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微小道路要素・道路ネットワークデータの自動構築手法

ドキュメント内 高度な地物データ (ページ 82-122)

4-1 緒言

都市流域における道路は,流域面積の約2割を占めるため豪雨時の直接流出量へ大きく

寄与し1)(黄,

2010)

,側溝や雨水ますを介して雨水・下水道管路に接続されているため,

洪水時には雨水が河道に到達するまでの洪水到達時間を早める機能を有している.この ため洪水流出・浸水解析を精度良く行うことを目的に,道路分布が水文・水理現象に与 える影響を考慮したモデル構築が行われている.浸水解析モデルとしては,建物や道路 の影響を考慮できる非構造格子モデルや街路ネットワークモデルが提案されているが,

いずれも解析格子の形成は手作業によるところが多いため,モデルデータの構築にかな りの時間と労力が必要となっている2)

内田ら3)は,モデルデータ構築の容易さに着目し,実務で多用されているグリッド型 モデルにおいて,グリッド内部やグリッド境界線に建物や道路に関する情報をパラメー タ値として間接的に与えるという対処策を提案している.解析用のグリッドデータとポ リゴン型の道路および建物を準備すればデータの構築は容易ではあるが,都市域を構成 する個別建物や道路などがグリッドで分断されるため,地物から構成される都市流域の 構造を忠実に表現することは困難である.

TSRモデルでは,都市の精緻な流出解析を目的として,道路表面における氾濫流計算

と雨水・下水道管路においての洪水流計算を行っている.これに対応するため高度な地 物データGISには,微小道路要素データと道路ネットワークデータの2種類のGISデータ が収められている.微小道路要素とは,TSRモデルにおける道路表面流の解析に用いる 地物要素であり,これはまた,非構造格子モデルの入力データとしても活用可能である.

近年のGIS(地理情報システム)の技術的進歩やGISデータ整備に伴い,高精度な多角形

(ポリゴン)のベクター型の地物データの整備4)など,デジタル情報の入手が容易になっ てきてはいるものの,微小道路要素に類するGISデータは入手できず,各研究者が手作 業で構築しているのが現状である.

また,

TSRモデルにおいて,微小道路要素に並んで道路に関するGISデータとして重要

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となるのが,雨水・下水道管路の構築に用いられる道路ネットワークデータ(以下,道 路NWD)である.しかし道路ネットワークデータの利用は,雨水・下水道管路網や街路 ネットワークモデルの構築2)のみではなく,カーナビゲーションの経路探索5)や交通シ ミュレーションモデルの構築6)など多岐にわたる.数値地図25007)などの代表的な道路

NWD

ではデータの更新頻度が5 年に一度程度であり,土地利用の変化が激しい都市域 では現実を再現していない可能性がある.道路NWD の鮮度を維持しつつ,整備に要す る人的コストを削減するために,道路NWD の自動構築手法に関する研究が数多く行わ れている.例えば糸永ら8)は紙地図のようなアナログデータしか入手できない地域を対 象に,地図画像からの道路抽出,細線化・折れ線近似処理による道路中心線の作成と交 差点付近でのひずみ修正により,精度の高い道路NWD を作成している.また近年配備 が進み鮮度の高いデータの入手が容易になりつつある,東京都縮尺1/2500 地形図構造化 データ9)などポリゴン型のデジタルデータに対しては,道路縁上に数メートルの短い間 隔で発生させたポイントを用い,汎用的に利用されている不整三角形網あるいはボロノ イ図などを,道路中心線の作成に応用した手法が提案されている10), 11).汎用的な手法を 用いた場合,複雑な形状の交差点や道路幅が局所的に変化する単路などでは道路中心線 にひずみが発生するので,道路の直進性が失われることが報告されている11).道路形状 が複雑となる都市部では複雑な形状の交差点や道路幅の局所的な変化が多いので,道路

NWD

の自動構築には道路形状特性を考慮することが有効であろう.

本研究では,基礎的地物データGISとして作成した道路要素から,微小道路要素と道 路NWDを自動構築する手法について検討する12),13).本手法では,まず交差部と単路部を 分離し,次いで,単路部と交差部をそれぞれ異なる手法により分割することで,微小道 路要素を構築する.また本手法を応用し,ひずみが少なく道路の直進性を維持した道路

NWDを自動生成する手法についても提案する.次に,本自動構築手法を東京都内の代表

的な中小河川である神田川上流域に適用し,自動生成した微小道路要素と道路NWDの形 状等について調べを行い,本手法の有用性を検証する.なお,付録A-2では,本研究で 開発を行った微小道路要素および道路ネットワークデータの自動構築アルゴリズムの詳 細なプログラム(ArcObjects VBAマクロ)を示す.

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4-2 自動構築手法の概要

4-2-1 道路形状の特性

表 4-1は道路を道路構造令に基づき幅員別に分類したもので,道路には,国道や地方 幹線道路など

4

車線以上で歩道が整備された幅員

12m

以上の高規格道路,最低幅員

4m

で整備された区画道路,さらには最低幅員が

2.7m

3

項道路および徒歩道などがある.

都市域では図 4-1 a)に示すように,これらの道路が互いに交差点により接続し,巨大な ネットワークを形成している14)16).交差点の種類は道路の枝数,交差角度および導流 路の有無により,丁字路,十字路など比較的単純なものから,食い違い交差点,拡幅交 差点など様々であり,さらに隅切りを持つ交差点と持たない交差点が混在しているため,

交差点の形状は多岐にわたっている17).また交差点以外の道路でも,中央帯により車道 の往復方向が分離されている高規格道路や,垂直に近い角度で道路が折れ曲がる屈曲部 などが存在し,複雑な形状をなしている. 以下では,交差部や単路部にどのような形状 があるかについて詳しく述べていく

参考幅員

[m]

車線数(中央帯有無)

主要幹線道路

30

50 4,6

(あり)

幹線道路

20

40 4,6

(あり)

補助幹線道路

12

20 4

(一部あり)

主要生活道路

8

12 2,4

(なし

)

主要区画道路

6

8 1,2

(なし)

区画道路

4

6 1

-

3

項道路

2.7

4 1

-

) 徒歩道等

2.7

以下

-区分

高規格道路

生活道路

表1

表 4-1 道路の種類と道路幅員

道路の種類と道路幅員

71

図 4-1 a)都市域における道路形状と道路縁の例,b)理想的な微小道路要素,c)理想的 な道路 NWD および d)交差部と単路部の分離による道路要素単純化.

A

領域

72

4-2-2 微小道路要素の条件

図 4-1 b)は,道路に隣接する個別建物の区画などからの洪水流出量を精度よく解析す るために,本研究で自動構築を目指す微小道路要素を示している.微小道路要素は,以 下の4つの条件を満たすものとし自動構築する.

① 交差部と単路部が分離されていること.

② 単路部が道路進行方向に幅員程度の間隔で分割されていること.ただし,密集市街 地における個々の宅地のスケールが

10m

程度であることを考慮して,道路進行方向 の分割間隔は,主要生活道路の幅員範囲である

8m

程度から

12m

程度までであるこ と.

③ 高規格道路の場合には,雨水の流れを阻害する中央分離帯があるので,単路部の道 路横断方向への分割数は,幅員が

12m以上の場合には 2

分割,24m以上の場合には

4

分割されていること.この際に道路進行方向の分割は条件②を満たしていること.

④ 交差部は,交差する幅員の大きい単路部と整合し,道路横断方向へ分割されている こと.

なお,交差部は形状が多岐にわたり,特に図 4-1 b) A領域のような複雑形状の交差 部では,④の条件を満たす分割であっても,分割が不十分となる場合があると考えられ る.しかしこうした交差部を分割するためには交差部の形状ごとに多くの例外処理が必 要となり,システムが煩雑となるため,本研究では交差部の分割は単純に④のみを満た すように行うこととした.

4-2-3 道路ネットワークデータの条件

図 4-1 c) は,本研究で自動構築を目指す理想的な道路

NWD

について手作業で作成 したものを示している.道路

NWD

は,主として手作業の修正を必要としない形状での 作成を想定し,以下の条件を満たすものとする.まず,道路

NWD

は道路形状によらず,

ひずみが少なく道路の直進性が維持され,単路部をリンク,交差部をノードとする構造 をもつこととする.また単路部のリンクには,交通解析や氾濫解析など道路

NWD

を用 いた各種解析において重要となる道路幅の情報が与えられるものとする.

73

4-2-4 構築手順の概要

上述のように,都市域の道路は複雑形状となっており,そのままでは微小道路要素や 道路

NWD

を自動生成することが難しい.しかしながら,道路は図 4-1 d)に示すように 交差部と単路部に分離することで単純形状の要素の集まりとして扱うことが可能であり

18).単純化を行った後であれば、微小道路要素や道路

NWD

を適切形状で構築可能では ないかと考えられる.

本研究における微小道路要素と道路ネットワークデータの自動構築手法は,図 4-2の フローチャートに示した手順に従い,まず,道路要素を読み込み,複雑形状の道路を,

交差部とそれ以外の単路部とに分離する.次いで,単路部については,道路進行方向と 横断方向に分割して単路部の微小道路要素を作成する.次に,交差部については,交差 する単路部にあわせて道路横断方向に分割することで,交差部の微小道路要素を作成す る.最後に,単路部と交差部の微小道路要素を出力する.また道路ネットワークデータ についても,交差部と単路部を分離するとともにそれぞれ異なる手法で生成するものと する.

図 4-2 微小道路要素と道路ネットワークデータの自動構築手法のフローチャート

ドキュメント内 高度な地物データ (ページ 82-122)

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