5. 安全性の概括評価
5.8 特定の有害事象
5.8.8 心房細動
H2301試験では重篤な心房細動 atrial fibrillationがプラセボ群に比べゾレドロン酸群で多く 認められた。そこで、心房細動 atrial fibrillationについて「不整脈に関連する有害事象」の発現
状況、H2301試験での「独立判定委員会の判定」および「心電図所見」を検討し、ゾレドロン
酸投与と心房細動 atrial fibrillationの関係を考察した。
その結果、重篤な心房細動 atrial fibrillationが対照薬群に比べゾレドロン酸群で多く認めら れた試験は、AK156-III-1試験や参考資料の試験も含めH2301試験のみであった。また、H2301 試験の心房細動 atrial fibrillationは、ほとんどがゾレドロン酸投与から30日以上経過してから 認められたものであった。これは重篤な心房細動 atrial fibrillationでも同様であり、ゾレドロン 酸の血漿中濃度および急性期反応等投与初期に認められる有害事象と心房細動 atrial
fibrillation発現との間に関連はないと考えた。これらのことより、ゾレドロン酸投与により心
房細動 atrial fibrillationの発現リスクは上昇しないと考えた。なお、H2301試験で心房細動 atrial
fibrillationに引続き脳卒中の認められた被験者はわずかであった。以下に試験ごとの評価結果
を示す。
不整脈に関連する有害事象
不整脈に関連する有害事象として事前に定めた用語[2.7.4:表 8.6-29]に該当したもの は、AK156-I-1試験では5 mg群に1名(8.3%)であった。本被験者には、心房細動 atrial fibrillationおよび頻脈 tachycardiaが認められた。この心房細動 atrial fibrillationは非重篤で ゾレドロン酸投与日に発現した。
AK156-III-1試験ではゾレドロン酸群4名(1.2%)、プラセボ群5名(1.5%)に不整脈に 関連する有害事象が認められた。心房細動 atrial fibrillationはゾレドロン酸群2名(0.6%)、
プラセボ群3名(0.9%)に認められた。心房細動 atrial fibrillationの有害事象は、全例が投 与後30日以上経過してから発現した。ゾレドロン酸群の心房細動 atrial fibrillationの発現 割合は、1年目と2年目で大きく異ならず経年的に発現割合が増加することはなかった。
重篤な不整脈に関連する有害事象は、ゾレドロン酸群2名(0.6%)、プラセボ群1名(0.3%) に認められた。認められた事象は、いずれも心房細動 atrial fibrillationで両群ともに発現割 合は低かった。
H2301試験ではゾレドロン酸群284名(7.35%)、プラセボ群242名(6.28%)に不整脈 に関連する有害事象が認められた。心房細動 atrial fibrillationはゾレドロン酸群94名
(2.43%)、プラセボ群73名(1.90%)に認められた。心房細動 atrial fibrillationの有害事 象は、ほとんどが投与後30日以上経過してから発現した(ゾレドロン酸群94名中90名、
プラセボ群73名中67名)。ゾレドロン酸群で投与3日以内に発現した心房細動 atrial
fibrillationは2名のみであった。重篤な不整脈に関連する有害事象は、ゾレドロン酸群112
名(2.90%)、プラセボ群80名(2.08%)に認められた。重篤な心房細動 atrial fibrillation はゾレドロン酸群50名(1.29%)でプラセボ群20名(0.52%)に比べ発現割合が約2.5倍 であった。重篤な不整脈に関連する有害事象の群間差は、主に重篤な心房細動 atrial fibrillationの発現割合の群間差によるものと考えた。重篤な心房細動 atrial fibrillationのゾ レドロン酸群の発現割合は、1、2および3年目で大きく異ならず経年的に発現割合が増加 することはなかった。なお、H2301試験で重篤な心房細動 atrial fibrillationあるいは心房粗
動 atrial flutterが認められた時あるいは後に引続き脳卒中の認められた被験者の割合は低
かった{ゾレドロン酸群3/51名(5.9%)、プラセボ群1/22名(4.5%)}。
ゾレドロン酸群で認められた不整脈に関連する有害事象の割合は、H2301試験に比べ
AK156-III-1試験で少なかった。また、ゾレドロン酸群で認められた心房細動 atrial
fibrillationの発現割合もH2301試験に比べAK156-III-1試験で少なかった。
MedDRAの高位グループ用語(以下、HLGT)が不整脈 cardiac arrhythmiasに該当する有 害事象の発現割合は、AK156-I-1試験では5 mg群1名(8.3%)、AK156-III-1試験ではゾレ ドロン酸群4名(1.2%)、プラセボ群6名(1.8%)、H2301試験ではゾレドロン酸群266 名(6.89%)、プラセボ群203名(5.27%)であった。各試験ともに、HLGTが不整脈 cardiac
arrhythmiasに該当する有害事象の発現割合は、事前に定めた用語で抽出した不整脈に関連
する有害事象の発現割合と同様の傾向であった。
独立判定委員会の判定
H2301試験で独立判定委員会により重篤な不整脈とされたのは、ゾレドロン酸群82名
(2.12%)、プラセボ群48名(1.25%)であった。重篤な心房細動 atrial fibrillationと判定 されたものは、委員会判定のために抽出された被験者のうちゾレドロン酸群の50名全例、
プラセボ群の20名中17名と判定前後で該当事象数はほとんど変わらなかった。重篤な心
房細動 atrial fibrillation以外の他の不整脈に該当する重篤な有害事象は両群で大きな違いは
認められなかった。判定により確認された重篤な不整脈のほとんどは、治験薬投与後30日 以上経過してから認められた{ゾレドロン酸群77名(93.9%)、プラセボ群46名(95.8%)}。
心電図所見
AK156-I-1試験では、全例でホルター12誘導心電図を測定した。4 mg群、5 mg群ともに、
治験薬の投与前後で心電図パラメータの要約値に大きな変動はなかった。4 mg群、5 mg群 ともに心拍数で補正したQT間隔(QTcBおよびQTcF)*4が480 msecを超えた被験者はな く、投与前に比較し60 msecを超えて延長した被験者もなかった。さらに、ヒステリシス において血漿中薬物濃度上昇に伴ってQT間隔が延長するなどの一定の傾向もみられな かった[2.7.6.1.2.5.4]。
*4 :QTcB(Bazett補正法)= QT/RR0.5、QTcF(Fridericia補正法)= QT/RR0.33
AK156-III-1試験では、心電図検査が可能な医療機関で12誘導心電図を測定した(ゾレ
ドロン酸群49名、プラセボ群47名)。心拍数で補正したQT間隔(QTcBおよびQTcF)
が480 msecを超えた被験者は、ゾレドロン酸群に1名認められた。この1名は、投与前の
時点で既に500 msecを超えており、投与1時間後に投与前から約30 msec延長した被験者 であった。投与前に比較してQTが60 msecを超えて延長した被験者が、ゾレドロン酸群に 1名認められた。しかし、この被験者も含め、心拍数で補正したQTcBおよびQTcFでは、
投与前に比較し60 msecを超えて延長した被験者は、両群ともに認められなかった。心電 図パラメータの集計で、その他に両群で大きな違いは認められなかった。
H2301試験では、心電図安全性解析対象集団を対象に12誘導心電図を測定し心電図異常
所見を比較した結果、ゾレドロン酸3回目投与後に明らかに発現が増加した心電図異常所 見はなかった[2.7.4:表 4-9]。心電図安全性解析対象集団で心房細動atrial fibrillationを 発現した被験者は、ゾレドロン酸群6名(3回目の投与前5名、投与後1名)、プラセボ 群8名(3回目の投与前8名、投与後0名)であった。また、心電図パラメータの平均値 およびカテゴリカル集計の結果より、ゾレドロン酸群とプラセボ群との間で大きな違いは なく、ゾレドロン酸群でQT/QTc間隔が延長する傾向は認められなかった。
以上より、ゾレドロン酸はQT/QTc間隔延長を含め催不整脈作用を有さないと考えた。
参考資料とした試験で独立判定委員会が確定した重篤な心房細動 atrial fibrillationの発現割 合は、ゾレドロン酸群と対照薬群で大きな差は認められず、重篤な心房細動 atrial fibrillation の発現割合が対照薬群に比べゾレドロン酸群で高かったのは国内外の試験でH2301試験のみ であった[2.7.4.2.1.6.8.3]。