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般演題演︶

般演題演︶

O―001 反復着床不全例に対する子宮内膜受容能検査(Endometrial Receptivity Assay:

ERA)の有効性

○橋本 朋子1),小泉 雅江2),土信田雅一2),戸屋真由美2),五十嵐秀樹2),町田真雄子1),木村 秀崇1),竹内 巧1), 京野 廣一1,2)

1)京野アートクリニック高輪,2)京野アートクリニック

【目的】【原因不明の反復着床不全(RIF)症例において,着床 Window のずれが関与している可能性が指摘されている.ERA を用い,

RIF に対する personalized ET(pET)の有効性を検討した.

【方法】院内倫理委員会の承認を得て,2015 年 7 月より 2 回以上の胚盤胞移植で着床に至らなかった RIF65 例に対し HRT 周期(P+

5)または自然周期(LH+7)下にエンドサクションを用いて子宮内膜組織を採取し,ERA 検査(IGENOMIX 社(Valencia,Spain))

および病理検査(子宮内膜日付診)を実施した.Receptive と診断された症例(R 群)は従来通り融解胚盤胞移植を行い,non receptive

(NR)と診断された症例(NR 群)は ERA 再検し,結果判明後に融解胚盤胞移植を行い,両群の比較検討を行った.

【結果】平均年齢 38.77±3.98 歳(21!51 歳),平均既往融解胚移植回数 4.17±2.60 回.65 症例中,卵子提供後の症例が 1 例.自然周期 ERA は 5 例で,それ以外は HRT 周期であった.両群の既往移植回数,ERA 当日血清 E2 値,P 値に有意差は認めなかった.RIF65 例中,17 人(26.2%)が NR であり,そのうち 7 人に 2 回目 ERA を施行,pre!receptive が 2 例(P+4,LH+6),post!receptive が 5 例(P+6)であった.ERA 後,R 群 32 名 39 周期に ET,NR 群 10 名 11 周期に pET が施行され,妊娠率は R 群:症例あたり 46.9%,

pET あたり 38.5%,NR 群:症例あたり 50%,pET あたり 45.5% であった.ERA 結果と子宮内膜日付診のずれは,R 群(12.5%)に比 べ NR 群(76.4%)で多く認めた.

【考察】RIF 症例の 26% が NR であった.NR 群は pET を行うことにより R 群と同等の妊娠率が得られ,ERA の有効性が確認できた.

O―002 低酸素誘導因子 HIF が着床を調節する

○松本玲央奈1),廣田 泰1),藤田 知子1),伊賀上翔太1),田中 智基1),平岡 毅大1),松尾 光徳1),原口 広史1), 江頭 真宏1),赤枝 俊1),武田 憲彦2),大須賀 穣1),藤井 知行1)

1)東京大学医学部産婦人科,2)東京大学医学部循環器内科

妊娠初期のヒト子宮内膜は生理的に低酸素状態であること,マウス着床期子宮において低酸素で誘導される転写因子とし て広く知られる HIF1αおよび HIF2αが子宮内膜に発現していることが報告されている.子宮内膜の低酸素状態によって,

HIF が子宮内膜に誘導されて作用すると推測されるものの,その役割は不明であった.本研究では,マウスモデルを用いて子 宮の低酸素と HIF の意義を調べた.野生型マウスに対し低酸素プローブを用いて着床直前の子宮内膜が低酸素であり着床後 酸素化が促進されることを示した.次に子宮の HIF に着目し,HIF1α!loxP マウスまたは HIF2α!loxP マウスを Pgr!cre マウ スと交配させて子宮の HIF1α欠損マウス(1αKO)および HIF2α欠損マウス(2αKO)を作成し,妊娠の表現型を調べたとこ ろ,2αKO からは産仔が 1 匹も得られず,1αKO は産仔数が減少することが判明した.完全な不妊である 2αKO の異常が妊娠 のどの段階で起こっているのかを調べたところ,子宮内膜への胚接着が認められるものの子宮内膜管腔における胚接着位置 の子宮血管側への変位が起こっており,胚接着後に脱落膜化不全と胚発育停止が認められ,この異常に並行して血中プロゲス テロン濃度低下が起こっていた.2αKO にプロゲステロンを投与したところ,2αKO の脱落膜化障害は改善されたが,胚発育 停止が認められ産仔を得ることができなかった.さらに着床直後の着床部位では着床に必須のサイトカインである LIF の発 現低下を認めたため,2αKO に対して LIF を投与したところ,着床部位の改善は認めたがその後の胚発育は改善しなかった.

以上の結果から,着床期子宮内膜が低酸素であること,子宮の HIF が胚接着位置の決定,脱落膜化,着床後の胚発育に関与 していることが明らかとなった.本研究により,子宮の低酸素が HIF を誘導し着床を調節している可能性が示された.

O―003 ヒト子宮内膜における脱落膜変化に伴う生理活性物質の変化

○後藤 香里1),河野 康志1),河邉 史子2),甲斐由布子2),宇津宮隆史2),楢原 久司1)

1)大分大学医学部産科婦人科,2)セント・ルカ産婦人科

【目的】子宮内膜はホルモンや成長因子の調節を受け,形態的ならびに機能的変化を遂げる.この分化は妊娠成立時には絨毛 の浸潤や胎盤の形成に重要な役割を果たすと考えられる.今回,脱落膜化により変化する子宮内膜間質細胞の細胞機能につい て検討した.【方法】子宮筋腫摘出時にインフォームドコンセントを得て子宮内膜を採取し,細切,酵素処理を行い,子宮内 膜間質細胞を分離,培養した.Confluent 状態を確認後,dibutyrl(db)!cAMP と medoroxyprogesterone(MPA)で刺激し,

脱落膜化を誘導した.コントロールは db!cAMP,MPA の添加は行わず同様に培養した.脱落膜化細胞,非脱落膜化細胞に おいて,プロテアーゼ活性化型受容体(PAR)!1 の発現について検討し,PAR!1 の agonist である TRAP!6 を用い,下流に 存在する Akt 活性ならびに DNA 結合領域を有する転写因子群の一つである FOXO1 について western immunoblot analy-sis を用いて解析した.サイクリン依存性キナーゼ阻害因子である p21 の発現についても同様の検討を行った.【結果】PAR! 1 の発現は非脱落膜化細胞と比較して,脱落膜化細胞において 16 日目で高い発現を認めた.TRAP!6 を用いた Akt の活性の 検討では,脱落膜化細胞において添加 15 分後に強いリン酸化を認めた.FOXO1 は TRAP!6 添加後 4 時間でリン酸化が認め られた.p21 の発現は脱落膜化細胞と比較して非脱落膜化細胞で強く認められた.【結論】子宮内膜は脱落膜化することによ り,プロラクチン等の蛋白質が分泌され,脱落膜化の指標となることが知られている.今回,脱落膜化により PAR!1 の発現 増加がみられ細胞機能が変化することが示されたが,これらの変化は脱落膜組織において妊娠に向けての調節の一端を担っ ている可能性が示唆された.

O―004 慢性子宮内膜炎が凍結融解胚盤胞移植の治療成績に及ぼす影響

○平田貴美子1),木村 文則1),伊津野美香1),花田 哲郎1),森宗 愛菜1),竹林 明枝1),高島 明子1),辻 俊一郎1), 高橋健太郎2),村上 節1)

1)滋賀医科大学産科学婦人科学講座,2)滋賀医科大学地域周産期医療学講座

【目的】慢性子宮内膜炎(以下 CE)は,細菌感染や種々の要因による反応過程と考えられるが,一般に臨床症状に乏しく,臨 床的意義についてはいまだ明らかではない.最近になり,着床障害や原因不明不妊の約 30% に認められるという報告がなさ れ,不妊症の原因となることが示唆されているが,一方で否定的な報告もある.そこで,CE の胚着床能およびその後の妊娠 継続に及ぼす影響を検討するために,CE が凍結融解胚盤胞移植の臨床妊娠率,流産率に与える影響を検討することとした.

【方法】本研究は,当施設の倫理委員会で承認を得た後に施行した.当院において,2014 年 7 月より 2016 年 4 月に採卵,及 び胚盤胞凍結を行なった患者のうち,説明を行い同意の得られた者を対象とした.子宮内膜組織を採取し,CE の有無を CD 138 染色により調べた後,60 日以内にホルモン補充周期による凍結融解胚盤胞移植を施行した.CE 群と非 CE 群間における 臨床妊娠率,流産率を比較検討した.

【成績】CE 群(N=32)と非 CE 群(N=38)において,年齢,経妊経産回数,BMI,胚移植時の子宮内膜厚,良好胚率の有意 差は認めなかった.臨床妊娠率は,CE 群では 40.6%,非 CE 群では 73.7% であり(p<0.05),CE 患者は有意に妊娠率が低下 した.一方,流産率は CE 群と非 CE 群では有意差を認めなかった.

【結論】CE 患者においては,胚着床能が低下することが示唆された.

O―005 Day4 胚盤胞の発生傾向と妊娠率についての検討

○青野 展也1,2),岡 奈緒1),前川紗耶香1),橋本 朋子1),木村 秀崇1),町田真雄子1),竹内 巧1),京野 廣一1,2)

1)京野アートクリニック高輪,2)京野アートクリニック

【目的】胚盤胞培養過程で,Day4 の時点で胚盤胞までの発生が観察されることがある.Day4 胚盤胞の発生傾向と移植後の妊 娠について検討した.【対象・方法】対象は,当院にて 2014 年 12 月〜2016 年 2 月に採卵し C!IVF もしくは ICSI を施行した 449 症例 715 周期.培養には Global Total(G 群)と NAKA ONESTEP Medium(N 群)の 2 つの Single step medium を用 いた.Day4 で胚盤胞が観察された症例は媒精法別,培養液別でその頻度を比較検討した.また,Day4 と Day5 胚盤胞を新鮮 胚移植,もしくは凍結融解胚移植を行い,妊娠率について検討した.【結果】媒精法別の Day4 胚盤胞発生率(胚盤胞/2PN 胚)は,C!IVF 群で 47.4%(55/116),ICSI 群で 45.1%(82/182)で両群間に差は無かった.培養液別では,G 群で 36.2%(59/

163),N 群で 57.8%(78/135)であり,N 群で有意に高かった(P<0.01).また,Day4 と Day5 の新鮮胚盤胞移植の妊娠率は それぞれ 33.3%(1/3),20.0%(1/5),凍結融解胚移植の妊娠率はそれぞれ 61.1%(11/18),40.1%(236/589)であり有意な 差はなかった.Day4 凍結融解胚盤胞移植での培養液別の妊娠率は,G 群で 20.0(1/5)%,N 群で 61.5%(8/13)と高値であっ たが,有意差はなかった.【考察】Day4 胚盤胞発生率は媒精法の違いではなく,培養液により差がみられた.また N 群にお ける Day4 胚盤胞は,妊孕性の高い胚であると考えられた.凍結融解胚移植においてより発生の早い胚盤胞を選択することに より,高い妊娠率を得られる可能性がある.しかし,培養液の違いにより発育スピードが異なることから,培養液それぞれの 胚の発育特性を考慮し,移植胚の選択を行う必要があると考えられた.

O―006 無加湿型インキュベータ使用時におけるミネラルオイル被覆培養液内の浸透圧変化

○湯本啓太郎,岩田 京子,杉嶋美奈子,甲斐 義輝,溝口 千鶴,的場 由佳,山内 至朗,田中 藍,岡田 直緒,

宮崎 翔,経遠 智一,中岡実乃里,松本 郁美,森脇 瞳,井庭裕美子,見尾 保幸 ミオ・ファティリティ・クリニックリプロダクティブユニット

【目的】従来,ヒト胚の体外培養は培養液の設定環境の安定化のため,オイル被覆下,加湿型培養器内で行われてきた.しかし,近年,菌発生の抑制,

かつ,省スペース的要因も加味し,無加湿型培養器が広く普及している.無加湿型の培養液内の温度や pH の安定性は確認されているが,浸透圧に関 しての詳細は不明である.

【方法】汎用型 3 種類(加湿型ウォータージャケット,加湿型ベンチトップ,無加湿型ベンチトップ)を用い検討した.培養液は,Medium A[standard value(SV):265±10 mOsm/kg],および,Medium B(SV:290±10 mOsm/kg)である.3 種類(50μl,100μl,200μl)のドロップを作成し,ミネ ラルオイル(Naka Medical Co. Japan)で被覆後,各培養器内に 2 日間静置し経時的浸透圧を測定した.

【成績】加湿型は,いずれも 2 日間の培養で,種類,液量に関わらず,浸透圧上昇は平均 2 mOsm/kg であった.一方,無加湿型の 50μl では,Medium A(SV:267 mOsm/kg)で,1 日目:277±0.6,2 日目:283±0.9,Medium B(SV:289 mOsm/kg)でも,1 日目:306±0.7,2 日目:310±0.8 と有 意な上昇を認めた(P<0.01).また,無加湿型の 100μl,200μl ドロップでは,Medium A(100μl)で,1 日目:271±0.2,2 日目:275±0.5,同じく,

Medium A(200μl)でも,1 日目:271±0.2,2 日目:274±0.4 と同等の数値を示し,浸透圧の上昇は 50μl に比して 50% 以下にとどまった.また,Me-dium B(100μl)でも,1 日目:294±0.6,2 日目:297±0.4,Medium B(200μl)では,1 日目:293±0.6,2 日目:299±0.5 と Medium A(100μl,200 μl)と同等であった.

【結論】今回の検討から,ミネラルオイル被覆下の培養液浸透圧は,加湿型では極めて安定であったが,無加湿型では 2 日程度の短期培養であっても急 激な上昇が認められ,特に,50μl では,著明な浸透圧上昇は不可避で 100μl 以上の培養液量が必要であり,体外培養環境には細心の配慮が必要である.

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