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影響度を考慮した教師データの選択手法

第 6 章 近似式を用いた構造評価の検討

6.4  影響度を考慮した教師データの選択手法

6.4.1影響度の定義

 前節の問題を解決するため,本研究では交叉項算出に必要な教師データ数を削減するため の手法を提案する.

 6.2節で述べた通り,交叉項はある設計変数が変化した際に他の設計変数の変化が解に与 える影響を表すものである.しかし,全ての関係において解に与える影響が大きい訳ではな く,無視出来る関係も存在すると思われる.設計変数と近似する応力値の関係を考えた場合,

形状設計変数の変化は,構造全体の応力に大きな影響を及ぼす事が想像できる.例えば,二 重底高さが高い時と低い時にそれぞれ板厚設計変数を変化させた場合では,二重底部分に直 接関係のない部分であっても応力値が大きく異なる可能性がある.他方,板厚設計変数を変 更した際に,離れた位置に存在する他の板厚設計変数を変化した場合では,応力値の変化は 殆ど無いと思われる.以上の様に,構造全体の応力に大きな影響を及ぼす設計変数の変化は,

他の設計変数が解に与える影響を変化させる可能性が高いため,交叉項を含める必要性があ ると考えられる.しかし,局所的な範囲にのみ影響を及ぼす設計変数の変化は,他の設計変 数が解に与える影響を変化させる可能性は小さいと考えられる為,これらの設計変数に関わ る交叉項は無視できる程に小さいと思われる.

 以上を考慮して本研究では,影響度を「各設計変数を最小から最大まで変化させた際の近 似対象の変化量」として定義し,影響度の高い設計変数についてのみ交差項まで展開する事 とした.

6.4.2影響度の算出

 影響度の具体的な算出方法について,応力の場合を例に説明する.まず全設計変数につい て,最小と最大とに変化させた際の各要素での応力変化量を求める.次に,応力変化量の総 和に対する,設計変数ごとの応力変化量の百分率を算出し,この値を影響度とする.この影 響度を用いて交叉項の有無を決定するが,選定基準は近似する対象や設計変数等によって最 適な値は異なると考えられるので,近似対象ごとに適切な割合を決定する必要がある.

6.4.3影響度による設計変数の選択

 本研究では,交叉項を算出する設計変数の選択方法を「各要素において,設計変数の影響 度を上位から順に足し合わせ,設定した閾値を初めて超える設計変数まで選択する」事と

した.設計変数の選択例として,ある要素A及びBにおける各設計変数の影響度の一覧を

Table 6-4-1に示す.Table 6-4-1-a)及びb)は左から要素内での影響度の順位,設計変数,設

計変数の影響度を示している.また,閾値を0.0から0.2,0.4,• • • ,1.0と変化させ検討する.

 ここで閾値を0.2とした場合,要素Aでは選択される設計変数の組合せは「7」と「29」となる.

また,閾値を0.4とした場合は「7」「29」「8」の3つの設計変数が選択されるため,交叉項は「7」

と「29」,「7」と「8」,「8」と「29」の設計変数の項を求める事となる.しかし要素Bでは,

閾値を0.6より大きくしなければ選択される設計変数は存在しない.交叉項は他の設計変数 との影響を表す項である為,要素Bの設計変数7の様に単独で影響度が大きな設計変数は,

一次項及び二次項での近似で十分な精度が得られると考えられる.また,閾値を0.6に設定 した場合,要素Bでは「7」「8」の設計変数が選択されるが,要素 A でも同じ2つの設計変 数は選択されるため,求める交叉項は増加しない.

 以上の様に本研究の交叉項の選択手法は,各要素の影響度により設計変数を選択する手法

Design

Variable Effective Value

1 7 0.19

2 29 0.14

3 8 0.12

4 5 0.12

5 3 0.11

6 9 0.06

7 2 0.06

8 6 0.03

9 4 0.03

10 30 0.03

11 32 0.02

12 31 0.02

13 1 0.01

14 26 0.01

15 25 0.01

16 11 0.01

17 10 0.00

18 27 0.00

31 12 0.00

32 24 0.00

Cumulative Value

0.19 0.330.45 0.570.68 0.74 0.800.83 0.860.89 0.910.93 0.94 0.950.96 0.970.97 0.970.99 1.00

0.2 0.4 0.6 0.8

Threshold Design

Variable Effective Value

1 7 0.55

2 8 0.07

3 30 0.05

4 4 0.05

5 10 0.03

6 5 0.03

7 11 0.02

8 3 0.02

9 6 0.02

10 1 0.02

11 27 0.02

12 13 0.01

13 2 0.01

14 28 0.01

15 12 0.01

16 15 0.01

17 29 0.01

18 31 0.01

31 26 0.00

32 25 0.00

0.6

0.8 Cumulative

Value Threshold 0.550.62

0.670.72 0.750.78 0.800.82 0.840.86 0.880.89 0.900.91 0.920.93 0.94 0.950.99 1.00 Table 6-4-1 Selected design variables using Effective value

a ) Element A b ) Element B

であるため,低い閾値から多くの交叉項を選択するという傾向にあるが,要素ごとの解の誤 差率を平均化する様に働くため,効率の良い方法であると思われる.