第9章 技術評価力育成に向けた授業モデルの試行的実践
3. 実践の結果と考察
3.4 実践後の技術ガバナンス意識
106
107
-とした。また,回答が1ヶ所のみ欠落した生徒が事前調査で2名いたが,有効回答者の減 少を考慮し,該当項目の平均値を代入することとした。
3.5.1 技術ガバナンス意識の事前事後の比較
分析対象者25名の技術ガバナンス意識の事前事後の比較を行うために,t検定を行った。
その結果を表Ⅸ-8に示す。
表より,「技術の両面性認識」及び「技術の選択・活用の重要性(未来)」の意識に有意な 向上が認められた。第2章の知見において,3年生の「工夫・創造」の習得感が上記2項 目の意識の形成が示唆されていたこととこの結果は一致しており,本研究の条件下では有 効性が示唆された。
3.5.2 遺伝子組み換え技術の今後の在り方に対する技術評価観点の事前事後の比較
分析対象者 25 名の技術評価の際の着目した技術評価観点について事前事後の比較を行 うために,t 検定を行った。その結果を表Ⅸ-9 に示す。表より,有意もしくは有意傾向で 平均値の向上が認められた技術評価観点は,「しくみや科学的な原理」,「科学史的な背景」,
「技術目的」,「運用上の制限」,「代替技術」,「技術史的な背景」,「技術の将来展望」,「資 源・材料」,「事故の危険性と事例」,「ニーズ」,「世論」,「環境問題との関わり」,「生産シ ステムへの影響」,「流通システムへの影響」,「消費生活への影響」となり,18項目のうち 15項目であった。指導の力点とした4項目については上記15項目に含まれており,本実 践を行う前と比べて,生徒は多くの技術評価観点に着目して技術評価を行っていることが 示唆された。
表Ⅸ-8 本実践の事前事後における技術ガバナンス意識の違い
技術ガバナンス意識 事前 事後
平均 3.16 3.88
SD 0.75 0.44
平均 3.52 3.76
SD 0.51 0.52
平均 3.64 3.92
SD 0.49 0.28
* p<.05 **p<.01
**
ns
* 対応のあるt検定 技術の両面性認識
技術の選択・活用の重要性(現在)
技術の選択・活用の重要性(未来)
t(24)=4.04
t(24)=1.54
t(24)=3.92
108 -3.6 考察
授業モデルとして構築した「比較栽培」及び「バイオテクノロジーに関する学習」につ いて上記の結果を基に実践評価を考察する。まず,事後調査の結果より,「比較栽培」にお いて「工夫・創造」の習得感を肯定的に捉えた生徒が全体の 90.4%だったことから,「比 較栽培」は構築した授業モデルのフェーズ 1 としての有効性が示唆される。また,「バイ
表Ⅸ-9 本実践の事前事後における技術評価観点の変化
技術評価観点 事前 事後
平均 2.96 3.36
SD 0.93 0.64
平均 2.44 2.88
SD 0.92 0.78
平均 3.25 3.72
SD 0.83 0.46
平均 3.28 3.76
SD 0.79 0.52
平均 2.54 2.96
SD 0.87 0.79
平均 2.32 2.68
SD 0.80 0.85
平均 2.92 3.56
SD 0.86 0.71
平均 3.00 3.20
SD 0.82 0.82
平均 2.56 3.20
SD 0.96 0.82
平均 3.20 3.64
SD 0.76 0.57
平均 3.04 3.72
SD 0.89 0.54
平均 3.04 3.56
SD 0.79 0.71
平均 3.12 3.48
SD 1.01 0.77
平均 2.52 2.84
SD 1.00 0.94
平均 2.96 3.56
SD 1.06 0.58
平均 2.76 3.44
SD 1.01 0.77
平均 2.56 3.20
SD 1.00 0.82
平均 2.96 3.64
SD 0.89 0.57
†p<.10 *p<.05 **p<.01
対応のあるt検定
ns
ns
**
**
*
**
t(24)=2.43
t(24)=3.78
†
†
**
ns
**
*
**
* t(24)=4.54
t(24)=2.70
t(24)=1.56
t(24)=1.44
t(24)=3.46
t(24)=3.18 t(24)=1.82
t(24)=1.74
t(24)=3.95
t(24)=1.04
t(24)=2.78
t(24)=2.68 t(24)=1.92 †
*
**
**
t(24)=2.11
t(24)=3.07
t(24)=3.36
技術史的な背景や経過 代替技術
運用上の制限 技術目的
科学史的な背景や経過 しくみや科学的な原理
世論 ニーズ
事故の危険性と事例 資源・材料
人間による制御可能性 技術の将来展望
消費生活への影響 流通システムへの影響 生産システムへの影響 環境問題との関わり 法的規制とガイドライン 産業における経済的な効果
109
-オテクノロジーに関する学習」について,実践終了後の生徒の反応は非常に肯定的であっ た。また,分析対象を一部の生徒にしたものではあるが,本実践は技術ガバナンス意識の 向上及び技術評価観点を深めることに有効性が示唆された。生徒の自由記述では,40人に 満たないクラスの中でも遺伝子組み換え技術に対する考え方が様々であることや,技術に 関わる問題に対して自分自身の考え方を持つことの重要性を認識することができたためで はないかと考えられる。
4. まとめ
以上,本章では,第8章の授業モデルに基づき,技術ガバナンス力の向上に向けて技術 評価力育成を図るための実践とその評価を行った。その結果,本実践の条件下で以下の知 見が得られた。
1) 「比較栽培」によって多くの生徒が「工夫・創造」の習得感を得ることができた。ま た,もう一度オリジナル栽培の工夫をしてみたいや技術の良し悪しについても非常に 肯定的な反応がみとめられ,構築した授業モデルの題材として有効性の高い題材であ ったことが示唆された。
2) 「バイオテクノロジーに関する学習」では,品種改良や遺伝子組み換え技術に関する 学習を踏まえて,生産者,売り手,消費者といった異なる立場でGMトマトを考える ことができた。また,「遺伝子組み換え技術の今後の在り方」に対してよく考えること ができていた。
3) 本実践を通して,技術ガバナンス意識のうち「技術の両面性」及び「技術の選択・活 用の重要性(未来)」の意識の向上が認められた。また,技術評価観点 18 項目のうち 15項目において平均値に有意な向上が認められ,技術評価の深まりが示唆された。
以上,本章では研究課題3に対処するために,第8章で構築した授業モデルを基に中学 3 年生を対象に内容「B.生物育成の技術」において試行的な実践及びその評価を行った。
これらの知見は,技術科における技術ガバナンス力育成に向けて技術評価力の向上を図る 授業実践を提供しうるものであると考えられる。次章においては,これらの知見を整理し,
本研究のまとめとして,今後の技術ガバナンス力育成に向けた技術教育の在り方について 考察する。