1.業種・地域・規模別の動向
(1) 「建設業」 、 「卸売業」が減少、 「製造業」は明暗
今年度の企業倒産をみると、前年度から一転して多くの業種で減少したが、そのうち
「建設業」は前年度比二桁減となり、寄与度も高かった(図表 15、31) 。
「建設業」を詳しくみると、 「土木工事」 、 「建設工事」、 「設備工事」が減少している。
これは、公共工 事前倒し発注など政府の景気対策の効 果によるところが大きいとみられ る(図表 3、32)。これに対し「製造業」では明暗が分かれ、機 械関連では前年度に 続い て倒産が増加した一方、 繊維、出版印刷などでは減少に転じた。機械関連の増加はリー マン・ショック後の世界同時 不況下、輸出が急減した 余波が年度前半まで影響 したため とみられる。一方、「卸売業」では、「 建設材 料家具 建具」以外の業 種は概ね減少した。
(図表 31)前年度比減少した業種の前年度比伸び率の寄与度 1.建設業
建設業合計
土 木 工 事 建 築 工 事 職 別 工 事 設 備 工 事
19 年度 1.8 0.5 0.9 0.3 0.1
20 年度 2.9 1.2 1.0 1.0 ▲0.3
21 年度 ▲3.6 ▲3.0 ▲1.1 0.6 ▲0.2 2.製造業
製造業合計
食 料 品 繊 維 出版印刷 金 属製品 汎 用機 械 電気 機 械 そ の 他 19 年度 1.5 0.2 0.4 ▲0.4 0.1 0.5 0.1 0.5 20 年度 2.9 0.2 0.0 0.3 0.3 0.5 0.4 1.3 21 年度 ▲1.0 ▲0.2 ▲0.4 ▲0.4 0.5 0.6 0.2 ▲0.9 3.卸売業
卸売業合計
繊 維 衣 服身 の 廻 り 品
飲 料 食 料 品
医 薬 化 学 品
機 械器 具 建 設材 料 家具 建 具
そ の 他 19 年度 1.3 0.0 0.2 0.4 0.3 0.4 0.0 0.1 20 年度 1.5 ▲0.1 0.1 0.2 ▲0.2 0.3 1.0 0.1 21 年度 ▲2.1 0.0 ▲0.3 ▲0.6 ▲0.3 ▲0.2 0.6 ▲1.2
(注)業種は平成 20 年 12 月集計分から日本標準分類(第 12回改定)に準じている。なお、製 造業の旧中分類「一般機械」は新中分類「汎用機 械」に改めた。建設業の職別工事は大 工、左官、建具、塗装など
(図表 32)建築着工床面積の推移
-30.0 -20.0 -10.0 0.0 10.0 20.0
平5 7 9 11 13 15 17 19 21
建築着工床面積 うち民間 うち公共
(年度)
(前年度比:%)
(資料)国土交通省「建築着工統計調査報告」
(2) 「中部」 、 「近畿」以外は減少へ
地域別には、8 地域のうち「中部」 、「近畿」以外の 6 地域はいずれも減少に転じた。
中でも「北海道」は 3 割を超える減少(図表 21)となった。増加した2 地域の業種別の 寄与度をみると、「中部」では「製造」、「近畿」では「 サービス業」の増加の影響が大 きかった(図表 33)。一方、減少した地域をみると、 「北海道」 、「東北」 、「九州・沖縄」
では大半の業種が軒並み減少に寄与した。構成比の高い「関東」では寄与度が小さくな ったが、これは「飲食業」、 「サービス」の 増加と、それ以外の業種の減少が相互に影響 を相殺してしまったためである。
なお、 「建設」は「関東」以外の全地域で減少し、「卸売 」も全地域で減少となってい る。
(3) 中小・零細企業で増加
規模別には、資本金規模別で見ると、 「個人」 、 「1 千万円未満」の規模の小さい企業が
増加し、これより規模が大きい層では減少に転じており、また、前年度に大型倒産が急
増した反動もあるが、規模が大きくなるほど減少幅が拡大する傾向にあるなど、大企業
と中小・零細企業との間で逆の動きがみられる。
(図表 33)地域別の前年度比伸び率の業種別寄与度 (%)
北海道合計
建 設 業 製 造 業 卸 売 業 小 売 業 飲 食 業 サービス 業 そ の 他
19 年度 0.4 0.4 0.2 0.0 ▲0.1 0.0 0.0 ▲0.1
20 年度 0.9 0.3 0.2 0.1 0.1 0.0 0.1 0.3
21 年度 ▲1.4 ▲0.6 ▲0.2 ▲0.2 ▲0.2 0.0 ▲0.1 ▲0.2 東北合計
建 設 業 製 造 業 卸 売 業 小 売 業 飲 食 業 サービス 業 そ の 他
19 年度 0.1 0.1 ▲0.1 0.1 0.1 ▲0.1 0.0 0.1
20 年度 0.6 0.1 0.2 0.0 0.2 0.0 ▲0.1 0.1
21 年度 ▲1.3 ▲0.5 ▲0.1 ▲0.1 ▲0.2 0.0 0.0 ▲0.3 関東合計
建 設 業 製 造 業 卸 売 業 小 売 業 飲 食 業 サービス 業 そ の 他
19 年度 3.6 0.2 0.6 0.7 0.1 0.1 1.4 0.6
20 年度 6.5 0.7 1.5 0.9 0.4 0.3 1.5 1.1
21 年度 ▲1.3 0.2 ▲0.4 ▲0.9 ▲0.4 0.3 0.6 ▲0.7 中部合計
建 設 業 製 造 業 卸 売 業 小 売 業 飲 食 業 サービス 業 そ の 他
19 年度 0.7 ▲0.1 0.2 0.0 0.3 0.2 ▲0.1 0.1
20 年度 1.1 0.6 0.1 0.1 ▲0.2 0.1 0.3 0.0
21 年度 0.2 ▲0.1 0.3 ▲0.2 0.0 ▲0.1 0.1 0.2 近畿合計
建 設 業 製 造 業 卸 売 業 小 売 業 飲 食 業 サービス 業 そ の 他
19 年度 1.8 0.8 0.4 0.2 0.1 0.0 ▲0.0 0.3
20 年度 1.0 0.2 0.4 0.0 ▲0.2 0.1 0.1 0.3
21 年度 0.1 ▲0.5 ▲0.1 ▲0.1 0.0 0.1 0.9 ▲0.2 中国合計
建 設 業 製 造 業 卸 売 業 小 売 業 飲 食 業 サービス 業 そ の 他 19 年度 ▲0.2 0.0 ▲0.1 0.0 ▲0.2 ▲0.0 ▲0.0 0.1
20 年度 1.0 0.5 0.3 0.2 0.0 0.0 0.1 0.0
21 年度 ▲0.7 ▲0.6 ▲0.2 ▲0.2 ▲0.1 0.2 0.1 0.1 四国合計
建 設 業 製 造 業 卸 売 業 小 売 業 飲 食 業 サービス 業 そ の 他 19 年度 0.1 0.1 0.1 0.1 ▲0.1 0.0 ▲0.0 ▲0.1
20 年度 0.4 0.2 0.0 0.1 0.0 0.0 0.0 0.0
21 年度 ▲0.5 ▲0.4 0.0 ▲0.1 0.0 0.0 0.1 ▲0.1 九州・沖縄合計
建 設 業 製 造 業 卸 売 業 小 売 業 飲 食 業 サービス 業 そ の 他
19 年度 1.1 0.2 0.3 0.2 0.0 0.1 0.3 0.1
20 年度 0.5 0.3 0.2 ▲0.1 0.0 0.0 0.0 0.2
21 年度 ▲2.3 ▲1.1 ▲0.3 ▲0.2 ▲0.3 0.1 ▲0.2 ▲0.3
(注)合計は、四捨五入の関係で必ずしも内訳と一致しない
2.「清算型」7 割超える
平成 21 年度は、前年度急増した上場企業などの「会社更生法」、 「民事再生法」が落 ち着いた動きとなり、 「再建型」の 割合は低下した。しかし、 「破産」が引続き増加し全 体の 7 割弱を占める一方、比率が低下傾向に あった「銀行取引停止」が平成 21 年度に はさらに低下したた め、「清算型 」の割合は 7 割超に高まり、この結果法的手続きの割 合は 75.3%と全 体の 3/4 を占めるに 至った(図表 34、35)。
(図表 34)法的手続きによる倒産件数割合の推移
0%
20%
40%
60%
80%
100%
5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21
その他 商法整理 民事再生法 会社更生法 特別清算 破産
銀行取引停止
(年度)
(構成比:%)(注 1)民事再生法の平成 11 年度以前は和議(平成 12 年度は和議2 件を含む)
(注 2)商法整理は平成 18年5月新会社法施行時に廃止
(注3)「その他」は内整理等
(図表 35)法的手続きによる倒産件数割合の推移 (構成比:%)
年 度 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 合 計 16.5 16.0 22.0 28.9 35.6 42.5 46.6 58.3 61.7 64.8 68.4 75.3
再 建 型 1.8 1.3 4.0 5.1 4.7 5.4 4.1 4.4 3.9 4.1 5.5 4.7 民 事 再 生 法 1.5 1.0 3.9 4.7 4.6 5.0 4.0 4.3 5.2 4.0 5.2 4.5 会 社 更 生 法 0.3 0.2 0.1 0.3 0.1 0.4 0.1 0.1 0.3 0.1 0.3 0.1
( 商法 整 理 ) 0.1 0.1 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 - - -清 算 型 14.7 14.7 18.0 23.8 30.9 37.1 42.5 53.9 57.8 60.7 62.9 70.7 破 産 14.0 13.3 16.8 22.8 29.4 35.6 40.7 51.1 55.3 58.4 60.8 68.4 特 別 清 算 0.7 1.4 1.2 1.0 1.5 1.5 1.9 2.8 2.5 2.3 2.1 2.3
(注 1)民事再生法の平成 11 年度以前は和議(平成 12 年度は和議2 件を含む)
(注 2)商法整理は平成 18年 5月新会社法施行時に廃止
(注3)「その他」は内整理等
(注4)四捨五入の関係で、合計と内訳は必ずしも一致しない。
3.中小企業の再生支援、金融支援の多様化進む (1) 着実に進展する再生支援
わが国では中小企業の再生支援 が着実に進展してきているが、その背景には民事再生 法等、再生に向けた倒産法制が整備されてきたことに加え、再生促進のための様々な措 置が講じられてきたことが挙げられる。
現在の具体的な施策としては、中小企業再生支援協議会と中小企業再生ファンドが あ る。また、事業再生ADR(裁判外紛争解決手続)や企業 再生支援機構など企業再生の ための選択肢 は多様化してきている。
まず、中小企業再生支援協議会は、平成 15 年 2 月以降、 各都道府県に設立された後、
平成 19 年 6 月 、中小企業基盤整備機構に中小企業再生支援全国本部が設置され、 各協 議会の活動支援等の機能強化が図られた。平成 21 年度の実績をみると、窓口相談件数 が 2,873 社、再生計画策定支援完了先数が 476 社 、雇用確保数が 30,783 人となってい る(図表 36)。ちなみに、再生計画策定支援 完了先の累計は 2,581 社で、窓口相談企業 数の 12.8%が再生計画を完了した。この結 果、約 16 万人を超える雇用が確保され、地 域の中小企業の再生支援策は着実な成果を挙げてきている。なお、21 年度は、相談件数 が前年度比 9%減少した一方で、再生計画を完了した企業がとった 手法の中でリスケジ ュール(債務繰延べ)が
急増し 423 社となった。
これは、金融庁の金融検 査マニュアル改定(平成 20 年 11 月)と中小企業 等 金 融 円 滑 化 法 の 施 行
(後述)により、企業が 直接、金融機関にリスケ
ジュール等の依頼を行いやすくなったという背景があるとされている。
次に、平成 15 年 4 月の産業 活力再生特別措置法の改正により、中小企業基盤整備機 構による中小企業再生ファンドへの出資 が可能となった。経済産業省と中小企業基盤整 備機構は、中小企業 再生支援協議会の再生計画策定支援を受けた企業を中心に、全国各 地の中小企業再生ファンドに 出資し、積極的に支援している。
これまでの実績をみると、都道府県では平成 16 年 1 月の大分県のファンドが 第 1 号 で、その後全国的に広まり、多くのファンドが投資事業有限責任組合方式で組成されて きている (図表 37) 。平成 22 年 6 月 1 日までに組成された中小企業再生ファンドの数は、
全国の中小企業を対象とするファンドも含めて 22 件、フ ァンド総額は 744.77 億円とな った。
(図表 36)中小企業再生支援協議会の実績(平成 22 年 3 月末)
累 計
うち 21 年度増加 窓 口 相 談 企 業 数 20,211 2,873 再生計画策定支援完了先数 2,581 476 雇 用 確 保 数 162,872 30,783
(資料)中小企業庁「中小企業再生支援協議会の活動状況について」