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書
への 見通し
図
図7−3 3年保育での幼児の発達を踏まえた
畑プロジェクトにおける「協同的な学び」のサイクル
最後に,言葉の発達についても触れておきたい。畑プロジェクトは,話し合いによって 活動をすすめているということは,これまでも,度々述べた通りである。そして,知と社 会性を繋ぐ言葉こそが,協同的な学びの核となるものであった。しかし,5歳児になれば 話し合いがすぐにできるのかといえばそうではない。5歳児になって話し合いをするため には,まず自分の思いを言葉に変換し,それを言葉で表現するということがお互いにでき てはじめて成立するものなのである。そのため,3歳児,4歳児の発達は無視できないも のなのである。そこで,3歳児,4歳児,5歳児それぞれでの言葉の発達という視点でど の様な育ちが必要なのかを考える必要がある。
3歳児においては,「感触」「感覚」体験が必要であるといえる。様々な「感触」「感覚」
体験を持つことで,感動や発見をもたらし,その積み重ねが五感を使った言葉を豊かにす る。その結,様々な言葉と意味の両方をあわせて知ることにつながり,豊かな感性と言葉 を育んでいく。
4歳児は「イメージ」を持つ体験が必要である。どんなに多くの言葉(語彙)を知って いても,仲間と「イメージ」を共有することができなければ,書葉がコミュニケーション ツールとして機能しない。4歳児には,相手の考えや思いを知り,自分の内に取り込むた めに,同じ経験した友達や先生が色々な考えや思いを持っているということを理解する必 要がある。葛藤体験(ぶつかり合い)こそ,それを心で知る体験といえる。はじめは相手 のことを理解できなくても,:葛藤体験の積み重ねの中で,相手の考えや思いに気づき,相 手の「イメージ」をつかみ,共有することにつながる。
勤務園での畑プロジェクトでの5歳児にとって,協同的な取り組みで仲間と言葉を介し て,探求し,興味をより広げ,深め,取り組みを発展させていく中で様々な学びを育むも のである。豊かな学びを得るためには,5歳児において言葉の豊かさが必要不可欠となる。
言葉が豊かでなければ,書葉で表現することへの意欲が持てず,協同的な学びは展開でき ない。以上の議論を図で表したものが,下図7−4である。
3歳児 感覚・感触遊びと感性 ↓
4歳児 イメージと葛藤 ↓
5歳児 言葉での表現,仲間との伝え合い ↑ ↓
協同的な学び
図7−4 幼児期の言葉に向けての発達と協同的な学び
今後,これらのモデルを踏まえて,3歳から5歳に至るまでの発達を見据えた「協同的 な学び」の研究を進めていきたい。さらに,実践面では,3年保育というスパンで,畑プ ロジェクトの指導計画を精選していこうと考えている。
3.家庭や地域との体系的な連携に向けて
まず,家庭との連携を持っためには,畑でどのようなことが行われているのか,幼児が どのような活動をしているのかを保護者の方に知ってもらう必要がある。そこが無ければ,
家庭との体系的な連携を行うことは不可能である。そして,保護者の方にそれらのことを 知ってもらう方法として,「ドキュメントシート」の作成と掲示をおこなった。
幼児が実際にした活動の内容ごとに,模造紙に子ども達の活動を捉えた写真を貼り付け,
子ども達がどのようなことを行ったのか,またその際に発したつぶやきも書き示している。
また『クラスだより』で畑での子ども達の取り組む様子を保護者に知らせている。
それら取り組みは,家庭においても,保護者と幼児が共通の話題として,お互いに話を 出し合い,幼児は保護者がドキュメントシートやクラスだよりから知った内容を幼児に話 すと,幼児はその話しかけに対して,さらに実体験を話すといったつながりをもたらして いるのである。また,共に驚いたり,発見を喜んだりする場を提供することもできてきて いる。保護者の方からの感想などからそれらのことをうかがうことができる。また,その 例として保護者と子どもとの問に以下のようなやりとりがあった。一人の子の手の平に乗 っている生き物に頭を寄せ合って見ている場面の写真を載せた『ドキュメントシート』を 貼っている前で,数人の子ども達とその隣で一緒に見ていた数人の保護者のエピソードで
ある。
保護者A「これ何をしてるの?」
幼児①「みんなで,おたまじゃくしを見てるねん。」
保護者B「おたまじゃくし!」
幼児②「おたまじゃくし知らんの?」
保護者Br知ってるけど,どうしたの?」
幼児③「これな,田んぼにようさんおるねん。」
幼児④「こっち来てみ。」
と,保護者を保育室の中に誘い,ロッカーの上においてある飼育ケースを示して,
幼児②「さっきのこれやで。田んぼで捕ってきて育ててる途中。」
保護者C「うわ一ほんとやおたまじゃくしや。」
幼児④「もう足が生えてきてるのもおるで。」
保護者 「足!どこどこ?」
幼児④「それ,今上に泳いでいってるやつ。はしっこの方。」
保護者 「うわ一,ほんとや,ほんとや足がはえたるわ。」
幼児③「でもまだ後ろの足だけで,前の足はでてきてへんねん。」
『ドキュメントシート』という情報が,幼児の活動を知るということだけに留まらず,
幼児の畑での発見を共有することにつながったことが伺えた。
幼児にとって,友だちと一緒に『ドキュメントシート』を見ることは,「田植えのあの泥,
気持ち悪かったな。」など,体験後の振り返り共感の場を創ることになった。『ドキュメン トシート』を観る事でその中に新たな発見をしたり,自分達の活動を振り返って,語り合 ったりすることで,一人の興味関心からみんなの興味関心に更に広げ深めることにつなが
った。
また,畑での活動を継続する上で,雑草との戦いが常に強いられる。幼児も保育者も草 抜きするが,追いつかない。そこで草抜きを手伝ってくれる人(畑ボランティア)を保護 者に募集し,親子で畑に入ってもらうことにした。草抜きをしていると,草を抜いている ところにカエルがとんできたり,バッタやこおろぎの虫がとんできたり,時々お母さんは 悲鳴をあげながらも親子での発見を楽しむ機会となっている。今では珍しくなったオケラ が発見されると,親子でじっと見て,オケラのユーモラスな動きを楽しみ,発見を喜び合 っている。このような幼児の活動の場である畑での共感体験が,体系的な家庭との連携に 大きな役割を担っているといえる。
また,地域との体系的な連携については,この畑での幼児の活動する姿を継続して見て てらうことが大きな要素となることを感じている。
幼児が活動している姿を見て,地域の人たちは今までなら挨拶で終わっていたが,田植 えの仕方について話しかけると,実際に畑に入ってきてくれて,田植えの仕方を教えてく れたり,稲刈りの時などは稲刈りの仕方だけでなく,刈った稲の縛り方と干し方まで教え てくれたりなど親切にかかわってくれた。
このようなコミュニケーションを積極的に持ち,大切に生かすことで,地域の人々も進 んで畑に入ってきてくれて,農作物の生育具合を見て,状態によって助言をくれる機会も 増えてきた。畑が地域の人にとって風景としての農園から,地域の人々にとっても幼児に とっての大切な農園となってきている。中には,田んぼでどう遊びをした日,田植えをし た日,稲刈りをした日などを全て把握していて,幼児の畑で活動する姿を楽しみにしてい るお年寄りの方も少なくない。
今後まずます畑で活動する幼児の姿が,地域の人を引き付けるものとなっていった時,
勤務園の畑は,勤務園の畑というだけではなく,地域の人をつなげる要素を備えていくも のと思われる。
引用・参考文献
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Katz, L. G.&Chard, S. C.2004子どものこころといきいきとかかわる一プロジェク ト・アプローチ小田豊(監修)奥野正義(訳)光生社
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