(1) 企業倒産の特徴をみると、景気が回復に向かう中で、前年度から一転し て多くの業種・地域で減少に転じた。しかし、規模別には中小・零細企 業が増加しており先行きが懸念される。
(2) 形態別では前年度急増した「会社更生法」 、 「民事再生法」は減少したが、
「破産」が引き続き増加したことから、法的手続きの割合は 3/4 となった。
(3) 中小企業の再生支援は、多様化が図られるとともに、着実に定着してき
た。金融支援についても返済猶予など多様な措置が講じられている。
第4章 倒産事例
平成 21 年度に発生した主な倒産事例について、東京商工 リサーチの調査レポートから 55 事例を 掲載する。
なお、特に表記 がない限り各企業の業績データは単独 決算によるものである。
(1) (株)日本航空 22 年 1 月
負債総額 6,715 億円(東京都品川区)
JALグルー プの持株会社である東証 1 部上場の( 株)日本航空(設立・平成 14 年 10 月、資本金 2,510 億円)は、1 月 19 日に東京地裁に会社更生手続開始を申請した。
同社は、昭和 28 年に日 本航空株式会社法に基づき法人化され、昭和 62 年に民営化され た 。平成 14 年に日本エアシス テムと統合 し、グループ持株会社化に伴い純粋持ち株会社・
日本航空の下に再編された。しかし、国際線・国内線の不採算路線の増加、座席単価収入 の落ち込みなどで高コスト体制の改善が遅れ収益が悪化。さらに、約 8,000 億円の有利子 負債や OBを含む従業員の退職年金の未積立退職給付債務約 3,300 億円、機体購入のため のリース債務負担などが財務を圧迫し実質債務超過に陥っていた。
資金繰りの深刻 化に伴い、平成 21 年 11 月末までの運 転資金約 1,300 億円の 不足が表面 化し、国土交通大臣直轄の「JAL 再生タスクフォース」を結成。再建の検討に入り、同 年 10 月 29 日に(株)企業 再生支援機構に 再生支援を要請した。この結 果、11 月 13 日に 金融機 関から資金支援 を得るまでの つなぎとして事業再生ADRを申請した。だが、22 年 1 月に企業 再生支援機構が日本航空の実質債務超過額が 8,000 億円超に達すると発表。債 務の大幅カットや手続 きの透明性が高い法的手続が不可欠と判断し、事前に金融機関と調 整し再建計画をまと めたうえで会社更生法を申し立てる事前 調整(プレパッケージ)型の 法的整理を進める方向で主力銀行と調整に入った。これに対し、法的整理に難色を示して いた取引メガバンク 3 行は、債権放棄・債務株式化で 3,000 億円超の金融支援を盛り込ん だ独自の私的整理案を策定。日航グルー プの再建を巡り企業 再生支援機構と日航グループ、
メガバンクとの間で混乱の様相を呈していた。結局、政府が企業再生支援機構の再建案を 支持し、メガバンクも 法的整理による再建案 を受け入れたことから、企業再生支援機構の 支援決定を受けて会社更生法を申請した。
業績データ
決算期 売上高(千円) 利益(千円)
20 年 3 月 16,595,000 1,167,000
21 年 3 月 18,495,000 2,959,000
(2) (株)ロプロ(旧・(株)日栄) 21 年 11 月
負債総額 2500 億円(大阪府大阪市)
(株)ロプロ( 設立・昭和 45 年 3 月、資本金 351 億 9,596 万円)は 11 月 2 日、東京地 裁へ会社更生手続開始 を申請した。負債総額は 2,500 億円。
同社は、小・零細企業事業者に対する手形貸付、証書貸付、商業手形割引など事業向け 貸金業の大 手。ピークの平成 11 年 3 月期は年商 1,044 億 3,000 万円を計上したが、平成 12 年頃に債権取立に絡む不祥事件が相次いで発生。社会的な悪影響の拡大から、融資残高 が大幅に減少した。最近は過払金返還請求の増加や貸金業法改正などもあって対外信用が 低下、新たな資金調達 が困難になる一方で、中小企業への貸倒増加も重なり経 営が悪化。
このた め、店舗統廃合や希望退職募集などリストラ策を進め、創業者一族の退陣による経 営体制の刷新などに取り組んでいた。
しかし、融資額の減少や貸出金利の低下などで利息収入が落ち込み、過払金返還請 求に よる資金流出も止まら ず行き詰まった。
業績データ
決算期 売上高(千円) 利益(千円)
19 年 3 月 26,268,000 -23,978,000 20 年 3 月 14,641,000 -29,095,000 21 年 3 月 4,553,000 -29,121,000
(3) (株)ジョイントコーポレーション 21 年 5 月
負債総額 1,476 億円(東京都目黒区)
(株)ジョイント・ コーポレーション( 設立・昭和 48 年 3 月、資本金 208 億 3,404 万 円))は 5 月 29 日、東京地裁に会社更生手続開始を申請した。
同社は、創業当初は首都圏を中心にマンション分譲を展開していた。平成 13 年頃、用 地高騰や販売競争などから賃貸 マンションや商業施設などの新規開発物件をファンドへ売 却する 不動産流動化事業に参入。自社開発の分譲マンション「アデニウム」販売の不動産 分譲事業と不動産流動化事業を二大柱に全国展開していた。
熱海市のリゾートマンション開発を積極的に行い、20 年 3 月期は連結ベースで過去最高 となる年商約 1,877 億 8,500 万円、経常利益 230 億 6,000 万円を 計上した。
しかし、その後の金融収縮や金融機関の融資厳格化で、不動産の流 動性低下と価格下落
が進行。このため、20 年 9 月にオリックスグループが資本参加し、99 億 9,900 万円の 第三
者割当増資を行った。だが、21 年 3 月期は不動産流動化事業が前 期比 78.0%減の 255 億
5,500 万円に大幅低下し、総売上高は 1,195 億 8,300 万円まで落ち込んだ。さらに繰延税
金資産の取り崩しなどで当期純損失 が 645 億 5,500 万円と大幅赤字に陥った。このた め金
融機関に支援要請したが、調整 がつかなかった。
業績データ
決算期 売上(千円) 利益(千円)
19 年 3 月 89,705,000 7,232,000 20 年 3 月 99,709,000 2,830,000 21 年 3 月 70,494,000 -55,251,000
(4) (株)中央コーポレーション 21 年 4 月
負債総額 340 億円(愛知県名古屋市)
(株)中央コーポレーション(設立・昭和 17 年 4 月、資本金 33 億 6,176 万円)は 4 月 24 日、東京地裁に民事 再生手続開始を申請した。負債総額は 340 億円。
同社は、不動産開発、賃貸などを手がけ、平成 19 年 5 月期は年商 140 億円をあげ てい た 。平成 20 年 5 月期は、 関東地区のマンション分譲が順調に拡大したほか、 オフィスビル 流動化案件も増加し、 売上高 390 億円、当期利益 9 億 8,100 万円と好決算を計上した。
しかし、急速な 不動産市況の悪化で赤字に転落したほか、 第三者の借入契約に際し事前 に参加金融機関の承諾 なしで保有資産の一部を担保提供 したことがシンジケートローン契 約の確約条項に抵触。ゴーイングコンサーン注記(継続企業の前提に関する重要な疑義)
がつき、信用が 低下していた。また、21 年 2 月に月間平均時価総額と時価総額が 6 億円未 満となり上場廃止基準 に抵触、21 年 5 月期の第 3 四半期決算報告が報告期限の 4 月 14 日 に遅延 していた。
業績データ
決算期 売上高(千円) 利益(千円)
19 年 5 月 14,034,051 171,291 20 年 5 月 39,011,790 981,755 21 年 5 月 22,762,128 -26,300,517
(1) (株)穴吹工務店 21 年 11 月
負債総額 1388 億円 (香川県高松市)
(株)穴吹工務店(設立・昭和 36 年 1 月、資本金 57 億 5,400 万円)は 11 月 25 日、東 京地裁に会社更 生手続開始を申請した。負債は 1,388 億円。四国地区では過去最大の大型 倒産となった。
同社は、 「サーパス」 ブランドのマンシ ョン分譲会社。用地取得からアフターサービス
まで製販一体を手がける数少ないマンションメーカー。18 年 3 月期 は過去最 高の売上高
1,553 億 4,000 万円を計上し、19 年には 5,037 戸を供給し初のマンション供給戸数全国 1
位を獲得した。
しかし、従来から在庫過多による借入依存の資金繰りを続けていた事に加え、建築基準 法改正の影響等もあり業績が悪化。さらに 20 年後半にはリーマン・ショックによる金融危 機も発生し環境が一段と低迷、 21 年 3 月期は売上戸数が 4450 戸に落ち込み、 売上高は 1,306 億 5,000 万円にまで低下した。この 間、金融機関等が役員を派遣するなど経営再建 に取り 組んでいたが、 関連会社の売却などを巡り役員間で内紛が発生。法的手続きで再建を目指 すことになった。
業績データ
決算期 売上高(千円) 利益(千円)
19 年 3 月 141,432,000 1,008,000 20 年 3 月 132,356,000 -1,808,000 21 年 3 月 130,650,000 -12,746,000
(2) (株)ライフコート 21 年 12 月
負債総額 230 億円 (東京都千代田区)
(株)ライフコート(設立・平成 8 年 11 月、資本金 6 億 2,642 万円)は、債 権者から 東京地裁に破産手続開始を申し立てられ、12 月 2 日に破産開始決定を受けた。負債総額は 230 億円。同 社は、不動産を買い取って付加価値を付けて転売する「リノベーション事業」
や不動産の証券化・フ ァンド組成を行う「ア セットマネジメント事業」を展開、平成 19 年 8 月期は年商約 157 億 1,000 万円を計上した。
しかし、不動産業界の急激な環境悪化により財務内容が劣化。20 年 8 月期には年商が約 11 億円にまで 急減、129 億円の債務超過に陥っていた。さらに、大阪府高槻市に所有 する 不動産(フロアの 8 割を所有)の共益費などを滞納し、 不動産管理会社から破産を申し立 てられていた。
業績データ
決算期 売上高(千円) 利益(千円)
18 年 8 月 9,668,345 261,152 19 年 8 月 15,710,971 359,146 20 年 8 月 1,104,000 -14,596,000
(3)栗本建設工業(株) 21 年 6 月
負債総額 146 億円(大阪府大阪市)
栗本建設工業( 株) (設立・昭和 21 年 4 月、資本金 39 億円)は、6 月 4 日、大 阪地裁に 民事再生手続開始を申請した。負債総額は約 146 億円。
同社は、東証一部上場の(株)栗本鐵工所の 100%子 会社。マンションデベロッパーな
ドキュメント内
2010年8月(2009年度倒産)企業倒産調査年報
(ページ 40-134)