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3. 所得税

3.6. 所得分類

3.6.4. 山林所得(所得税法 32 条)

長期譲渡所得(保有期間5年超)について特例のあることを見たが、他にも課税緩和規定がある。

47

平準化措置

または48

平均課税

§ 243.01 シャウプ勧告より

NOTE 1. 600万円×5年 → 87万円×5=49435万円

        3000万円 → 50861万円(=33+114+270+444)

 (他にも所得が各年に分散された方が各年の所得控除が利用できるといった利点がある)

●山林所得(所得税法32条):保有期間が5年超である場合に51

五分五乗方式

(所得税法89条 1項)が適用される。なお、山林所得は総所得金額と別に計算される(22条)。

  51

五分五乗方式

:課税所得(ここでは山林所得)を5分の1にして、それに適用される税率を 乗じ、その金額を5倍にして、税額を算出する。

●変動所得・臨時所得に対する平均課税(所得税法2条1項23号、同項24号、90条):漁獲による所 得、著作権使用料等は、特定の年度に一気に所得が発生することがあり、そのまま累進税率を適用する と酷なことがある。そこで、変動所得・臨時所得の4/5を除いて累進税率を適用し、除かれた4/5につ いて平均税率を適用する。

●退職所得(ノート3.6.6款)についての特別措置も、平準化措置の一例といえる。

3.6.5. 給与所得(所得税法28条)

(1) 給与所得の定義

所得税法28条1項:給与所得とは、俸給、給料、賃金、歳費収び賞与並びにこれらの性質を有する給 与…に係る所得をいう。

「勤労性所得(人的役務からの所得)のうち、雇用関係またはそれに類する関係において使用者の指揮・

命令のもとに提供される労務の対価を広く含む観念」(金子租税法208頁)

 参考:佐藤英明「給与所得の意義――事業所得との区別」税務事例研究56号25頁、りんご組合事件・

最判平成13年7月13日判時1763号195頁判タ1073号139頁、最判昭和53年8月29日訟月24巻 11号2430頁(以上2例:給与所得肯定)、最判平成1年6月22日税資170号769頁(給与所得否定)

§ 223.01 弁護士顧問料事件・最判昭和56年4月24日民集35巻3号672頁  判旨 「顧問業務の具体的態様に応じて、その法的性格を判断」

 「事業所得とは、自己の計算と危険において独立して営まれ、営利性、有償性を有し、かつ反復継続

 「給与所得とは、雇用契約又はこれに類する原因に基づき使用者の指揮命令に服して提供した労務の 対価として使用者から受ける給付をいう。なお、給与所得については、とりわけ、給与支給者との関係 において何らかの空間的、時間的な拘束を受け、継続的ないし断続的に労務又は役務の提供があり、そ の対価として支給されるものであるかどうか」を重視。

 検討 どうしても事業所得と給与所得との境界は微妙なものとなる。NOTE 2. (1)所掲(日フィル事 件)の楽団所属ヴァイオリニストの例、(3)にあるプロ野球選手の例(なお、二軍選手の報酬は給与所得 して扱われているらしい)、力士、芸能プロダクション所属のタレント、カリスマ店員、NOTE 3.所掲 の委託検針員(九州電力検針員事件)等々。

 上記最高裁判旨がほぼ必ず引用されるが、and条件なのか、つまり全ての条件が満たされた場合にの み事業所得或いは給与所得に該当するのか、不分明なところが残されている。[浅妻]はっきり言ってク イズの領域

§ 421.02 青森?りんご生産組合事件・最判平成13年7月13日判時1763号195頁判タ1073号139頁  組合員でも給与所得を受けることがあるとした例。組合は契約主体ではないので、組合員が組合と雇 用「契約」を締結することはありえないが、雇用類似の関係にあることが重視された。

§ 223.02 大嶋別訴第一審判決・京都地判昭和56年3月6日行集32巻3号342頁  大学教授の非常勤講師料は雑所得ではなく給与所得

  [浅妻]「他人の指揮監督…に服して」とは考えにくい。「自己の危険と計算によ」ってない点は事業所 得性を否定するにとどまり、給与所得性を積極的に基礎づけるとは言いがたいのではないか。(しかし 通常は給与所得扱いの方が有利なので争う気が起きない)

 余談:大学教授の講演料や論文の原稿料は雑所得  余談:学術振興会特別研究員は給与所得課税

(2) 課税時期

 会社が従業員のために年金掛け金等に拠出した場合――特則(所得税法施行令64条:所定の要件の 下、拠出時非課税)がなければ、拠出時に従業員の給与所得に含まれて課税されるべき、と考えられて いる。会社が拠出するため従業員がそのお金を自由に使えるわけでもないのに課税対象に含まれること について釈然としない者は、年度帰属に関するノート3.4節を復習した後、通常の預金と比較して考察す べし。

(3) 52

フリンジ・ベネフィット

fringe benefit

雇用者が従業員に給付する給料以外の便益。(fringe: 縁、周辺)

用語の確認:そのまま「フリンジ・ベネフィット」と呼ばれることが多い。他に、現物給付、現物給与、

現物収入、賃金外給付、追加的給付、付加給付、付加厚生給付といった呼ばれ方もされる。

●通勤費用 ――通勤定期券につき、後掲裁判、所得税法9条1項5号参照。

§ 223.03 通勤定期券課税事件・最判昭和37年8月10日民集16巻8号1749頁

 勤労者が使用者から通勤費用の支給を受けたとき、給与所得を構成する。通勤費用手当てを受けてい ない勤労者との公平を図る。

NOTE 1. (2) 事業主都合給付・所得税法9条1項6号「給与所得を有する者がその使用者から受ける金

銭以外の物(経済的な利益を含む。)でその職務の性質上欠くことのできないものとして政令で定める もの」

 →所得税法施行例21条:船員の食料、給与所得者の制服、国家公務員宿舎法の規定により無料で宿 舎の貸与を受けることによる利益

 正当化:例えば船員が1000円相当の食事を受けていたとしても、船員自身がその食事から1000円 の53

効用

を得ていない(もし自由に食事が選べるなら1000円で別の食事を選ぶなど)ことがある。

 反論:課税の公平を図るためには、受け手個々の効用の感じ方は基準としえない(ノート3.3.7款・帰

属所得に関する説明を想起すべし)。

 再反論による正当化:帰属所得の場面は納税者自身に選択の自由があることが多い。他方、事業主都 合給付の場合、いわば54

強制された消費

であり、住居等の帰属所得とは場面を異にする。

  ([浅妻]理論的には、反論も再反論も成立する。しかし、再反論の論法に依拠したとしても全額非課 税ということが正当化できるとも思えない。あとは立法上の割り切りと評するしかないのではないか)

NOTE 2. (1) 好き好んで職場から遠く離れた所に住み、高額の通勤代を支払うことは、55

消費

である。

納税者は職場から遠く離れた所に住むことを強制されているわけではない。

 しかし、遠く離れた所に住むことを消費であるといって課税の対象としてしまうことに、疑問もあろ う。住む所をそれほど自由自在に決められるとは限らないし、職場の隣に住めるとも限らない。

(2) 所得税法9条1項5号「通勤手当」

NOTE 3. (1) AがB社のいわば広告塔として働いていると考えると、給与所得。

 金メダル獲得という偶発性等を強調すれば一時所得又は雑所得(ただし業績比例賃金といったものも 世の中にはあることを考慮すべし)。

(2) 職務発明(特許法35条)の対価は給与所得か。

所得税法基本通達23〜35共−1(使用人等の発明等に係る報償金等)は、譲渡所得又は雑所得と解す。

佐藤英明「使用者から与えられる報奨金等が給与所得とされる範囲」税務事例研究61号21頁(2001) は給与所得と解す。

NOTE 4. 補足 ……日本子会社勤務の者が外国親会社から受ける56

ストック・オプション

(株式譲渡請求権等)に起因する経済的利益が給与所得であるか一時所得であるか、が裁判で激しく争 われた。判例上は57

給与所得

説に落ち着く見込み(最判平成17年1月25日民集59巻1号64頁)

(金子宏教授は雑所得説)。本件と信義則の問題について5.1.4款参照。

 ところで、特則(租税特別措置法29条の2等:所定の要件を満たすと、株式譲渡時まで課税を繰延 べる)を無視すると、そもそもいつ課税するかという課税時期の問題も厄介。ストック・オプション付 与時か、ストック・オプション行使により株式を取得した時点か、その株式を譲渡した時点か。ストック オプションについて図が必要

●社宅 ――実務上最も問題となるし、家賃が不相当に低ければ課税対象となる(所基通36-40以下)。

特に、公務員が官舎に住む便益につき課税すべき、という意見は強い。

自分の住みたい所に住めない状況にあっても、市価と実際に支払う家賃との差額が全て従業員の便益 となっているといえるか、については、議論の余地がある。上記事業主都合給付の議論を参照。

●オフィス環境(快適な空調等)――自宅で空調を利用している者との対比で課税しなければ不公平で あるが、とても執行の手が回らない。

(4) 捕捉率と給与所得控除

 いわゆる58

クロヨン問題

――給与所得者はその所得の9割が課税当局により捕捉されている一 方、自営業者は6割、農家は4割しか捕捉されてなく、給与所得者が不利である、という不公平感。

 所得税法28条3項:59

給与所得控除

…殆どの給与所得の必要経費をカバーするだけの充分な

(納税者に甘すぎる)所得控除を認めている。納税者が実額で必要経費の控除を求めてきたとしても給 与所得控除を超えることは殆どないので、実額による必要経費控除を認めないことの不公平感が殆どの 場合問題とならない(しかし実額経費が給与所得控除を超えることが稀とはいえありうるので、その場 合にも実額控除を認めないことについて、やや正当化が困難となる。実額経費控除を認めないことの合 憲性として§ 111.01 大嶋訴訟・最判昭和60年3月27日民集39巻2号247頁)。給与所得者に甘すぎ る、という批判が自営業者などから出されることが少なくない。