実数値分類子表現型XCSでは実数値をビット列に変換することなく直接扱うために分 類子の条件部を区間述語と呼ばれる要素の組み合わせとして表現しているため,分類子条 件部に関連する(1)被覆,(2)突然変異,(3)交叉,そして(4)包摂の4つの分類子操作に 関しても再定義される.ここではこれらの拡張部分をまとめて分類子表現と呼ぶことにす る.実数値分類子表現には,同じ区間の表現方法でもXCSRとXCSIと呼ばれる2つの 異なる表現方法を用いた手法がある.XCSR における分類子表現は後に詳述するように 区間述語が表す実数値の区間を中央値(center value)及び散布度(spread value)と呼ばれ る属性の組みを用いて指定する.一方,整数値の区間を直接扱うためにXCSIは,分類子 表現においてXCSRと同じく区間に基づく分類子条件部を採用しているにもかかわらず 区間述語の表す整数値の区間は下限値(lower value)及び上限値(upper value)と呼ばれ る属性の組で指定されており,関連する分類子の設計も異なる.このように同じ区間に基 づく分類子表現においても異なる設計指針が存在し,これらは共に実数値分類子表現とし て実現できる.この章ではXCSRとXCSIにおける分類子表現について説明する.なお,
本論文ではXCSRの分類子表現をCS表現,XCSIの分類子表現をLU表現と呼ぶ.
3.3.1 CS 表現を用いた XCSR
ここでは,CS表現の詳細を分類子条件部,被覆,突然変異,交叉,そして一般性比較 演算の順に記述する.
条件部の表現
CS表現分類子条件部は区間述語と呼ばれる要素の入力状態の次元数個から構成さ れている.ここでi番目の区間述語は中央値と散布度の組み(ci, si)からなり,数
3.3. 実数値分類子表現型XCS 第3. 学習分類子システム
直線上の区間[ci−si, ci+si)を指定する.この分類子表現においてn次元実数値 ベクトルである入力状態⃗x = (x1, x2,· · · , xn)に対する分類子の照合は次のように 定義される.全ての入力状態の要素xi について対応する区間述語(ci, si)の表す範 囲にxiが含まれているか,つまり,条件ci−si ≤xi, xi < ci+si を満たす場合に 限り,分類子は入力状態と照合する.このように入力状態の各要素の照合を判断す る区間述語の表す区間のことを照合区間と呼ぶ.ここで,(ci, si)の各値は[0,1)の 範囲に設定されるが,この制限はCS表現の必要条件ではない.
被覆
CS表現における被覆ではn次元の入力状態を⃗x= (x1, x2,· · · , xn)とすると,生 成される分類子の各区間述語がi番目の入力状態の要素および区間述語の属性の関 係を表した次式で定義される.
{
ci =xi
si =rand(s0). (3.8)
ここで,rand(a)は区間[0, a]の一様乱数を与える関数であり,s0 は分布度 si の 上限を指定するパラメータである.パラメータs0 は(0,1]の範囲に設定されるが,
この制限はCS表現の必要条件ではない.
突然変異
CS表現における突然変異では分類子の全ての区間述語の各属性値に対して,パラ メータµで指定された確率で変異が発生する.変異がi番目の区間述語の中央値 ciに発生した場合,ciに次式で定義される変量∆ci が加えられる.
∆ci =±rand(m) (3.9)
変異がi番目の区間述語の散布度si に発生した場合はsi に次式で定義される変量
∆si が加えられる.
∆si =±rand(m) (3.10)
ここで,±rand(a)は区間[−a, a]の一様乱数を与える関数であり,mは変量 ∆ci
および,∆si の絶対値の上限を指定するパラメータである.パラメータmは(0,1]
の範囲に設定されるが,この制限はCS表現の必要条件ではない.
交叉
交叉は,GAが発動された際にパラメータχで指定された確率で実行され,CS表 現では選択された各分類子対についてすべての区間述語の各属性を線上に並べて同 一の要素同士を組み替えることにより新たに2つの分類子対を生成する.この際の 要素の組み換えの仕方による様々な交叉手法が存在する.
第3. 学習分類子システム 3.3. 実数値分類子表現型XCS
一般性比較演算
CS表現では,実数値分類子表現に対応した一般性比較演算を定義する.実数値分 類子表現では区間述語が数直線上の入力と照合する区間を表す.よって,比較すべ き2つの分類子において対応する区間述語が表す区間同士の包含関係を調べること で,上述の役割を実現できる.具体的には分類子X 及びY のi番目の区間述語を (ci, si)および,(c′i, s′i)とおいた場合,全ての区間述語について(ci−si)≤(c′i−s′i) 且つ,(c′i+s′i)≤ (ci+si)が成り立つ場合に限り分類子X はY より一般的であ ると定義する.ただし,全ての区間述語について(ci =c′i)且つ,(si =s′i)の場合 は除く.
3.3.2 LU 表現を用いた XCSI
ここでは,CS表現の詳細を分類子条件部,被覆,突然変異,交叉,そして一般性比較 演算の順に記述する.
条件部の表現
LU表現の分類子条件部はCS表現と同様に入力状態の次元数と同数の区間述語に より構成されるが,その区間述語においてCS表現と異なり下限値と上限値の組み を用いる.ここで,i番目の区間述語は下限値と上限値の組(li, ui)で表され,その 照合区間は[li, ui)を指定する.分類子の照合に関してはCS表現と同様n次元の 実数値入力状態⃗x = (x1, x2,· · ·, xn)に対して,全ての要素xi が対応する区間述 語(li, ui)の照合区間に含まれる場合,すなわちli ≤xi < ui が成り立つ場合に限 り分類子は入力状態と照合する.ここで,(li, ui)の各値は[0,1]の範囲に設定され るがこの制限はLU表現の必要条件ではない.
被覆
LU表現における被覆は,n次元の入力状態⃗x= (x1, x2,· · · , xn),生成される分類 子のi番目の区間述語を(li, ui)とおくと入力状態の要素および区間述語の属性の 関係を表した次式で定義される.
{
li =xi−rand(s0)
ui =xi+rand(s0). (3.11) ここで,s0 は被覆にとって生成される分類子の下限値と上限値を設定する際に生 成される乱数の範囲を指定するパラメータである.パラメータs0 は(0,1]の範囲 に設定されるがこの制限はLU表現の必要条件ではない.また,被覆により下限値 と上限値が0≤li ≤ui ≤1で示す範囲を超える値に設定された場合は次の手順に 従って修正される.もし,li <0ならばliを0に設定し,また,1< uiならば,ui
3.3. 実数値分類子表現型XCS 第3. 学習分類子システム
を1に設定する.
突然変異
LU表現における突然変異ではCS表現の場合と同様に分類子の全ての区間述語の 各属性値に対してパラメータµで指定された確率で変異が発生する.ただし,変異 がi番目の区間述語の下限値li に発生した場合liに次式で定義される変量∆li が 加えられる.
∆li =±rand(m) (3.12)
変異がi番目の区間述語の上限値ui に発生した場合はui に次式で定義される変量
∆ui が加えられる.
∆ui =±rand(m) (3.13)
ここで,mは変量∆li および,∆ui の絶対値の上限を指定するパラメータである.
パラメータmは(0,1]の範囲に設定されるが,この制限はLU表現の必要条件で はない.この操作により変量∆li および,∆uiが加えられた結果として下限値と上 限値が0≤li ≤ui ≤1で示す範囲を超える値に設定された場合は次の手順に従っ て修正される.(1)もし変異後のliが負ならば,li を0に設定する.(2)もし変異 後のli がuiより大きいなら,liをui に設定する.(3)もし変異後のui がli より 小さいなら,ui をli に設定する.(4)もし,ui が1よりも大きいならばuiを1に 設定する.
交叉
LU表現における交叉はGAが発動された際にパラメータχで指定された確率で 実行され,区間述語の属性が中央値と散布度ではなく下限値と上限値であることを 除いてCS表現と同様に定義される.
一般性比較演算
LU表現における一般性比較演算はCS表現の場合と同様に区間述語の表す照合区 間同士の包含関係により定義される.すなわち,分類子X及びY のi番目の区間 述語を(li, ui)および,(li′, u′i)とおいた場合,全ての区間述語について li ≤ l′i 且 つ,u′i ≤ ui が成り立つ場合に限り分類子X はY より一般的であると定義する.
ただし,全ての区間述語について(li =l′i)且つ,(ui =u′i)の場合は除く.
第3. 学習分類子システム 3.4. 教師あり学習に基づく学習分類子システム