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,小中連携・一貫教育の実際と課題

第3章 ,小中連携・一貫教育の展開

第2節 ,小中連携・一貫教育の実際と課題

 前節では、小中連携・一貫教育の理念について用語の相違点や目的・メリットに焦点 を当てて論じてきた。ただし、「小中連携」や「小中一貫」といった言葉が、必ずしも 学校教育法などの法律で定義された用語ではないことには、留意する必要がある。例え ば、本節で紹介する東京都品川区の伊藤学園や目野学園は一般的に「施設一体型小中一 貫校」として知られているが、法制上はあくまでも胴じ校舎を共用している小学校と 中学校」である。「小申一貫校」という新たな校種はなく、「小中連携が発展すると一貫 になる」という明確な定義もない。この点は、中学校と高校との連携に関して「中高一 貫教育校」が法制化されていることと、大きく違うと言える。そのため、一言で「小中 連携」「小中一貫」と言っても、その内容は実に多様である。「すべての教科で9年間を 38文部科学省・ベネッセコーポレーションr義務教育に関する意識調査」2005年3月〜4月

39Benesse教育研究開発センター・朝目新聞社「学校教育に対する保護者の意識調査2008」2008

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通したカリキュラムを作成している」学校もあれば、「総合的な学習の時間での連携」

や「特定教科の連携を軸にしている」、あるいは「学校独自の教科を新設して、それを 軸に連携を図っている」学校まで様々である。実際、「一貫教育」を掲げている研究開 発学校や構造改革特区の学校においても、全教科での連携を行っている学校となると、

それほど多いわけではない。自治体・学校単位での取り組みが、国の制度整備に先行し ているのが、現在の小申連携・一貫教育の状況となっている。今後、地方分権への動き が加速すれば、地域の実態に即した小中連携・一貫教育は、ますます広がりをみせるだ ろう。本節では、現在行なわれているr小中連携」とr小中一貫」のそれぞれの取り組 みを紹介し、そこから見えてくる今後の課題を検討する。そして、中1ギャップ解消(ま たは緩和)に向けた「小中連携・一貫教育」とは、どのような取り組みが求められるの かを考えていくこととする。

第2節一①,小中連携教育の取り組み

A,東県都練馬区一石神井南中学校一下石神井小学校のケース

 練馬区立石神井南中学校では、2002年と2003年に文部科学省の小・中連携教育実践 協力校の指定を受けて小申連携教育の研究を進めている。rよく考え、主体的に行動で きる児童・生徒の育成」を研究主題に掲げて実践的な研究を進めている(岩田,2009)。

研究の進め方は、国語(国語、英語活動、英語)、理数(算数、数学、理科)、社会生活(社 会、生活、技術・家庭)、芸術(音楽、図画・工作、美術)、体育(体育、保健・体育)、特 設委員会(総合学習、特別活動、生活指導)の六つに分けて分類している。岩田(2009)に

よると、石神井南中学校は下石神井小学校との連携教育で、具体的に以下の四つの取り 組みを行なっているとしている。

①研究推進委員会の活動

②研究授業の開催

③全体会と分科会の運営

④研究紀要の完成・報告会・冊子配布

(岩田重信「小・中連携の視点を整理する一心・中連携教育から一貫教育へのアプローチ」教育開発研究所        断切・小・中・高の連携・一貫教育の展開』2009 175頁をもとに作成)

 一つ目は、「研究推進委員会の活動」である。研究活動を意図的・計画的に推進する ために校長や教務主任などで年3回の会合を持ち、取り組み状況を通知する「れんけい 通信」を作成する。二つ目は、「研究授業の開催」である。事前打ち合わせを放課後な

どに実施したうえで、研究テーマに沿った授業を年1回小学校で行なう。なお、実施日 は連携主任周知のもとで中学校の定期考査目の午後を利用する。三つ目は、「全体会と 分科会の運営」である。年度当初に中学校を会場に顔合わせを行い、年度計画の立案や

分科会研究テ」マを決定する。そして、7月と12月の最終授業日の午後に合同研修会 を開催し、研究紀要の原稿を検討する。四っ目は、「研究紀要の完成・報告会・冊子配 布」である。2月に最終報告会を行い、来年度に向けての改善点、新企画などの検討・

提案準備を行なう。以上が石神井南中学校と下石神井小学校の連携教育で実際に行なわ れている取り組みである。

 分科会における研究内容は授業を中心に教科指導に関連して推進される教育活動で ある。岩田(2009)によると、石神井南中学校の連携教育は、次の教育活動の視点におい て実施されている。一つ目は、教育連携である。教育目標や学校経営方針の小中連携に 関わる内容の整合性を調整するなど、校長間で相談を行なっている。二つ目は、行動連 携である。例えば、「あいさつ運動」の日程を小中で調整して同時に開催し、地域の青 少年委員会などに連絡して協力を依頼している。三つ目は、情報連携である。年間行事 計画や月行事予定等を中心に相互に連携できるものを選択して実施している。例えば、

評価・評定の年間計画の冊子を小学校の教師全員に配布し、中学校の成績のつけ方を伝 えている。他にも、中学校2年生の総合学習で行なった職場体験の壁新聞を小学校に約

2週間掲示し、小学生に読んでもらったりしている。

 岩田(2009)は、連携の取り組みによる大きな成果は「小・中の教師間の交流により信 頼関係が高まってきていることである40」と述べている。その結果、生徒理解に関する 情報交換が密に行なわれ、小学校で不登校状態にあった生徒の5割以上が何らかの改善 を示すなど中1ギャップの解消に一定の効果を表している(岩田,2009)。

B、新潟県三条市:大崎中学校一大崎小学校のケース

 三条市立大崎中学校では、2002年度より国立教育政策研究所の小中連携教育実践の 指定校、2005年度より新潟県の「中1ギャップ解消実践研究校」の指定を受けて、小

中連携教育を中心にした中1ギャップ解消に向けた取り組みを推進している。大崎中学 校では、教育目標の「自主自律」を目指して、様々な取り組みが行なわれている。その 取り組みの一つが、新潟県から実践校として指定された「小・申連携の中1ギャップ解 消の取り組み」である。野澤・内藤(2006)によると、中1ギャップ解消の取り組みのね らいは三つあるとしている。一つは、「予防の取り組み」である。いじめや不登校を生 じさせないために、小中連携を基盤として、生徒・保護者・教師の立場から考えて小・

中間の「障壁を低くする」ための取り組みである。二つ目は、「育成の取り組み」であ る。集団生活の中で様々な問題を、自分たちで自他ともに建設的で効果的に対処するス キルを身につける取り組みである。目標設定スキル、意思決定スキル、コミュニケーシ ョンスキルなどを、主に総合的な学習の時間を使って習得を図っている。三つ目は、「早 期発見・即時対応」の取り組みである。起きてしまった問題に、その要因を排除し解決

を図る手立てを講じること、生徒の心情をすばやく把握し支援体制を整えることなど、

40岩田重信「小・中連携の視点を整理する一心・中連携教育から一貫教育へのアプローチ」教育開発研究  所『幼・小・申・高の連携・一貫教育の展開』2009175頁

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ケースに応じて生徒が抱える心の傷を最小限にとどめることをねらった取り組みであ

る。

 以上のように、大崎中学校が中1ギャップ解消の取り組みのねらいは「予防」「育成」

「早期発見」の三つである。では、この三つのカテゴリ』の詳細としてはどのような取 り組みが行なわれているのだろうか。野澤・内藤(2006)によると、中1ギャップ解消の 取り組みとして以下の取り組みが行なわれているとしている。

1,予防の取り組み

①小中連携支援シートの作成と活用

②年間3回の小・中合同研修会の開催

③小・中人事交流

④小・中の授業交流・入学説明会一合唱コンクール優秀学級の小学校訪間

⑤小・中の保護者や地域が参画する行事の開催

⑥複数担任制の実施 2、育成の取り組み

①学校行事における取り組み

②長期宿泊研修における取り組み

③大崎小学校での異年齢交流 3,早期発見1即時対応の取り組み

①毎朝の運営委員会の実施

②いじめ・不登校サポート委員会の設置

③内省ノートの点検とアンケートの実施

④カウンセラーとの連携

(野澤一吉・内藤孝夫「<実践例>三条市立大崎中学校小・中連携による 中一ギャップ。の解消」教育        開発研究所『教職研修』2006年11月129〜131頁をもとに作成)

 まず、中1ギャップの予防に関する取り組みは六つに分類される。第1に、「小申連 携支援シートの作成と活用」である。小学校6年生の担任(この場合は大崎小学校)が、

中1ギャップ解消会議で検討した項目に従って6年間の欠席日数、早退・遅刻日数、い じめ経験の有無や本人の指導の仕方などについて記入する。その記述に基づき中学校の 諸会議で職員の情報共有化を確認する。第2に、咋間3回の小・中合同研修会の開催」

である。小・中それぞれの中1ギャップ解消の取り組みの把握に加えて、各校の工夫さ れた教授法の把握、学力実態の把握、教科別の習得状況の把握などを授業公開後の協議 会において行なう。第3に、「小・中人事交流」である。2005年度から「1小1中」と いう特徴を生かして、一人1年間、大崎小学校と教員の人事交流を実施している。これ

によって、生徒は中学校へ進学しても自分を知っている先生がいることで安心し、職員

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