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第 6 章 大型研究計画の推進

設立からの 30 年間

(1962 年 4 月〜1992 年 3 月)

 設立からの 30 年間の歴史を簡潔に記す.詳細 は『東京大学海洋研究所 15 年史』,『東京大学海 洋研究所 30 年史』を参照されたい.

 設  立

 海洋研究所は,国立学校設置法の一部改正によ り,1962 年 4 月に本学附置の研究所として誕生し た.同年 4 月,海洋研究所設立準備委員会が発足 し,研究所の英名を Ocean  Research  Institute と することを決定した.同年度,2 部門設置と 250 トンの研究船 1 隻建造の予算が認められた.設立

当時,本所の敷地は定まっていなかった.

 敷地・建物

 敷地についていくつかの候補地があがったが,

茅誠司総長の提案に基づき教育学部附属中学校・

高等学校の敷地の一部 1 万 m2の譲渡を受けるこ とになった.1963 年 2 月に本館 A 棟の新設に着工 し,1967 年 5 月に開所式を催した.

 部  門

 1962 年から 1975 年にかけて部門(現在の分野 に相当)が年を追って順次,整備されていった.

1962 年 4 月「海洋物理部門」と「海底堆積部門」,

1963 年 4 月「プランクトン部門」と「資源解析部 門」,1964 年 4 月「海洋無機化学部門」と「海洋 生物生理部門」,1965 年 4 月「海底物理部門」と

「資源生物部門」,1966 年 4 月「海洋気象部門」と

「海洋微生物部門」,1967 年 6 月「海洋生化学部 門」,1968 年 4 月「漁業測定部門」,1970 年 4 月「海 洋生物生態部門」,1972 年 5 月「資源環境部門」,

1975 年 4 月「大洋底構造地質部門」が設置された.

これで予定の 15 部門が設置された.さらに 1990 年 6 月,10 年時限で「海洋分子生物学部門」が設 置された(同部門の時限は 2000 年の改組によって撤 廃された).この時点で 16 部門となった.

 大槌臨海研究センター設置

 臨海研究施設の設置は 1962 年の本所設立当初 より計画されていたが,研究船建造を優先させた ため,1969 年から準備を始めた.建設地として 全国にわたって調査を行った結果,岩手県大槌町 の現在地を最適地の 1 つに選定した.1971 年より 本所の附属施設として設置申請を行い,1973 年 4 月に国立学校設置法施行規則の一部改正により,

大槌臨海研究センター(現国際沿岸海洋研究セン ター)が設置された.1977 年 6 月に向坊隆総長を 迎えて開所式を挙行した.1978 年から共同利用 を開始した.

 研究船

 初代淡青丸(1963 年 6 月竣工):研究所設立

6 序章 発足からの 50 年間をふりかえって

にあたって建造を予定していた大型および小型の 研究船のうち,250 トン級の小型船は 1962 年度の 予算措置を受けて,1962 年 12 月に下関で起工し,

1963 年 3 月に進水し「淡青丸」と命名された.同 年 6 月に竣工し本学に引き渡された.停繋港とし て豊海水産埠頭を借用した.同年 7 月に初研究航 海を行った.本船は日本初の研究船であり,その 設計は工学部高木淳教授を中心としてまとめられ た.本船は主に日本近海における研究のために全 国の多数・多分野の研究者の共同利用に供された.

 初代白鳳丸(1967 年 3 月竣工):研究所設立 当時から大型研究船の建造は重要な課題であっ た.1963 年 6 月の初代淡青丸の竣工後に大型研 究船の建造計画策定にとりかかり,同年のうち に 3,000 トン級建造の概算要求を行ったところ,

1965〜1967 年の 3 カ年にわたる予算措置が認めら れた.設計にあたり工学部山村昌教授の指導を受 けた.本船は 1966 年 11 月に進水し,「白鳳丸」と 命名された.1967 年 3 月に竣工し本学に引き渡さ れた.本船の母港は新たに用意された晴海埠頭 H―4 号桟橋であった.本所開所式の行われた 1967 年 5 月,竣工祝賀会をこの桟橋で同日に開催した.

同年 7 月,初研究航海を北太平洋で行った.本船 は遠洋,近海を含め比較的長期間の研究航海のた めのもので,全国の多数・多分野の研究者の共同 利用に供された.

 第 3 船建造計画:1972 年 9 月に中型第 3 船の建 造の必要性を検討するための「新研究船懇談会」

を所内に設置した.1975 年 4 月には本学に学部長・

研究所長などで構成される「海洋研中型研究船建 造に関する懇談会」の設置が承認された.本所 は 1976 年度に新研究船建造に関する概算要求を 行ったが,残念ながら予算化に至らなかった.

 第 2 代淡青丸(1982 年 10 月竣工):初代淡 青丸の老朽化と設備の陳腐化を受けて 1979 年 2 月 に 「新研究船推進委員会」 を設置して,490 トン 級代船の構想を工学部竹鼻三雄教授の助力を得て まとめた.1980 年 5 月に推進委員会を 「代船建造 準備委員会」 に切り替え,概算要求の準備を始め た.1981 年 4 月,460 トン級の建造予算が発効した.

1982 年 2 月に下関で起工し,同年 7 月に進水式を

行い,同年 10 月に竣工し本学に引き渡された.

繋船場として東京港御台場 13 号地に新設の桟橋 を使用した.

 第 2 代白鳳丸(1989 年 5 月竣工):1981 年,

船齢 15 年となった初代白鳳丸に代船建造の必要 性が強調され,同年 12 月に「白鳳丸代船建造推 進委員会」の設置が決定された.何回かの予備折 衝を経て,本所は 1986 年に 4,000 トンをめどとす る代船建造に関する概算要求を行ったところ,

1987〜1989 年の 3 カ年にわたる予算措置が認めら れた.1988 年 5 月に下関で起工し,同年 10 月に 進水式を行い,1989 年 5 月に竣工し本学に引き渡 された.同年に世界一周航海が行われた.

 共通施設

 観測機器管理室(86m2):1967 年度に観測機器 検査室として B 棟に設置.1972 年に観測機器管 理室になり,共通観測機器の管理と研究船にお ける観測指導を担当した.放射線同位元素実験 室(212m2):1969 年度に B 棟に設置.放射性同位 元素を用いた実験が年間 400 件程度行われた.電 子 計 算 機 室(300m2):1964 年 度 に B 棟 に 設 置.

1964 年 に OKITAC―5090C,74 年 に FACOM230―

45S,79 年に FACOM  M―160S,82 年に FACOM  M―180IIAD,86 年 に FACOM  M―360AP,90 年 に IBM4381―T92 が導入された.飼育室(360m2): 1980 年度に C 棟に設置.飼育室,飼育実験室,低 温実験室,機械室よりなっていた.培養室(120m2): 1970 年度に A 棟に設置.1974 年に新設された B 棟に移転.培養準備室,無菌接種室,恒温培養室,

水槽培養室よりなっていた.資料室:1969 年度 に A 棟と B 棟の計 4 カ所に設置.資料の蓄積にと もない,研究船で採取した資料等を保管する場所 が不足するようになった.冷凍室:1965 年度に A 棟,74 年度に B 棟に設置(ともに 80m2).利用 部門が持ち回りで毎日,温度監視を行った.写真 室(40m2):1963 年度に A 棟に設置.当初より,

写真の撮影,現像,焼き付け等に利用されていた が,1979 年にパナコピー,84 年度にデザインス コープが導入された.金工室(86m2):1969 年度 に B 棟に設置.所員が自ら使用でき,必要に応じ

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て担当技官が工作する複合方式をとった.多くの 部門が金属加工や機器製作の面で支援を受けた.

ガラス工作室(86m2):1969 年度に B 棟に設置.

実験研究に必要な各種ガラス装置,器具等の作成 や研究者への技術指導を行った.遺伝子解析実験 室(40m2):1988 年度に B 棟に設置.P2 レベルの 遺伝子組み換え DNA 実験を行うために施設とし て安全キャビネット(クラスⅡ),オートクレー プなどが導入された.測定器室:大型実験機器を 共通に使うために部屋を A 棟に 8 カ所設けた.

 図書室

 1964 年度に A 棟に設置され,1967 年に閲覧室・

書庫が完成した.1962 年は洋書 6 冊,和書 110 冊 で計 116 冊の蔵書数であったが,1992 年度末の蔵 書数は洋書 22,857 冊,和書 8,578 冊の計 31,435 冊,

購入雑誌種類数は洋雑誌 199 種類,和雑誌 44 種類,

計 243 種類となった.

0 ― 2 ― 3

海洋研究所の発展

(1992 年 4 月〜2010 年 3 月)

 本所設立当初の計画に沿って,部門(現在の分 野)が年を追って整備されていった.1990 年 6 月 に 16 番目の海洋分子生物学部門が設置されて,

本所の基礎固めは一段落した.ただし,海洋に関 する基礎的研究を行う全国共同利用研究所として の機能を高めるための努力は絶え間なく続けられ た.以下にこの期間の主なできごとを年代順に記 す.

 1994 年 3 月,本所の将来構想委員会は『東京大 学海洋研究所の現状と課題』を発行し,研究部門 の充実,国際共同研究の進展のための新センター の設置が必要であると指摘した.

 1994 年 6 月,海洋科学国際共同研究センターが 設置された.本所設立以来,数多くの国際共同研

究に日本の海洋コミュニティを牽引する立場で参 画してきたが,本来グローバルな性格を有する海 洋科学に国際共同研究の核となる組織が所内に必 要であり,また,日本学術振興会の拠点大学方式 による研究者交流がアジアを中心に盛んになって きたことが設立の背景となった.本所は 16 研究 部門と 2 研究センターの体制となった.

 1995 年,第 1 回外部評価が国内外の 20 名の有 識者により行われ,キャンパス移転を含めて改組 拡充が不可欠との指摘を受けた.

 2000 年 3 月,第 2 回外部評価が国内外の 24 名 の有識者により行われた.海洋科学の先端・境界 領域の研究を総合的かつ柔軟に行うために小部門 を大部門に改組する計画が支持された.やはり キャンパスと建物の狭隘が指摘された.

 2000 年 4 月,大部門制に改組された.従来の 16 小部門(現在の分野に相当)は 6 大部門にまとめら れた.同月,『平成 12 年度改組後の東京大学海洋 研究所』を発行した.

 2000 年 4 月,海洋環境研究センターが,部門改 組とともに,10 年時限で設置された.従来の小 部門の枠組みにとらわれず,海洋環境について学 際的に取り組むための新たな研究センターの設置 は将来構想委員会で論じられていた.同センター 設置により,本所は 6 研究部門と 3 研究センター の体制となった.

 2001 年 4 月,新領域創成科学研究科海洋環境サ ブコースが新領域創成科学研究科(1998 年 4 月設 置の独立研究科)環境学研究系自然環境コースに 設置された.本所の大学院教育は主に理学系研究 科と農学生命科学研究科を通して行ってきたが,

本所は海洋科学の総合化に対応する大学院教育を 行うことを意図して新領域創成科学研究科に参画 し,本所教員 21 名が同サブコースに加わった.

 2003 年 4 月,大槌臨海研究センターの改組によ り国際沿岸海洋研究センターが設立された.設置 から 30 年にわたる沿岸海洋研究の全国共同利用 拠点としての活動が評価され,教員数は教授 1,

助手 4 から教授 2,助教授 2,助手 2 となった.同 年 10 月,『東京大学海洋研究所国際沿岸海洋セン ター(旧大槌臨海研究センター)30 年の歩み(1973

0―2 海洋研究所 50 年間の小史

ドキュメント内 大 気 海 洋 研 究 所 創 立 50 年 を 迎 えて (ページ 32-36)