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5.3 結果と考察

5.3.3 実試料測定

これまで報告されている分析法では,感度不足を補うため大量の試料を調整し,濃縮す る必要があった.そのため抽出液に対し試料の割合が多く,試料からの溶出水分による抽 出液の体積変化が無視できなかった.よって抽出後の抽出液量の測定操作や,また体積変 化を防ぐため試料の凍結乾燥処理操作を必要とし,非常に手間がかかる試料調整法となっ ていた.

Table 10に示したようにRu錯体を用いたα-Solanine,α-Chaconineの検出感度は非 常に高いものであった.そこで実試料による体積変化が無視できるように抽出液10 mlに 対し試料を0.1 gとする試料調整法を検討した.これは試料から溶出するであろう水分に 対し,抽出液を大過剰にすることで,仮に試料が100 %水分であったとしても全量は10.1 mlとなり,1 %の体積変化しかないので誤差範囲として扱える.また,採取する試料が

0.1 gと微量であるので,ひとつのジャガイモで様々な部位の測定が可能となる.Fig. 28

にTuber Bの皮試料から得られたクロマトグラムを示す.(A)CL検出法においては,

ろ過後の抽出液を20倍に希釈しただけの処理で,妨害ピークもない良好なクロマトグラ ムが得られた.(B)UV検出法では,抽出液の20倍希釈では測定不能であったため,2 倍希釈で測定した.UV検出法と比べ本法が高感度で高選択的であることが確認された.

Tuber Aの髄部分を用い添加回収実験を行ったところα-Solanine,α-Chaconineの添加 回収率(n = 6, mean ± standard deviation %)はそれぞれ 101.0 ± 4.4 %,103.6 ±

7.1 %と良好な値が得られた.

次に抽出溶液の再検討を行った.一般的に抽出溶液にはメタノール,希酢酸水溶液など が用いられる.特に固相抽出操作を必要とする分析法の場合,より迅速な抽出を可能とす るため酢酸水溶液にイオンペア剤が添加されたものが多く用いられている.本研究では,

固相抽出操作は必要としないため酢酸水溶液およびメタノールを抽出溶液として実験を 行った.結果をFig. 29 に示す.メタノールを抽出溶液に用いたとき最も高い値が得られ た.しかしながら,濃縮を必要としない本測定法においてメタノールを抽出溶液に用いた 場合,メタノールの揮発による濃縮効果,水溶液との混合による体積変化が起こるため 正確な測定値とは言えない. そこで水溶液系での抽出溶液の中で最も高い値が得られた 5

%酢酸水溶液を抽出溶液として採用した.

Table 11 にTuber A,Bの測定結果を示す.日光に当てたTuber Bは,目に見える 変化として皮や髄部分まで緑化していた.Tuber Bはすべての部位においてTuber Aよ りα-Solanine,α-Chaconineの含有量が多く,光が当るなどの保存状態の違いがPGA

10 20 0

Time / min 1 2

10 20

0

Time / min

Relative luminescence intensity Abs. at 208 nm

1

2

A B

Fig. 28: Chromatograms obtained with CL detection for a 20 times diluted tuber B skin sample (A), and with UV detection for a two times diluted tuber B skin sample (B). Peak identification: 1, α-solanine; 2, α-chaconine. HPLC conditions are same as in Fig. 27.

の含有量を左右するという報告と本実験から得られた測定結果が一致した.また,皮に α-Solanine,α-Chaconineが多く,髄の部分には少ないという報告とも一致した結果が 得られた.

α-Solanine α-Chaconine

Peak area / (103. µV . sec)

100 200 300 400 500 600

0

Fig. 29: Extraction profile of α-solanine and α-chaconine from potato tuber with different extraction solutions. (I) Water; (II) 0.1 % acetic acid; (III) 1 % acetic acid; and (IV) 5 % acetic acid. Values are means for four operation ± standard deviation. HPLC conditions are same as in Fig. 27.

Table 11: Contents ofα-solanine andα-chaconine in potato. HPLC conditions are same as in Fig. 27.

Sample Contenta (mg / 100g)

α-Solanine α-Chaconine Total PGAsb Tuber A peel 21.8 ± 0.1 48.4± 0.5 70.1 ± 0.6 Tuber A pith 0.30± 0.01 0.45± 0.01 0.75 ± 0.01 Tuber B peel 254 ± 1 220± 2 473 ± 3 Tuber B pith 3.21± 0.08 4.97 ± 0.15 8.19 ± 0.20

aValues are means for four determination ±standard deviation.

bTotal PGAs =α-solanine + α-chaconine.

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