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3. 所得税

3.6. 所得分類

3.6.7. 事業所得(所得税法 27 条)

§ 224.01 会社取締役商品先物取引事件・名古屋地判昭和60年4月26日行集36巻4号589頁

 会社の取締役が商品先物取引によって生じた損失は事業所得計算上の損失(所得税法69条1項:他 の分類の所得と損益通算可能)ではなく、雑所得計算上の損失(他の分類の所得との損益通算は不可)

とされた事例。

 損益通算の可否の違いから、損失が出た時にその所得分類が問われることが多い。

NOTE 2. 区別の基準(本件で●事業所得っぽい要素 ×事業所得っぽくない要素)

基準    区別の対象  備考    営利性・継続性 ● 一時所得、雑所得      

自己の危険と計算 ● 給与所得       企画遂行性 × 雑所得? 必須か?

精神的、肉体的労力の程度 × 雑所得、譲渡所得       人的、物的設備の有無 × ? 必須か?

職業/社会的地位/生活状況 × ? 網羅的すぎでは?

商品先物取引の博打性 × 一時所得? ハイリスクは消極要件か?

([浅妻]結論を導くに当たり余計なことを書きすぎているのではないか?)

cf. § 223.01 弁護士顧問料事件・「事業所得とは、自己の計算と危険において独立して営まれ、営利性、

有償性を有し、かつ反復継続して遂行する意思と社会的地位とが客観的に認められる業務から生ずる所 得」

自己の計算と危険において独立 ⇔給与所得 営利性、有償性 ⇔一時所得、雑所得

反復継続して遂行する意思 ⇔一時所得、雑所得 社会的地位 ⇔?

§ 224.02 嶋モータース事件・名古屋高裁金沢支判昭和49年9月6日行集25巻8=9号1096頁

 事実・争点 日産と特約店契約を結ぶため、Xの個人事業(嶋モータース)から、会社形態のE社に 変更することを企図。借入金も利用しE社設立。この借入金利子はXの事業所得の計算上の損失と見 ることができるか?

 判旨 「X個人事業と訴外E社とを会計上あるいは税法上同一視することもできぬ」 本件の借入金 利子は配当所得の計算上の損失となる。また、所得税法69条1項は、配当収入より借入金利子が上回 る場合の他の分類の所得との損益通算を予定してない。

 余談 もし日産の特約店になるのに株式会社でなくてもよければ、上のような悲劇は起きなかった。

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必要経費

の意義

§ 231.01 経営コンサルタント事件・東京地判昭和45年5月25日行集21巻5号827頁

 事実・争点 Xの自動車の月賦手数料と、A社(Xが代表取締役)に対する貸倒損失(A社に対する 経営コンサルタント業に関連して発生した損失であるとXは主張)が必要経費として認められるか。

 判旨 「自動車の取得価額に含め、減価償却の方法によって当該金額を各年分の費用に配分するのが 相当」

 「事業所得の金額計算上控除が認められる貸倒損失は、…当該事業所得をうるために通常必要とされ る貸付金の貸倒に限られる。」「X主張の貸付金等は、…Xの経営コンサルタント又は中小企業診断員と しての業務とは無関係である。」

NOTE 1. 必要経費の控除を認めないと、課税が原資に食い込み、事業の拡大再生産を阻害することと

なる(それが違憲の問題を惹起するものではなく立法政策論にとどまるとはいえ)、という説明がなさ れる。また、消費税(付加価値税)を勉強した後復習すべし。

NOTE 2. & 3. (1)

資本的支出・取得費算入・減価償却と即時必要経費算入との違い…ノート3.4.9款の減価償却と初年度全 額償却

例:2001年1000の機械購入。耐用期間10年、残存価額0、定額法。機械関連費用100。月日無視。

      |2001年       |2002年      |2003年          |……

取得費算入 |資産1100 経費0 |資産990 経費110|資産880 経費110|…… 

必要経費算入|資産1000 経費100|資産900 経費100|資産800 経費100|…… 

(2) 必要経費と76

家事費

(所得税法45条) 後者が控除できないのは77

消費

だから。

 しかし、必要経費と家事費の両方の性質を支出(78

家事関連費

)も存在するのでは?

 参照:所得税法施行令第96条 「法第45条第1項第1号(必要経費とされない家事関連費)に規定 する政令で定める経費は、次に掲げる経費以外の経費とする。 / 1.家事上の経費に関連する経費の主 たる部分が不動産所得、事業所得、山林所得又は雑所得を生ずべき業務の遂行上必要であり、かつ、そ の必要である部分を明らかに区分することができる場合における当該部分に相当する経費(2号略)」

 所基通45-2(業務の遂行上必要な部分)「令第96条第1号に規定する「主たる部分が不動産所得、事

業所得、山林所得又は雑所得を生ずべき業務の遂行上必要」であるかどうかは、その支出する金額のう ち当該業務の遂行上必要な部分が50%を超えるかどうかにより判定するものとする。ただし、当該必要 な部分の金額が50%以下であっても、その必要である部分を明らかに区分することができる場合には、

当該必要である部分に相当する金額を必要経費に算入して差し支えない。」

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違法な支出

の必要経費性

§ 231.02 高松市塩田宅地事件・高松地判昭和48年6月28日行集24巻6=7号511頁

 宅建業法違反の代理報酬を支払った場合について、所得税法上は経費として認定されるとした事例。

 (ところで本講義では手続・訴訟に深入りしないが、319頁上半分に書かれてある内容は〔時々論者 によっては批判の対象となるが〕実務家にとって重要なので、熟読すべし。一般に80

総額主義

の考 え方と言われる。81

争点主義

と対置される。)

 (土地の譲渡があったのか仲介が行なわれたにすぎないのか、課税処分取消訴訟の審理対象は何か、

事業所得の意義は何か、といった様々な論点が現れている、一粒で何度もおいしい事案といえる)

 相互参照:違法な収入について§ 211.02&ノート3.3.6款、法人税に関し§ 323.03

NOTE 2. (2) & 3. 所得税法45条6号〜9号が罰金等の必要経費不算入を規定する。

 所得課税の理論から言えば、罰金も、必要経費の性質を備えているならば、本来は所得から控除され るべきである(それは違法な支出に関する上掲裁判例のとおりである)。

 しかし、罰金の控除を認めると、罰金の効果が税率分だけ弱まる。例えば、限界税率40%の納税者が 100の罰金を支払った場合、これの控除が認められると、他に所得があるならば、税額を40減らす効 果をもたらす、すなわち、100の罰金を課したつもりが経済的効果としては60にとどまってしまう。

そこで、所得課税の理論的要請をここで引っ込めて、罰金等の趣旨を貫徹するために、特別扱いする。

 これは82

限定列挙

であるが、上記の趣旨を一般化した考え方が「公序(public policy)の理論」と いえる。しかし解釈論としては採用しがたい(明確性を欠き租税法律主義違反の恐れがある)。尤も、

もしも現実的対応として公序の理論の趣旨を達成したいと考えるならば、課税当局は「公序違反のけし からぬ支出だから控除を認めない」ではなく「その支出は必要経費の性質を備えていない」と主張する であろう。

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費用収益対応の原則

(必要経費の範囲)

§ 233.01 佐賀前主不法占拠事件・佐賀地判昭和39年12月17日訟月11巻1号129頁

 事実 Xは甲土地を所有し、不動産所得を稼得する。友人から借金をし、昭和36年7月26日、約 192万円で乙土地を購入。8月1日、B銀行から200万円を借り入れ、友人に弁済。同年中に約16万 円の利子をB銀行に支払う。Xは、不動産所得稼得目的で乙土地を購入(ただし現実にはCが占拠し ており賃貸不可)し、B銀行への利子支払はその費用であると主張。

 判旨 請求棄却。 「収入金額から控除される経費は、右収入を得るために必要な経費であるから、

その範囲は、収入金額に対応する経費に限定して解するのを相当とする。それ故収入のないところには 経費もあり得ない」

NOTE 1. (2) 使用前期間部分の利子は取得価額に算入する。

(3) 誤解を招きかねない命題であるので補足。今年開業したが全く収入がなく、費用ばかりかさんだ、

という例は現実的にも少なくないであろう。このような場合に必要経費算入及び損失の計上が認められ ないはずはない。無論、(タイミングの問題としての)費用収益対応の原則から、実際に今年支出した 額であっても、翌年以降の収益に対応させて計上されるということはあるが、そうでない部分はやはり 今年必要経費算入が認められるべき。そして今年損失が生じても、翌年以降利益が出れば純損失の繰越 控除(所得税法70条、ノート3.4.2款)などで対応できる。結局、観念的には経費性が認められている といえる(計上時期の問題にすぎない)。(仮に翌年以降も全く収入がなかったとしても、事業の実態が あれば、経費性が否定されるとは言えないであろう)

 また、(2)のように取得価額に算入して翌年以降の減価償却費に反映される場合も、観念的には経費性

が認められているといえる(計上時期の問題にすぎない)。

 タイミングの問題についてはノート3.4.4款、ケースブック342頁参照。

 減価償却について、ノート3.4.9款・§ 234.02に譲る。

必要経費の範囲

§ 234.01 鉄骨材取得価額事件・最判昭和30年7月26日民集9巻9号1151頁

  84

売上原価

の時価調整を行なわないことにより、インフレによる名目的所得にも(特例なき限り)

課税が及んでしまうが、(立法論としてはともかく)解釈論としては仕方ない。

 本件は事業所得についての事案であるが、本件の課税がけしからないとすれば、そもそも譲渡所得課 税もけしからない、という立論につながる(そしてそれは原理的には包括的所得概念批判にも繋がりう る。包括的所得概念を堅持しつつインフレ利得につき救済を施すべし、との立論は不可能ではないが、

各自考えてみよ)。また、§ 222.03・ノート3.6.3款、二重利得法参照。

 本件を見ると、インフレによる名目的所得への課税は可哀相に映る。しかし、【売値−買値】の差額 には様々な性質のものが含まれうる。どのような性質のものが含まれるか、考えてみよ。また、それぞ れの性質ごとに租税法上異なる扱いをすべきか、そして異なる扱いをすべきとするときにその執行方法 はどのように担保するか、考えてみよ。

NOTE 2. 先入先出法と後入先出法は所詮擬制(フィクション)にすぎない。どちらが現実に即しているか

は明らかにしようがない。

  表2のようなインフレ期において、納税者にとっては先入先出法と後入先出法のどちらが有利か?ま た、デフレ期においては?