第 4 章 ドーム環境における立体感
4.5 実写画像・実写映像を用いた 360 度パノラマコンテンツの評価実験
4.5.3 実験方法
この実験では歪み補正をしていないモニタ画面(図4-10)を提示し,その物体の奥 行きを 10 としてマグニチュード推定法により数値化した.マグニチュード推定法と は,標準刺激と比較刺激を決め,標準刺激に対する比較刺激の比較量を記入してもら うという点数づけの仕方を行っている.
この実験では,スクリーンに歪み補正をしていないプログラム実行前のモニタ画面 を提示して標準刺激としている.自分からスクリーンまでの奥行きを 10 として,比 較刺激の奥行きを判断してもらった.標準刺激よりも手前に感じれば 10 より小さい 数字,標準刺激より奥に感じれば10 より大きくなる.
実験の比較刺激として,実写ベースの背景の上にブルーバックで切り抜いた人物像 を2 次元映像要素のレイヤとして配置した.この際,背景映像を回転移動させること により,人物像がどれくらい浮き上がって見えるかをマグニチュード推定法で計測し た.
人物像については,実写の静止画像と実写の動画映像の 2パターン,人物像の大き さについては,高さ方向の画角40,55,65度(図4-11,12)の3パターン,背景の回転 速度については,秒速4,6,8度の3パターンで計18回パターンの映像(表4-1)を準 備した.標準刺激としては,スクリーンに歪み補正をしていないモニタ画面を10秒間 投影し,その後比較刺激としてそれぞれのパターン映像をランダムに10秒間投影した.
この手順で6名の被験者に2度ずつ実験を行った.回答については,被験者からス クリーンまでの距離を10として,知覚された人物像までの距離を数値で答えてもらっ た.3名を1組として,2度行い,観測位置は図に示すように,中心に近く歪みの少な い位置から観測してもらった.(図4-13)
実験の流れをまとめると以下のようになる.
1. 座席に着席した状態で,標準刺激(図4-10)10秒間を見てもらう.
2. 比較刺激を提示し,被験者の感じる奥行きを答えてもらう.
3. 1.2を繰り返し行う.18パターンを2度行うため,計36回,被験者には奥行き
を答えてもらう.
表 4-1:提示した比較刺激の組み合わせ
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18
動画映像 静止画像 動画映像 動画映像 静止画像 動画映像 静止画像 動画映像 静止画像 静止画像 動画映像 静止画像 動画映像 静止画像 動画映像 静止画像 動画映像 静止画像
6 8 8 6 8 8 4 4 6 6 8 8 4 4 6
背景の回転速度 実写の
静止画像・動画映像 4
4 6 人物像の
高さ方向の画角
55 55 55 65 65 65 40 40 40 40
65 65 65 40 55 55 55 40
図 4-10:標準刺激(モニタ画面)
図 4-11:画角40度の比較刺激(左図), 画角55度の比較刺激(右図)
図 4-12:画角65度の比較刺激
図 4-13:評価実験の様子