第3章 ,小中連携・一貫教育の展開
第2節 ,小中連携・一貫教育のこれから
中五ギャップ解消(または緩和)に向けた小申連携・一貫教育の取り組みが行なわれ、
いじめや不登校の減少、自尊感情の回復、教員問の意識変化などの一定の成果が見られ た。しかし、現在の小中連携・一貫教育の大半が小・中間の障壁をなくす内容の取り組 みであり、接続を円滑化すれば、結局大きなギャップを克服しにくくなるといった問題 点も明らかになった。現在の子どもたちは、自立や社会性の発達について不十分な子が 多く、現代の教育には、小・中間の障壁をなくすスムーズな接続に加えて、その障壁を 乗り越える力(社会性)をつける「両にらみ」の連携・一貫教育が求められていることが わかった。
社会性の育成を視野に入れた小中連携・一貫教育とは、どのようなものが考えられる のだろうか。社会性を育成する教育の充実を図るための具体的な方策としては、特別活 動や道徳教育の指導内容や指導方法の工夫・改善、教材の開発、評価方法の開発、体験 活動の活用の仕方の工夫など様々なことを挙げることができる。例えば、埼玉県さいた ま市では、2005年度より豊かな心とたくましい精神力の育成を目指して「潤いの時間」
を教育課程に新設し、「道徳」の時間や特別活動を通してコミュニケ]ション能力や豊 かな人間性といった社会性の育成が図られている(利根川,2009)。また、本研究でも紹 介した東京都品川区では、社会の形成者としての役割を遂行できる資質・能力とともに 確固たる自己を持ち、自らを社会的に優位な存在として生きていける市民性を育てる学 習として「市民科」を小中一貫教育の中に盛り込んでいる(品川区教育委員会,2005)。
品川区の市民科は、道徳、特別活動、総合的な学習の時間の三つを統合し、「自己管理」
「人間関係形成」「自治的活動」「文化創造」「将来設計」の5領域から社会性育成にア プローチされている。
また、連携・一貫教育とは現段階では関連して論じられることが少ないが、社会性を 育成する方策として「ソーシャルスキル教育」と「ストレスマネジメント教育」がある。
ソーシャルスキルとは、「社会的技能」と訳され、人間関係に関する技能のことを言う。
そして、その人間関係に関する技能を学級集団に予防的に学習させる実践が「ソーシャ ルスキル教育」である(森田,2007)。ストレスマネジメント教育は、ストレスを自分自 身でうまく管理し、ストレスと上手に付き合っていく方法を学ぶ実践である。ソーシャ ルスキル教育とストレスマネジメント教育は、ストレス反応、孤独感、不登校傾向の低 下といった効果51が見られ、小・中間の障壁を乗り越える力を育成する観点から見れば、
中1ギャップの解消(または緩和)に大きな効果が期待できると思われる。
本研究では、中1ギャップ解消(または緩和)に向けた小中連携・一貫教育についての 飼料が乏しい中で、中1ギャップの問題について整理し、小中連携・一貫教育のあり方
を探求できた点では意義があったと思われる。しかし、本研究では中1ギャップの問題
51嶋田洋徳・鈴木伸一『学校、職場、地域におけるストレスマネジメント実践マニュアル』北大路書房2004 80頁
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をr誰がどのように問題としたのか」といった考察や検討が不十分だった点で課題を残 した。また、ストレスマネジメント教育やソーシャルスキル教育の実践と小中連携・一 貫教育は、並存していても中1ギャップの解消(または緩和)にある程度効果があると思 われるが、「学校教育のどの部分で導入していくのか」や「小学校と中学校のどちらで 行うと効果が大きいのか」などの議論の余地がある。このように様々な課題も残されて いるが、将来的に小中連携・一貫教育の持っ「異学年交流」などにおいて、ストレスマ ネジメント教育やソーシャルスキル教育を取り入れることができれば、小・中間の障壁 をなくす方向と障壁を乗り越える社会性の育成の「両にらみ」の連携・一貫教育や中1 ギャップの問題の大きな進展が期待できるであろう。
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