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実効原子番号から濃度分析

6-1 実効原子番号から濃度を求める手法

(2-6)式のFとGがZに依存しないと仮定し(6-1)式のように近似する。

(6-1)式を変形することで次の(6-2)式が得られる。

ここで複数の試料の線減弱係数μを代入することで、それぞれの試料について(6-

3)式を得る。今回は取越らが行ったように、理論値(NIST : National Institute of

Standards and Technology データベースの値)から線減弱係数を取得して代入する。

また、複数の試料に関してはC, Mg, Alの3種類の試料を用いる。これにより、3 つの(6-2)式のF, Gが同一であることから回帰分析よりF, Gをあらかじめ決定す る。導出したFとGのグラフを次の図6-1、図6-2に記す。

図6-1 C, Mg, Alの線減弱係数から求めた光電効果の項F 0.00E+00

5.00E-29 1.00E-28 1.50E-28 2.00E-28 2.50E-28 3.00E-28

0 20 40 60 80 100 120 140 160

F

エネルギー [keV]

𝜇 = 𝜌

𝑒

[𝑍

4

𝐹(𝑘, 𝑍) + 𝐺(𝑘, 𝑍)] ≈ 𝜌

𝑒

[𝑍

4

𝐹(𝑘) + 𝐺(𝑘)] (6 − 1) 𝜇

𝜌

𝑒

= 𝑍

4

𝐹(𝑘) + 𝐺(𝑘) (6 − 2)

34

図6-2 C, Mg, Alの線減弱係数から求めた散乱の項G

試料の線減弱係数および(6-2)より求めたF, Gを(6-3)式に代入することで、回 帰分析よりそれぞれの試料の実効原子番号及び電子密度を導出することができ る。今回は特にこの実効原子番号に着目する。

(2-6)式 と(6-1)式よりX線スペクトルから得られた質量減弱係数は混合物に対

して線形性があると言える。このことから次の(6-4)式が成り立つと考えられ る。

𝑍

4

= 𝑐 (

𝜇𝐴

𝜌𝐴

+

𝜇𝐵

𝜌𝐵

)

𝐴

𝑍

+

𝜇𝐵

𝜌𝐵

− 𝐺 (6-4)

このときの(𝜇𝜌𝐴

𝐴+𝜇𝜌𝐵

𝐵)𝐴𝑍をp𝜇𝜌𝐵

𝐵− 𝐺をqとして次の(6-5)式に変換する。

𝑍

4

= 𝑝𝑐 + 𝑞 (6-5)

このときのp,qは線形定数とし、cは混合物の割合(混合溶液であれば濃度)を 示している。それぞれc = 0のときとc = 100のときの実効原子番号Zを(6-5)式

0 1E-25 2E-25 3E-25 4E-25 5E-25 6E-25 7E-25 8E-25 9E-25 1E-24

0 20 40 60 80 100 120 140 160

G

エネルギー [keV]

𝜇

𝐺(𝑘) = 𝜌

𝑒

𝑍

4

𝐹(𝑘)

𝐺(𝑘) + 𝜌

𝑒

(6 − 3)

35

に代入することでp,qの値を定めることができる。この導出したp,qを(6-4)式 に代入し用いることで、実験で求めた実効原子番号から混合物の割合(混合溶液 であれば濃度)cを求めることができる。このことから、実効原子番号より水・

エタノール混合溶液、または水・酢酸混合溶液のエタノール濃度 [wt%]と酢酸濃 度 [wt%]を求めることができる。

6-2 実験値を用いた解析

実験で求めた線減弱係数を(6-3)式に代入することで、水・エタノール混合 溶液、水・酢酸混合溶液の濃度ごとの実効原子番号を導出した。水・エタノー ル混合溶液、水・酢酸混合溶液の濃度ごとの実効原子番号のグラフを次の図6

-3、図6-4に記す。

図6-3 エタノール濃度 [wt%]ごとの水・エタノール混合溶液の実効原子番号

6.4 6.6 6.8 7 7.2 7.4 7.6 7.8 8

0 20 40 60 80 100 120

実効原子番号

エタノール濃度 [wt%]

36

図6-4 酢酸濃度 [wt%]ごとの水・酢酸混合溶液の実効原子番号

次に導出した実効原子番号のうちそれぞれ濃度が0、100 [wt%]のときの実効 原子番号を式(6-4)に代入し水・エタノール混合溶液、水・酢酸混合溶液のそ れぞれでpとqを定めた。水・エタノール混合溶液はp = -18.9599、q = 3691.924、水・酢酸混合溶液はp = -12.4128、q = 3691.924と導出できた。

pとqを定めた式(6-4)に求めた実効原子番号を代入することで各濃度を算 出した。水・エタノール混合溶液、水・酢酸混合溶液の算出した濃度を表6-

1、6-2に記す。また、これをグラフにプロットしたものを次の図6-5、図6

-6に記す。

表6-1 実効原子番号から導出したエタノール濃度 [wt%]

エタノール濃度 [wt%] 分析結果 [wt%] 仕込み値と分析結果の差 [wt%]

10 8.4 -1.6

30 24.5 -5.5

50 45.2 -4.8

70 71.7 1.7

90 96.2 6.2

6.9 7 7.1 7.2 7.3 7.4 7.5 7.6 7.7 7.8 7.9

0 20 40 60 80 100 120

実効原子番号

酢酸濃度 [wt%]

37

表6-2 実効原子番号から導出した酢酸濃度 [wt%]

酢酸濃度 [wt%] 分析結果 [wt%] 仕込み値と分析結果の差 [wt%]

30 42.9 12.9

50 60.5 10.5

70 68.9 -1.1

図6-5 実効原子番号から導出したエタノール濃度 [wt%]

0.00 20.00 40.00 60.00 80.00 100.00 120.00

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100

分析結果[wt%]

理論値 [wt%]

38

図6-6 実効原子番号から導出し酢酸濃度 [wt%]

先の回帰分析を行った時と同様に仕込み値と分析結果との差から仕込み値から の標準誤差を求めたところ、水・エタノール混合溶液は±4.4 [wt%]、水・酢酸混 合溶液は±9.6 [wt%]の精度で分析できた。回帰分析と実効原子番号を用いた解析 の結果を一つのグラフにしたものを次の図 6-4 に記す。図 6-4 を見ても回帰分 析結果と実効原子番号を用いた解析の標準誤差を比べても水・エタノール混合溶 液、水・酢酸混合溶液のどちらも大きな差は生じないことが分かった。

二種類の解析結果がおおよそ数%での精度で求めることができたが、医学応用 に用いるには数%では大きすぎると考えられる。今後はこの精度を高めることが 必要になる。そこでこの仕込み値との差が何によるものであるか検討していく必 要がある。

0.00 10.00 20.00 30.00 40.00 50.00 60.00 70.00 80.00 90.00 100.00

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100

分析結果[wt%]

酢酸濃度 [wt%]

39

図6-4 回帰分析と実効原子番号を用いた解析の比較

0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 60.0 70.0 80.0 90.0 100.0

0 20 40 60 80 100

分析結果[wt%]

仕込み値 [wt%]

エタノール(回帰分析)

エタノール(実効原子番号)

酢酸(回帰分析)

酢酸(実効原子番号)

理論値

40

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