1.1 微小変形弾塑性理論
1.1.10 応力積分
弾塑性体の構成則は速度型構成則であり,応力速度とひずみ速度の関係が与えら れているだけで,応力や塑性ひずみはそれぞれの速度を積分することによってのみ 求めることができる. 微小変形を仮定した場合,
tepij = t
0
τe˙pij dτ (1.534)
tσij = t
0
τσ˙ij dτ (1.535)
= t
0
τCepijklτe˙kldτ (1.536) あるいは増分的に
tσij −tσij = t
t
τCepijklτe˙kldτ (1.537)
によりもとめることになる. しかしながら構成則テンソルtCepijkl はその時刻の 応力の関数であるため, 式(1.536), (1.537)は解析的に積分することはほぼ不可能 で, 数値的に応力積分を行なうことになる. この応力積分の方法としてよく用い られるものに forward-Euler 法(時刻t の諸量を用いて時刻 t の諸量を予測する) と backward-Euler 法(時刻 tの諸量を収束計算により求める)がある. このうち forward-Euler 法は陽的(explicit)解法であり定式化が単純であるが,つりあい状態 を厳密に求めるわけではないため,時間刻みを十分細かくとらないと,解析中に誤 差が蓄積していく可能性があり注意を要する. これに対してbackward-Euler 法は
陰的(implicit)解法でありつりあい状態を厳密に求めることができるが,定式化が
複雑になる.
弾塑性解析では変形の進行につれて弾性状態にあった物質点が降伏する,また塑 性状態にあった物質点に除荷がおこるという状態変化が生じるため,時間刻みを十 分細かくとる必要があることを考慮し, 本研究では forward-Euler 法を用いること にする.
(i)ある積分点が時刻 t1 では弾性であったとする. このときt1 からt2 までの変 位増分をもとめるための剛性マトリックス( 剛性マトリックスについては, 1.1.12 項, 1.1.13項で説明する)で用いられる構成則テンソルは弾性のものを用いる. 得 られた変位増分からひずみ増分をもとめる. 時刻t1 からt2 までの間は t1 での状 態が持続していると仮定するので,t2 での応力はt1Ceijklを用いて以下のように評 価する.
t2σij =t1σij +t1CeijklΔeij (1.538) ただし Δeij は t1 から t2 までの変位増分からもとめられたひずみ増分である.
t2σij を用いて降伏判定を行い, 降伏していると判定されれば t2 から t3 の変位増 分をもとめるための剛性マトリックスには弾塑性のものを用いる. 降伏していな いなら弾性のものを用いる.
(ii)ある積分点が時刻 t1 では降伏していたとする. このとき t1 から t2 までの 変位増分をもとめるための剛性マトリックスで用いられる構成則テンソルは弾塑
性のものを用いる. 得られた変位増分からひずみ増分をもとめる. 時刻 t1 から t2 までの間は t1 での状態が持続していると仮定するので, t1 から t2 までの応力増 分をt1Cepijkl を用いて以下のように評価する.
Δσij =t1CepijklΔeij (1.539) また相当塑性ひずみの増分 Δ¯ep ,塑性ひずみ速度乗数の増分 ( 今回の解析では 降伏関数としてF = ¯σ−Sy を用いるので,相当塑性ひずみの増分に等しい),背応 力の増分を以下のように求める.
(1)複合硬化
Δ¯ep =
t1σkl Δekl
t1σ¯
1 + t3μH
=Δλ (1.540)
Δαij =Δλ3Cp 2¯σ
t1˜σij (1.541)
(2)非線形 Ziegler則
Δ¯ep =
t1σklΔekl
t1σ¯
1 + 2G1t1¯σt1σ˜ijt1Mij =Δλ (1.542)
Δαij =Δλt1Mij (1.543)
ただし t1Mij =C1t1σ˜ij −C2t1αij (1.544) Δλ(=Δ¯ep)が正のときは除荷はおこっていないので,t2 から t3 の変位増分をもと めるための剛性マトリックスは弾塑性のものを用いる. Δλ(=Δ¯ep)が負のときは, 除荷がおこっている. このとき本研究では解析を安定に進めるために,弾性の構成 則テンソルを用いて応力増分の再計算を行う.
Δσij =t1Cijkle (1.545)
その上で, t2 からt3 の変位増分をもとめるための剛性マトリックスは弾性のもの を用いる. この意味で,本研究で用いている手法は通常のforward-Euler 法による 応力積分とは異なっている.
有限変形の場合の応力積分については,いくつかの方法が提案されている. 最も 簡単なものは古典的な応力積分における応力を相対 Kirchhoff 応力に置き換えた ものである. ただし,弾性の場合は,式(1.551)のtCepijkl にかえて,tCijkle を用いる.
tTij =tTij + t
t
τT˙ij dτ (1.546)
=tTij + t
t
τT˙ˆτ ij −(trτD)τTij
dτ (1.547)
=tTij + t
t
τT˚ˆτ ij +τ WikτTˆτ kj−τTˆτ ikτWkj−(trτD)τTij
dτ (1.548)
=tTij + t
t
τT˚ˆτ ij +τ WikτTkj−τTikτWkj −(trτD)τTij
dτ (1.549)
=tTij + t
t
{τCepijklτDkl+τWikτTkj −τTikτWkj−(trτD)τTij} dτ (1.550)
=tTij +t
CepijkltDkl+tWiktTkj−tTiktWkj−(trtD)tTij
Δt (1.551)
ただし, 式(1.551)で用いられている Cauchy 応力は, 時刻 t を参照配置とする時
刻 t での相対 Kirchhoff 応力と一致している. またこれに対応して,移動硬化則で
用いる背応力についても以下のようになる.
tαij =tαij + t
t
τα˙ijdτ (1.552)
=tαij + t
t
τα˙ˆτ ij −(trτD)ταij
dτ (1.553)
=tαij + t
t
τ˚αˆτ ij +τWikταˆτ kj−ταˆτ ikτWkj −(trτD)ταij
dτ (1.554)
=tαij + t
t
τ˚αˆτ ij +τWikταkj−ταikτWkj−(trτD)ταij
dτ (1.555)
=tαij + t
t
Ctλ˙tT˜ij+τWikταkj −ταikτWkj −(trτD)ταij
dτ (1.556)
=tαij +
Ctλ˙tT˜ij +tWiktαkj −tαiktWkj −(trtD)tαij
Δt (1.557)