3
-1試料作製
純度4Nの無酸素銅と純度3Nの白金を目的組成 の25at%Ptになるように秤量し た。 これをアルゴンガス雰囲気内でアーク溶解を行い、 約25 gのボタン状のインゴッ トを作製した。 この際、 試料が均一に溶解するように、 アー ク溶解を更に2回繰り 返した。 得られたイ ン ゴットをダイヤモンドカッター(BUEHLER社製アイソメッ ト)で約4分のlの大きさに切り出し、 1X 10-6Torrの真空度で石英管中に真空封 入した。 これを1063 K - 25.2 ksで、等温保持した後、 炉中で降温させて903 Kで 77.4 ksの均一化焼鈍を行った。 バルク試料をアイソメットで約1 mm 厚に切り出し、
約O.lmmまで冷間圧延した後、 打ち抜き用パンチでTEM (透過型電子顕微鏡)観察 用ディスク(3mm併)を作製した。 さらに、 ディスクの中心部をデインプルグライ ンダー(gatan社製デインプラー)で約0.03 mm --0.04 mm厚まで削った。
3-2 熱処理
本研究では長周期相を含んだ相転移について調べるため、 以下の3つの相転移過 程について実験を行なった。
(1) L12-s→L 1 2 ( 4章)
(2) L 12-s→(A1 +L 12-s) ( 5章)
(3) L 1 2→(A 1 + L 12 -s) ( 6章)
以下に初期状態試料作成のための熱処理を説明する(図3-1)。
-39一
920
ハU ηdnU
2 7
6
QU 7I
7I (X)ω』コ右』ωaEωト
36ks
�OOks(し12・s)
1800ks(し12)
Annealing Time(sec)
図3-1 各規則相(L12、 L12-s)の初期状態を得るための熱処理方法
-
-(1) L12-s初期試料の作製
熱処理を行う前の試料は冷間圧延等により非常に多くのひずみが導入されている。
このひずみ等を除去し、 試料を均ーな状態にするため、 920Kで、36ks等温焼鈍を行っ た。 その後、 L12-st目が安定な温度域まで種々の冷却速度 で降温した後、 等温で 600ks保持し、 氷塩水中に焼き入れた 。 試料の初期 状態はこの等温保持温度と冷却 速度に依存する。 この2つの要素を制御することで目的とする初期試料を得ること ができる。 第4章で行うL12-S相からL1z相への相転移過程の実験においては4 0K/h の冷却速度で773Kまで冷却した。 また、 第5章で行うL12-st目から(A1+L 12-s)への 相転移過程の試料はバリアントサイズの大きな試料を得るため10K/hの冷却速度で 820Kまで冷却した。
(2) L12初期試料の作製
L 1z-s相の初期試料の作製方法と同様に920Kで36ks均一化焼鈍を施した後、
760 Kで1800ks等温焼鈍し、 焼き入れた。 この試 料は第6章 のL12相から(A1+
L12-S)への相転移過程で使用する。
3-3
電子顕微鏡観察
Cu3Pt合金における電解研磨による薄膜作製にはBollmann法を採用した。 詳細を 以下に示す。
電解研磨
研磨液 H Cl : HN 03 : C 2 H5 0 H = 4 : 1 : 5
方法 Bollmann法 電圧 A.C.2 -- 3 V
温度 -20 0 C -- -30 0 C
-41-イオン研磨
印加電圧 3 kV
ガン電流 0.2 mA .__ 0.7 mA 試料電流 2 .__ 3 mA
傾斜角度 15
研磨時間 0.25 ---- 0.5時間
図3-2に示すような先端が球状の白金電極に電顕試料をはさみ、 炭素棒を負極 にして試料に孔があくまで電解研磨を行なった。 電解研磨時に試料表面に付着する 酸化物をイオン研磨で除去して、 電顕観察用の試料とした。
電顕観察では入射方位を[0011方向とした。観察方法は電子線回折法、 暗視野法
を用いた。
3-4
その場TEM観察
その場TEM実験では電顕内で任意に温度を直接制御しながら観察できるため、 相 転移に伴う様々な形態変化を直接観察することができる。 以下にその装置および方 法を説明する。 図3-3はそれぞれの装置の配線図である。 その場観察には九州大 学超高圧電顕室の]EM-200CXを用いた。 試料ホルダーには2軸傾斜のできる加熱 ホルダー(EM-SHTH2 : ]EOL)を用いた。 試料ホルダーの熱電対にはW-Re(タン グステンーレニウム)を用いた。
Pt-electrode
/""
speclmen
Electroyte
Carbon electrode
A.C. Power Supply
図3-2 Bollmann法による電解研磨の装置図
Power Supply(表) Heater Control(表) Thermometer W -Re(裏)
。
GND +
Heater Control
図3 - 3 In -Situ (その場)実験における装置図
-43-4章 L1 2-S→L1 2相転移過程
L12-S相からL12相への相転移過程はその構造からわかるように周期的APBの消滅 過程といえる。 すなわち、 L12-S相はL12構造を基本として周期的にAPBが挿入した 構造であり、 L1?構造はこの周期的APBが存在しない構造であるので、 周期的APB が消滅すればL12-sf目はL12相へと変態することになる。 このため、 周期的APBの挙 動に注目してL12-S→L12への相転移過程を調べる。 本章ではまずTEM観察を行い、
次いでシミュレーション実験を行い、 観察結果とシミュレーションとの比較検討を 行う。
4-1 TEM観察結果
Cu-25.4at%Pt合金(図4-1)のL12-s相の初期状態の組織が異なる試料をL12相 が安定な738Kで等時間焼鈍を行い、 L12-S→L12相転移過程をTEM観察によって 調 べた。 組成はX粉末線回折実験より格子定数を決定し、 SchneiderとEsch (90)による Cu-Pt合金系の組成-格子定数の測定値(lkX=1.00202Ä)と比較して決定した。
図4-2はL12-S相の各初期状態、の試料と異なる初期組織を持つ試料をL12相が安定な 738Kで、604.8ks焼鈍を行った試料の1 1 0 暗視野像である。 図の上段の(a)は各初期 状態、 下段の(b)は焼鈍後の状態である。 以下に冷却速度とバリアントサイズの大き
さの関係を示す。
~一一一一~
試料(i) 試料(ii) 試料(ii i)冷却速度(K/3.6ks) 40 4 0.25
ノくリアントサイズ、(nm) 20 ---70 50---150 100 ---300
1000
主ζ
L
_____ A1Eこ
。 900
4C
L コ
聞-圃.
。Q- 800 ε
ト。 L 12
700
20 25 30
Composition (at%Pt)
図4
-1 Cu -25.4at%Pt組成近傍の平衡状態図
-45-(a)
(b)
i羽4 -2 (a)初期組織の異なる試料、 および(b)それぞれの初期試料を738Kで 604.8ks焼鈍を行った試料の1 1 0 暗視野像。 冷却速度は(i)40 K /h、(ii)4 K / h、
(iii)O.25 K/hである。
これらの関係から冷却速度を遅くするとバリアントは大きく成長することがわかる。
すなわち、 冷却速度を変化させることによる初期状態の制御が可能であることを示 している。 初期状態中には方位の異なるバリアントが重なることによって織りなさ れた様々なコント ラスト(38)が観察できる。 これらのバリアントサイズの異なる試 料を焼鈍すると各試料で異なる様相を呈する。
(i)の試料において、 焼鈍後の試料では至る所に明るいコン トラストをもっ領域が 観察され、 周期的APBが部分的に消滅していることがわかる。 その周囲には多数の ヘアピン状APBと単独に挿入されたAPBが観察できる。 L12-S相からL12相への相転 移はヘアピン状APBの形成・移動により進行することを確かめた。
(i i)の試料において、 図の左上部は異なる結晶粒を持つ領域であり、 回折条件が合 わないために暗くなっている。 矢印で示したAPBは熱的なAPBである。 この熱的な APBから離れたところにはヘアピン状APBが観察できる。 これら のヘアピン状APB は熱的なAPBから発生したものであり、 熱的なAPBがヘアビン状APBの発生源となっ ていることを示している。 しかし、 周期的APBが消滅している領域は 試料全体で少 なく、 試料(i)に比べてもL12相への相変態が起こりにくくなっていることがわかる。
このようにバリアントサイズが大きくなるとL12-s�目は準安 定化する傾向が見られ る。 しかしながら、 熱的なAPBはエネルギー的に高い状態、にあるため、 このような 場所から一種の不均一核生成によって周期 的APBの消滅が進行するものと考えられ る。
(i i i)の試料の焼鈍後の状態を見ると初期状態と同程度のサイズのL12-Sバリアント が観察できる。 しかし、 試料(i)や試料(ii)で観察できたヘアピ ン状APBは存在せず、
L12相への相変態もほとんど進行していない。 すなわち、 L1 2 -s�目はエネルギー的に 準安定な状態になっているものと考えられる。
バリアントサイズは(i)から(i i i)まで2倍、 4倍と大 きくなっている。 これに対し
て、 周期的APBが消滅した領域 は(i)では約60%、 (ii)では約10%、(iii)では約0%と 極端に減少している。 これら の領域は定量的に測定した ものではないが、初期組織 が相転移過程に大きな影響を及ぼすことを示唆している。
4-2 シミュレーション結果
L 12-s相からのL1z相への相転移過程のシミュレーションを行 うに当たり、 初期状 態として異なる位相を持つphase1とphase2をM=Sの間隔で周期的に配列させた。
これにより初期状態は周期Mを持った周期的APBが形成されることになる。 この初 期状態を規則単相領域の温度(T=750、 760、770、 780K)でシミュレーションを行っ た。 その他のパラメータを以下に示す。
自由エネルギーパラメータ: (Ll r, Ll t,κL)==(l.O, l.0, 0.1. 0.0001) 界面エネルギーパラメータ:(G, H) = (0.1. 0.1)
熱揺動パラメータ:(kf kx)=(0.05,1.0)
図4-3と図4-4にT=750KとT=770Kの結果を示す。 規則領域を明るく、 不規則 領域を暗くする ように表示した。 図4-3のT=750Kでは10000ステップでもほと んど変化が見られない。 これに対してT=770Kでは周期的APBが消滅していく様子 が見られ る。 1000ステップでは初期状態で直線状であったAPBが熱揺らぎによっ て波打ち、 2000ステップではAPBの揺らぎ が大きくなり、 矢印で示した領域で隣 接するAPBがくびれる。 3000ステップではこのくびれた領域が切断されてヘアビ ン状のAPBを形成する。 形成されたヘアピン状APBは後退し、 残った領域にはL12 相が形成される。 同様なプロセスでヘアピン状APBは系の至る所で形成され、 周期 的APBが消滅していく。
次に周期Mの影響を見るために、系をM=6としてシミュレーションを行った結 果を図4-5に示す。 温度はM=5で周期的APBの消滅過程 が見られた T=770Kとし
-48-|刈4-3 TDGLモデルによる計算機シミュレーション結果(M= 5、 T=
750K)。 その他のi汁算ノfラメータは本文'1Jに示した。 規則度を256階調に分 割し、 明るい領域は規則皮がI�い=領域、 時い領域は規則度が低い領域を表す。
図4-4 TDGLモデルによる計算機シミュレーション結果 (M= 5、 T=770K)
ハUFD
た。J\tJ=5では周期的APBが消滅したが、 JVJ=6ではAPBの消滅は起こらなかった。
ただし、APBが波打つ様子が見られ、 10000ステップでは矢印で示したところで APBの揺らぎが大きくなっている。このような場所ではヘアヒン状APBが形成され る可能性があるが、 M=5とM=6の結果から、 周期Mが大きくなると周期的APBは 準安定化すると考えられる。 実験的にこのことを証明するには周期の異なる試料を 用意してその消滅過程を調べる必要がある。
図4-2の試料(ii)では周期的でないAPBからヘアピン状APBが形成されている様 子が観察できる。この様子を再現するために図4-6に示すように初期状態を設定し た。図中左の部分にはこれまでと同様にphase 1とphase2を周期的に配列させ、 右の 部分には縦方向にphase2と phase4を周期的に配列させ た。これにより[101方向と [011方向のバリアントを持つ系が形成される。 このバリアント境界は非保存型APB と保存型APBである。非保存型APBは保存型APBに比べて高いエネルギーを持って いると考えられるので、APBの違いによる界面エネルギーの違いを考慮する必要が ある。L 12相中に異なるタイプのAPBがほぼ同数存在することから、 非保存型APB の形成エネルギ- Y ncと保存型APBの形成エネルギ- Y cには大きな差異はな いと考 える。そこで、 簡単にするため、 界面エネルギー係数をG1(conservative APB) = 0.1、 G2(non-conservative APB) =0.15とした。今後、 さらに詳細な計算を行い、
APBの形成エネルギーから界 面エネルギー係数を決定する必要がある。上記のパラ メータを用いてT=770Kで計算を行った結果を図4-7に示す。1 000ステップでは 非保存型APBの領域が不規則化しており、不規則領域は非保存型APBに比べて広い 領域で形 成されている。4000ステップでヘアピン状APBが保存型APBより形成さ れる。その後、ヘアピン状APBは後退し、[011バリアントの周期的APBは消滅する。
[011バリアントでは周期的APBが消滅したにもかかわらず、[101バリ アントでは周 期的APBの消滅は全く起こっていない。この結果はヘアビン状APBが非保存型
-51-図4-5 TDGLモデルによる計算機シミュレーション結果 (M= 6、 T=770K)
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