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1.建設業の働き方の特徴

建設業の仕事は古くからの慣習により、請負や手間請負という形で行われて きたため、今日においても工事現場で作業に従事する人は請負人という考え方 が色濃く残っています。このため、建設業では労働者か請負人かの区別が不明 確で、社会保険への加入はもとより施工体制台帳の作成、再下請通知書の作成、

労災保険適用の有無などの面において労働者か事業者の判断において混乱も生 じています。

特に建設業現場では、「一人親方」「手間請負人」「自営業」などにより就労が 行われる場合が少なくないため、社会保険への加入対策を進めるに当たっては、

それらの人々が事業者(請負人)に該当するのか、労働者に該当するのかにつ いの明確な判断が求められることになります。

一人親方(※⑤)を事業者(請負人)とみるか労働者とみるかの判断は容易 ではありません。それは一人親方が職人として雇われて働くこともあれば、時 には施主から直接注文を受けて請負人として仕事をし、又は下請負人として仕 事を請負うことがあるからです。このため一人親方は、そのときどきの就労の 状況によって労働者とみなされる場合もあれば請負人とみなされる場合もあり ます。

一人親方が下請負人として建設工事を請負い、その仕事を完成させることに よって報酬が発生する仕組みの契約を行い、仕事の依頼者との間において雇用 契約のような使用従属関係が発生していなければ請負人とみなされます。

一方、一人親方が仕事の依頼者(使用者)の指揮命令を受けて労務に服して おり、仕事の完成について自らの責任を問われることもなく、他の従業員と同 じような待遇を受けているような場合は労働者とみなされることになります。

(※⑤)一人親方とは

建設業の職人には「見習い、職人、一人親方、親方」の4つの階層があるといわれてい るが、一人親方は、親方の元から独立して労働者を雇用せずに自分一人又は家族などだけ で事業を営む事業主とされている。一人親方は、建設業では見習いや職人を使用して仕事 のできる一人前の職人とみなされているが、その働き方は自ら仕事を請負って働くことも あれば、一定企業の専属となって働く場合もある。

一人親方

手間請負人(※⑥)の場合も一人親方と同じように、単にその呼び名だけで 労働者か請負人かを判断することは困難です。建設業の場合、手間請負に係る 仕事に従事する人は、一般に「親方、子方、配下、世話役」などと呼ばれる人 に多いようですが、労働者か事業者(請負人)かの判断にあたっては、契約の 形式にとらわれず、その実態が使用者の指揮命令の下において従属的に仕事に 従事しているか、使用者から独立して自らの意思や判断によって仕事に従事し ているかなどの就労の実態に照らして判断する必要があります。

(※⑥)手間請負人とは

手間請負という言葉は多様な意味で用いられているが、労働基準法研究会の報告によれ ば、“建設業における労務提供方式”と定義し、「工事の種類、坪単価、工事面積等により 総労働量及び総報酬の予定額が決められ、労務の提供者に対して労務提供の対価として、

労務提供の実績に応じた割合で報酬を支払うこと。」と説明されている。

小規模な建設事業の場合、父親が社長、母親が専務取締役、息子が社員又は 役員といった組織構造になっているものが少なくありません。このような場合、

法人組織(株式会社・有限会社等)の企業であれば、商法、会社法、税法など に照らして事業者性又は労働者性の判断ができますが、個人事業では事業者か 労働者かの判断は容易ではありません。

とくに労働基準法では、労働者の条件について「この法律は、同居の親族の みを使用する事業及び家事使用人については、適用しない(第 116 条)。」とし ていますので、同居の親族や家事使用人は労働者とは認められません。

ただし、以下に掲げる「労働者とみなされる基準」(※⑦)に該当するような 場合は労働基準法上の労働者として取扱うこととされています。

(※⑦)労働者とみなされる基準

「同居の親族は事業主と居住及び生計を一にするものであり、原則として労働基準法上 の労働者には該当しないが、同居の親族であっても、常時同居の親族以外の労働者を使用 する事業において一般事務又は現場作業等に従事し、かつ、業務を行うにつき、事業主の 指揮命令に従っていることが明確であり、始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇等、

賃金の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期等について、就業規則そ の他これに準ずるものに定めるところにより、その管理及び就労の実態が他の労働者と同 様になされて場合には労働基準法上の労働者として取扱う(54・4・2 基発 153)

手間請負人

家族従事者

2.労働者・事業者の選別の必要性

社会保険未加入対策は、平成 28 年度末までに許可業者の加入率を 100%、労 働者単位では製造業並みの 90%前後の加入を目指すとしていますが、その目標 を達成するためには、建設業の就労体制を明確にする必要があります。

特に、社会保険未加入対策では、保険加入状況の確認のために行われること になった「建設業許可・更新書面への保険加入書類の添付義務化」、「施工体制 台帳への保険加入状況の記載義務化」、「再下請通知書による保険加入状況のチ ェック」、「特定建設業者に対する下請指導状況の確認」、「行政による制度的な 指導」等において加入状況のチェックが厳しく行われることになっており、そ の際に労働者か事業者(請負人)かの区別が明確に判断できる体制を整えてお かなければなりません。

労働者と事業者(請負人)では、その負わなければならない法律上の責任の 重さは比較にならないほど大きいものがあります。それは「賃金を支払う者」

と「賃金を支払われる者」との違いによるものです。

特に建設業の場合、現場作業に従事している人自身がどの立場で働いている かが不明な場合も少なくありません。

また、社会保険の適用においても事業主としての加入義務があるのか、被保 険者として加入しなければならないかの違いもあります。

このように、労働者か請負人かを区別することは建設業の社会保険加入対策 を進める上で非常に重要な問題であるため、本章で紹介した事例などを参考に、

いずれか一方に判断する必要があります。

労働者と請負人では責任の所在が正反対

3.労働者・請負人判断のチェックポイント

事業者(請負人)か労働者かを見分けるためには、その就労の実態について 本人との面談又は書面等で確認することになります。本書では、その際の判断 の目安として「労働者性の強い働き方」及び「請負人性の強い働き方」のチェ ックシートを作成しました。労働者か請負人かの判断に迷った際には、本シー トに照らし、実態に鑑み、法令に基づいた取扱いをしてください。

チェックシート①

=労働者性の強い働き方=

このチェックシートを自分の働き方に当てはめた際に、「はい」と答えた項目 が多ければ多いほど「労働者性」が強く、被保険者に該当する可能性が高いこ とになります。ただし「はい」と答えた項目が幾つ以上あれば“労働者”と見 なすかの判断等は、総合的な判断となります。

(注)このチェックシートは、労働基準法研究会報告(労働基準法の「労働者」の判断基 準について)」その他労働者性をめぐって争われた裁判事例などを参考に、任意に作成した ものです。

チェック項目 はい いいえ

①採用される際の選考基準は正規社員の場合とほとんど同様である。

②出勤簿等により出・退勤の記録を行わなければならない。

③始業・終業時刻、休憩、休日、休暇の規定に従わなければならない。

④残業、休日労働の指示には従わなければならない。

⑤仕事の依頼や仕事の指示を拒否することは許されない。

⑥業務内容や遂行方法について使用者の具体的な指示を受けている。

⑦勤務場所や勤務時間が指定され使用者に管理されている。

⑧本人に代わって他の者が労務を提供することは許されない。

⑨時間外に仕事をした場合には通常の賃金とは別に時間外手当が支給される。

⑩他社の業務に従事することが制度上制限され又は事実上困難である。

⑪報酬に固定部分がありその額は生活を維持するための要素が強い。

⑫仕事に必要な工具等は会社のものを使用し自分のものを持込む必要はない。

⑬安全帽、作業服等は指定されたものを着用しなければならない。

⑭報酬は「時間・日給・月給」を基礎として計算されている。

⑮報酬は毎月1回一定の期日に一定額が支払われることになっている。

⑯雇入通知書が発行されその記載事項に沿って仕事に従事している。

⑰賃金台帳、労働者名簿等により就労が管理されている。

⑱社会・労働保険、服務規律等が適用されている。

⑲退職金、福利厚生などの制度が適用されている。

⑳報酬について給与所得としての源泉徴収が行われている。

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