3-1節で記述した方法でCNTを成長させ,そのCNTのSEM観察を行った。
その後,電界放出特性を測定した。I-V特性と面内分布の測定を行い,各サンプ ルからのI-V特性は印加電圧に対する電流密度のグラフ(I-V特性)とF-Nプロッ トのグラフを作成し,面内分布は面内分布の 3 次元表示と電流密度-累積相対 度数グラフ,規格化電流密度-累積相対度数グラフを作成し評価を行った。
以下に実験結果を示す。
4-1 標準条件で処理を行ったサンプルの電界放出特性
本節では表4-1-1で定義する標準条件でCVD後,水素プラズマ照射,起毛処 理,水素プラズマ照射を行った後に起毛処理(水素プラズマ照射→起毛処理)を行 った4つのサンプルについてのSEM観察像と電界放出特性の測定結果を示す。
CVD条件は 3-1-3項の図 3-1-5 に記載した条件で全てのサンプルで統一して行
った。
水素プラズマ照射のみの測定は 4-1 節のみでしか行わないが,これは水素プ ラズマ照射を行ったサンプルを測定すると電界放出特性の測定中に放電が生じ やすくなり,電界放出特性装置に悪影響を及ぼし,サンプルも放電により使用不 可能となってしまうためである。CNT表面の突出した部分にアモルファスカー ボンなどの不純物が付着していると水素プラズマ照射によりダメージを受ける ことが考えられ,測定中にアモルファスカーボンなどの不純物が絶縁破壊を起 こしやすくなり,基板とアノードの間に導通パスを生じさせてしまうからだと 考えられる。しかし,起毛処理を行うことでCNT表面の突出した部分を除去し ていることが考えられ,起毛処理を行ったサンプルでは測定中の放電はほとん ど見られない。
水素プラズマ照射 バイアス電圧 -1 V 照射時間 15 秒 起毛処理 押圧力 4 N 押圧時間 60 秒
水素プラズマ照射→ 水素プラズマ照射をバイアス電圧 -1 V 照射時 表4-1-1 各処理の標準条件
4-1-1 SEM観察像
3-1-3 項で CVD 後の CNT はパターンを反映して成長していることを記載し
ているので本章では SEM 観察像は 1 つのブロックを拡大した低倍像とその高 倍像の2種類のSEM観察結果を示す。図4-1-1にCVD後の観察像を示す。図 4-1-2(a)に CVD 後の観察像,図 4-1-2(b)に図 4-1-2(a)のサンプルに標準条件で 水素プラズマ照射を行った後の観察像を示す。図 4-1-3(a)に CVD 後の観察像,
図4-1-3(b)に図4-1-3(a)に標準条件で起毛処理を行った後の観察像を示す。図
4-1-4(a)に CVD 後の観察像,図 4-1-4(b)に図 4-1-4(a)に標準条件で水素プラズマ 照射を行った後の観察像,図4-1-4(c)に図4-1-4(b)に標準条件で起毛処理を行っ た後の観察像を示す。図4-1-4(a)のCVD後のSEM観察像から,CNTのブロッ ク周辺にも成長があるが,起毛処理を行うことで周囲のCNTを除去することが 確認でき,他のサンプルと同様の大きさのブロックとなり測定を行うことが可 能となった。他のサンプルにおいてもCNTのブロックの周囲にCNTが成長し ているサンプルは起毛処理を施すことによりブロックの周囲の CNT を除去す ることができた。図 4-1-2(b)に示す水素プラズマ照射のみの観察結果から CNT のモルフォロジの変化はほとんど見られない。それに対し,起毛処理を行った後
の図4-1-3(b),4-1-4(c)ではCNTのモルフォロジの変化は大きく,表面が起毛し
て毛羽立っている様子が確認できる。
低倍像 高倍像
図4-1-1 CVD後のサンプルのSEM像
低倍像 高倍像 (b) 水素プラズマ照射後
低倍像 高倍像
(a) CVD後
図4-1-2 水素プラズマ照射を行ったサンプルのSEM像
低倍像 高倍像
低倍像 高倍像
(a) CVD後
図4-1-3 起毛処理を行ったサンプルのSEM像
(b) 起毛処理後
低倍像 高倍像 (a) CVD後
低倍像 高倍像
(c) 水素プラズマ照射後に起毛処理
低倍像 高倍像
(b) 水素プラズマ照射後
4-1-2 電界放出特性
I-V特性
図4-1-5に各サンプルからの電界放出のI-V特性の測定結果を,各サンプルの
Turn-On電圧を表4-1-2 に示す。図4-1-6に各サンプルのF-Nプロットを,表
4-1-3に各サンプルの電界増強因子βの値を示す。Turn-On電圧は水素プラズマ
→起毛処理を行ったサンプルが480 V と最も低く,次に低いのが水素プラズマ
照射のみの577 Vであった。起毛処理のみではCVD後と673 Vと670 Vでほ とんど変化がない結果となった。図4-1-6から,水素プラズマ→起毛処理を行っ たサンプルは他の 3 つのサンプルよりも傾きがなだらかであり,電界増強因子 βも他の3つと比べて明らかに大きいこともわかる。
図4-1-5 I-V特性
表4-1-2 Turn-On電圧
面内分布
各サンプルの面内分布の測定結果を示す。図4-1-7(a)にCVD後,図4-1-7(b) に水素プラズマ照射後,図4-1-7(c)に起毛処理後,図4-1-7(d)に水素プラズマ→
起毛処理からの電界放出における面内での電子放出分布の 3 次元表示を示す。
図4-1-7(a),(b)からCVD後と水素プラズマ照射後の結果では放出サイトが少な
く,起毛処理と水素プラズマ→起毛処理のサンプルでは放出サイトが大幅に増 加していることが確認できる。
次に,図 4-1-8 にこれら 4 つの結果の電流密度-累積相対度数のグラフを示
し,図4-1-9に規格化電流密度-累積相対度数のグラフを示す。これらのグラフ
から,起毛処理,水素プラズマ→起毛処理を行ったサンプルの放出サイトが多く 均一性が高いこともわかる。規格化電流密度の1~0.1の範囲でも差はみられる
が,0.1~0.01の範囲ではその差がより顕著になっている。起毛処理のみでも向
図4-1-6 F-Nプロット
表4-1-3 電界増強因子β
(a) CVD後 (b) 水素プラズマ照射後
(c) 起毛処理後 (d) 水素プラズマ→起毛処理後 図4-1-7 電界放出面内分布(3次元表示)
図4-1-8 電流密度-累積相対度数
ほうしゅつh
図4-1-9 規格化電流密度-累積相対度数 ほうしゅつh
4-2 起毛処理における押圧力依存性
4-1 節から起毛処理を行うことで放出サイトが大幅に増加する結果が得られ た。そこで本節では,起毛処理の押圧力に着目し押圧力が電界放出特性に影響を 及ぼしているのではないかと考え,起毛処理時の押圧力を変化させたサンプル を作製し,電界放出特性を測定した。押圧力は2 N,4 N,6 Nとし,押圧時間 は60 秒で実験を行った。4 Nのサンプルは4-1節で使用した起毛処理のみを行 ったサンプルのデータを使用する。
4-2-1 SEM観察像
図4-2-1(a)にCVD後,図4-2-1(a)にCVD後,図4-2-1(b)に図4-2-1(a)のサン プルに押圧力2 N で起毛処理を行ったサンプルの SEM 観察像を示し,図 4-2-2(a)にCVD後,図4-2-2(b)に図4-2-2(a)のサンプルに押圧力6 Nで起毛処理を 行ったサンプルのSEM 観察像を示す。図4-2-1,図4-2-2 共に上部が低倍像,
下部が高倍像のSEM 像を示している。図4-2-1,図4-2-2 から CVD 後の膜厚 と起毛処理後の膜厚の差はほとんど見られないことが確認でき,起毛処理を行 うことで CNT 表面のモルフォロジの変化,CNT のブロック内部でのモルフォ ロジの変化も確認できる。
(a) CVD後 (b) 起毛処理後
図4-2-1 2 Nで起毛処理を行ったサンプルのSEM像
4-2-2 電界放出特性
I-V特性
図4-2-3にI-V 特性のグラフを示し,表4-2-1 に各サンプルのTurn-On電圧 を示す。図4-2-4 に各サンプルの F-N プロットを,表 4-2-2 に各サンプルの電 界増強因子βの値を示す。図4-2-3より押圧力が低いほどI-V特性が良好である ことがわかる。Turn-On電圧は押圧力が増加すると200 V前後増加する結果と なった。この結果から,Turn-On 電圧は起毛の押圧力に依存する可能性が示唆 される。また,押圧力が低いほど電界増強因子 β の値も大きくなり,F-N プロ ットの傾きも2 Nのサンプルは他に比べてゆるやかであることもわかる。
(a) CVD後 (b) 起毛処理後
図4-2-2 6 Nで起毛処理を行ったサンプルのSEM像
図4-2-3 I-V特性
表4-2-1 Turn-On電圧
図4-2-4 F-Nプロット
面内分布
図4-2-5(a)に押圧力を2 Nで起毛処理を行ったサンプル,図4-2-5(b)に押圧力 を4 Nで起毛処理を行ったサンプル,図4-2-5(c)に押圧力を6 Nで起毛処理を 行ったサンプルの面内分布の3次元表示を示す。図4-2-5(a),(b),(c)から3 つ サンプルにおいて多くの放出サイトが存在することがわかる。また,局所的に大 きな放出サイトが存在しないことも確認できる。図4-2-5(c)は他の2つと比べ比 較的大きな電流密度を示す放出サイトが多いこともわかる。
次に,図 4-2-6 にこれら 3 つの結果の電流密度-累積相対度数のグラフを示
し,図4-2-7に規格化電流密度-累積相対度数のグラフを示す。図4-2-6のグラ
フから電流密度の順番にプロットした場合,3つのサンプル間で大きな差はみら れなかった。また,図4-2-7から規格化を行った場合においてもサンプル間での 均一性の差はほとんど見られない結果となり,押圧力による面内分布への依存 性は見られなかった。
(a) 2Nで起毛処理 (b) 4Nで起毛処理
表4-2-2 電界増強因子β
図4-2-6 電流密度-累積相対度数 ほうしゅつh
図4-2-7 規格化電流密度-累積相対度数
ほうしゅつh
4-3 水素プラズマ照射時間依存性
本節では起毛処理を行う前の水素プラズマの照射時間を変化させて実験を行 った。バイアス電圧は-1 V で固定し,照射時間を 10 秒,15 秒,20 秒,30 秒,45 秒と変化させ,その後,押圧力4 Nで起毛処理を行い,電界放出特性の 測定を行った。以下にSEM観察像と実験結果を示す。本節では水素プラズマ→
起毛処理という表記ではなく,水素プラズマを10 秒照射を行った後に起毛処理 を行ったサンプルは10 秒照射→起毛処理という表記とする。照射時間が15 秒 のサンプルは 4-1 節で示した水素プラズマ→起毛処理のデータを 15 秒照射→
起毛処理として使用した。
4-3-1 SEM観察像
図4-3-1に10 秒照射→起毛処理,図4-3-2に20 秒照射→起毛処理,図 4-3-3に30 秒照射→起毛処理,図4-3-4に45 秒照射→起毛処理を行ったサンプル のSEM観察像を示す。図4-3-1~図4-3-4中の(a)はCVD後,(b)は(a)に水素プ ラズマ照射後,(c)は(b)の後に起毛処理を行ったSEM像を示す。図4-3-1~図 4-3-4中で上部の SEM像は低倍率像,下部の SEM像は高倍像の SEM観察像を 示している。図 4-3-1(a)より,10 秒間照射のサンプルのみ形態が少し異なって いることが確認できる。また,CVD後の状態では膜厚のばらつきがサンプル間 で見受けられるが,起毛処理を行うことで全面が少し剥離することで,測定前の 段階ではCVD後に比べ膜厚の差が減少していることもわかる。
図4-3-2 水素プラズマ照射20sec→起毛処理を行ったサンプルのSEM像 ほうしゅつh
(a) (b) (c)
図4-3-3 水素プラズマ照射30sec→起毛処理を行ったサンプルのSEM像
ほうしゅつh
(a) (b) (c)
4-3-2 電界放出特性
I-V特性
図4-3-5に各サンプルからのI-V特性のグラフを示し,表4-3-1に各サンプル
のTurn-On電圧を示す。図4-3-6に各サンプルのF-Nプロットを,表4-3-2に 各サンプルの電界増強因子βの値を示す。表4-3-1と図4-3-5 からTurn-On電 圧が低いサンプルの順に 15 秒,20 秒,10 秒,45 秒,30 秒であり,明確な 依存性は確認できないが,水素プラズマの照射時間が短いサンプルの方がI-V特 性が良好な傾向が見られる結果となった。図 4-3-6 から,Turn-On 電圧が低い サンプルはグラフが上にくることが確認できるが,表4-3-2からTurn-On電圧 が比較的低い 10 秒照射のサンプルでは F-N プロットの傾きが大きいため電界 増強因子βが小さくなっている。
図4-3-4 水素プラズマ照射45sec→起毛処理を行ったサンプルのSEM像
ほうしゅつh
(a) (b) (c)