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第4章 排水処理施設の維持管理

5 定期的な保守点検の実施

排水処理施設の故障の未然防止や寿命を長く保つには、定期的な保守点検が必要です。

どのように優れた排水処理施設であっても、保守点検を十分行わなければ排水処理施設 本来の性能が発揮されません。常に良好な状態で使用するためには、行き届いた管理が 必要となります。

例えば、ポンプ、モーター等の機械設備の点検・注油、金属部分や槽の防食措置の定 期的な点検、pH計やORP計の電極等における必要最低限の交換部品や使用薬品を常に用意 しておくこと等です。(pH計、ORP計の電極の校正・保守点検については、資料編参照)

適正な保守点検を行うと、次のような利点があります。

① 排水処理、公害一般についての注意喚起がなされる。

② 単純な運転操作ミスによる下水排除基準超過が防止される。

③ 長期的視野に立った排水処理がなされる。

④ 薬品等の維持管理費が抑えられる。

排水処理施設の保守点検には、日常点検と定期点検があります。前者は毎日行う点検、

後者はそれより長い期間毎に行う点検です。

(1) 日常点検

① 排水処理施設の日常点検

排水処理施設の日常点検では、外観上の点検が中心になります。日常点検が完全 に行われていれば、機器類の致命的な故障は避けることができます。

また、運転状況の経時的変化を把握することで、定期点検の時期を決定する資料 にもなります。

排水処理施設の運転状況を把握するための項目としては次のようなものがあります。

ア 操業時間、排水処理施設運転時間 イ 各種機器類の作動状況(目視・音等) ウ 使用水量、処理水量

エ 処理薬品の使用量、保管量、配管のつまり等 オ 処理水の水質

カ 汚泥脱水装置の運転状況、発生汚泥量 キ 濃厚廃液の発生量、処分状況

処理水の水質チェックには、公定分析法以外に、試験紙、検知管等の簡易測定器 具を使用する方法があります。ただし、簡易測定の結果は、公定分析法の補完とし て使用してください。

② 点検結果の記録

日常点検の結果は、記録しておく必要があります。排水処理施設の特徴に応じた 記録用紙を作成し、運転日報(例:表4-1)として残しておきましょう。運転日報か ら項目を選んで月報、年報等を作成すると、運転状況の経時的変化がさらによく把 握できます。

記録用紙を作成する場合の一般的な注意事項は次のとおりです。

ア 法令によって記載が義務付けられている項目は必ず入れる。

イ 保守点検すべき事項をその都度考えなくてもよいように、チェックリストの様 式を整える。

ウ 記入及び集計しやすくする。

記録用紙は、目に付きやすく記入しやすい場所に置いてください。

表4-1 排水処理施設運転日報の例

12345678910111213141516171819202122232425262728293031 ORP(      ) (      ) ORP(      ) (      ) ORP(      ) (      ) 中和(      ) (      ) (      ) (      ) kg/ L/ 特記事項】

項目\日 運転開始時刻 運転終了時刻 使用水

最終中和

ェ ッ

クロム還元剤 アル

発生量 処分量 袋数) 袋数)

凝集剤

シアン 薬注ポの点検 撹拌機の点検 脱水機の点検電極の洗浄 電極の校正 ORP電極の洗浄点検 揚水ポの点検

排 水 処 理 施 設 運 転 管 理 点 検 記 録 票

年      

シアン 六価クロ 総クロ 亜鉛

(2) 定期点検

日常点検だけでは、排水処理施設や機器類の内部の状態まで十分に把握することは できないため、定期的に精密な点検を行い、部品の交換や故障箇所の修理を行います。

定期点検で機器類の老朽度を知ることは、排水処理施設を安定して運転する上で重要 です。

定期点検の内容は、各槽の点検(腐食、液漏れ、塗装の剥がれ等)、グリース交換、

ポンプ、モーター、攪拌機等の保守点検等のように日常点検に準じて行える事項から、

脱水装置のオーバーホール、pH計・ORP計の回路点検、制御盤の電気回路点検といった 専門業者に委託すべき事項まで、広範囲にわたります。

定期点検の実施に当たっては、点検項目を分類し、月間及び年間を通してのスケジ ュールを作成します。装置を停止したり機器類を取りはずして点検する場合は、生産 部門と十分に打ち合わせを行い、未処理水が排出されることがないようにします。

また、設置メーカー等の専門業者に定期点検を依頼する場合は、必ず水質管理責任 者若しくは排水処理施設の担当者が立ち会うようにします。なお、こうした点検の結 果は、あらかじめ定めた記録用紙に必ず記録しておきます。