第 1 章 学習者の初等電磁気概念の達成と意図的カリキュラムの構造 本章では、標準学力検査での通過率の変動や、昭和 4 3 年改訂版学習指導要領
昭和 42 年度の第五学年、昭和 47~50 年度の第六学年の正答率が与えられてい
るo 回路につないだ電熱線の長さと豆電球の明るさの関係を第五学年の 7割が 正答したが、電流の強さの変化と対応づけたのは 2割であったo 電熱線が短く なると豆電球により多くの電流がまわせると考えるのではないかと推測されるo
また、第六学年の 7割が電熱線が短いと電流の強さが強いことを正答したが、
短いほど発熱量が多いと考えるのは最大で 5割程度であったo また、電熱線が
太いほど電流の強さが強くて発熱量も多いことの正答率は概して 6~7 割であ
ったo 電熱線の発熱時の色に関して、不変であると正答するのは 2割未満で、
赤熱するという誤答が多かったo
(7)電流の強さと電熱線の発熱
平成 6年度の第六学年の 8割が、発熱の最も大きい乾電池のつなぎ方に乾電 池2個の直列つなぎを選択し正答したo
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電流の強さや巻き線の巻き数と磁化の大きさ第六学年の正答率が与えられているo コイルの巻き数が多いと磁力が強いこ とについて 8割程度の正答率が得られたo しかし、巻き数を変えても電流の強 さが変わらないと理解しているのは 2割以下と低かった。コイルの巻き数の変 化と電流の強さの変化を結びつけて考えていることが推測されるo また、電流 の強さが強いほど磁力が強いことについて 7‑‑8割の正答率が得られたo
この他に、電流の強さやコイルの巻き数と電磁石の磁力の関係を調べる実験 での回路の組み合わせを尋ねる設聞が平成6年度に用意されたが、正答率は 6 割程度であり、知識理解の正答率よりも低い値を示したo
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第2節 実態調査の実施概要と分析観点
前節では、標準学力検査における通過率変動に見られる特徴について示した が、同一の調査課題が必ずしも長期にわたって一貫して出題されるわけではな いために、昭和43年改訂版と平成元年改訂版の施行下における学習者の概念達 成について正確な比較は行えなかったo よって本研究では、昭和43年改訂版小 学校学習指導要領の施行下である昭和
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年度に小学校児童を対象に実施された 初等電磁気内容に関する認識の実態調査(坂元・武村 1978)を基に、同一手法を 採用した実態調査を平成 8年度に実施したo これら 2調査の被験者における概 念達成を比較し、類似点と差異点の明確化を試みるo なお、本節では 2つの実 態調査の概要について示す。,
.昭和52年3月実施実態調査の概要この調査は、坂元・武村(1976)などによって提唱された教材の次元分けに基 づいており、学校理科によって獲得される学習者の認知構造に対して彼らの理 論がどの程度説明可能であるかを把握する目的で昭和52年3月に実施されたo
教材の次元分けとは、例えば初等電磁気内容の学習において出現する教材の構 成要素を、「豆電球が乾電池の+極と一極に導線によって一つの輪につなが る」のように獲得が意図される概念の成立に本質的に関わっており不可欠な適 切次元と、
R
導線の色や形状」のように概念の成立に本質的な関わりはないが 学習者が着目することによってつまずきの原因となる不適切次元の 2つに分類 して、教材構造を組織立てたものであるo この調査における出題問題では、選 択肢の設定において次元分けが加味されているoこの調査では、当時の昭和43年改訂版小学校学習指導要領における初等電磁 気内容の構成や教師による授業実践報告の分析結果を踏まえた詳細な問題設定 と、全国規模からサンプリング校を選定した点に特色があるo 調査対象学年と した第一 第六学年の各学年向けに五肢択一形式の設問群からなる質問紙が用 意されたo 質問紙は、 20問強の学年固有問題部、 12問の学年共通問題部(第三 学年以上に出題)、 29聞の児童背景問題部の 3部から構成されているo 問題構 成・設問内容については表1‑2‑1及び表1‑2‑2にその詳細を示す。地域や学校規 模に配慮して 7道県の国公立小学校23校が調査校として選定されており、表1‑ 2‑3に示すように各学年 800人程度の児童が被験者となっているo なお、第三 学年は電気と磁石の 2単元が設定されていたことから、単元毎に学年固有問題 と被験者集団が用意されたため、他学年と比べて 2倍の被験者数となっているo
2 .
平成9
年3
月実施実態調査の概要昭和52年調査と同一の質問紙を採用することにより、現行児童を対象とした 調査を平成9年 3月に実施したo 地域や学校等の質的な差違による影響を極力 抑えるために、昭和52年調査の調査校23校に対して調査協力を依頼し、そのう ち承諾の得られた14校を今回の調査校として設定したロ平成9年調査における
表1‑2‑1 実 態 調 査 に お け る 出 題 問 題 の 構 成
出題された 問題が 学習取扱いのある
問 題 掲載の 出題問題によって尋ねられる内容領域 学年と問題数
部 番 号 質 問 紙 Bg52 平9
学 年 1‑20 第一学年 磁石:磁石につく物/物の形状と磁石につくこと/磁石の極/磁石の磁力/磁力の 一 年 二 年
固有 遠隔作用/磁力の遮蔽 19問 14間
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第二学年 豆電稼と乾電池:乾電池の極/豆電球と乾電池のつなぎ方/物の通電性/不点灯 二 年 三 年
のつなぎ方/導線の形状と明るさ 20問 20問
1‑23 第二学年 旦電球のつなぎ方と明るさ:旦電球2個のつなぎ方/JI.電球の直列つなぎ・並列 二 年
A つなぎ/豆電球のつなぎ方と明るさ・乾電池の消耗 23閑
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第 六 学 年 電流と電磁石:電磁石の極/電磁石の2極の吸引・反発/電流と磁力/コイルの 六 年 六 年
巻き数と磁力/心の材質や長さと磁力 22問 22問
1‑24 第二学年 磁石の働き:磁石の性質と極/ 2極の引き合い・退け合い/磁石の指北性/磁石に 二 年 二 年
B よる磁化/磁石の周りの磁力の向き/磁力の強さ 23問 16問
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第四学年 乾電池のつなぎ方と電流:乾電池の直列つなぎ・並列つなぎ/乾電池のつなぎ方と 四 年 四年 明るさ・乾電池の消耗/電流の強さと働き/電流の向き/回路各部の電流の強さ 22問 12問
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第五学年 電流と発勲:電熱線に流れる電流と発熱/電熱線の太さ・長さと電流の強さや発熱 五 年 六 年 の大きさ/電流計・電源装置の使い方/発熱時の電熱線の色 19問 10問 学 年 25‑36 第 二 物の付磁性や通電性/不点灯のつなぎ方/導線の形状と明るさ/豆電球の直列つなぎ 一 四年 ニ 四年 共 通 第六学年 ‑並列つなぎ/磁石の指北性/乾電池の直列つなぎ・並列つなぎ/電流の向き 12問 7問 児童 37‑65 第 一 兄弟構成・遊び・クラプ活動/理科学習への情意・態度/栽培・飼育・採集・観察等の経験/
背 景 第 六 学 年 情報の収集・活用,製作・分解,科学博物館の利用等の経験
表1‑2‑2 出題問題一覧
r~ ), i固有問題部1
倒 閣 設問内主宰
‑羽1│紋の色と憾石につく物 第:前2 紙の形と磁石につく物
ロ3同曹 雪やアルミ箔と磁石につ宝物 学.ロ4 日 円品で磁石につかない物 年・ ロ5 日 日品で磁石につく物
固・ ロ6 大 さや形 の異なる鉄製品と磁石につく物 有:ロ71素,1寸名を 表示した日用品と磁石につく物 問:ロ81塗!長した鉄釘と磁石につく物
題・ 前9 形や大きさの異なる鉄釘と磁石につく物
‑間10磁石が鉄釘を引きつける程度
:~司 11 磁石につく物
;ロ12コップに遮られる時の磁石への吸引
‑ロ13│水中での磁石による鉄釘り吸引 .ロ14U字磁石のカが強い筒所 .ロ15!棒磁石への砂鉄のつき方 :ロ16│外的変化を与えた後の磁石の強き
い17磁石に持ち上げられた箱の中味
‑淘18磁石による離れて骨いた鉄釘の吸引
‑調19磁石のカを遮る物
‑苛20磁石の力強さの調べ方
;前1l乾電れ のーffl!
第・ ロ2l乾電計 への導線のつなぎ方 一ー. 口3 点灯三 星野の乾電池 のつなぎ方 学ー ロ4│道線陪 につなぐと豆電球が点灯すてる皇り 年:ロ5│導;線陪 につなぐと豆電球が点灯するもの 固:ロ6│不点ま の時の 良くない調べ方
有・ ロ7 点灯す る時の要素の組み合わせ 問・ 間8 点灯する時の要素の組み合わせ
題;問9│導線開につないだアルミ箔の形と豆電球の明るさ
: F,,'10不点灯の時の乾電池へのつなぎ方
‑前11不点灯となる時の正しい理由 .ロ12 l不点灯の時の豆電球へのつなぎ方 . ロ13点灯する時の乾電池・豆電球へのつなぎ方
.
,ロ14 点灯となる時の正しい理由a 15 加えて不点灯となるつなぎ方(ショート回路含む)
‑ロ
‑ロ16 を追加・延長した時の旦電球の明るさ
~m 17 をきフく曲げた時の豆電球の明るさ
:n丹18、 がねじれた時の豆電球の明るさ :ft男19、 を2重に接続した時の豆電球の明るさ .問20 が太〈なった時の豆電球の明るさ
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表1‑2‑3 昭和52年3月実施実態調査被験者内訳 表1‑2‑4 平成9年3月実施実態調査被験者内訳
調 査 校 数 23校 調 査 校 数 14校
府 県 別 北 海 道4,千葉1,神奈川2, 府 県 別 北 海 道4,千葉1,神奈川1, 新潟5,長野6,岡山3,福岡2 新潟3,長野1,岡山2,福岡2 被 験 者 総 数 5,585人(男2881,女2704) 被 験 者 総 数 2,932人(男1498,女1434)
十...... 第 一 学 年 780人(男 399,女 381) 千品 比 第 一 学 年 451人(男 231,女 220) 第 二 学 年 796人(男 393,女 403) 第 二 学 年 414人(男 212,女 202) 年 第 三 学 年 ,1611人(男 837,女 774) 年 第 三 学 年 776人(男 388,女 388) 第 四 学 年 779人(男 400,女 379) 第 四 学 年 452人(男 235,女 217) 別 第 五 学 年 812人(男 433,女 379) 別 第 五 学 年 393人(男 206,女 187) 第 六 学 年 807人(男 419,女 388) 第 六 学 年 446人(男 226,女 220)
注)三年は質問紙2種(A:電気問題・B:磁石問題)実施のため 注)・調査校は、昭和52年3月実施実態調査の同一調査校に 他学年と比べて約2倍の被験者数となっている。 調査依頼を行った結果、協力の得られた学校を設定した。
・三年は質問紙2種(A:電気問題・ B:磁石問題)実施のため、
他学年と比べて約2倍の被験者数となっている。
被験者数は各学年とも 400人程度であるo これは調査校の各学年からある 1ク ラ ス に 在 籍 す る 児 童 を 被 験 者 と し た も の で あ るo 被 験 者 数 の 詳 細 は 表1‑2‑4に 示す通りであるo
なお、先に述べたように設問内容は昭和43年 改 訂 版 小 学 校 学 習 指 導 要 領 に 基 づいて設定されたために、現行の平成元年改訂版小学校学習指導要領において 学習学年が変更されたものや学習取り扱いが全く無いものなど様々な状況が存 在したo しかし、調査の実施に際しては設問内容に関連する特別授業は一切行 わず、平成元年改訂版の小学校学習指導要領に基づく通常の授業のみが児童に 提供された。
3.比較分析での観点
昭和52年調査と平成9年調査の被験者における正答率を比較することにより、
学習者の初等電磁気概念の達成度に見られる共通点や差異点などの実態を明ら かにするわけであるが、ここでの分析に際しては次のような観点を設けたo
①学習経験に伴う概念形成の差違
:両調査の被験者ヘ共通に設定されている学習内容に関して、各調査で学 習成果がどのような特徴をもってあらわれているのか検討するo
②日常経験による概念獲得の可能性
:昭和52年調査の被験者には設定されていたが、平成9年調査の被験者に は設定されない学習内容に関して、平成9年調査の被験者が日常経験を 通じて科学的概念を獲得する可能性を検討するo
これらの観点に基づいて、第 3節では学年固有問題部の回答から各学年内での 比較を、第4節では学年共通問題部の回答から学年横断的な比較を中心に取り 扱うこととしたo
なお、 2つの調査闘で調査校数の変更が生じたため、昭和52年調査のデータ に関して平成9年調査の調査校のみのデータヘ変更することを検討したo しか
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