第 3 章 選択的 α 1A -AR アンタゴニスト silodosin の下部尿路閉塞モデルにおける膀胱
3.2 実験材料および方法
本研究はキッセイ薬品工業株式会社の実験動物倫理委員会の承認を得て、本邦の ガイドラインに従って実施した。実験動物としてラット(雌性,Sprague-Dawley 系,
日本チャールスリバー株式会社)を使用し、1.2.1に記した条件で飼育した。
3.2.2 使用ヒト組織標本
本研究はキッセイ薬品工業株式会社の実験倫理委員会の承認を得て、本邦のガイ ドラインに従って実施した。ヒト組織標本は、インフォームドコンセントの得られ たことが確認されたBioChain社の標本(T2234010)を購入し、使用した。
3.2.3 使用薬物
3.2.3.1 薬物
本実験では、 薬物として silodosin を使用した。Silodosin の 2 臭化水素酸塩
(Silodosin·2HBr) は キ ッ セ イ 薬 品 工 業 株 式 会 社 に て 合 成 し た ( 自 社 合 成 )。
Silodosin·2HBrの溶解、希釈および投薬は第1章1.2.2.1と同様に行った。
3.2.3.2 試薬およびキット
試薬名 製品コード 販売元
NGF/NGFβ ELISA kit RAT LF-EK50293 コスモバイオ
上記以外の試薬およびキットは、第 1章1.2.2.2 および第2章2.2.2.2 に記載のもの を使用した。
3.2.3.3 In situ hybridization probe
RAT ADRA1A VC1-11467 Affymetrix, Inc.
RAT ADRA1B VC1-11468 Affymetrix, Inc.
RAT ADRA1D VC1-11469 Affymetrix, Inc.
HUMAN ADRA1A VA1-10215 Affymetrix, Inc.
HUMAN ADRA1B VA1-10532 Affymetrix, Inc.
HUMAN ADRA1D VA1-10531 Affymetrix, Inc.
3.2.3.4 試薬の調製
各試薬の調製は、第1章1.2.2.4および第2章2.2.2.4に記載の方法で行った。
3.2.4 実験方法
3.2.4.1 ラットBOOモデル
8 週齢の SD系雌ラットをペントバルビタール(40 mg/kg, i.p.)麻酔下にて仰臥位 固定し、下腹部を正中切開した。膀胱基部および尿道上部を露出し、約 3 cmに切断 したポリエチレンカテーテル(No. 3, ヒビキ)とともに尿道を、ナイロン製縫合糸
(4-0,ケイセイ)を用いて結紮した。その後、ポリエチレンカテーテルを外して、
縫合糸が尿道上部(膀胱基部近接)に位置することを確認し、切開部を閉腹した。
次に背部を切開し、silodosin 溶液または溶媒を注入した浸透圧ポンプを埋め込んだ。
皮膚切開部を縫合した。Sham 群は膀胱基部および尿道上部を露出させて閉腹した後 に背部を切開し、溶媒を注入した浸透圧ポンプを埋め込んだ。麻酔から回復させ、2 週間飼育した。
試験群は sham 群(sham 処置,溶媒投与)、BOO 群(BOO 処置,溶媒投与)およ びsilodosin群(BOO処置,silodosin 0.3 mg/kg/day投与)の3群とした。
3.2.4.2 Frequency Volume Chart
モデル作製 2 週後に、ラットの体重を測定し、20 mL/kg の容量の滅菌水を経口投 与した。滅菌水投与の直後にラット(10 週齢)をプラスチック製代謝ケージ(Nalge
Nunc International)に入れ、排尿量を4時間測定した。排尿量の測定中は絶食・絶水
とした。排尿量は、ケージ下に設置した電子天秤(EK-120i,A & D)にて 2 分間ご とに測定し、Win CT-Plus(A & D)を介して天秤に接続したコンピューター上に記 録した。測定終了後、ラットを炭酸ガスにて安楽死させた。
3.2.4.3 膀胱血流測定
モデル作製 2 週後に、ラットを Urethane(1.5 g/kg, s.c.)麻酔下にて背位固定し、
腹部を正中切開した。膀胱頂部に小孔を開け、膀胱にカテーテル(PE50)を挿入し 結紮固定した。これに三方活栓を接続し、一端に精密シリンジポンプを、他端に注 射筒(1 mL)を接続し、それぞれ膀胱内溶液注入路および排出路とした。膀胱内尿 排出路より膀胱内の尿を、注射筒を用いて排出させた。排出させた膀胱内尿量を膀 胱容量とした。露出した膀胱をレーザー血流画像装置 Omegazone(Omegawave)の CCD カメラにて撮影し、その画像の焦点が合うように調整した。膀胱内に生理食塩 水を、15 分で膀胱容量分となる速度で注入した。生理食塩水の注入前および注入開 始 6分後(膀胱容量の40%容量時)に血流画像を撮影した。Sham 群においては膀胱 容量を1 mLとした。測定終了後、ラットを炭酸ガスにて安楽死させた。
3.2.4.4 尿中酸化ストレスマーカーおよびNGF量測定
3.2.3.2で得られた尿を 1,200×gで5 分間遠心し、上清を-30C にて保存した。尿サ
ンプル中の 8-OHdG、NGF およびクレアチニン量は、各キットのプロトコールに従 って測定した。
3.2.4.5 免疫染色
モデル作製 2 週後にラットを炭酸ガスで安楽死させ、膀胱を摘出して重量を測定 した。4%パラホルムアルデヒドりん酸緩衝液に浸けて 2 日間固定し、その後の組織 切片作製までの操作は第 1 章 1.2.3.6 と同様に行った。免疫染色および封入の操作は 第 2章 2.2.3.2と同様に行った。一次抗体の希釈倍率は、anti-protein gene product 9.5 antibody(1:10000)および anti-nerve growth factor antibody(1:500)とした。
3.2.4.6 組織学的検討
3.2.4.5 で作製したラット膀胱標本を用いて、第 1 章 1.2.3.6 と同様に Masson
trichrome染色、Hematoxylin-Eosin染色および封入を行った。
3.2.4.7 in situ hybridization
3.2.4.5 で作製したラット膀胱標本およびヒト膀胱組織標本を用いて、各 α1-AR サ
ブタイプの mRNAの発現を、第 1章1.2.3.7に記載の方法に従い in situ hybridization 法により検討した。各in situ hybridization probe溶液は50倍に希釈して使用した。
3.2.5 データ解析
得られた結果は、平均値±標準誤差で表記した。
3.2.5.1 Frequency Volume Chart
排尿動態のパラメータとして、4 時間の総排尿量、4 時間の排尿回数および平均 1 回排尿量を解析した。1 回の排尿ごとの排尿量の総和を総排尿量とした。総排尿量を 4時間の排尿回数で除して、平均1回排尿量を算出した。
3.2.5.2 膀胱血流測定
撮影した画像より、膀胱の領域を指定して画像解析を行い、血流量を算出した。
40%容量時の血流量は、生理食塩水注入前の血流量を 100%として、それに対する百
分率で表した。
3.2.5.3 尿酸化ストレスマーカーおよびNGF量測定
尿中の8-OHdGおよびNGFの濃度を尿中クレアチニン濃度で除して算出した。
3.2.5.4 免疫染色
各標本より 5 枚の画像を撮影し、Photo Measure(ケニス株式会社)を用いて画像 解析を行い、画像1枚当たりの陽性部位数を算出した。
3.2.5.5 In situ hybridization
各標本の画像を撮影し、ラット膀胱についてはMasson trichrome染色標本より、ヒ ト膀胱においては Hematoxylin-Eosin 染色標本より、膀胱微小血管を同定した。その
後、各 α1-AR mRNA の血管壁における染色数を評価した。1 つの血管当たりの染色
数を算出した。
3.2.5.6 統計解析
データの統計解析には、SAS System(version 8.2; SAS Institute Inc., Cary, NC,USA)
およびその連動プログラムの前臨床パッケージ Version 5.0(株式会社 SAS Institute
Japan)を使用した。Sham 群と CBI 群間および CBI 群と silodosin 群間の比較では、
F 検定による等分散性の確認の後、student の t 検定を行い、不等分散の場合は wilcoxon の順位和検定を行った。In situ hybridization の実験では、Bartlett 検定によ る等分散性の確認の後、Tukeyの多重検定を行った。p<0.05を有意差有りとした。