Fig.6-2振幅の平均値のフレームごとの変化
このグラフから、超音波照射の各フレームは大きく分けて 3 つのグループに分かれること が分かった。振幅の平均値が上昇する前期、減少していく中期、変動が起こらなくなる後期 に分かれることが分かった。
また、取得されたエネルギーの総量と、生体作用との関係を以下のように評価した。
1から50照射までのすべての照射の総量
𝐸𝑎𝑙𝑙= ∑ 𝐼𝑖
50
𝑖=1
…(6.1)
振幅の変動が大きい1から20照射までの総量 𝐸𝑒𝑎𝑟𝑙𝑦 = ∑ 𝐼𝑖
20
𝑖=1
…(6.2)
変動が少ない21から50照射までの総量
𝐸𝑙𝑎𝑡𝑡𝑒𝑟= ∑ 𝐼𝑖
50
𝑖=21
これらについて、フィルタ処理したデータ別に評価を行った。以下の表(5-1)に示す。
表6-2.エネルギー総量と生体作用の関係
1~50 1~20 21~50
フィルタなし 0.289 0.113 0.400 破壊信号抽出 0.251 0.054 0.387 非線形振動抽出 0.384 0.311 0.398
6-1-2. 超音波の各フレームでの解析と生体作用との関係
6-1-1で、超音波のフレームのグループが分かれていることがわかった。この各グループか
ら1フレーム抽出していき、各点での生体作用との相関を評価していく。
今回は、
1フレーム、13フレーム、25フレームのそれぞれについて評価を行った。
1フレーム(1st stage)
今回は3つのパラメータそれぞれから1項目ずつ解析項目を評価した。以下に示す散布図 はそれぞれの条件とその中での生体作用の上位、下位50%での色分けを行った。
表6-3. 各パラメータとの相関
パラメータ 相関係数 時間方向歪度 0.39 空間方向尖度 0.44 信号の分散 0.45
Fig.6-3パラメータとの重相関の散布図
(A-1-1-2) (A-1-1-2)
(A -T -1 -1 -3 )
(A -S -1 -1 -3 )
これらの解析項目との重相関係数は0.54となった。この結果から信号の分散と尖度の値が 大きくなり、超音波信号が時間方向で前半に偏るほど、生体作用が大きくなることが分かっ た。
13フレーム(2nd stage)
以下に示す散布図はそれぞれの条件とその中での生体作用の上位、下位 50%での色分けを 行った。
表6-4. 各パラメータとの相関
パラメータ 相関係数 空間方向尖度 0.42
信号の分散 -0.42
Fig.6-4パラメータとの重相関の散布図
(A-1-1-2)
(A -S -1 -1 -3 )
これらの解析項目との重相関係数は0.53 となった。この結果から信号の尖度の値が大きく なり、分散値が低くなっているほど生体作用が大きくなることが分かった。
25フレーム(3rd stage)
以下に示す散布図はそれぞれの条件とその中での生体作用の上位、下位 50%での色分けを 行った。
表6-5. 各パラメータとの相関
パラメータ 相関係数 空間方向尖度 0.36 信号の微分値の分散 -0.45
Fig.6-5パラメータとの重相関の散布図
これらの解析項目との重相関係数は0.52 となった。この結果から信号の尖度の値が大きく なり、分散値が低くなっているほど生体作用が大きくなることが分かった。
(A-1-2-2)
(A -S -2 -1 -3 )
6-1-3.考察
6-1-1の結果から、非線形振動が生体作用に寄与しているという結果を得られた。
今回の実験では、気泡破壊をより発生させるために、長時間の超音波照射を行う。この際に おこる気泡現象の多くは、今回の解析結果から非線形振動であると考えられる。従来であれ ば気泡破壊現象が生体作用に寄与すると考えられていたが、気泡の非線形振動による影響 が、一連の超音波照射の中で効果があると考えられる。
Fig.6-6照射前期(1st)での分散と時間方向の歪度に関するパラメータ
Fig.6-7照射後期(3rd)での分散と時間方向の歪度に関するパラメータ
6-1-2の結果から、各フレームでの信号と生体作用との関係を評価した。また、各パラメー
タの統計解析の結果から、照射前期と照射後期において、Fig.6-6、Fig.6-7のようにパラメ ータと生体作用効果との相関値に逆転の傾向が見られた。この際照射後期に関しては気泡 破壊現象が見られないことが考えられるため、気泡破壊信号抽出フィルタを使用したデー タについては考察の対象外としている。この解析項目との相関の結果から、照射前期におい ては気泡の破壊現象を含む崩壊型キャビテーションが支配的であり、その現象がより局所 的に発生することが生体作用に寄与することが示唆された。また照射後期においては、気泡 の非線形振動などの安定型キャビテーションが支配的であり、さらに気泡が一様に存在し、
運動をより長く持続させることが生体作用に寄与しているということが示唆された。これ らの結果から、気泡運動によって発生する総エネルギーではなく、信号源での空間的分布の 偏りや時間的な出現頻度が生体作用に寄与していることが示唆された。
6-2. 高音圧条件下における生体作用効果評価実験
次に送信の超音波の音圧を高音圧条件とした場合の生体作用効果との関係を評価した。
高音圧の超音波の照射条件は表6-6に示す通りである。
表6-6実験条件
強力超音波
音圧 1.5 MPa
周波数 2.5MHz
サイクル数 75 Cycle (30μsec) 照射回数 50照射 気泡破壊用超音波 1s×1照射
6-2-1. 細胞変形と送信超音波の音圧の関係
送信音圧の変化に対して、蛍光顕微鏡の明視野画像では以下のFig.6-6、Fig.6-7のような画 像を得ることができた。
Fig.6-8,1.0MPaでの細胞観察画像
50um
Fig.6-9,1.5MPaでの細胞観察画像 画像から、1.5MPaでの細胞の損傷が大きいことが分かった。
またこの細胞変形についてフローサイトメトリーを用いて変形の評価を行った。以下には 細胞変形が大きいデータと小さいデータの結果をそれぞれFig.6-10、Fig.6-11に示す。
50um
Fig.6-10.細胞変形が大きいデータ
Fig.6-11.細胞変形が小さいデータ
フローサイトメトリーを用いた実験では上図の R7 の領域にどれだけの細胞が侵入してい るのかを評価することで、細胞変形の割合を評価した。
Fig.6-12蛍光顕微鏡を用いた細胞変形率の評価
Fig.6-13フローサイトメトリーを用いた細胞変形率の評価
この結果から、音圧上昇に伴う細胞変形率の上昇が確認された。
6-2-2. 細胞変形と受信信号の解析の結果
蛍光顕微鏡を使用したデータを使用して、細胞変形率と受信信号の関係について以下に示 す。
蛍光顕微鏡観測での細胞変形率については、画像から細胞を認識するプログラムを変更す ることで、変形の著しい細胞に着目した生体作用効果を算出し、気泡ダイナミクスが大きく、
細胞への影響を及ぼしていることが考えられる照射前半との関係を評価した。
表6-5. 各パラメータとの相関
パラメータ 相関係数 空間方向尖度 0.62 信号の微分値の分散 0.46
Fig.6-14パラメータとの重相関の散布図
重相関係数は0.83となった。このことから、空間的に密集した気泡の破壊現象を含む運動 によって、細胞への過剰な変形が発生することが示唆された。
6-1-3.考察
以上の結果から、細胞変形については気泡破壊を含む崩壊型キャビテーションが大きく寄
与することが分かった。
Fig.6-15相関係数の傾向の変化
また、細胞の変形率と、6-1の実験でのそれぞれの1照射目の相関係数を比較した結果、
微分を行った際の解析項目との相関係数に逆の傾向がみられることが分かった。この結果 に関して、微分の処理を行うことで、信号の変化量に対しての解析を行うことができる。
その中で微分した尖度、歪度が正の相関を示していることから、瞬間的かつ振幅の変化量 が大きい信号の頻度が増加することで、細胞への変形が大きくなるということが示唆され た。
第 7 章 まとめ
7-1. 結論
超音波照射によって発生する生体作用の評価を目的として細胞に対する逆伝搬像再生法 を使った超音波照射を行った。これによって
• 非線形振動が生体作用に影響を及ぼす可能性を示唆した。
• 超音波照射の各フレームにおける生体作用との関連を振幅の平均値の変化の仕方によ って場合分けをし、それぞれの場合での生体作用との相関係数から、気泡ダイナミクス と生体作用の関係を考察した。
• 送信音圧の違いによって、細胞の変形割合に変化が生じることが確認された。
• 超音波によって発生する気泡キャビテーション現象と細胞の変形割合との関係を示唆 した。
この結果から、生体作用を励起する超音波のパラメータを評価し、超音波照射が引き起こす 生体作用の定量的な評価の一助となることが示唆された。
7-2. 今後の課題
今回の研究で、網羅的な解析を行ったので、この結果をもとにした超音波照射系の最適化を 行いたい。
参考文献
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