祇
舎 私 記』 にみ え る 当該 文 は
、 本 来こ こに 配置 さ れる べき 文 であ ると 考え ら れる
。 また
、次 の『 瑜 祇経 西決
』 にお いて も、 文 脈の 不具 合な 箇 所が 指摘 さ れる
。
一 切如 来金 剛 最勝 王義 利 堅固 染愛 王心 品 第二
私 云。 此 品
、染 愛 王為
二本 尊
一。 三 十七 尊 同入
二染 愛 三昧
一地 成
二就 一切 有情 染 愛悉
一地
云 云
。
経 曰。 若 真言 行 人、 持
二経 三 十万
一遍
、一 切 真言 主 及金 剛界 大 曼荼 羅王
、皆 悉 集会
。一 時 与二
成 就一
速得
二大 金 剛位 乃至 普 賢菩 薩位
一 云云
。 染 愛王 明曰
。
唵 摩引
賀 囉引
誐嚩 日路 瑟抳 灑 嚩日 羅薩 怛 嚩二
弱合
吽 鑁穀
印 相曰
。 二手 金剛 拳、
二相 叉内
一為
レ
縛。 直
二竪 忍・
一願 針。 相 交 即成
レ染
。印
二
心・ 額
・ 喉
・頂
一 云云
。 攝 一切 如来 大 阿闍 梨位 品第 三
私 云。 此品
、 大日
二為 本
一尊
。□ 三 十七 智惠 得
二悉
一地
。
大 阿闍 梨位 明 曰。
唵 嚩入
日 羅素 乞史 摩摩 賀 娑引
怛嚩 吽 吽
印 相 以
二定
・ 惠手
一屈
レ肘 向
レ上 合 掌与
レ肩 齊
。各 屈
二戒
・忍
・ 方・ 願
一入
レ掌
。 或坐 或 立皆 成就
。 金 剛薩 埵冒 地 心品 第四
私 云。 此品
、金 剛 薩 埵為
二本 尊
一。 五 部 三十 七尊 三部 十 三会 自覚 本 有三 十七 智 悉地 成就
。 現 生替
二
諸仏
一救
二度 有
一情 故。 以
下能
二共 諸仏
一
同行
上願 於
二一 切法
一平 等 薩埵
。 真 言曰
。
唵 嚩日 羅句 捨 冒地 止多 吽
118
印 相 二手 内 相叉
、各 以
二禅
・智
一捻
二
進・
一力
云 云。 一 切瑜 伽瑜 祇 経愛 染王 品第 五
私 云。 此 愛 染王 為
二本 尊
一
。三 十 七 尊共 入
二愛 染三 摩地
一
一切 如来 共 成就
。雑 法 悉地 及 五 種成 就法 明
云云
。
愛 染王 一字 心 明曰
。
吽擿 枳吽
短 弱
印 相 二手 金 剛縛
、忍
・ 願竪 相合 二 風如
二鉤 形一
。檀
・惠
・禅
・智 竪合 如二
五 峰一
。是 名
二羯 磨
一印
云云
。
五 種相 応印 戒・ 方 入
レ掌 交禅
・智 相鉤 結。 檀
・惠 合如
レ針
。忍
・ 願竪 相捻 進・ 力各 偃 竪
。是
二名 寂 災印
一。 進・ 力
二捻 忍・ 願
一四 指頭 普齊
。是 名
二増 益印
一
。進
・力
二如 蓮
一葉
。 印 名
二敬 愛 印
一。 進
・ 力捻
二
忍
・ 願上 節
一 二蹙 三 角
一。 是 名
二降 伏 印
一
。進
・ 力 屈如
レ
鉤
。 随
レ誦 而 招召
。是
二名 鉤 召印
一。
已上 五種 印 同用
二一 字 心明
一前 復
二加 句之
一
。 一 切処 瑜伽 四 攝法 品第 六
私 云。 此品
、 愛染 王為
二本 尊
一。 前後 諸 品成
二就 四 攝行 四攝 法
一。
真 言曰
。
唵 嚩日 羅沙 怛 嚩弱 吽鑁 穀
29
ここ では
、『 瑜 祇 経』
「一 切 如来 金 剛最 勝王 義利 堅固 染 愛王 心品 第 二」 から
「 一切 仏頂 最 上 遍照 王勝 義難 摧 摧邪 一切 処 瑜伽 四 行攝 法品 第六
」ま で
『瑜 祇経 母 捺羅
』に 該 当す る文 が 列 記さ れて いる
。と ころ が、
『瑜 祇経 母 捺羅
』の 中 にこ れ らの 諸品 に 相当 する 箇 所が 見出 せ な いこ とか ら、 こ れら の文 は
『瑜 祇 経母 捺羅
』の 欠損 し た部 分で あ ると 考え るの が 妥当 で あ る。 また
、『 瑜 祇経 西 決』 は、
『 瑜祇 経』 所説 の 印に つい て 述べ て いる 書で もあ る。 そ して
、 次 のよ うに
、そ れ ぞれ の印 の 説明 箇所 に番 号 が付 され てい る のが 特徴 的で あ る。
阿一 闍 梨 行位 印 二 空ヲ
火端 付ニ レ
之。 薩二 埵 菩 提心 印 内 縛、 空・ 風 如二
弾 指一
如
二無 所不 至ノ 一
又 風端 上 節屈 付ニ 説有
レ
之。 四三 種 鉤 印
二如 金剛 界 羯磨 会四 攝
一
壊四 二 乗 心印 不 動 刀印
、以
レ空 捻
二地
・水
一甲 火・ 風 舒テ
端 小垂
。ヨ
左手 拳
ニシ
置テ レ腰
。 大五 勝 心 相応 印 如
レ文 五古 印也
。 伝授 時 内縛 又説
二外 縛
一。
……
30
一方
、『 瑜 祇経 母 捺羅
』の 中 にも
、以 下に 示 すよ うに
、同 様 に印 の 説明 箇所 に 番号 が付 さ れ た文 が確 認さ れ る。
仏二十八 眼 印如 文 云云
成二十九 金 剛薩 埵 身印
如文
五 古 印外
119
胎三十一 蔵 八字 印
如文
但 釈 迦鉢 印 者、 定印 二ノ
空 少立 不テ レ付
二
二風
一。 結
レ之 心左 右 旋ニ
舞
セヨ
。 次虚 合テ
当
レ心
。
五三十二 大 虚空 蔵 印 法 界虚 空 蔵印 二 手 外縛
、二 小 二中 二大 相合 立。 金 剛虚 空 蔵印 准
二前 印
一。 二頭 指 改ヲ
二テ
中 指背 当ニ
不テ 二
相付
一。 如二
五 古印
一
。 宝 光虚 空 蔵印 准
二前 印
一。 二頭 如
二宝
一形
。 蓮 花虚 空 蔵印 准
二前 印
一。 二頭 指
二如 蓮葉
一 云云
。 業 用虚 空 蔵印 准
二前 印
一。 二頭 二 無明 牙相 叉
二如 十字
一云 云
。
金三十三 剛 吉祥 成 就一 切明 印 如
二口 決文
一 云云
。
破三十四 諸 宿曜 印 内 縛。 以
二二 大指
一 二付 二頭 指
一ニ
。如
二
無所 不至 印
一。 但二 大 上節
云云
少 屈立
31
。 以上 の解 析作 業 から
、三 書 の相 互補 填性
・ 密接 な関 連性 が うか がえ よ う。 次に
、『 瑜祇 経 母捺 羅』 に は
、書 の途 中に
「壊 二乗 心 印事
」と して
、切 紙様 の 書面 が収 め ら れて いる
。そ の 全文 を以 下 に示 す。
壊二 乗心 印 事
仏 頂師 説。 以
二右 手刀 印
一ヲ レ指 下
ヲ
。文
静 師之 疏文 釈
スル 二ニ
此印
ヲ 一文 殊 印也
。文
件 惠刀
ヲモ テ
切キル 二
在纒 真 如ノ
大日 右ノ
臂
一ヲ
。文
今 此印 指
レハ
下ヲ
此意 歟
。其 故ハ
纒
ヲハ レ譬 地 故二
也。
東 寺ニ ハ
左手 思
レテ
持ト 二
蓮花
一ヲ
以
二右 手 刀ノ 一ヲ
切
二蓮 花 茎ヲ 一思 也
。文
蓮 花、 自
二泥
一水 生
、 此 切ヲ
放 ツ相 歟云 云。
已上 師、 奉
二面 授一
。
快
―記 也 建 暦元 年 四月 六日 奉
二立
一印 了。 即
二賜 此御 本
一翌 日 書 写 了。
全宗
32
仏頂 師( 行 嚴か
)が 右手 刀印 の指 を 下に する と 伝え て、 静 師( 静 然 か) の 疏の 文 には
「 壊 二 乗心
」の 印 相 は文 殊印 であ る とし
、( 安然 撰『 瑜 祇 経疏
』に は
)文 殊の 慧剣 でも っ て在 纒 真 如の 大日 の右 臂 を切 ると あ る。 刀 を下 に向 ける とい う のは 纒垢 を 地に 譬え て、 そ の地 を 切 る意 味が ある と 述べ
、続 け て東 寺 の伝
(典 拠不 明) に つい て著 し てい る。 前 章で 述べ た よ うに
、壊 二乗 心 とは
、『 瑜 祇経
』「 一 切仏 頂 最上 遍照 王 勝義 難 摧摧 邪一 切処 瑜伽 四 行攝 法 品 第六
」に 説 か れる 印呪 で、 そ の 要を 示せ ば
、金 剛 手菩 薩 が、
「一 切処 無不 相 応真 言」 を 呪 し
、四 攝行 の想
( 慈悲 喜捨 の 四無 量 心) を起 こし
、四 種 鉤を 結び
、 一切 の有 情 に利 益と 安 楽 を与 える 四攝 の 行法 を説 く
、そ して 一 切時 にお いて
「 壊二 乗心
」を 起 こし
、「 壊二 乗心 真 言
」を 誦す るこ と によ って
、 福徳 増 長、 如来 加護 等の 利 益を 得、 現 世に おい て大 金 剛位 処 を 証す るこ とが で きる と説 か れる 品 であ る
33
。こ の壊 二 乗心 は
、経 中に 真 言や その 意は 説 か れて いる が、 印 相に つい て は説 か れて いな いた め、 台 密に おい て 様々 な解 釈が 生 じる
。 こ こに みえ る「 壊 二乗 心印 事
」も
、 その 印相 の伝 承に 関 する 貴重 な 資料 の一 と考 え られ る
120
だ ろう
。
「 壊二 乗心 印 事」 は
、「 快
―
」な る 僧が 師 の面 授を 記 した も ので あり
、そ の 記 は建 暦元 年
( 一二 一一
)四 月 に立 印を 終 え、 そ れを 記し たも ので
、 それ を全 宗 が翌 日に 書 写し たこ と が 本文 中に 記さ れ てい る。 建 暦元 年
(一 二一 一) は、 基 好が 三本 を 記し た治 承年 間 より も 下 った 時代 であ り
、基 好 はす で に寂 して いる と 考え られ る ため
、『 瑜祇 経母 捺羅
』が 嘉暦 三 年
(一 三二 八) に 書写 され る まで に 内包 され たか
、あ る いは その 時 に書 き足 し たの かと 推 察 され るが
、そ の 詳細 は不 明 であ る。 全宗 とは
、『 門 葉 記』 や『 阿娑 縛 抄』 にそ の 名が 列ね られ て おり
、「 岡 崎法 印」 と も称 さ れ る台 密僧 であ る
34
。ま た
、慈 円の 口 伝が 記録 され た『 四 帖秘 决』 中 にも
、「 全宗
( 阿) 闍 梨
」と あり
、そ の 名を 確認 す るこ と がで きる
35
。 これ ら の事 例 から
、全 宗 は青 蓮院 と
、特 に 慈円 と関 係の 深 い人 物で あ ると いえ る。 全宗 の人 物 像を 踏ま えて
、「 快―
」が 如何 なる 人 物か 考証 する
。全 宗や 慈円 と同 時 代の 人 物 で、 そ の 名を 探索 する と
、『 門葉 記』 や『 阿娑 縛抄
』に
、全 宗と 共 に快 雅な る僧 の 名を み つ ける こと がで き る
36
。快 雅 は、 台密 十 三流 の功 徳流 の 祖な る 人物 であ り
、功 徳流 とは 三 昧 流の 祖良 祐よ り 伝え られ た 派で あり
、三 昧 流は 青 蓮院 の本 所 とし ても 知ら れ る。 つ まり
、 こ の面 授は 三昧 流 に関 連す る 内容 で ある こと を想 起さ せ る。 それ は
、以 下に 示す 谷 流の 皇 慶 口説
・長 宴( 一
〇一 六― 一
〇八 一) 記『 四 十帖 決』 寛 徳 三年
( 一〇 四 六) 四 月浄 住 説「 経
五
」に 確認 され る
。 又
、 壊二 乗真 言
如文
。即
、 文殊 印 明也
。其 印、 一 院文 殊 剣印
、外 縛 二火
二屈 上
一節
是 山門 所 伝
。也
東 寺伝 云
。左 手、 作
レ拳
二当 胸
一前
、
三想 右左カ
手 持
二一 茎 蓮花
一。 右 手、 作
二刀 印
一。 謂、 左 火・ 風 並 申、 以
レ空 押
二地
・水 甲
一也
。以
二
此刀 印
一右 腕其 上、 覆
レ之 右 引遣
、即 想
二蓮 茎 打
一截
云云
37
。 前半 はい わ ゆる 五字 文殊 の 剣印 であ ると し
、後 半は 東 寺の 伝に 云 くと して
、右 手を 刀 印 に し、 左 手に 蓮華 を 持つ と観 想 しそ れを 打ち 切 るこ とが 記 され てお り
、「 壊 二乗 心 印事
」は 谷 流の 意を 汲ん で いる ので あ る。 ま た、
『瑜 祇 経西 決』 に は、
「壊四 二 乗心 印 不 動刀 印
、以
レ空 捻
二地
・ 水甲
一火
・風 舒端 小 垂。 左手
、拳 置
レ腰
38
。」 と、
「 壊二 乗心 印 事」 にみ え る仏 頂 師 によ る伝 承と 同 趣意 の内 容 が示 さ れ、 この 仏頂 師に よ る伝 承と 基 好と の関 連性 も うか が わ れる
。こ の面 授 の記 が何 故
『瑜 祇経 母捺 羅
』に 収め られ て いる のか 興味 深 い。 第
五節 結言
『 瑜祇 経 母 捺羅
』・
『
崎 祇 舎
私 記
』 合綴 本
、 並び に
『 瑜祇 経 西 決
』は
、 共 に長 寿 房 薬 仁 の記 であ り、 そ の書 本を 基 好・ 栄 西が 書写 し、 嘉暦 三 年( 一三 二 八) に基 好の 書 本と さ れ るも のを 書写 し たも のが 現 存の 三 本と 考え られ る。 そ の全 文を 整 理・ 解析 し
、本 論文 に 資 料と して 提示 し た。
『瑜 祇経 西決
』 に記 され た 奥書 に よる と、 基好 は治 承 三年
(一 一 七九
)の 伯耆 の 国の 戦 乱 に巻 き込 まれ
、 大山 の聖 教 類と 共 に自 ら書 写し た本 も 多く 消失 し たが
、そ の後 多 武峰 に