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本プロジェクトではサブプロジェクト毎に実用化・事業化の評価基準を下表のとおり設定した。

実用化・事業化に向けての見通しおよび取り組みについては、「第Ⅲ章:研究開発成果について」に おいてサブプロジェクトごとに記した。

各サブプロジェクトにおける実用化・事業化の評価基準

領域 実用化・事業化の評価基準

ES細胞領域

① 再生医療や創薬スク リ ーニン グ( こ れら に関わる 研究用途含む) に用いる ヒ ト ES 細胞等の多能性幹細胞を 安定的かつ大量に供給する ため、 本プ ロ ジェ ク ト の成果を 基に自動培養技術、 細胞観察評価技術、 凍結保存技術を 組み合わせた システ ム等が製品化さ れる こ と 。

② 或いは各事業者が個々に保有する 自動培養装置、細胞観察装置、凍結保存装置 等の既製品に本プ ロ ジェ ク ト の成果を 取り 込んだ改良品が製品化さ れる こ と 。

③ また、ヒトES細胞等の多能性幹細胞の特性解析及び品質評価に関する標 準化技術を開発すると共に、ゲノム解析、エピゲノム解析、糖鎖解析、メ タボローム解析および分化能解析の標準的プロトコルを確立し、さらには 試薬等として製品化されること。

iPS細胞領域

① 再生医療や創薬スクリーニング(これらに関わる研究用途含む)に用いる ヒトiPS細胞を京都大学iPS細胞研究所(CiRA)プロトコルに基づき安 定的かつ大量に供給するため、本プロジェクトの成果を基に自動培養技 術、細胞観察評価技術、凍結保存技術を組み合わせたシステム等が製品化 されること。

② 或いは各事業者が個々に保有する自動培養装置、細胞観察装置、凍結保存 装置等の既製品に本プロジェクトの成果を取り込んだ改良品が製品化さ れること。

滑膜由来間葉系 幹細胞領域

本プロジェクトの成果である培地、大量培養技術等を用いて細胞の大量培 養が行われると共に、これが臨床治験において利用されること。

Muse細胞領域 第三者による細胞利用が容易に行える細胞の分離・採取・培養法が確立さ れること。

間葉系幹細胞領域

① 本プロジェクトの成果を基に構築された細胞品質カタログデータが幹細 胞に係る研究者や再生医療に係る医師等に利用されること。

②或いは本プロジェクトの成果として得られた細胞バイオマーカー等に関す る特許が民間企業にライセンスされること。

Ⅲ-1-1

【 ES 細胞領域】

Ⅲ.研究開発成果について

はじめに

多能性を有する幹細胞は様々な細胞に分化する能力を有している。適切に誘導を行うことで神経、

心筋、膵臓 β 細胞など様々な細胞を得ることができる。このため、創薬における薬効評価や安全性薬 理試験などの創薬スクリーニング、発生・分化や疾患メカニズムの解明、再生医療への応用など生命 科学や医療への貢献が大きく期待されている。

しかし、ヒト幹細胞を産業利用に繋げるためには、細胞の効率的な確保方法、腫瘍化の問題、品質 を維持・管理し培養する方法の確立など、「品質の確保されたヒト幹細胞の安定的な大量供給」を可能 とすることが、幅広い応用に繋げていくうえでの根幹となる基盤技術として極めて重要である。この ためには幹細胞の性質をよりよく理解した上で「幹細胞の品質評価指標」を設定することが必要であ る。

研究開発の内容

本研究開発は、様々な細胞に分化する能力を有するヒト幹細胞の産業利用促進の重要な基盤となる、

品質の管理されたヒト幹細胞を安定的に大量供給する技術の開発を目的として、細胞源をヒト ES 細 胞に限定し、以下の2つの技術開発を実施する。

① ヒトES細胞の安定な培養・保存技術の開発

② ヒトES細胞の品質評価指標の開発 研究開発の実施体制

本研究開発(サブプロジェクト)では、上記の技術開発項目に対して以下に示す中項目を設定する。

カッコ内は各項目を担当する大学、企業および研究機関を示す。(再委託先を含む。)

① ヒトES細胞の安定な培養・保存技術の開発

1.1. 安定、安全にヒト ES 細胞を維持するペプチド・タンパク質などの成長因子をはじめ、化学合成

困難な高分子成分を代替できる低分子化合物による合成培地の開発(京都大学、日産化学工業、

リプロセル)

1.2. 化学合成/高分子技術を用いたヒト ES 細胞の三次元大量培養を可能にするための培養基質

および培養基材の開発(京都大学、日産化学工業、リプロセル)

1.3. 閉鎖系細胞培養容器と三次元培養方法を組み合わせたヒト ES 細胞の培養法の開発(京都大

学、ニプロ、リプロセル)

1.4. ヒト ES 細胞の状態を培養下で生きたまま検定するための、多パラメータ観察技術などのイ

メージング技術による生細胞検査技術の開発(京都大学、浜松ホトニクス、リプロセル)

1.5. 自動化が可能なヒトES細胞の高効率凍結保存技術の開発(京都大学、ニプロ、リプロセル)

② ヒトES細胞の品質評価指標の開発

2.1 ヒトES細胞の分子生物学的情報の取得および解析技術・検定キットの開発(京都大学(再委託先:

理化学研究所)、島津製作所、ジェネテイン、住友ベークライト、タカラバイオ、リプロセル)

2.2 ヒトES細胞の効率的で再現性の良い分化誘導法を用いた多分化能および分化指向性の評価(京都 大学、医薬基盤研究所、慶應義塾大学、千葉大学、東京大学)

Ⅲ-1-2 研究開発の運営管理

研究開発の進捗管理として、平成23年5月より「技術開発推進会議」を京都大学で隔月に開催、研 究担当の実務担当者に口頭での研究内容の進捗報告を実施(半日)、特に培養技術開発について毎月

「技術開発推進会議」を平成24 年5月まで実施し、研究の加速を図った。参加者は、NEDOプロジ ェクトに参加している方に限定して実施。NEDO から武井主査及び必要に応じて三代川主任研究員、

森田部長および中畑PLの参加も行った。平成24年5月以後、「技術開発推進会議」は、隔月開催と した。さらに、平成24年9月より、成果をいち早く実用化するために、参加企業の代表者と京大から 数名からなるコアメンバーで具体的な戦略プラン作成、成果実現のためのワーキングチームを結成し、

通常の「技術開発推進会議」に加えて「NEDOプロジェクト戦略会議」を隔月開催し、プロジェクト の戦略的推進と実用化の加速を行っている。

Ⅲ-1-3 1. 事業全体の成果

基本計画に記載された「様々な細胞に分化する能力を有するヒト幹細胞の産業利用促進の重要な基 盤となる、品質の管理されたヒト幹細胞を安定的に大量供給する技術の開発を行う」ことに対して、

大量培養が可能な自動培養装置の開発及び品質管理に必要な検査キットの開発についていくつか製品 化に成功した。

事業全体の成果のまとめ

目 標 研究開発成果 達成度

事業全体

基本計画に記載された「様々な細胞に分化する能力 を有するヒト幹細胞の産業利用促進の重要な基盤と なる、品質の管理されたヒト幹細胞を安定的に大量供 給する技術の開発を行う」ことに対して、大量培養が 可能な自動培養装置の開発及び品質管理に必要な検 査キットの開発についていくつか製品化に成功した。

達成

研究開発項目①

「ヒトES細胞の安定的な 培養・保存技術の開発」

①安定、安全にヒトES細胞を維持するペプチド・タ ンパク質などの成長因子をはじめ、化学合成困難な高 分子成分を代替できる低分子化合物による合成培地 の開発についてはbFGFを代替可能な低分子化合物候 補化合物を見出した。

②化学合成/高分子技術を用いたヒトES 細胞の三次 元大量培養を可能にするための

培養基質および培養基材の開発については具体的に 有望な基質及び基材について性能を確認中。

③閉鎖系細胞培養容器と三次元培養方法を組み合わ せたヒトES細胞の培養法の開発については小型のプ ロトタイプを作製し、培養条件を検討中。

④ヒトES細胞の状態を培養下で生きたまま検定する ための、多パラメータ観察技術などのイメージング技 術による生細胞検査技術の開発については、可能性の 高い解析法でのイメージング技術開発を実施中。

⑤自動化が可能なヒトES細胞の高効率凍結保存技術 の開発については、新たな凍結液による緩慢凍結法に 成功した。

達成

研究開発項目②

「ヒトES細胞の品質評価 指標の開発」

①ヒトES細胞の分子生物学的情報の取得および解析 技術・検定キットの開発については、国際データベー ス等を活用したゲノム品質指標を設定し、解析技術関 係ではヒト幹細胞のエピゲノム自動解析システムの 構築に成功、またヒト幹細胞関連発現遺伝子プロファ イルキットを商品化、さらに幹細胞特異的糖鎖解析キ ットを商品化した。

またヒト幹細胞技術標準化についても国内の関係部 署との連携を行っている。

②ヒトES細胞の効率的で再現性の良い分化誘導法を 用いた多分化能および分化指向性の評価については 京大ヒトES株を中心として、外胚葉(神経系細胞)、 中胚葉(心筋細胞、血球系細胞)及び内胚葉(肝臓細 胞など)への分化能と分化指向性の評価を行い、株に より分化能及び分化指向性に違いがあることを見出 した。今後、新規な培養法で作製されたヒトES細胞 株について検討予定。

達成

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