• 検索結果がありません。

 N

 P

O法人男性不妊

ドクターズ

2回講演会

日本専門医機構対応講習会

セッション 私はこうする

 A

 R

T診療実践講座

フォーラム 19市民公開講座 回男性不妊

 N

 P

O法人男性不妊

ドクターズ

2回講演会

ウム シンポジウム 1

「生殖医療における遺伝子診断の最前線と今後の展望」

S1―1.日本の生殖医療における PGS 臨床応用の前途

福田 愛作

IVF大阪クリニック

日本は今や世界一の体外受精大国となっている.2013 年度には年間 368764 周期の ART が実施され 41216 人の出 生児を得ている.年間総出生児の 24 人に一人は ART による妊娠となっている.同時に日本の不妊治療の対象とな る女性患者年齢は高齢化が進み,40〜41 歳が治療を受けている患者の最も多い年齢層となっている.不妊治療によ る妊娠率は偏に女性年齢にかかっている.高齢になれば妊娠率が低下するのは自明の理である.海外でも同様の現 象が発生しており,高齢女性患者への対応に苦慮している.しかし,日本と異なり海外では 40 歳で 10% 以上,45 歳では 50% 以上の ART が提供卵子を用いて行われている.また PGS(着床前遺伝子スクリーニング)は通常検査 の一つとして臨床応用されている.国によっては既に全 ART の 40% 近くに達するという.日本では原則として卵 子提供が許されていない.多くの卵子提供希望患者は提供卵子を求めて海を渡っている.このような状況のもと,

日本の不妊患者は自己卵子を用いて限界まで ART を試みるため,治療終結は 45 歳前後になる.そこでまた新しい 壁に当たる.もし養子縁組を望んでも年齢制限が 45 歳前後に設定されているのである.さらに,PGS が禁じられて いるにも関わらず日本では単一胚移植が約 90% で実施されている.もちろん多胎の減少には寄与しているが,妊娠 率は低下する.日本が 37 万周期で約 4 万人の出生児であるのに対しアメリカでは 17 万周期で約 6 万人の出生児が 得られている.日本では胚の形態により良好胚の選別が行われているが,欧米では PGS により胚の選別が可能であ る.41 歳以上では胚盤胞でも 75% 以上が異数性の胚である.また PGS の技術も進歩し aCGH ではなく NGS で行う ことが常識となっている.NGS によるモザイク胚への対処が当面の課題となっている.日本で PGS をタブー視して いる間に海外では技術がどんどん進歩している.PGS の臨床研究開始決定後 2 年以上経過したにもかかわらず,そ の実施は暗礁に乗り上げている(2016 年 6 月 15 日時点).NIPT は患者の個別審査もなく実施されており,異常が 判明したケースの 97% が中絶手術を受けている.中絶手術は女性に肉体的精神的ダメージを与えるばかりでなく,

将来の不妊症の要因となる.中絶を伴う技術が容認され,それを未然に防ぐ技術が禁止されるという奇妙な事態に 陥っている.我々臨床医は日々患者と向き合い患者のための医療を実践したいと願っている.PGS は流産率を減ら し,胚移植当たりの妊娠率を向上させることは明らかとなっている.科学技術の進歩で得られた技術を日本の患者 のために使ってはならない合理性はどこにあるのであろうか.本シンポジウムでは臨床医の立場から PGS の必要性 を訴えたい.

略 歴

現職:IVF 大阪クリニック院長,日本生殖医学会生殖医療専門医,日本産婦人科学会倫理委員会 PGS に関する小委 員会委員,関西医科大学非常勤講師,東テネシー州立大学客員教授

学歴/職歴:1978 年関西医科大学卒業,1980 年市立舞鶴市民病院産婦人科医長,1984 年京都大学大学院医学研究科 入学,1989 年京都大学医学博士授与,1990 年米国東テネシー州立大学産婦人科准教授,1996 年米国バイオアナリス ト協会 IVF 培養室長資格(HCLD)取得(日本人で唯一)1998 年 IVF 大阪クリニック勤務,2003 年 IVF 大阪クリ ニック院長

受賞:1992 年米国不妊学会賞(ASRM),1993 年関西医科大学同窓会賞,1998 年 SIGMA 科学写真賞,2000 年日本 受精着床学会世界体外受精会議記念賞

学会:日本レーザーリプロダクション学会理事長,日本受精着床学会理事,日本臨床エンブリオロジスト学会顧問,

日本 IVF 学会常務理事,日本卵子学会評議員

シンポジウム 1

「生殖医療における遺伝子診断の最前線と今後の展望」

S1―2.生殖医療における染色体異常

小澤 伸晃

国立成育医療研究センター周産期・母性診療センター

ヒトの妊娠における生産効率は決して十分に満足できるものとは言い難く,受胎物の多くは生を妨げる遺伝学的 異常を抱えるため,出生まで到達することはできずにその生を終えることになる.異常なものが排除されるという,

自然の摂理にしたがった淘汰現象として捉えることは可能であるが,児を望むカップルにおいては,為す術のない 障壁として立ちはだかることとなり,生殖医療の奏功を妨げる最大の要因ともなる.実際に自然流産の約 50〜60%

は染色体異常が原因となっており,着床不全や生化学的妊娠にも多くの染色体異常が関与することが推察されてい る.

自然流産における染色体異常の有無を検出することは,不育診療においては極めて重要であり,母体側要因に対 する検査の適応や治療の妥当性を評価し,その後の妊娠のマネージメントのために必要不可欠と言っても過言では ない.現在,流産染色体分析法として G 分染法が行われているが,細胞培養の影響や解像度の限界など幾つかの問 題点が指摘されており,報告者により異常検出率や検出される異常の種類も異なっている.当院の過去 10 年間の流 産染色体分析の結果では,母体高年齢(平均 37.8 歳)や高い培養成功率(91.9%)が影響したと考えられるが,異常 検出率は 82.4%(262/318)とこれまでの報告に比して高率であった.また流産時期により検出される異常の種類は 大きく異なっており,CRL:10mm 以下の初期流産においては倍数体や複数異数体がより多く検出され,トリソミー の種類も多彩であったが,CRL:20mm 以上ではほとんどが 21 トリソミーと X モノソミーであった.自然の淘汰現 象がタイミングよく働いた結果であると言える.

最近は,G 分染法の欠点を補完するために,流産染色体分析に DNA を用いた解析手法が導入されている.細胞培 養が必要ないため,待機療法での自然排出された検体に対して有用性は高い.また CGH アレイ/SNP アレイ法を用 いた高解像度分析では,全染色体にわたって微細な染色体異常を検出することも可能となっている.その意義に関 しては現状では不明であり,これらの検索法を臨床応用する際は注意が必要であるが,新たな流産の原因や,妊娠 初期の胚発育のメカニズムが解明され,最終的に不育症の治療法が導かれる可能性もある.

一方で,不育症に対する遺伝学的治療として,従来から行われている転座保因者に対する着床前遺伝子診断

(PGD)に加えて,胎児側要因の主体である染色体異常を選択的に除外すべく,着床前遺伝子スクリーニング(PGS)

が本邦でも導入が検討されている.PGS は不妊症となる体外受精反復失敗例に対しても適応が考えられている.こ れまで PGD/PGS の有効性に関しては疑問視する意見もあったが,流産染色体分析と同様に全ゲノムに対する高解 像度分析法を導入することにより,生殖医療に革新がもたらされるかもしれない.

略 歴

【学歴】

1988 年 慶應義塾大学医学部卒業

【職歴】

2002 年 国立成育医療研究センター周産期診療部不育診療科医長 2011 年 独立行政法人国立病院機構東京医療センター産婦人科部長 2014 年 国立成育医療研究センター周産期・母性診療センター医長

【専門医】

日本産婦人科学会専門医,臨床遺伝専門医,生殖医療専門医 周産期(母体・胎児)専門医

シンポジウム 1

「生殖医療における遺伝子診断の最前線と今後の展望」

S1―3.原因不明不育症の遺伝子解析について

鈴森 伸宏

名古屋市立大学大学院医学研究科産科婦人科

卵子の老化,高齢による流産率の上昇や胎児染色体異常症の増加は,近い将来の超高齢化社会や労働人口の減少 を考えると,大きな社会問題になっている.

繰り返す流産・死産によって生児を得られない状態は不育症と言われている.1 回の流産は 10〜15%,習慣流産 は 1〜2%,不育症は約 5% の頻度とされ,既往流産回数,女性の加齢によって流産率は上昇する.不育症の原因は,

①夫婦いずれかが均衡型相互転座保因者,②子宮奇形,③抗リン脂質抗体症候群,④胎児染色体異常,⑤その他に 分類される.不育症夫婦の 7〜8% に染色体構造異常がみられ,4.5% が均衡型転座保因者である.

原因不明不育症関連遺伝子はこれまで約 120 の候補遺伝子が報告されている.今回,その候補遺伝子のうち減数 分裂に関与するSYCP3,凝固因子の FXII・FV・Protein S について検討した.SYCP3 変異は,流産群で有意な変 異はみられず,胎児染色体異常症を起こす原因遺伝子であるとは判断できなかった.FXII 遺伝子多型(SNP)頻度 について,CT 多型は不育症に高頻度に認めたが,コホート研究では FXII 活性値低下も CT 多型も次回流産のリス ク因子ではなかった.一方,Lupus Anticoagulant 陽性例では陰性例より FXII 活性値が有意に低下していた.FV 変異は Nara 変異,Hong Kong 変異は患者,対照ともに認めず,不育症群において R2 Haplotype を含む 16SNP の うちの Ser156Ser GT,TT 型が有意に低頻度であった.Protein S 解析では Tokushima 遺伝子変異,Protein S 欠乏 症はリスク因子ではないことが明らかとなり,Protein S 欠乏症に対して抗凝固療法は必要ないと考えられた.今回 の結果と既報告論文を考え合わせると不育症は Common variants であり,個々の SNP の臨床的な影響は少ないと 推察される.しかし複数の候補遺伝子の SNP が原因不明不育症の発症に関与している可能性はある.一方,Protein S 欠乏症や FXII 活性低下は抗リン脂質抗体の二次的な影響で不育症に関係していると考えられる.不育症原因と生 児獲得率との関連についての文献は限られており,今後は前方視的研究が必要である.

次世代シークエンサー遺伝子解析により無侵襲的出生前検査(NIPT)が普及し,母体血漿中から 1000 万個以上 の DNA 断片を読み込み,ヒトゲノム情報と照合して解析することが行われている.NIPT の Whole Genome 解析 で,微小欠失症候群,染色体転座,遺伝性疾患へ応用が進んできており,転座保因者の不育症を含めた成人発症の 疾患が見つかる可能性が出てきている.今回,原因不明不育症の遺伝子解析をテーマにこれまでの知見と今後の展 望について述べる.

略 歴

平成 5 年 3 月 三重大学医学部卒業 平成 5 年 4 月 国立名古屋病院 研修医

平成 8 年 4 月 名古屋市立大学大学院医学研究科,大阪市立大学第 1 解剖 研究員 平成 12 年 3 月 名古屋市立大学大学院修了,医学博士

平成 12 年 6 月 名古屋市立大学医学部 産科婦人科学 助手 平成 12 年 9 月 米国ベイラー医科大学 病理学 助手

平成 14 年 9 月 名古屋市立大学 生殖遺伝医学・生殖発生医学 助手 平成 19 年 4 月 名古屋市立大学大学院 産科婦人科学 講師

平成 22 年 7 月〜 名古屋市立大学大学院 産科婦人科学 准教授

関連したドキュメント