第29巻2号
この旅行から既に 15 年になります。でもわ ずかこの二日間の思い出が今も生き生きと
甦ってきます。はるか離れた横浜の地から
Hubert
と
Midgeのご冥福を心よりお祈りい
たしします。
宮道慎二(NITE
客員研究員)
庄村 喬先生の思い出
Lechevalier
先生への想いをつづって
2日
後、庄村さんが急死されたとの電話がかかっ てきた。大変なショックのなか行われたお通 夜に参列し、少しでも感謝の気持ちを書きた いと思った。まずは彼が放線菌への熱い思い をつづった文章から一部引用する。 『放線菌 と生きる』放線菌学会出版
「私にとって、放線菌の魅了はその美しさ です。人が生物を見るとき、先ずは姿かたち の美しさに魅せられます。微生物である放線 菌は、肉眼で見えるのはコロニーだけで、細 部は光学顕微鏡、さらに電子顕微鏡でないと 見えません。私は最初コロニーの美しさに魅 せられ、次いで顕微鏡、特に電顕での形態の 美しさに感動し、放線菌にのめり込んでいき ました。
1964年明治製菓に入社、研究所に 配属され大学の先輩でもある仁井田太郎氏 の研究室で、初めて放線菌と出会いました。
この研究室には電子顕微鏡の素晴らしい技 術者である天野昭一君がいてその後宮道慎 二君が入社し、手伝ってくれる吉田順子さん、
守山千恵子さんらも加わって活気ある放線 菌チームとなりました。このチ-ムで数々の 美しい放線菌と出会い、多数の思い出を作る ことができたのです」と書かれている。それ では放線菌は、明治製菓にどのような利益を もたらしたのだろうか。庄村さんチームが発 見した新規有用物質は多く、代表的な抗生物 質としてはマクロライド系のメデカマイシ ン、アミノ配糖体のベナノマイシン、農薬の 分野でもペプタイド系ビアラホスなどがあ る。メデカマイシンは数年にわたり年に
100億円を超える利益を会社に提供してきたが、
生産菌
Streptomyces mycarofaciensについて、
庄村さんが次のように書いている。 「分離シ
ャーレに出現したこの菌のコロニーは珍し い色合いで美しく、一目ぼれでした。電顕で 見ると胞子はトゲに覆われていました。美し いものにはトゲがあるとはよく言ったもの です。でもトゲトゲしいのではなく、みごと な美しいトゲでした」
☆ ☆
庄村さんといえば次のエピソードも紹介 したい。生産現場の足柄工場長だった重鎮の 伊藤辰男さんが微生物室長に就任、庄村さん とのチームワークの良さで一段と放線菌グ ループの活気は高まった。強く印象に残って いるのは伊藤さんが「将来、庄村君を社長に する!」と宣言、一段とチームの結束は高ま った。チーム員にとっては庄村さんの人間的 なスケールの大きさが分かってもらえる人 に出会えたことがうれしかったのだ。学術的 にもダクチロスポランギウム、アクチノマジ ュラ、ハービドスポラなど多くの分類学的論 文を発表し
1993年日本放線菌学会の学会賞 を受賞された。
(庄村さん葬儀の様子)
次に、庄村さんと親しいお二人から以下の 通り短いメッセージをいただいた。
堀田国元;私が
1972年から微生物化学研
究所の岡見研究室で放線菌の仕事を始めた
頃から、北大の同門の誼で庄村先輩は仁井田 太郎大先輩とともに暖かく見守り応援して くださった。どれほど心強かったことか。ま た、毎年の年賀状には必ず前年に読まれた本 のリストが並んでいた。そこから、あの素晴 らしい人柄を磨いて来られた側面が感じと られ、刺激を受けた。その楽しみが消えてし まったことが残念でならない。
高橋洋子;庄村先生の突然の訃報で、頭の 中は混乱状態です。大会には必ず参加され、
その度に声をかけて下さいました。いつも穏 やかに、放線菌を語り、そして「浜田先生と いう方がおられるんだから、貴方も頑張りな さい」と励ましていただきました。カッコ良
くて、あこがれの人であり、心の支えでした。
心からご冥福をお祈りいたします。そして、
これからもずっと、庄村先生をがっかりさせ ない様に生きて行こうと思います。
庄村さんのもう一つの側面、それは彼のサ ッカー人生。彼は単なる1プレーヤーではな くチームの要、まとめ役。北大サッカー部で はキャプテンだったと聞いた。告別式の弔辞 は庄村さんがコーチしている研究所チーム の坂本君が担当、最後は「天国でもサッカー を愛してください」だった。
宮道慎二(元
明治製菓)
受賞論文掲載のおしらせ
2011 年度浜田賞受賞 木谷 茂 博士
(大阪大学
生物工学国際交流センター)
「放線菌における低分子シグナル伝達系を介した抗生物質生産制御メカニズムの解明」
“Deciphering regulatory mechanisms for antibiotic production by Streptomyces hormones”
Dr. Shigeru KITANI
Actimomycetologica (2015) 29 [2], S10-S17.
2015 年度 日本放線菌学会 大会プログラム
9
月
7日(月)
9:20
開会の辞
9:30一般講演
O-1
モレキュラーネットワーキングによる新規放線菌二次代謝産物の探索
○小山 信裕
1,3, Dimitrios J. Floros 2, Paul R. Jensen4, Pieter C. Dorrestein3(
1北里大・薬
, 2Chem. Biochem., UCSD, 3Skaggs Sch. Pharm. & Phar. Sci., UCSD,4Scripps Inst of Oceanography, UCSD
)
O-2
放線菌
Streptomyces griseus OS-3601が生産する新規物質について
○宮野
怜
1,松尾 洋孝
2,木村 徹
1,浅見 行弘
2,岩月 正人
1,2,佐藤 倫子
3,塩見 和朗
1,2,高橋 洋子
2,大村 智
2,中島 琢自
2(
1北里大院・感染制御科学府
2北里生命科学研究所
3北里大・薬)
O-3
アミノ基キャリアタンパク質を指標とした新規天然化合物の探索
○松田 研一
1,長谷部 文人
1,富田 武郎
1,兼崎 友
2,志波 優
2,吉川 博文
2,新家 一男
3,葛山 智久
1,西山 真
1(
1東大・生セ
, 2東京農大
, 3AIST)
O-4
複合培養法による
Streptomyces属放線菌由来新規二次代謝産物の探索
○星野 翔太郎1, 張 驪駻1, 淡川 孝義1, 脇本 敏幸2, 尾仲 宏康3, 阿部 郁朗1
(
1東大院・薬,
2北大院・薬,
3東大院・農)
O-5
複合培養における放線菌とミコール酸含有菌の生死で異なる相互作用
○浅水 俊平
1,尾崎 太郎
1,寺本 華奈江
2,佐藤 勝也
3,尾仲 宏康
1(
1東大院・農
, 2日本電子
, 3原子力機構・量子ビーム)
10:45
休憩
11:00
一般講演
O-6
遺伝子破壊実験によるテロメスタチン生合成遺伝子クラスターの同定
○天貝 啓太
1,2,工藤 史貴
3,江口 正
3,長田 裕之
2,池田 治生
4,新家 一男
5,高橋 俊二
2(
1次世代天然物化学技術研究組合
, 2理研
CSRS・ケミカルバイオロジー
, 3東工大院
理工
, 4北里大・生命研
, 5産総研)
O-7
抗生物質
BD-12生合成遺伝子の機能解析
○新倉 春香
1,丸山 千登勢
1,泉川 美穂
2,石川 淳
3,池田 治生
4,新家 一男
5,濱野 吉十
1(
1福井県大・生物資源
, 2JBIC, 3国立感染研
, 4北里大・北里生命研
, 5産総研)
O-8 Streptomyces rochei