6.1 ベネフィット
ゾレドロン酸は骨への高い結合親和性に基づき、長期間にわたり骨吸収抑制作用を発揮する 特徴を有する。本剤は1年間隔の点滴静注により、様々なタイプの骨粗鬆症患者に対し骨量を 増加させ、高い骨折抑制効果を発揮する。
また、本剤は静脈内へ直接投与するため、既存の経口ビスホスホネート製剤で投与が制限さ れている患者に対しても、特段の投与制限は不要と考えられる。
6.1.1 1年間隔の投与で効果を発揮する
ゾレドロン酸はヒトの骨に対して高い結合親和性を示し(Leu CT et al, 2006)、(Mukherjee
S et al, 2009)、長期にわたり骨に沈着することで骨吸収抑制作用を発揮する。さらに、国内外
のすべての臨床試験で本剤投与後1年間にわたり骨吸収マーカーを低下させることが確認され ている。このため、本剤は他剤にない1年間隔の点滴静注という用法により、優れた骨折抑制 効果を示すことが検証されている。投与間隔が1年と長いことは、定期的な来院が困難な患者、
認知症を合併する患者などでは、特に有益である。
また、骨粗鬆症の治療は通常長期に及ぶことから、服用頻度の高い治療薬ではアドヒアラン ス低下が問題となっている。さらに、現在使用されている注射製剤では毎週または毎月の通院 が必要となることから、骨粗鬆症患者の通院負担は小さくない。本剤は、1回の投与でその後 1年間にわたる効果が期待できる薬剤であることから、骨粗鬆症治療におけるアドヒアランス 向上と通院負担の軽減に寄与することが期待できる。
6.1.2 様々なタイプの骨粗鬆症患者に対し高い有効性を示す
本剤は国内外の臨床試験結果から、原発性骨粗鬆症(国内)、閉経後骨粗鬆症(海外)、男 性骨粗鬆症(海外)およびステロイド性骨粗鬆症(海外)など、様々なタイプの骨粗鬆症患者 に対し高い骨折抑制効果ならびに骨密度(骨量)増加効果を示すことが確認されている。
原発性骨粗鬆症(国内)
日本人原発性骨粗鬆症患者(665名)を対象としたAK156-III-1試験にて24ヶ月間の新 規椎体骨折発生率の本剤群のプラセボ群に対するRRRは65.8%であり、本剤はプラセボに 比べて有意に新規椎体骨折の発生を抑制した。
また、Kaplan-Meier 推定法に基づき2年間の臨床椎体骨折発生率および非椎体骨折発生 率を算出した。本剤群のプラセボ群に対するRRRはそれぞれ約70%、約45%であり、いず れも本剤がプラセボに対し有意に高い骨折抑制効果を示した。さらに、本剤投与2年後の 投与開始時からの骨密度変化率は、プラセボ群と比べ腰椎(L1-4)で7.61%、大腿部近位 部で4.03%、大腿骨頸部で4.07%増加し、いずれの部位でも本剤群で有意であった[2.7.6.2]。
閉経後骨粗鬆症(海外)
閉経後骨粗鬆症患者を対象としたプラセボ対照二重盲検並行群間比較試験(H2301試験)
では、本剤群のプラセボ群に対する3年間での新規椎体骨折発生率のRRRは約70%であり、
本剤はプラセボに比べて有意に新規椎体骨折の発生を抑制した。また、Kaplan-Meier 推定 法に基づく3年間の大腿骨近位部骨折発生率を算出した。本剤群のプラセボ群に対する RRRは約41%で、本剤はプラセボに比べて有意に高い骨折抑制効果を示した。
さらに、Kaplan-Meier 推定法に基づき3年間での臨床椎体骨折発生率および非椎体骨折 発生率を算出した。本剤群のプラセボ群に対するRRRは約77%、約25%であり、いずれも 本剤はプラセボに比べて有意に高い骨折抑制効果を示した。
本剤投与3年間の投与開始時からの骨密度変化率は、プラセボ群と比べ腰椎で6.71%、 大腿骨近位部で6.02%、大腿骨頸部で5.06%、橈骨遠位部で3.21%増加し、これらの部位で は海綿骨と皮質骨の割合が異なるものの、一貫した増加効果が認められた[2.7.6.3]。
H2301試験を完了した被験者に対する継続投与試験(H2301E1試験およびH2301E2試験)
が実施され、本剤を最大9年間投与したときの有効性が評価された。それらの継続試験で は、本剤を継続して投与することによって骨代謝は持続的に抑制され、本剤の骨密度増加 効果および骨折抑制効果が維持されることが確認された([2.7.6.4]、[2.7.6.5])。
男性骨粗鬆症(海外)
男性骨粗鬆症患者を対象としたプラセボ対照二重盲検並行群間比較試験(M2309試験)
では、本剤群のプラセボ群に対する2年間での新規椎体骨折発生率のRRRは約67%であり、
男性でも本剤の高い骨折抑制効果が示された[2.7.6.12]。
また、アレンドロン酸を対照とした二重盲検並行群間比較試験(M2308試験)では、ア レンドロン酸と同程度の本剤の骨密度増加効果が確認された[2.7.6.13]。
ステロイド性骨粗鬆症(海外)
ステロイド性骨粗鬆症に対する予防および治療効果の検討を目的とした、リセドロン酸 対照二重盲検並行群間比較試験(O2306試験)では、リセドロン酸を上回る本剤の骨密度 増加効果が確認された[2.7.6.11]。
大腿骨近位部骨折後の重度な骨粗鬆症(海外)
大腿骨近位部骨折の手術後90日以内の患者における、臨床骨折発生抑制の検証を目的と したプラセボ対照二重盲検並行群間比較試験(L2310試験)で、Kaplan-Meier 推定法に基 づき臨床骨折発生率(椎体+非椎体)、臨床椎体骨折発生率および非椎体骨折発生率を算 出した。本剤群のプラセボ群に対するRRRはそれぞれ約35%、約46%、約27%であり、
本剤の臨床骨折の抑制効果が確認された。なお、全試験期間を通じて、死亡率がプラセボ 群に比べて本剤群では約28%低いことが確認されており、本剤の骨折抑制効果が生命予後 に影響したものと推察された[2.7.6.14]。
6.1.3 静脈内への直接投与のため、確実に血中に投与され、また、経口ビスホスホネート製剤に 起こりうる上部消化管障害発現の可能性が低い
本剤は、静脈内に直接投与するため以下の懸念がなく、経口ビスホスホネート製剤に起こり うる上部消化管障害発現の可能性が低いと考えられる。
• 経口ビスホスホネート製剤は消化管からの吸収率が低いため、水以外の飲食物は服用後 30分以上経ってから摂取しなければならない。また、骨粗鬆症に必要な補助的なカルシ ウムの服用も、ビスホスホネートの吸収が阻害されるため間隔を空けて摂取する必要が ある。特に、「食道狭窄またはアカラシア(食道弛緩不能症)等の食道通過を遅延させ る障害のある患者」は禁忌とされている。
• 経口ビスホスホネート製剤は上部消化管への直接刺激により、上部消化管障害を起こす ことがあり、服用時に立位または座位を30分以上保たなくてはならない。嚥下障害、
嚥下困難、食道炎、胃炎、十二指腸炎または潰瘍などの上部消化管障害を有する患者で
は慎重な投与が必要となる。特に、骨粗鬆症患者では脊椎圧迫骨折による円背のために 逆流性食道炎を合併する例があるので注意が必要とされている。
6.2 リスク
本剤投与に伴うリスクには、ビスホスホネート製剤に共通するリスクとして急性期反応があ り、その発現頻度は他のビスホスホネート製剤と比較し高い傾向にある。また、このビスホス ホネート製剤共通のリスクには、低カルシウム血症、顎骨壊死、非定型大腿骨骨折ならびに腎 機能障害がある。安全性監視上では海外と同様に、腎機能障害に対する注意喚起が必要であり、
重度の腎機能低下患者では本剤を投与禁忌とした。
6.2.1 急性期反応
海外の臨床試験結果ならびに市販後の安全性情報等から、本剤投与後の急性期反応として、
発熱、関節痛、筋肉痛、頭痛、インフルエンザ様疾患などが一過性に発現することが知られて いる。これらの症状はいずれも非重篤でありその多くは軽度で3日以内に消失し、繰り返し投 与(2回目以降)では初回投与時に比べ発現率が大幅に低下することが示されている。なお、
本剤に関する中核データシート(CDS)では、試験結果(H2407試験)に基づき、解熱鎮痛剤
(アセトアミノフェン、イブプロフェン)の投与により、これらの急性期反応の発現を50%低 減するとしている。
また、H2313試験(ビスホスホネート製剤を1年以上投与していた被験者を対象とした試験)
およびH2315試験(ビスホスホネート製剤の治療経験がない被験者を対象とした試験)を比較
したところ、急性期反応の発現割合は、H2313試験に比べH2315試験で高かった。同様の傾向 はAK156-III-1試験でも見られた[2.7.4.2.1.1.5]。
国内の臨床試験では、海外の臨床試験に比べて発熱の発現頻度はやや高いものの、急性期反 応の発現事象、持続期間およびその程度などは海外の結果と同様の傾向であり、新たな安全性 上の問題は認められなかった。
6.2.2 腎機能障害
海外の臨床試験ならびに市販後に、本剤投与に伴う尿中蛋白陽性、血中クレアチニン増加、
腎機能障害などが認められた。これらを考慮し海外添付文書等では、腎への負荷を軽減する方 策として「投与時間を15分以上かけること」を推奨するとともに、「CLcrが35 mL/min未満 の患者」に対し本剤の投与を禁忌としている。
国内臨床試験でも、一過性の軽微な血清クレアチニン値上昇や尿蛋白がわずかに認められた が腎機能への長期的な作用は認められず、CLcrが35 mL/min 以上の患者に対して本剤は問題な く使用できると考えた。
6.2.3 低カルシウム血症、顎骨壊死、非定型大腿骨骨折
本剤は他のビスホスホネート製剤と同様に、骨吸収抑制作用に伴う血清カルシウム低下作用 を有するため、低カルシウム血症が発生する可能性がある。しかし、国内外の臨床試験でも低 カルシウム血症は認められたものの、発現率はいずれの試験でも約0.3%と低かった(5.8.4 項)。