画においては、都市 型地震災害防止対策計画の中に、「市民の安全

の確保を図るために被災建築物について応急 危険度判定を行う。」と位置付けられている。

図表6-2-1

被災建築物応急危険度判定の体制

全国被災建築物応急危険度判定協議会

●被災建築物応急危険度判定要綱

●各マニュアル

●全国被災建築物応急危険度民間  判定士等補償制度運用要領 等 判定支援調整本部( 国土交通省)

広域支援本部( 福岡県)

九州ブロック被災建築物応急危険度判定協議会 支援本部( 熊本県)

被災建築物応急危険度判定士講習会 等 熊本市地域防災計画

実施本部( 熊本市)

(3)他自治体との連携と事前の備え

①他都市への派遣

被災地の災害対策本部より支援要請があっ た場合、判定支援調整本部である国土交通省 建築指導課から、各ブロック協議会幹事都道 府県へブロック内の支援取りまとめの要請が ある。そのため、九州ブロックの幹事県であ る福岡県から、熊本県を通じて本市へ判定士 の派遣要請が行われるので、その際は被災地 への判定士派遣を行う。

②訓練の実施

本市と支援本部である熊本県では、応急危 険度判定の実施に向け、講習会や勉強会を重 ねるとともに、地震直後の被害状況や応急危 険度判定の実施に関する連絡が迅速に行える よう連絡訓練を行ってきた。また、全国協議 会が主催する全国連絡訓練においては、本市 も、県との連絡部分で訓練に参加してきた。

③判定用資材の備蓄等

判定調査票、判定ステッカー(危険:赤、

要注意:黄色、調査済:緑)、ガムテープ、マ ジック等を、建築指導課で備蓄している。

④被災建築物応急危険度判定士の育成 被災建築物応急危険度判定制度や基準、実 施体制に関する講習会においては、過去5 年 以上講習会を受講していない判定士の再受講 や新規採用職員の受講を促すとともに、判定 士への登録をすすめている。平成28年度末現 在の本市職員の被災建築物応急危険度判定士 数は約120 名である。

実地訓練では解体予定の建築物を使って、

歪み、傾き具合、ひび割れの有無や長さなど の調査を行うなどの訓練を実施している。

(4)判定活動

①実施経過

4 月14 日の前震発生後、どのような対応を 取るべきか協議を行い、15 日の早朝から、建 築指導課に寄せられた危険な建築物の現場確 認を実施した。さらに、16日の本震発生後は 市民からの電話相談が増加し、その内容や危 機管理防災総室に寄せられる被害情報などか ら被害が甚大であり、また、余震も続いてい たため、二次災害を防ぎ市民の安全確保を行 う必要があると判断し、同日12 時に応急危険 度判定の実施本部を設置し公表した。

その後、市民からの電話相談が加速的に増 加し、電話もつながらない状態となり、多く の市民が窓口に殺到した。よって、本市職員 のみによる判定活動は困難と判断し、国、県 からの支援を視野に地図情報などから被害状 況の詳細な把握に努めた。

その結果、特に被害が大きいと判断した益 城町に隣接する東区の一部や、古い町屋等が のこる旧市街地を、校区単位で特定し、その 校区の世帯数からおおよその被害建築物の数 を算出することで、過去の実績などから調査 人員や日数を想定し、判定支援本部などから の指示を受け実施計画を策定し、それをもと に1日あたりの必要な判定員500 人の支援要 請を行った。

さらに、その後の報告により被害が大きか った城南町においては追加支援を要請した。

②実施体制

本市においては、熊本県被災建築物応急危 険度判定要項および被災建築物応急危険度判 定必携実施本部業務マニュアルにより、建築 指 導 課 を 応 急 危 険 度 判 定 実 施 本 部 と し た 。 1 次支援による判定活動では判定拠点を3 か所、

2 次支援による判定活動では判定拠点を1か 所設置し、判定コーディネーターを本市職員 とUR(独立行政法人都市再生機構)職員で つとめた。全国から8 日間延べ2,612人の判 定士の支援を受け判定活動を実施した。

図表6-2-2 判定実施体制表

●熊本市災害対策本部

●応急危険度判定実施本部( 熊本市建築指導課)

●各判定拠点( 4 か所)

市役所駐輪場8 階 動植物園緑の相談所 秋津出張所 城南福祉セン タ ー

○各拠点コーディネーター( 合計1 4 名)

市役所駐輪場8 階( 5 名)

動植物園緑の相談所( 2 名)

秋津出張所( 3 名)

城南福祉セン タ ー( 4 名)

○判定チーム( 8 日間で合計約1 , 3 0 0 チーム)

各コ ーディネータ ー( 約2 0 チ ーム を担当)

○判定士( 約2 , 6 0 0 名)

③実施状況

(ア)判定実績

4月16 日より判定を開始し、6 月6 日ま での約2 か月間にわたり、30,487 件の判定 を実施し、判定結果は次のとおりとなった。

図表6-2-3 判定実施状況 判定結果 件 割合 危 険 ( 赤 ) 5 , 8 4 7 1 9 . 1 8 % 要 注 意 ( 黄 色 ) 1 0 , 5 1 4 3 4 . 4 9 % 調 査 済 ( 緑 ) 1 4 , 1 2 6 4 6 . 3 3 % 計 3 0 , 4 8 7 1 0 0 . 0 0 %

第6章応急復旧対策の実施

(イ)支援本部(熊本県)への支援要請 今回の震災においては、広域的に3万件 を超える建築物の応急危険度判定が必要と 想定されたため、支援本部(熊本県)に対 し2 回にわたって判定士派遣の要請を実施 した。

図表6-2-4 判定士の支援内容

支援要請日 対 象 区 実 施 期 間 対 象 区 域

益 城 町 に 隣 接 し た 地 域 4 月 2 4 日

4 月 2 7 日

秋 津 、 桜 木 、 若 葉 、 泉 ヶ 丘

旧 市 街 地 地 域

4 月 2 4 日

4 月 2 8 日

白 川 、 向 山 、 一 新 、   慶 徳 、 古 町 、 呉 服 2 次

支 援

4 月 2 6 日 城 南 地 域 の 一 部

4 月 2 9 日

5 月 1 日

杉 上 、 豊 田 の 各 一 部 1 次

支 援 4 月 1 9 日

(ウ)全国からの協力等

支援本部(熊本県)への支援要請の結果、

4 月 23 日から合計 2,612 人の判定士の支援 を全国から受けた。また、この支援要請に 先駆け、4月21日から福岡市と豊島区から 支援を受けた。

図表6-2-5 全国からの支援状況

判定日 県外からの支援

4月21日福岡市、豊島区 4月22日福岡市、豊島区

4月23日

北海道 岩手県 宮城県 福島県 新潟県 茨城県 埼玉県 千葉県 東京都 神奈川県 山梨県 長野県 兵庫県 和歌山県 滋賀県 奈良県 福井県 京都府 大阪府 鳥取県 島根県 岡山県 広島県 山口県 徳島県 香川県 愛媛県 高知県 福岡市 国土交通 省地方整備局 UR

4月24日

北海道 岩手県 宮城県 福島県 新潟県 茨城県 埼玉県 千葉県 東京都 神奈川県 山梨県 長野県 兵庫県 和歌山県 滋賀県 奈良県 福井県 京都府 大阪府 鳥取県 島根県 岡山県 広島県 山口県 徳島県 香川県 愛媛県 高知県 福岡市 国土交通 省地方整備局 UR

4月25日

北海道 岩手県 宮城県 福島県 新潟県 茨城県 埼玉県 千葉県 東京都 神奈川県 山梨県 長野県 兵庫県 和歌山県 滋賀県 奈良県 福井県 京都府 大阪府 鳥取県 島根県 岡山県 広島県 山口県 徳島県 香川県 愛媛県 高知県 福岡市 国土交通 省地方整備局 UR

4月26日

北海道 秋田県 青森県 山形県 岩手県 宮城県 福島県 新潟県 茨城県 群馬県 埼玉県 千葉県 東京都 神奈川県 山梨県 長野県 栃木県 富山県 石川県 静岡県 愛知県 三重県 鳥取県 島根県 岡山県 広島県 山口県 徳島県 愛媛県 高知県 福岡市 国土交通省地方整備局 UR

4月27日

北海道 秋田県 青森県 山形県 岩手県 宮城県 福島県 新潟県 茨城県 群馬県 埼玉県 千葉県 東京都 神奈川県 山梨県 長野県 栃木県 富山県 石川県 静岡県 愛知県 三重県 鳥取県 島根県 岡山県 広島県 山口県 徳島県 愛媛県 高知県 福岡市 国土交通省地方整備局 UR

4月28日福岡市 豊島区 4月29日

滋賀県 奈良県 福井県 鳥取県 島根県 岡山県 広島県 山口県 徳島県 香川県 愛媛県 高知県 豊島区 福岡市

4月30日

滋賀県 奈良県 福井県 鳥取県 島根県 岡山県 広島県 山口県 徳島県 香川県 愛媛県 高知県 豊島区

5月1日

滋賀県 奈良県 福井県 鳥取県 島根県 岡山県 広島県 山口県 徳島県 香川県 愛媛県 高知県

(5)課題と総括

①判定活動で直面した課題等

判定業務に当たり、判定の役割について市 民への十分な周知が足らず、赤紙が貼られて いると、「その建物には一切立ち入れず財産価 値がなくなる。」、「判定が終わらない建物には ボランティアは派遣しない。」など、当初判定 に対する情報が入り乱れ現場が大変混乱した。

その後、日々の市長記者発表や各メディア を通して、判定は市民の安全を確保するため の活動であり、被災した住宅が住めるか、恒 久的に利用できるかといったことを判定する ものではなく、外観から倒壊のおそれがない か、瓦の落下の危険性がないかなど、限られ た範囲で応急的に確認を行い、二次災害を防

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